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2005年第3回定例会文書質問趣意書

植木こうじ(中野区選出)

警察大学校等跡地を防災公園に

 中野区と杉並区の境にある13.7haの広さを持つ警察大学校等移転跡地は、都内に残された貴重な大規模公共用地です。首都直下地震が予測され、それへの対応が急がれているとき、この大規模公共用地をどう活用するかはまさに今後の首都の都民の安全確保という点から避けられない重要課題です。
 7月23日におきた千葉県北西部地震は地震の規模マグニチュード6・0と推定され、都内では足立区で震度5強程度であったにもかかわらず、都内の交通網がほぼ全線がストップして150万人もの乗客の足がうばわれた。また、4万台近いエレベーターが停止し、本来最寄りの階にとまるはずが42箇所以上で閉じ込められるなど都内の影響は大方の予想をうわまわるものだった。首都の地震へのそなえが如何に不十分かということが、明るみになった。
 政府は昨年来、中央防災会議で首都直下地震の被害予測、対策をあいついで発表してきた。
 特に、国の都心西部直下地震での被害想定によると区部西部の被害が火災などにより死者12000名にも及びもっとも大きいといわれています。このような区部西部に位置する巨大な公共用地である警察大学校等移転跡地こそ、面積規模も地理的位置、交通の面でも地震発生直後からの地域住民や帰宅困難者の広域避難場所、防災拠点、避難住宅用地として確保するにふさわしいものです。
 もともと国は、「行政機関の移転跡地については、公用、公共用優先の原則」「区部の都市環境及び生活環境の改善に資するよう利用することを基本」とし、「防災性や快適性を高めるまちづくりに寄与」することを用途の第一に掲げている。
 この考えに基づき、東京都と中野区、杉並区が2001年にまとめ、財務省に提出した「警察大学校等移転跡地の土地利用計画」では「緑のオープンスペースの拠点」として4haの防災公園を中心に位置づけてきた。
 東京都も、「新しい都市づくりビジョン」で「防災面から緊急を要する公園の迅速な整備を推進」するとして「環状七号線の周辺など救援、復興活動拠点となる大規模公園の迅速な整備を推進する」、そのために「都市の貴重なオープンスペースとして残されている大学移転跡地などの国有地を、公園用地として活用できるよう無償貸与等を国にもとめていく」と明確にうたってきた。
 しかも地球温暖化がすすみ熱帯夜や一時間雨量が100ミリ以上にもなる都市型水害が頻繁に起こるなかでこうした大規模な防災公園を確保することはヒートアイランド対策として大きな効果が発揮されるもので大いに期待されます。
 ところが、中野区は2001年の計画を反故にして警察大跡地13.7haのうち、防災公園はわずか1.5haでそれに民間開発による公開空地など不確定な2.5haの防災空間を加えた合計3〜4haを緑地空間にする新たな「中野駅周辺まちづくり計画」を発表しました。この計画規模では防災公園としての役割は十分果たせず、周辺には超高層ビル建設を計画しており、ビル風によって呼び起こされる火炎旋風や地震による長周期振動の被害を考えると防災拠点になりえないばかりか危険でさえあり、周辺住民から反対の声が相次いであがっています。
 その後、財産管理者である関東財務局が中心となって東京都、中野区、杉並区の四者による新たな協議会が設置されました。その設置目標に「警察大学校跡地の有効活用を促進する」ことをかかげ、座長挨拶では「現実的な展望がないまま未利用の状態が継続すれば」「望ましい都市形成を阻害する」として「都市再生や経済活性化」の観点からの利用促進をうたっております。これは山手線内に集中的に整備してきた「都市再生」計画を山手線外側にまで拡大するものです。この四者協議がすすめられれば「都市再生」路線にいっそう拍車がかかり、住民が求めてきた「緑と防災公園を」という願いから離れたものにならざるをえません。
 このような段階で、都民の命と安全に責任を負うべき東京都が、二度と得られない大規模な公共用地を首都直下地震にそなえる視点から、主体的に取り組む必要があるのではないでしょうか。その立場から、いくつか質問します。

1、東京都として首都直下地震の被害想定とそれに基づく東京都防災計画の見直しがすすめられていますが、中でも都心直下地震に備えた防災計画の具体化にあたって、被害想定が一番大きいとされている区部西部に、大規模公共用地である警察大学校移転跡地を活用した広域避難場所、防災拠点として防災公園の整備を位置付けるべきと考えるがどうか。
 また、総務局、環境局、都市整備局、建設局など関係各局が連携して多面的な検討をおこない、国に「公用、公共用優先の原則」の立場から公園用地として無償貸与等を求めていくべきです。

2、「都市再生」路線をすすめる四者協議の場ではなく、防災公園の整備を要とした跡地利用の再検討をすすめるために東京都が中心となって中野区、杉並区とで住民の参加を保障した新たな協議会を発足させるべきです。

以上