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2005年第3回定例会文書質問趣意書

曽根はじめ(北区選出)

北区の水害被害及びダイオキシン問題について

(1)北区の水害被害について

 さる9月4日の午後10時25分ごろ、北区の堀船1丁目で施工中の高速道路王子線工事に伴う石神井川仮設護岸の一部が、台風14号の集中豪雨による石神井川の水位上昇に耐え切れず、幅20メートル以上にわたって崩壊しました。
 これにより石神井川の濁流が一気に流れ出し、堀船一丁目から三丁目にかけて床上浸水133棟、床下浸水253棟という近年にない水害被害をもたらす結果となりました。
 工事現場の正面で腰まで泥水に浸かり、乗用車も使い物にならなくなった住民の方がたは「王子線開通後の3年近く橋脚の継ぎ目などからの騒音で悩まされたあげく、今度は狙い撃ちするような水害被害で散々だ」と憤りをあらわにしており、また明治通りを越えて水害に襲われた堀船三丁目の住民からは、「まさかここまで石神井川の水が押し寄せてくるとは思わなかった」と嘆きの声が上がっています。
 堀船地域の連合町会による「九・四堀船地区水害対策協議会」が結成され、その主催で9月15日にようやく首都高速道路公団の住民説明会が行われました。
 公団側は、説明会当日には今回の水害の責任を認め、被害補償についても「誠意を持って対応したい」と交渉に応じる意志を示したにもかかわらず、その後の自治会との協議では一転して「この水害は天災であり、公団にはいっさい責任はない。よって補償交渉には応じられない。見舞金で対応する」と、公団理事長名で通告してきたとのことです。地元住民が公団のこうした対応に憤りを覚えるのはきわめて当然です。
 10月3日には、対策協議会長を代表に、河川管理者である東京都の建設局長と地元の北区に対して、首都高速道路株式会社(旧首都高速道路公団)が被害に苦しむ住民の声を真摯に受け止め、被害救済に善処するよう強く指導を求める要望書を提出したところです。
 私は、住民の皆さんの要望を全面的に支持し、今回の水害被害の原因と責任の究明、再発防止とあわせ、住民被害の全面的な補償と救済が実現するよう求める立場から質問します。
 首都高速株式会社(旧公団)の被害住民への態度は、いったんは「関係機関と調整し、皆様とお話をさせていただきながら誠意ある対応をしてまいります」と表明しながら突然一方的に「被害に対する責任はない」と居直り、見舞金でしか対応しないというきわめて理不尽なものです。
Q.工事期間中について護岸の安全管理責任を旧公団にゆだねてきたとはいえ、河川管理者である都としても首都高速株式会社任せにすることなく、被害救済に誠意を持って当たるよう強く指導し助言することが必要であると考えますが、所見を伺います。

 首都高速株式会社は、「上流での集中豪雨により1時間当たり50ミリ降雨に対応できるように想定した計画水量を超える状況が発生した」として、あたかもこれが護岸崩壊の原因であるかのように主張していますが、今回の水害は河川の水位が仮設護岸を越えたためではなく、その前に仮設護岸をとめていた直径12ミリメートルのボルトが水圧に耐え切れなかったために護岸自体が壊れておきたものです。
 ある土木工事技術者は、90センチメートルの高さのI型鋼を設置するには通常なら20ミリメートル程度の太さのボルトが必要であり、12ミリメートルのボルトでは不十分ではないかと指摘しています。
 また復旧工事でボルトを16ミリメートルに切り替えた上に新たに筋交いの鋼材を取り付けたことも、仮設護岸の強度がいかに不十分だったかを物語っています。

Q.首都高速株式会社の言い分を鵜呑みにするわけにはいきません。今水害の原因究明のため、仮設護岸の強度について徹底した検証が行われるべきと考えますが、どうですか。

Q.また仮設護岸の不備が明らかになった場合には、首都高速株式会社には重い補償責任が問われるのは当然ですが、合わせて都の見解を求めます。

 現場周辺の住民は2002年12月の高速道路開通以来、橋脚の継ぎ目からの騒音に悩まされ、とりわけ深夜に多く通過する大型トラックの騒音振動には「まともな睡眠が取れない」と苦情が殺到し、旧公団の責任で8月から本格的な実態調査が行われていた矢先に今回の水害が発生しました。
 飛鳥山公園とJR京浜東北線王子駅をはさんで住宅や商店街の密集した地域の地下をトンネルで通すという難工事を、かつて水害を繰り返した石神井川の大規模な河道付け替え工事まで行ってすすめてきたことが、いかに大きな住民被害をもたらす結果となったか、厳しく指摘せざるを得ません。
 Q.都として、今後再び高速道路工事によって住民への環境悪化や事故・災害をもたらすことの無いよう、工事中や工事後の安全対策と騒音はじめ環境被害の防止に万全を期すべきですが、答弁を求めます。

(2)豊島地区のダイオキシン問題について

 本年4月に、豊島五丁目団地内の区立保育園の園庭と、同じく団地内の公園の表土から基準値を超えるダイオキシンが発見されて以来、団地内の各所からはもちろん、団地周辺の民間企業跡地などから次々と高濃度のダイオキシンが発見され、五千戸近い団地の居住者をはじめ地域住民の健康と安全をいかに守っていくかが問われる深刻な事態となっています。
 この間の調査により、ダイオキシンの土壌汚染は団地周辺も含めて豊島五丁目六丁目にかけて広範囲に広がっており、しかも環境基準の1千ピコグラムを超える濃度が随所から発見されるなど、地域全体の抜本的な汚染対策が必要であることが明らかになりつつあります。
 北区は都に対しダイオキシン類対策特別措置法に基づく抜本対策を申請する意向と聞いています。これは当然ですが、同時にこれまで同法の適用対象となった事例とまったく異なり、人口が密集する団地全域にわたる汚染の対策として、一定の時間がかかる抜本対策の確立と平行し、地域住民の健康と安全に配慮した緊急対策や団地居住者の健康への影響調査など、今回の汚染問題の実情に即した対策が求められています。
 そこで私は、特に豊島五丁目団地における課題を中心に、今後ダイオキシン対策の中心となるべき東京都としての取り組みについて質問します。
 これまでの汚染状況の調査によれば、40年ほど前にニッサン化学の肥料工場跡地に1メートル土盛りし公団住宅として建設された豊島五丁目団地及び周辺の地下1メートル以下の土壌からは、ほぼ全域から高い濃度でダイオキシンが検出され、しかも地表に土が露出している公園や道路の植樹帯、保育園園庭の表土などからも基準値を超えるダイオキシンが発見されています。このことからかつての化学工場の土壌にダイオキシンが含まれているだけでなく、これまでの予想に反してダイオキシンが何らかの原因で地表まで上昇してきている可能性を否定できなくなっています。
 ダイオキシンの猛毒性からすれば、できるだけ速やかに地表に存在するダイオキシンに乳幼児をはじめ団地住民が接触するのを避ける緊急対策が必要です。
 この点で団地を管理する都市再生機構は、自らの所有地について、地上の土をすべて不織布で覆い20センチメートル土盛りして芝生を植える緊急対策を団地全域で行いつつあります。しかし一方で北区の管理する区立公園や学校の敷地などは臨時的にシートで覆われたままの状態で、保育園の園庭だけがようやく簡易アスファルト舗装されました。

Q.同じ団地内で緊急対策にくい違いが生じないよう、都として少なくとも都市再生機構と同等の緊急対策を北区が実施するよう指導するとともに、財政的な支援も検討する必要があると考えますが、所見を伺います。

 今後の抜本対策について、過去の特別措置法による対策の場合には長期の時間が費やされていますが、今回は居住者の住宅や保育、教育など暮らし全体の場が汚染されているだけに、汚染範囲の確定や汚染土壌の処理対策の検討などをできるだけ速やかに進めるため本格的な体制で臨む必要があります。

Q.北区の申請があり次第、都として直ちに対応するとともに同法の対象として都市機構の所有地もふくめ団地全域に適用するようにすべきですが、見解を伺います。

 北区は独自にダイオキシン類の健康影響評価検討委員会を設置し、この委員会では住民の要望を受けて、会議の公開はもちろん住民からの意見や質問も積極的に受け入れ対応していくことが表明されました。ある委員は「子どもたちが保育園でどんな土遊びをしているか、公園がどんな風に利用されているかなどは、住民の方から直接聞かなければわからない」と述べて、積極的に住民の協力も得ながらダイオキシンの健康調査に取り組むことを表明しています。
Q.都として北区の健康影響調査と連携し支援を行うとともに、今後都のダイオキシン対策における汚染処理の検討についても、北区の委員会の考え方を生かして専門家による検討の場を住民に全面的に公開するとともに住民との意見交換にも積極的に応じるようにすべきですがどうか、答弁を求めます。

 ダイオキシン処理の抜本策についても、住民の立場に立った対策を講じることが求められます。
 昨年暮れにダイオキシン汚染が発見された団地に隣接した民間企業の所有地では、特別措置法対象外のため企業の責任と負担で、本格的な土壌の入れ替え処理が行われました。今後、都市再生機構が買い取って住宅開発を進めると聞いていますが、これから入居者を募集する上で本格的な対策を行うのは当然です。
 一方、豊島5丁目団地の汚染土壌の処理方策については公共の責任で処理方策が決められ実施されていくことになりますが、同じ住宅団地の用地として、民間企業の行った土壌入れ替え処理と比べて実効性の低い処理方法を選択することが許されないのは当然です。
Q.既存の高層住宅や学校や保育園、幼稚園など公共施設が立ち並ぶ敷地内での処理対策という困難さをどう克服するかも含め、あくまで住民の健康と安全を優先する立場に立った処理方策とすべきですが、都の所見を伺います。
 
 ダイオキシン汚染の原因者の究明も避けて通れない課題です。かつてニッサン化学が戦前から肥料工場を操業していた当時、この地域は鼻をつく臭気がただよい、地面は赤く変色しているほどだったとの住民の証言もあるように、原因者としてニッサン化学の関わりを抜きに考えるのは困難です。
Q.都は北区や都市再生機構とも連携し、汚染原因者の特定とともにダイオキシンがなぜ地表からも広範に検出されたのかも含め、汚染メカニズムの解明に全力を挙げるべきと考えますが、答弁を求めます。
 
Q.また都内に存在する化学工場跡地などの住宅団地について同様の汚染が起きている可能性があることから、何らかの方法で調査を行うことを検討すべきですが、お答えください。

以上