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2005年文書質問趣意書

松村友昭(練馬区選出)

水害対策と被害補償について

 九月四日の豪雨災害は災害救助法が十二年ぶりに都内で発動される大変な被害を都民にもたらしました。杉並区、中野区、練馬区など、十四区、一〇市、一町で床上浸水二、五百九十六棟、床下浸水二三一九棟 合計四九一五棟、さらに店舗や事務所、道路冠水など、過去一〇年分ともいえる被害がでました。
 このように大きな被害をもたらした今回の水害の原因は、一つには、局地的な集中豪雨によるものですが、この異常な気象現象をつくりだす犯人は、ヒートアイランド現象との関連が推察され、この対策をしっかりとっていればこうした大被害を食い止めることができたのです。二つには、急激な都市化によってコンクリートに覆われて雨水が一挙に下水道や河川に集中するなど、降水流出条件が悪化して中小河川の負担増になって、大きな被害をもたらしています。まさに、東京における治水事業の進捗の遅れなどによる「人災」といえるものです。

一、そこで、まず、今回の水害の原因の徹底的な解明と今後の被害防止対策を質します。
その第一は、ヒートアイランド現象の影響です。
 知事は所信表明で、想定をはるかに超えた雨量といいましたが、都内で時間雨量一〇〇ミリ以上の記録はかっての一〇年に一度から、五年に一度になり、この一〇年間では三年に一度ぐらいに間隔が狭まっており、一〇〇ミリ以上の降雨地点も今回は、七箇所にも上っている現実を直視する必要があります。もはや異常気象が異常気象ではなくなりつつある原因の一端は、ヒートアイランド現象によるものであることはあきらかです。
 東京のヒートアイランド現象は、専門家の指摘によると、都心部のビルなどからの人口廃熱と自動車排気ガスによってつくられた熱い空気の塊が東京湾の海風が高層ビルにさえぎられ、弱まったしまうため、区部西北部の上空あたりで滞留して上昇気流を起こし、雨雲を発生させ、集中豪雨などを起こすとされています。
 九月四日も気象庁アメダスは、強い雨雲が中野区、杉並区、練馬区の上空から数時間動かなかったことを観測しています。

1、石原都政の進める「都市再生」によって、都心部の超高層ビル群と大型幹線道路優先の都市づくりがこれ以上進めば、ヒートアイランド現象をますます激化させることは必死です。このことからも、ヒートアイランド現象を引き起こす石原都政の「都市再生」は根本から見直すべきです。見解を求めます。

2、また、現在顕在化しているヒートアイランド現象を緩和するために、クールランド対策が重要です。都心部の透水性舗装や屋上緑化、散水などにとどまらず、「風の道」を都市計画に取り入れ、さらに公園の増設、水路の復活などをおこなうべきです。見解を求めます。
 第二は、都市型水害への対応の遅れです。
 水害の原因が、急激な都市化によって東京の保水機能が著しく低下したことと、中小河川の改修など治水事業の進捗の遅れにあることはいうまでもありません。
 ところが、重大なことは、石原都政になって、東京の保水機能を回復し、治水を図る総合治水対策や中小河川整備が大型開発優先の犠牲となって、後退していることです。
 特に、今回の水害では、中小河川整備の遅れによる、人為的ミスともいえることが重なって被害を大きくしたことです。
 たとえば、新宿の被害では、「妙正寺川は以前、もっと深かったが、西落合周辺の工事で浅くなり、今回の水害につながった」「護岸の崩壊が水害の原因だが、ここ数ヶ月にわたり、同じ場所を掘ったり埋めたりを繰り返し、地盤がゆるんでいるところに大雨があったため崩壊した」「北原橋は、護岸より橋の下の梁が低い位置まで下がっているので、水がせき止められる状況になった。そのため、北原橋でせき止められた水があふれた」「葛橋の先にH鋼があり水がH鋼に当たって、逆流したと考えられる」「対岸の野球場は元の地盤より盛り土をして、二メートルも地盤を高くしてしまった。野球場を下げるほうが良いといったがまったく取り合わなかった」などの批判があがっています。
 北区船堀一丁目石神井川右岸堤防上に嵩上げされたI型鋼が長さ二十メートルにわたって、水圧により落下し、そこから溢れ出た川水が一キロ四方の広範囲にわたって濁流となって被害を出しました。

3、これら、指摘の箇所については、次の災害を防ぐためにも、直ちに補正予算を組んでその対策を図るべきです。さらに、都内中小河川改修が年一%しか進捗しない現状を抜本的に改め、中小河川予算を大幅に増やすとともに、遊水地、調節地の計画を大幅に増やす目標を明らかにした取りくみを行うべきです。それぞれ見解を求めます。
 保水機能を回復する手立てとして、雨水流出抑制型都市づくりの手法が極めて有効であるということはいくつかの事例で検証済みです。
 例えば、都は、練馬区の白子川、石神井川流域の下水道事業で、透水マス、透水管、透水U字講、透水舗装など徹底した雨水流出抑制施設を取り入れたモデル事業を行ないました。その結果、白子川は時間雨量三〇ミリの改修も出来ていないにもかかわらず、水害常習地が解消されたのです。今回の豪雨でも、練馬で水害の被害が出ているのは雨水浸透施設が設置されていない地域です。また、雨水利用に本腰を入れて取り組んでいる墨田区の実践でも実証済みです。

4、練馬型公共下水道や墨田の雨水利用を全都に普及すべきではありませんか。見解を求ます。
 わが党は、これまで、こうした提案を行い、青島都政では、水循環マスタープランがつくられましたが、石原都政になって、総合治水対策予算を後退させています。   
 とくに、都自身も貯留効果を認め、区市町村も存続を強く求めていた民間住宅貯留施設の補助を石原都政となってから廃止してしまいました。これでどうして水害が解消できるでしょうか。

5、旧都市計画局が廃止した、民間住宅貯留施設に対する補助は復活して、区市町村の雨水流出抑制型都市づくりを支援すべきです。答弁を求めます。
 練馬の中村の被害でも、「雨水クイックプランが完了したばかりなのに、大きな被害が出た。もう少し、貯留量が多い管を入れておくとか、広い南蔵院などの民間施設に貯留施設を設置するなどすれば被害は防げた」などの声が出ています。

6、そこで、雨水整備新クイックプランを見直し、その際、貯留管のみに頼るのではなく、公園、学校、団地、民間施設などにも貯留施設を拡充すべきです。答弁を求めます。

7、また、雨水流出抑制型都市づくりを都市計画にとり入れ、都内公共施設、民間施設の全てで、雨水流出抑制施設や雨水利用施設の設置目標を明らかにして取り組むべきです。見解を求めます。

二、つぎに、一刻も猶予できない被災者救済について質します。
 知事は所信で、「災害救助法を適用するなど被災者の方々の生活再建や事業再建に迅速に対応」と表明しました。しかし、災害救助法の適用によって、被災者個人が対象になる支援は、資金の貸付と融資、それに税や医療費の減免のみで、いま、被災住民が求めている被害に対する個人補償はありません。
 今回、これだけの水害被害をもたらした原因がヒートアイランドを激化させた都心開発や中小河川整備・総合治水対策の遅れなどによる都市型水害です。

1、「完成したばかりの建具と工作機械が泥水をかぶって全部使えない」「自宅のスタジオが水をかぶり撮影に使うスクリーンなどがだめになった」「出荷予定の製本商品の冊子に被害」など、途方にくれる自営業者や、さらに「車が水に使ってすべてぐちゃぐちゃ」「クーラーの室外機が壊れた」「畳がすべてだめになった」などの被害に対して、都の責任で個人補償をおこなうべきです。

2、税の減免で、床下浸水は固定資産税、都市計画税の減免対象としないことに対しても都民から批判の声が上がっています。床下浸水も対象にすべきです。

3、また、「一階が住宅でないので免除されるものは何もないとのこと、被害の金額にしたら、大変なのですが」「家電リサイクル法に基づき被災住民に負担が求められる冷蔵庫、テレビなどの引き取りに減免措置を講じてほしい」との要望に減免制度を拡充すべきではありませんか。それぞれ答弁を求めます。
 各区市は、見舞金を出していますが、水害の後始末の費用としてはまったく足りません。
 「湿乾両用の掃除機と二〇bのホースとその先端、電気ブラシなど購入しました
が、何の援助もでないのですか」「片づけにかかるものを購入したりと、出費がすごい、ゴミ手袋や手袋など、配布して欲しい」など切実な訴えが出されています。4、福井県では、豪雨災害に緊急被災者支援金制度をつくり、床上浸水一〇万円、床下浸水二万円を支給しています。都としても見舞金を支給すべきではありませんか。答弁を求めます。

以上