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2005年第3回定例会文書質問趣意書

河野百合恵(江戸川区選出)

よりよいマンションライフのために

 分譲マンションは、全国で460万戸を超えて増え続けており、約1200万人が生活している場である。2003年度の「東京都住宅白書」によれば、「東京における分譲マンションの新規供給戸数の推移は、バブル期には低迷していたが、バブル崩壊後の1994年から急激に増え始め、1999年以降は供給量が毎年4万戸を超えるという史上空前のマンションブームが続いている。分譲マンション供給戸数はバブル期の1988年から1992年までの5年間には4万2千戸に過ぎなかったのに対し、1998年から2002年までの5年間では19万9千戸に達した」ことが明らかにされている。その後も、2003年度は46,888戸、2004年度は47,468戸と増加の一途にある。特に都心3区(千代田区、中央区、港区)の増加が著しい。分譲マンションは主要な居住スタイルの1つとなっている。
 マンションは「持ち家」ではあっても共同住宅であり、廊下や階段は居住者(区分所有者)全員の共有物であるなどの点で、戸建て住宅とは条件が異なっている。
 阪神淡路大震災や中越地震、福岡県西方沖地震など相次ぐ震災では、マンションに被害が出た。高齢化の進行によるバリアフリーへの対応も急がれる。「住まいは人権」の立場から、よりよいマンションライフ実現のために、以下、質問する。

1、大規模改修と耐震性強化策の費用負担軽減について
日本の住宅の「平均寿命」は欧米諸国に比較して極めて短い。建物の長命化をはかることは、居住者の資産価値を守ることと合わせ、省資源化という社会的要請になっている。また、耐震対策上も重要である。
 1981年建築の都内にある360余戸のマンションが、今年実施した大規模改修には、総額4億5600万円余の費用がかかった。
 外壁塗装、通路、玄関、ピロティ(駐車場の柱の補強に鉄板を巻いた)など  
の改修がされたが、耐震ドア1枚の費用だけでも、20万円近くになった。約10年に1回は必要になる大規模改修のために、このマンションでは、管理費以外に1世帯あたり月額1万8千円の積立金が徴収されており、居住者の負担は重いものがある。マンションの耐震対策、大規模改修工事に対する支援を強めることが求められている。

Q1.修繕積立金が行われていないマンション、建替えや改修のための修繕積立金が大きく不足しているマンションなどの実態調査を行い、専門家を交えた検討委員会の設置が必要と考えるが、都の考え方を示していただきたい。

Q2.計画的な修繕に欠かすことができない修繕積立金は、仮に数億円の残高があっても、1戸あたりではペイオフ限度額の1000万円をはるかに下回る100万円程度にしかならない。修繕に不可欠の資金である修繕積立金については、全額預金保護の対象になるよう、国に強く働きかけるべきと考えるが、いかがか。

Q3.マンションの耐震強化も喫緊の課題である。1981年の耐震基準  
 改正前につくられたマンションで、1階が駐車場などのピロティ形式のマンションは、耐震性に問題がある場合が少なくない。現在の耐震基準は、「震度7以上では、建物の倒壊を免れればよい」というものでしかない。
 阪神淡路大震災では地球の重力の2倍の2000ガルの重力加速度が加わり、昨年10月の中越地震では場所によって、5000ガルの重力加速度が計測された。これまでにないエネルギーによる大地震が相次ぐ中で、福岡県西方沖地震では、最新の耐震基準を満たすマンションにも被害が生じた。首都直下型地震の発生確率が高くなっている今、被災後にも居住者が生活を継続できるように、建物の性能や安全にかかわる基準の総合的な見直しが必要と考えるが、都の見解をうかがう。

Q4.東京都は、共同住宅の耐震改修についての利子補給制度を設けているが、耐震診断や耐震改修への助成制度は未実施のままである。都として、マンションの耐震診断、改修にたいする助成制度を実施することを求めるが、いかがか。
 大規模改修の基本になるのは、建物の実態把握である。現在、一定規模以上のマンションは建築基準法で建物の定期報告が義務付けられている。その規模に満たないマンションについても、定期報告が必要ではないかと考えるが、合わせて、都の見解をうかがう。

Q5.近年発生した大地震での負傷原因の3割から5割は家具類の転倒、落下によるものとなっている。
 私は今年の第一回定例本会議で、家具類の転倒、落下防止対策について要望した。東京消防庁は、「家具類の転倒・落下防止対策推進委員会を設置し、転倒防止器具の有効性や性能評価の方法をはじめ、効果的なとりつけ方法の周知、関係業界等と連携した普及方策などを検討している」と答えた。今年3月に発表された推進委員会の検討結果では、転倒防止実施率は27.8%と10年前の阪神淡路大震災以降横ばい状態であるとされている。家具類の転倒・落下防止対策は依然として進んでいない状況である。推進委員会は、効果的な推進方策として、都民への啓発を掲げているが、実施率向上のためには、具体的な対策が必要になっている。現在、23区では実施予定を含め12区が転倒防止器具のとりつけ助成制度を設け、多摩の区市町村では、やはり実施予定を含めると16の自治体が助成制度を設けている。都内の全区市町村で、転倒防止器具のとりつけ助成制度が実施されるよう、都として啓発活動と合わせて、区市町村への支援を行うこと、また、高齢者や障害世帯へのサポート制度を創設するよう提言するものであるが、いかがか。

Q6.高齢社会の今、居住環境のバリアフリーは社会的要請だが、改修資金の捻出に苦労している場合が多い。
 京都市は、「建物が古くなると維持管理費が増える。高齢者が住めなくなると、空き部屋が発生し、スラム化にもつながりかねない」と、今年度、初めて高齢者マンションの実態調査に踏み出した。
 東京都では、介護保険と組み合わせて、専用部のバリアフリーへの助成は行っているが、エレベーター、廊下、スロープなどの共用部分への助成制度は設けられていない。国も助成していない今、都が共用部分のバリアフリー化に支援をすることが、時代の要請に応えた施策となるが、助成制度実施にむけての見解を伺う。

2.増圧直結給水工事の助成ついて
 貯水槽による給水から、ポンプによる増圧直結給水に切り替えるマンションが急増している。
費用負担は200戸程度のマンションで700万円から1000万円近くになると、言われている。
東京都は、マンション改良工事助成制度による利子補給は行っているが、工事費は全額、管理組合などの自費負担になる。水圧が増し、水質も良くなる増圧直結給水工事の負担軽減が求められていると考えるが、いかがか。

3.アスベスト対策について
 アスベストによる健康被害は大きな社会問題になっている。アスベストは1970年代から80年代にかけて大量に輸入され、8割以上が建材に使用された。吸音・断熱などのために、既存の分譲マンションでもエレベーター機械室やポンプ室に使用されてきた。築30年以上のマンションでは、エントランスホール全体に吹き付けられている例もあるとされている。非飛散性のアスベスト含有製品としてはビニール床タイルがあり、ベランダの隔壁板に使用されている場合もある。ほとんどのマンションにアスベスト含有製品が飛散性、非飛散性を問わず、使用されていると考えられる。
 マンションのアスベスト対策を強力に推進していくことは、都民の健康を守るうえで重要な課題になっている。

Q1.アスベスト対策では、企業の社会的責任を明確にすることが欠かせない。
分譲マンションを施工した事業者等に、アスベスト製品の使用について、資料の提供を求め、追跡調査などを行うことが、必要になっていると考えるが、いかがか。

Q2.マンションに使用されていることが判明した場合、廊下、階段、ホールなどの共有部分については、除去をふくめた安全対策の工事費への支援を行うよう求めるものだが、見解をうかがいたい。
 また、個人の居住スペースについては、高齢者世帯などへの支援策など具体的な対応策が必要と考えるが、いかがか。

Q3.アスベスト除去工事に際して、一時的な転居が必要になる場合について、都営住宅、公社住宅、都民住宅などへの住み替えができるよう、都の努力を要望する。答弁を求める。

以上