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2005年第4回定例会 文書質問趣意書

吉田 信夫(杉並区選出)

一、鉄道事業者による系列書店の展開から中小書店を守るために

近年、青少年の学力低下や活字離れが指摘されているもとで、文字文化の活性化があらためて注目されています。地域の本屋さんは、身近に本に親しむことができ、学校教科書の取り扱いや宅配など、地域に欠かせない役割を果たしています。商業主義にとらわれることなく良書を提供したり、青少年から有害図書を遮断し、地域文化の担い手としての役割を果たしています。
ところが地域の中小書店が、いま大型書店やチェーン店などの無秩序な出店によって経営危機に追い込まれています。10年間で都内で書店556店が廃業や転業に追い込まれており、都の「中小企業経営白書」でも、生活悪化による「買い控え」(48・8%)についで「大型店志向」(29・3%)があげられています。地域から書店の灯が年々減っていくことは、見過ごせない事態です。

Q1、中小書店の存在と役割をどのように考えますか。

 そのうえ中小の書店にとって、営業をおびやかす新たな脅威の一つとなっているのが、大手鉄道事業者が、駅舎改築などとあわせ系列書店をつぎつぎと開店させていることです。その結果、通勤客など駅利用者が駅舎内の系列書店に流れ、駅周辺の中小書店がそれまでの顧客を奪われ、つぎつぎと書店をたたまざるをえない事態に追い込まれています。
 杉並区内でも、京王井の頭線久我山駅の駅舎改築とともに、駅舎3階に系列書店が、駅周辺の書店の反対をおしきって出店しました。京王電鉄の場合、京王線の駅舎改修とともに、系列書店である啓文堂書店を沿線につぎつぎ出店してきましたが、その結果、駅周辺で31の書店が閉店しています。京王電鉄では書店でもポイントカードが利用できることを強調し、カードの普及拡大をはかっています。したがって個々の書店では赤字であっても、グループ企業全体の売り上げ拡大の観点から書店の展開をはかっていると考えられます。また、テナントは公募するが高い設定で周辺の商店では手がだせずおのずと系列書店が出店するしくみとなっています。

Q2、こうした鉄道事業者による系列書店の駅舎への連鎖的出店と周辺書店への影響という新たな事態について、調査を求めます。

 国鉄が民営化された際にだされた「新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」では、中小企業への配慮に関する事項で「地域における経済活動に与える影響にかんがみ、その地域において当該新会社が営む事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動を不当に妨げ、又はその利益を不当に侵害することがないよう特に配慮するもの」と定めています。
 地域住民の生活にとっても、特定の業種や店舗形態に特化するのでなく、地域のなかで各種の小売業がバランスよく展開し、住民のニーズにこたえることが求められています。街のなかの中小書店は、住民の生活と文化にとって欠かせない存在です。

Q3、鉄道事業者にたいして、駅舎での事業展開にあたっては、周辺の書店などの経営を圧迫することのないよう配慮を求めるべきです。

 書籍は、他の商品とくらべても利益率が低く、書店の経営は容易ではありません。そのうえ、中小書店は、大手書店とくらべ大きな格差があります。大手書店は売れ筋の新刊書を優先的に確保し平積みで販売する一方、中小書店では新刊書の確保が容易でなく、売り上げ減少が資金繰りを圧迫しています。都の「白書」でも中小書店にとって経営上の課題として「売れ筋商品が揃わない」が68・3%と第1にあげられています。そのうえ京王系列の書店の場合、ポイントカードによる事実上の値引きまで行っています。

Q4、中小書店と大手書店との不公平な扱いが是正されるよう、流通のあり方やカードによる値引きの禁止など、業界や国に働きかけるべきです。

Q5、中小書店の振興策の調査策定など、都として業種別支援を行うべきではないですか。

二、外かく環状道路計画について

 国と東京都は、東京外かく環状道路計画について、PI協議会での議論でも住民から反対の意見が出され、建設の合意はされてないにもかかわらず、建設を前提にした手続きをすすめています。最近では、構想段階から計画段階に入るとし、本線は大深度地下を活用した地下道路とし、3箇所のジャンクション以外に3箇所のインターチェンジ設置計画をうちだしました。地上部も街路とする方向で準備をすすめています。
 そもそも外環道路は、すでに熟成した既成市街地で、既存の道路もない地域で建設としようする計画で、地域住民の反対があり本線の地上方式をやめ大深度地下方式にしました。しかしジャンクションやインターチェンジなど地域住民の立ち退き、新たな車の流入、換気塔による排気ガスの放出など周辺の生活と環境に深刻な影響を及ぼすことは必至です。また地下道路建設による地下水脈切断なども危惧されています。
 さらに国と都は、地上部についてもあくまで街路の建設を計画しており、そうなれば、5000戸といわれる住宅の立ち退き、環境破壊など、深刻な影響をもたらします。とりわけ、杉並区などの地域は閑静な住宅街であり、道路幅数十メートルの道路建設となれば、まちそのものの破壊につながりかねません。
 投資される資金も軽視できません。都内の中央環状新宿線の場合10キロで約1兆円も投資され、外環道路計画の場合、国土交通省の試算でも1兆3000億円といわれています。圏央道の場合を見ても都にも一定比率での負担が押し付けられかねません。こうした莫大な財政負担は、都財政、都民サービスにも犠牲をしいる危険性をはらんでいます。
 さらに重大なことは、国や都が全線地下でインターチェンジなし、地上路線なしの構想を示して合意を求め、住民がテーブルについて話しあいを進めるなかで、突然インターチェンジ3箇所計画を提示し、さらに地下道路だけでなく地上も街路として建設することを打ち出すなど、なしくずし的に計画を押しつけて具体化をはかろうとしていることです。こうしたする進め方は、見過ごせません。
 このように、住民の生活と環境はもちろん、東京の都市づくりや都財政にとっても重大な問題をはらむ計画を、いまだ周辺住民、都民との合意も得られないままごり押しをすることは許せません。
 あらためて、今年9月に計画の具体化のためのとして、打ち出した「考え方」を中心に何点かただしたい。

1、事業者について

 国と都は外環道路計画を強引にすすめているが、これまで事業主体だった日本道路公団が分割民営化され、計画はすすめても、実際に事業化されるかの保障は不明確です。

Q6、東京外環道・関越東名区間の事業者は誰なのか。道路公団から分割民営化された企業で建設の意思は表明されているのですか。

Q7、都は国土開発幹線道路であり国がその責任において整備する路線だと説明してきた。分割民営化された事業者主体が、採算上整備を拒否した場合、国が全線国直轄事業として整備することもありえるのですか。

Q8、首都高品川中央環状品川線の場合、都は約半分の区間を都の直轄街路事業として建設をすすめるという異例の措置をとりました。本来、国が責任を負うべき道路に都が投資することはあってはならないが、外環道路において都が直接整備するということはありえないと断言できるのですか。

2、事業費について

Q9、地下構造とした場合の建設費、及び3箇所のジャンクションとインターチェンジの建設費の総額はどの程度に推計されていますか。

Q10、推計される建設費は、現在の高速料金を前提にし、採算上なりたちうると判断しているのか。どのように計算していますか。

3、都の財政負担について

 圏央道の場合、一定区間を国直轄道路事業とし建設が進められており、その場合、建設費の4分の1が直轄道路負担金とし自動的に都に課されています。

Q11、圏央道での都の直轄負担金は、総額どの程度となりますか。外環道路の場合も同様な負担になりえると思しますがどうか。最悪、全線国直轄となった場合、国直轄負担による都の負担額はどの程度と推計されますか。

4、上部の計画について

 都は、外環道路は大深度地下とし、現在の都市計画決定の位置を基本として地下化することを打ち出しています。同時に、地上部も街路化する計画を放棄していません。

Q12、都市計画上では、大深度地下での整備は、現在の都市計画決定の地下構造への変更ですすめるのではないのですか。それなら地上部の活用が同時平行的に検討される必要はありません。

Q13、都市整備局は、委員会での答弁でも「地上部の街路について」沿線自治体と協議とのべているが、都としての構想はあくまでも街路ということですか。複数の行政区をつなぐ街路なら都道として都が整備することになるが、いかがですか。

Q14、外環道路本体の整備による立ち退き戸数及び、上部も街路として利用した場合の立ち退き戸数はそれぞれどの程度ですか。

5、インターチェンジ計画について

 国と都は、整備促進のためにインターチェンジなしの計画を打ち出し、その後インターチェンジについては関係住民、自治体の意向を尊重するとの姿勢が示しました。杉並区は、国が行ったアンケートでも多数が反対であり、区としても反対を表明しました。
しかし9月に発表した「考え方」では3箇所のインターチェンジの1つとして青梅街道インターチェンジがハーフインターとして打ち出されました。たとえ設置場所が行政区として練馬区であっても杉並区と隣接する位置にあり、区内と通る青梅街道への新たな車の流入、流出が増加することは明らかです。

Q15、なぜ杉並区、杉並区住民の多数の意思を無視して青梅街道インターチェンジ構想を打ち出したのですか。

Q16、設置場所が練馬区なら、今後も杉並区及び住民が反対しても、設置をすすめるという姿勢ですか。

Q17、青梅街道インターチェンジの機能はどのようなものですか。青梅街道の自動車交通量が現在とインター設置でどのように変化するのか。またインター利用自動車数の推計を流入、流出、かつ新宿及び西東京市方面で明らかにしてください。

回答

回答1
 地域の書店は、規模の大小に関わらず、書籍販売を通じて、地域住民のニーズに応え、地域の活性化に貢献するという役割を果たしていると認識しています。

回答2
 都は平成5年以来、都内の書籍小売業の現状を調査・分析し、中小企業経営白書において公表しています。
したがって、別途新たな調査をする考えはありません。

回答3
 都はこれまでも、中小企業に対する様々な支援策を実施していますが、地域的な需給状況を勘案した規制などを行う考えはありません。

回答4
 カードなどによるポイントサービスについては、公正取引委員会において、平成11年12月に「消費者利益に資するものと考えられる」という見解が公表され、また、平成16年10月には「ごく低率のポイントサービスまで禁止するのは一般消費者の利益を不当に害することになるおそれがある」という指摘がされています。
 流通については、市場における当事者間の取引にゆだねることが原則であるため、業界や国に働きかける考えはありません。

回答5
 都は、これまでも様々な状況にある中小企業のニーズに対応できるよう、必要に応じて業種にかかわらない多様な支援策を実施しています。

回答6
 外環道は、国土開発幹線自動車道の予定路線に位置付けられており、現段階においては国土交通省が事業予定者とされています。また、現時点では、道路公団から分割民営化された会社が、どの新規路線を整備するかは決まっていません。

回答7
 外環道は、現段階で整備手法は決まっていませんが、国土開発幹線自動車道の予定路線に位置付けられており、国がその責任において整備すべき路線です。

回答8
 外環道は、国土開発幹線自動車道の予定路線に位置付けられており、国がその責任において整備すべき路線です。

回答9
 国土交通省は、類似の道路整備事例を参考に、本線とジャンクションの事業費を約1兆2千億円、インターチェンジは約1千5百億円と推計しています。

回答10
 現段階で整備手法は決まっていませんが、採算性は整備手法と併せて検討すべきものです。

回答11
 圏央道は、一般国道の自動車専用道路として、直轄事業と有料道路事業の合併施行により整備が進められています。都の直轄事業負担金の割合は、道路法により3分の1と定められており、平成16年度末までに支払った総額は約858億円です。
 一方、国土開発幹線自動車道の予定路線である外環道の整備は、民営化された会社による有料道路事業とするかなど、整備手法については現段階では決まっていません。
 なお、高速自動車国道法では、国が直轄事業として整備する場合の都負担は4分の1と定められています。

回答12
 外環本線を地下化した場合の都市計画道路「外環ノ2」の取扱いについては、緑豊かな道路とするなど検討の方向を地元に示してきました。今後、本線の地下化の動向を踏まえて、国や沿線自治体などと検討を進めていきます。

回答13
 「外環ノ2」については、今後、本線の地下化の動向を踏まえて、国や沿線自治体などと検討を進めていきます。

回答14
 国土交通省は外環本線の立ち退き戸数を約1,000棟と公表しています。
 一方、上部街路としての「外環ノ2」については、現在、緑豊かな道路とするなど検討の方向を地元に示している段階で、今後、国や沿線自治体などと検討していくこととしておりますので、立ち退き戸数は推計していません。

回答15
 青梅街道インターチェンジの設置については、都民の利便性確保や時間短縮効果などの観点から検討し、地元の意向も踏まえた上で、国と都が平成17年9月16日に「東京外かく環状道路についての考え方」において必要と判断したものです。

回答16
 青梅街道インターチェンジの設置については、都民の利便性確保や時間短縮効果などの観点から検討し、地元の意向も踏まえた上で、国と都がその必要性を判断したものです。
 今後とも、この公表した「東京外かく環状道路についての考え方」に基づき、沿線自治体等の意見を聴きながら、国とともに計画の早期具体化を行っていきます。

回答17
 青梅街道インターチェンジを設置することにより、10分以内にアクセスできる地域住民が21万人増加すること、高速道路利用者の旅行時間が短縮されることなどの利便性の向上や環八、吉祥寺通りなど一般道路の交通量が減少することなどの効果があります。
 一方、同インターチェンジ設置による青梅街道の交通量は、将来も現在と同程度のものと推計しています。
 また、将来の青梅街道インターチェンジの流入・流出交通量は1日当たり約1万1千台と推計しており、杉並区及び練馬区住民の利用が約半数で、残り半分が西東京市など多摩東部地域住民の利用となるものと見込んでいます。

以上