過去のページ

文書質問趣意書 都立産業技術研究所は現行のまま直営で存続し拡充を

2006年3月30日 古館和憲(板橋区選出)

 都立産業技術研究所は、東京の産業活性化への貢献と都内の中小企業における持続的発展への貢献を目的に設立され、地域産業の活性化などにとって欠かすことのできない大きな貢献をしています。
 ところが、昨年12月、知事本局が発表した「重要施策及び平成18年度重点事業」のなかで、産業技術研究所(西が丘、駒沢、八王子の各庁舎)及び暫定施設である多摩中小企業振興センターを整理統合し、区部(臨海部)および多摩地域に、あらたな産業支援拠点を整備することを明らかにしました。これに対して、区をはじめ、産技研をよりどころとしている起業家や関係者から、存続を求める声が大きく広がっています。
 いうまでもなく、都立産業技術研究所墨田庁舎では、繊維関係を中心に繊維関連の依頼試験・開放機器利用を増やすことなどで存在感をたかめており、八王子庁舎では多摩地域全体の独立系製造業の工業集積地域の中心としての役割を発揮し、駒沢庁舎では、放射線応用技術による試験研究機関として、食品検査のなかの残量有害物質の検査などに役割をはたし、西が丘庁舎では、材料技術、加工技術、機械・装置技術、ナノテクノロジー、電子・電気、光・音響技術、情報・エレクトロニクス、資源環境福祉、ユニバーサルデザインなど幅広い分野で、私の地元板橋区や北区の製造業などの振興をはじめ、全都的にも大きな役割を発揮しています。

 ところが、今回「重点事業」では、「産業支援のあり方を見なおし、企業経営や技術開発をより効果的に支援するため、産業支援拠点の再整備をすすめるとともに、産学公連携や製品開発の支援等により支援体制の再構築を図る」との考え方を示しました。その最大のねらいが、都立産業技術研究所の「再整備」においていることです。すなわち、@06年度から産業技術研究所を独立行政法人化する、Aその後に、産業技術研究所を統廃合して研究所そのものを減らす。B産技研の役割を、これまでの「都内の中小企業における持続的発展への貢献」という根本目的を、「国際的に通用する」「将来有望な分野に重点を置いた支援をする」など、文字通り「企業との共同研究や人材交流」など、財界が求める研究所への変質がねらわれています。

 すでに2001年に独立法人化された国の技術研究所などでは、中期目標に効率化目標が据えられ、効率化係数として、運営費交付金が年率1%削減されることにより、外部資金などの獲得に力を注ぎ、基礎研究がおろそかになったり、短期的成果が期待できる研究しかやらなくなる。外部資金による民間企業とのより大きな一体化ということで、公的研究機関としての役割がゆがめられていることなどが指摘されてもいます。
 こうした問題点などを考えた場合、まず「独法化ありき」の都の姿勢は拙速としかいいようがありません。大阪府や神奈川県などでは、産技研などの研究機関についての独法化はより慎重な対応をしています。
 産業技術研究所に通いながら、ものづくりに光明をみいだしている起業家が「都立産業技術研究所のよいところは、勝ち組にも負け組みにも門戸を開放してくれていることだ」「零細だからこそ近くにあるのが救いだ」と語ってくれました。独立行政法人化になったら、「国際的に通用する」などの尺度のもとではじかれ、そのうえ「近くの産技研がなくなって遠距離にでもなったらいけなくなる」――いま都がやろうとしている計画は、中小企業にとっては文字通り、やっと芽吹いてきている芽を摘み取るようなものです。
 まだ、計画の段階であり再考する機会は十分にあります。

Q1、いまこそ、産業技術研究所の独立行政法人化も研究所の削減計画も中止すべきです。見解を求めます。

 だいたい02年8月と04年5月の2回にわたってだされた「中小企業審議会答申」は、中小企業家などが加わって作成したもので、「独法化」について言及していないばかりか、「区部や多摩の地域資源、強みを産業活性化に活用する」ことなど、試験研究機関の改善・充実要求が提案されており、注目に値いします。
 実際に、「産業支援施設の現状と産業支援ニーズに関する調査」では@最新技術情報を提供してほしいA異業種交流や他企業等とのコーディネートを支援してほしいB研究開発、試作・評価、販売の各段階における支援をして欲しいなど、中小企業者の要求も多様にだされていたのです。
 都の責務は、こうした中小企業者の声に応えることこそ、何よりも求められています。

Q2、その要は、産技研の予算を増やすこと。とりわけ研究費を増やすことが急務です。現在の予算の6割が建物の維持管理費に支出されており、中小企業からの依頼試験などに十分にこたえられ、さらには研究所の生命である経常研究、基礎研究がしっかりと保障されるように増額する必要があると考えるが、どうか。

 私はこれまで都議会で、数回にわたって、産業技術研究所を核とした地域産業の振興などを提案してきました。今回のこの独法化の方向や、産技研を減らすなどの方針に対して強い憤りを覚えています。
 地元板橋区に隣接する北区西が丘にある都立産業技術研究所では、先述した八つの技術分野を有する研究機関として、年間のべ4万5千件近くにのぼる業者や企業からの依頼試験に対応しているなど、特色を生かした頼もしい存在となっています。
 その共通の特徴は、相談者とのコミュニケーションのなかで、研究員の能力と経験が十分に発揮され、中小企業者のニーズに応えるなど、多くの重要な研究成果に結びついていることです。
 しかし、今回、都がしめした、産業技術研究所西が丘支庁と駒沢支庁を廃止して、臨海部に新設の産業技術研究所をつくるとする構想は、当該区の北区では「都立産業技術研究所の存続についての要望」が知事宛に提出され、板橋区でも、重点事業で都が「西が丘支庁の移転可能性」をふれたことに懸念を表明するなど、歓迎されてはいないのです。北区も板橋区も、中小企業のまちとして、技術相談や依頼試験を始め多くの支援がおこなわれるなど、区内産業にとって不可欠で、身近な産業支援施設として根づいているからです。
 板橋、北両区には精密機器技術の集積があり、この高度な技術を持つ企業や研究機関、人材など地域資源を活用して健康・医療・福祉関連産業の活性化を図ることをめざして、東京都、北区、板橋区が共同で、KICCプロジェクトが推進されていますが、これも産技研がお膝元にあってのことです。
 しかも、城北地区は製造業をはじめとする中小企業の街でありながら、産業支援施設は産業技術研究所一つだけであり、この研究所がなくなることは、東京都の産業支援施設がまったくなくなってしまうことになります。
 板橋区が毎年開いている「産業展」で受賞している、ある製造業者は、西が丘に産業技術研究所があることで、新製品へのヒントと挑戦しようというやる気を与えてもらっている。また、産技研の役割は、異業種交流の拠点としての大きな役割を担っていること。城北地域など、地域ごとにあるからこそ何度も足を運べることーーこれこそが都の大きなサービスだと語ってくれました。
 また、私と話をした中小企業者の多くが「なぜ、臨海部に産業技術研究所なのか。中小企業があるわけでもない。ニーズもないのに・・・」「これだけ精密機器技術など製造業が集積しているところからは撤退して、臨海部に統合だなんてどう考えても納得できない」などの声があがっています。

Q3、都は、この疑問にたいして、きちんと答える義務があります。なぜ臨海部に産技研をもっていく計画なのか、お答えください。

Q4、歴史もあり、中小企業や地元自治体からもその役割を評価され、中小企業も息づいてきた、それが地域の雇用創出にも役立っている。こうしたなかから、世界に通用する機器の開発がされている企業も生まれています。その機軸に産業技術研究所西が丘庁舎がある。これはどこでも共通した特徴です。今ある産技研を存続させ、拡充することこそ都の役割ではありませんか。西が丘庁舎の建て替えがせまっていることなどが、廃止の理由などにはならないことは役割の大きさからみて自明のことであり、存続を強く求めます。

回答

回答1
 平成18年4月に、産業技術研究所を地方独立行政法人としたことにより、法人自らの判断による弾力的な事業執行が可能になりました。また、外部資金を自らの収入として活用できることや、組織・人員管理を自らの判断で行えることなどにより、中小企業二一ズ等に応じた、効率的で効果的な運営が可能となるため、今後も地方独立行政法人として運営していきます。
 一方、産業技術研究セイターの西が丘、駒沢、八王字の各庁舎は、施設や設備の老朽化により維持管理費が増大するなど、早急な建替えや新たな設備の整備が必要となっています。また、中小企業の二一ズに的確に対応するためには、各庁舎の重複機能などを整理統合し、より高度な技術支援体制を構築することが喫緊の課題となっています。以上のことから、産業支援拠点の再編整備を中止する考えはありません。

回答2
 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターに対する平成18年度の運営費交付金等にっいては、中小企業の二一ズや最新の技術動向等を踏まえ、最新の試験研究に必要な機器整備費を大幅に増額いたしました。これにより依頼試験や研究事業の充実が図られます。
 なお、地方独立行政法人は都の予算制度等の制約を受けることがなくなることから、外部研究資金を容易に受け入れることが可能となり、中小企業二一ズに応じた、よりスピーディーで活発な研究活動ができるようになります。

回答3
 区部の新たな産業支援拠点の整備については、中小企業の経営者や中小企業団体の役員、大学や研究機関の研究者などからなる検討委員会を設置し、現地での建替えを含め、複数の侯補地について慎重に検討していただき、江東区青海地区が適しているとの報告をいただきました。
 この報告に基づき、都として検討した結果、区部の新たな産業支援拠点の立地場所として、江東区青海地区が最も優れているものと判断しました。

回答4
 高度、多様化する中小企業の支援二一ズに対応するためには、新たな産業支援拠点の整備による技術支援機能の向上が必要不可欠であり、そのあり方に関して、検討委員会において検討していただきましたが、現地での建替えには長期間を要することや改修中の試験・研究に支障があるなどの問題点があり、新たな産業支援拠点の立地場所としてはふさわしくないとの報告を検討委員会からいただきました。
 この検討委員会の報告を踏まえ、都として検討した結果、中小企業への技術支援を早期かつ円滑に高度化していくためには、江東区青海地区での産業支援拠点の整備が最も優れていると判断しました。

以上