過去のページ

文書質問趣意書 東京のみどりと水について

2006年3月28日  松村友昭(練馬区選出)

 戦後の高度成長期を経て、今日にいたる都市開発のもとで、東京のみどりと水環境はおおきく後退し、年間平均温度の上昇、熱帯夜の増加などヒートアイランド現象や、集中豪雨をはじめとする異常気象をもたらしています。地球温暖化をふせぎ、都民が快適に生活を営む上で、みどりと水環境の回復は待ったなしの課題となっています。
 東京都におけるみどりは、東京一極集中のもとで都市化と周辺部の宅地化がすすめられるもとで、急激に減少しました。このため、東京都は、1972年に「東京における自然の保護と回復に関する条例」を制定し、その2年後には、「東京における自然の保護と回復の計画と「みどりのネットワーク構想」などを策定することで、みどりと自然の回復にとりくみはじめました。その後、1981年には20年間の長期計画として「東京都緑のマスタープラン」を策定しました。そのなかでは、「東京の街づくりに当たって緑地を都市の構造として位置づけ」ること、「区部を含め市街地化のすでに進出した地域では、公園の絶対量の不足が問題であり、配置の理想より計画量の確保が急務である。このため、工場跡地、筑波研究学園都市移転跡地、基地跡地等の大規模跡地、また企業厚生施設等で緑地的価値の高い施設を積極的に、公園・緑地として位置づけ、将来に備える必要がある。」などと、都として公園や緑地の確保に取り組むことがうちだされています。さらに、1984年には、緑の量の倍増をめざす、「東京都緑の倍増計画」が策定され、公園を2倍にすることを目標に、都民一人あたりの公園面積を6uとするよう公園整備をすすめることが明らかにされました。
 また、水環境についても、「水系沿いを緑化することにより、河川の親水化や湧水機能の向上を図る」「都民の日常的な生活圏や広域の生活圏に応じたさまざまな公園・緑地を体系的に整備し、水と緑のネットワークづくりをすすめる」など、戦略をたてて取り組むこととされたのです。丘陵地の自然環境の保全と活用をはかる「みどりのフィンガープラン」や「崖線保全計画」も立てられました。
 これら計画は、公園面積が欧米と比べて低い水準の6uとされたり、開発を規制する視点が欠けているなどがありますが、それでもみどりと水環境を保全する行政の姿勢を示すものとなっていました。
 このような方向が転換を迎えたのは、1985年のプラザ合意以後の、規制緩和と都市開発優先の政策によるもので、これ以降、みどり行政はおおきく後退させられ、東京からみどりがどんどん失われていくことになったのです。
 その後、石原都政のもとで「緑の東京計画」がたてられましたが、その内容は、都が緑の計画をもってその確保と保全を推進していこうという立場を後退させ、「都、都民、企業、区市町村がそれぞれの役割分担」が強調され、みどりの位置づけについても、これまでの緑地・公園から、街路樹や河川、水路の面積を加えた、「みどり率」を政策指標に用いて設定するとされました。結果、都の役割は、幹線道路などの広域的な骨格となる緑の保全、創出していくこと、緑の達成に必要な仕組みづくりや働きかけ、誘導策などを講じることなど、消極的なものにされることになったのです。
 こうしたもとで、都内では、葛飾区の三菱製紙跡地、杉並区の三井のグランドなど大規模な工場跡地やグランドなどの土地が、あいついで大規模商業施設やマンション等の用地として転換され、開発がすすめられています。さらに私の地元、練馬区石神井公園に隣接する日本銀行石神井グランド、住友銀行グランドなどの周辺の開発計画がすすんでおり、この保全がいそがれています。

Q1 都は、「東京都緑のマスタープラン」で、工場跡地や企業の厚生施設等を積極的に、公園・緑地として位置づけ、将来に備える必要があると方針を出していますが、この立場に立ち返って、これらの貴重な土地空間を、都市計画公園として整備していくことを求めるものですが、見解を伺います。

 都は、本年1月に「みどりの新戦略ガイドライン」が策定しましたが、 石原知事は、この計画について、施政方針で、「東京が都市として存続し続けるための新しい戦略プラン」とし、「これまでの公園整備の手法に加え、企業のグランドや屋敷林などの民有地を活用した『民設公園』制度を創設し、公共と民間のみどりが一体となったネットワークに広がりと厚みを増していきたい」と説明しています。これは石原知事がすすめる「都市再生」の名のもとに、規制緩和をはかり、これまでのみどり行政をさらに後退させるようとするもの言わざるを得ないものです。
 知事が提案している「民設公園」は、工場跡地や学校グランドなど大規模な土地を活用して、ビル開発をすすめるものと一体、むしろこれらの土地を民間活用することを促進することが目的として考えられたものです。本来、都市計画公園は都民誰もが利用し、憩うことが出来る空間でなければならず、民設公園はなじみません。

Q2 都市計画公園は、公共が土地を確保して整備することが不可欠であると考えますが、見解を伺います。
東京の水の再生をはかる上で、近年首都高速で覆われた河川の再生が話題になっていますが、莫大な財政をかけずにもまず手がけることができる、東京の水路の復活などを積極的に手がけるべきではないでしょうか。

 練馬区は、かって湧水が湧き、それを源流として、多くの水路が流れていました。時代の流れの中で、その多くが暗渠化されています。

Q3 そこで、練馬区のみならず、東京の水路の復活のための調査を行い、その再生をすすめること、さらに、すでに、調査がおかなわれ、その再生が可能とされている、千川上水の青梅街道から東側の復活に早急に着手することを強く求めるものですが、それぞれ見解を求めます。

 多摩地域には、オオタカが棲息する里山や都民の憩いの場としての自然公園、生産緑地などなど、貴重な自然とみどりがまだ多く残されています。
 これらのみどりは、都民が健康で文化的な生活を営むうえでも、持続可能な都市づくりをすすめるうえでも欠かせないものでありますが、その自然とみどりが、宅地開発や市街地化の圧力のもとで、次々と失われていることは、重大です。
 例えば、日野市にある多摩丘陵公園などの自然公園が宅地化の嵐に巻き込まれ、貴重な緑地がつぎつぎと剥ぎ取られていくことは、本当に心を痛めずに入られません。自然公園は、いったん開発の手が入ると、その自然を取り戻すことは、非常に困難です。

Q4 都立多摩丘陵公園などの緑地の開発を抑制するため、自然保護条例の強化など、都として何らかのシステムをつくることを提案するものですが、見解を求めます。

 都は、かってJRが、宅地開発するために、地上げした奥多摩の横沢入り地域を買い取り、自然公園として整備をすすめています。同公園が、都民の憩いの場としてたくさんの人に利用されることを願うものです。同時に、多摩地域には、横沢入り以外にも、オオタカが棲息する稲城の南山地区、八王子の川口など、里山がまだまだ残されています。これらの地域も開発の危険に直面しており、いま、手立てを打たないと取り返しのつかないことになりかねません。

Q5 こうした里山や屋敷林などを保全を進めるために、保全緑地の公有化予算を抜本的に拡充することを求めるものですが、見解を伺います。

回答

回答1
 都市計画公園・緑地は、将来にわたり、良好な都市環境を確保するために必要な施設として都市計画決定されています。
 新規の都市計画公園の配置については、みどりの新戦略ガイドライン」の「みどりの拠点と軸」の形成のあり方を踏まえ、地域状況や土地状況などを考慮していきます。

回答2
 事業化を必要とする都市計画公園・緑地は、約2,600ヘクタールにも及び、その整備には、相当の期間と多大な費用を要することから、公共による計画的な整備だけでなく、民間の活力を活用した整備が必要です。
 そのため、これまでの公共が主体となった公園整備の手法に加え、企業グラウンド等の民有地を活用した民設公園制度を創設し、公園の整備促進を図ることとしました。

回答3
 水路については、原則的に区、市が管理しており、水路の復活などその形状を変更する場合は、管理者がその現状や影響などを踏まえて検討すべきものです。
 千川上水の青梅街道から東側の暗きょ部については、都が特例的に管理しており、その上部は地域の主要な幹線道路である都道椎名町上石神井線(通称千川通り)等として利用されているため、水路としての復元は困難です。

回答4
 都は、自然公園内の開発行為について、東京における自然の保護と回復に関する条例に基づき、市街化調整区域と同様の規制を課すなどし、緑地を適切に確保するよう指導しています。
 今後も、開発を行う事業者に対しては、自然環境に配慮をするよう指導を徹底していきます。

回答5
 平成17年度、東京における自然の保護と回復に関する条例に基づき、あきる野市の横沢入を初めて里山保全地域として指定し、丘陵部の貴重な自然を保全することとしました。
 今後とも、保全地域内の民有地については、予算の効率的な執行に努めながら、適切に公有化を進めていきます。

以上