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文書質問趣意書

2006年6月19日      
小竹ひろ子(文京区選出)

製靴産業を中心にしたものづくり支援について

 東京の製造業は工場数で、全国の製造業の1割を占め全国1位です。製造品出荷額は6%、付加価値額7%を占め、伝統産業から、半導体製造など先端産業まで多様な業種で構成されています。また、1工場当たりの規模が小規模で、その小規模企業がすぐれた技術をもって多数集積する特徴をもっています。
 特に、靴・カバン・ベルト等皮革産業の集積は、全国の工場の4割が集中。出荷額でも全国の1/3以上という東京を代表する地場産業で、台東・荒川・葛飾・足立・墨田等城東地域に集積しています。中でも靴の製造業が集中する台東区では、区内工場の24%、製造出荷額でも30%を占める区内最大の業種です。
 しかし、近年の輸入制限の段階的撤廃などにより、輸入品の急激な増加で、工場数の減少が激しくなっており、この集積を生かしたものづくりを支援し、製造業が元気になることが、東京の経済を活性化する道につながると確信するものです。
 こうしたもとで、業界では、生き残りをかけて、ニーズに即した高付加価値商品の開発、デザイン、機能、素材開発、オーダーメイド品の受注など、生き残りをかけたとりくみが始まっています。また、靴づくり職人をめざす、若者の増加も見られるというのも、この業界の注目すべき特徴です。
 都は、皮革産業にたいする業種別支援をおこなっていますが、こうした現状を打開するためにきめ細かな支援策として拡充発展させることが急務です。

 最初に、靴づくり職人、製靴業で働く人たちのスキルアップ支援についてです。
 スキルアップで重要な役割を果たしているのが都立技術専門校台東分校です。

Q1 製靴産業に働く人たち、工房を開いている製靴職人の人たちが技術支援を受けられる能力向上訓練のPRを強めること。靴職人のCADなどの技能訓練の要望などに答えられるよう拡充すること。

Q2 現在、第8次職業能力開発計画づくりがすすんでいますが、雇用情勢、製靴の技術専門校への応募倍率が非常に高い状況をふまえ、現状のコースとともに靴づくり職人をめざすクラフト技術習得の要求に応えるための2年制コースをつくるなど、その拡充を検討すること。都立技術専門校台東分校について統廃合、縮小しないこと。
 スキルアップで若い人たちから非常に歓迎されているのが、欧州への研修事業です。
Q3 都と東京製靴協業協同組合が共同して募集していますが、募集が年間2人であったり、工房を開いている人などは対象外であったり、知らない人もいます。製靴職人をめざす若者が海外への研修ができる事業を拡充すること。

 次に、急増している靴づくり職人をめざす若者の創業・自立支援についてです。
 最近、靴づくりに関わる若者が集まって靴工房を運営したり、製靴科をつくり募集する専門学校が急増、東京都技術門校の台東分校も、7〜8倍の応募倍率など、靴づくり職人をめざす若者が増加しています。しかし、開業、一人前の職人として自立できるまでは、大変な困難があります。
 その一つが資金確保です。靴づくりを勉強する民間の専門学校の学費は、年間100〜200万円です。卒業して工房を開く場合、初期投資として、工房の確保、ミシン1台30万円など設備投資、立ち上がり資金の確保が必要になります。
Q4 勉強している間の負担等も考えると、できるだけ早く自立できるように支援することは、産業活性化に大変有効です。どうか。
 地元の方が、浅草で靴関連産業から廃業したビルを、オーナーの協力を得て、製靴関連の工房等に利用するためのインキュべートオフィスとしてオープンしたところ、その説明会には、若い人たちが30〜40人が参加してきたとのことです。現在、そこは10室全て入居しています。
 そこで、次のような支援の仕組みの確立を求めるものです。それぞれ答弁を。
Q5 業界では廃業、倒産した靴関連会社が多くでています。製靴は、中古の機械でも、充分靴づくりは可能であるといわれています。事実、開業した若者中には、ミシンなどを融通してもらって助かったという人もいます。廃業・倒産した会社の設備を、開業する際に有効活用できれば双方が助かります。創業者と廃業者の機械設備の再利用などを支援するマッチングシステムの要望にこたえること。
Q6 廃業した企業・倉庫を、低家賃で工房、共同工房、工場アパートなどとして提供することへ支援すること。都としてこうした施設を、インキュべートオフィスとして活用できるようにすること。
Q7 靴づくり職人をめざす若者たちが、製品、修理など共同受注できるようなれば、自立への支援になります。こうした共同組織の立ち上げに支援すること。
Q8 創業、資金繰り、販路拡大など経営的な支援、技術的なアドバイス支援など、一人前の靴づくり職人をめざす若者へ専門家派遣の支援体制をつくること。
Q9 若い人たちがつくった製品を展示できる、常設の展示場をつくること。

 次に、最近注目されている、健康のために一人一人にあった靴をはいてもらおうというとりくみと整形靴についてです。
 足の裏側が曲がってしまい、歩行に影響が出る。正常に歩けるようにするためには、矯正が必要ですが、そのために整形靴が必要になります。骨、腱、筋などの状態を把握した上で、正常な形で立ち、歩行できるように処方した靴です。こうした整形靴が必要な場合は、左右の脚の長さが違う場合、糖尿病による足のトラブルがある場合、関節リュウマチ、外反母趾、扁平足、爪の変形による歩行に困難が生じるなどのケースもあります。
 そうした靴をつくる職人として、ドイツでは整形靴マイスター、アメリカではポダイアトリストとペドージスト、オーストリア、スイス、フランス、イタリアなどそのための、専門家がいます。
 ところが、日本には義肢装具士、理学療法士、靴店が整形靴にかかわっていますが、欧米のような専門の公認の職士はおりません。足のトラブルに悩む人が増えているのですから、1日も早く改善されることが望まれます。足と靴と健康協議会がつくったシューフィッター制度が、ようやくデパートなど靴の販売業者には普及し、経済産業省も注目し始めているところです。
Q10 消費者からも歓迎されているシューフィッターの資格について、製靴業者が足と靴と健康の関係を学び普及できるように支援すること。
Q11 欧米各国のような整形靴、および整形靴マイスター制度を普及するために、国内でもっとも製靴業者が多い東京が国に先駆けて、そのしくみづくりに足を踏み出すこと。
Q12 販路拡大も急がれている製靴業界では、安い靴の輸入が増加する中、技術のすぐれた製品の販路拡大が課題となっている。それに大きな役割を果たしているのが、展示会です。業界などがおこなう展示会の開催などに支援を求めるものです。

 次に、品質の良い靴づくりにかかせない、皮革技術センターの拡充についてです。
 皮革技術センターは、国内唯一のはきものの試験研究機関として、輸入品に負けない靴をつくる上で、その役割、需要は高まっています。依頼試験、受託試験とも、年度当初予定の2〜3倍になっています。それは、消費者の信頼をえるために、成績書を発行する依頼試験が急増しているからです。
 一方、大学等には製靴にかんする学問、技術分野がなく、製靴専門の研究者がいません。製靴の専門家が相談にきたり、依頼試験などの要望にこたえることのできる、皮革技術センターの研究者が求められています。また、依頼試験などについても、学問的知識と靴技術知識の両方が必要とされています。
Q13 研究者は、経験を積んでいく中で、製靴産業の要求に応えられる研究者になっています。後継者をどう育成するかは、目的意識的に取り組まなければなりません。専門研究者の育成を系統的に取り組むよう求めるものです。
 依頼試験は、規格化された試験をおこなうものですが、近年規格化された試験に当てはまらない依頼試験も増加してきています。そのような受託試験は、予定の2倍を上回る状態です。しかし、センターでは、その対応におわれ、試験所としての経常研究が充分すすんでいないという問題が起きています。
Q14 製靴産業の発展のためにも、依頼試験、受託試験とともに、経常研究に取り組めるよう皮革技術センターの研究者・機械施設の拡充を求めるものです。

 最後に、製靴業界全体への支援策の提案についてです。
Q15 産業貿易センターは、皮革履物産業の振興に大きな役割を果たしてきました。その建替えにあたっては、技術専門校台東分校の拡充、台東区産業研修センター、皮革技術センターなどの施設を統合し、新たなインキュベーション施設、皮革資料博物館や地域地場産品の直売店などを含めた、皮革履物産業振興センターとして整備すること。
Q16 都内の製靴産業の活性化にあたって、東京都、製靴産業が集積している台東区、足立区、墨田区など城東地域の自治体、業界や関係者などで、地場産業振興策を検討する協議の場をつくること。
Q17 製靴業支援関連する予算を拡充するとともに、これからつくる産業振興ビジョンで製靴業支援を柱に位置づけ、振興策を拡充すること。

以上

A1 現在、製靴業の能力向上訓練は、14科目、定員延ペ290人を設定し実施しており、その募集に当たっては、業界団体等を通じて事業所等へパンフレット・チラシを配布するほか、団体の機関紙や業界紙などへの掲載、区の広報紙を活用するなど広くPR を行っています。
 また、能力向上訓練は、産業界全体の生産技術実態や現場要望等を踏まえて実施しており、現在は、製靴の生産現場が特に必要としている生産工程ごとの知識・技能の習得に、重点的に取り組んでいます。

A2 職業訓練の実施に当たっては、産業界や求職者のニーズを踏まえ、施設設備の状況等を勘案しながらコース設定を行っており、台東分校の製くつ科については、コースの新設等の拡充は考えていません。
 なお、技術専門校については、施設の老朽化の状況等を踏まえ、今後も適正配置を図っていきます。

A3 都では、皮革産業技術研究員派遣事業を実施するに当たっては、都内の事業所に2年以上勤務する者を対象として広く公募を行い、選考試験を実施して派遣する研究員を決定しています。
 また、派遣期間が3か月と長期にわたるため、事業所の理解と協力が不可欠なことから、選考に当たっては勤務する事業所の推薦を受けることとしています。
 今後とも、現行制度で事業を実施していきます。

A4 都の制度融資では、「創業融資」のメニューを設け、創業前及び創業後の資金需要に応えています。

A5 東京都中小企業振興公社で毎月発行している、中小企業向け情報誌「アーガス21」において、公社に登録している企業が機器の売却等を希望する場合には、その情報を掲載して、会員企業に提供支援しています。
 また、中小企業リバイバル支援事業においても、相談企業の要望があれば中古機器取扱団体等への紹介も可能です。

A6 区市町村が、廃業した企業、倉庫を取得・改修して、インキュペート施設として活用する場合には、「新事業支援施設整備費補助事業J により、支援しています。

A7 共同受注や設備の共同利用など、中小企業が協働して効果的、効率的な事業展開を図る仕組みとして協同組合制度があり、都としては、協同組合の設立、運営に関する指導などによって中小企業の協働の取組を支援しています。
 なお、平成17 年度から「ものづくり新集積形成事業」を開始し、中小企業者の連携グループによる共同受注や共同開発などめ共同事業を支援しています。

A8 都では、専門的な指導・助言が必要な事業者に対しては、東京都中小企業振興公社の専門家派遣制度により、各種専門家を派遣しています。そのほか、東京都中小企業振興公社を通じて、創業、資金調達等の各種相談事業や、デザイナー活用支援事業、中小企業ニューマーケット開拓支援事業などの支援事業を実施するとともに、皮革技術センター台東支所では、製靴に関する技術相談や情報提供等を実施しています。

A9 製靴産業に対しては、都はこれまでも販路開拓のため、「アジア・パシフイック・レザー・フェアj や「東京シューズグランドエキジビション」など展示会出展を支援してきました。
 また、皮革技術センター本所及び台東支所の常設展示場において、革靴の展示を行っています。

A10 平成17年11月に開催した、皮革技術センター台東支所主催の皮革関連ゼミナールにおいて、シューフイッターに関するテーマを取り上げています。

A11 質問事項 整形靴は、各個人の歩行障害などに対応して医療的処置を施した靴です。日本においで、これらの靴の製作は、欧米と同じように、国家資格を持った義肢装具士が、医療行為の一環として医師の処方のもとに行うこととなっています。
 なお、生産技能の向上には技術専門校でのオーダーメイド講習の活用もできます。

A12 製靴産業に対しては、都はこれまでも販路開拓のため「アジア・パシフィック・レザー・フェア」や「東京シューズグランドエキジビション」など国内外の見本市への出展支援を実施してきています。

A13 皮革技術センター台東支所において、今後とも製靴産業からの要請に応えられるよう、研究者の育成に努めでいきます。

A14 皮革技術センター台東支所では、依頼試験や技術相談とともに、支援機能の向上等を目指して、経常研究にも取り組んでおり、平成18年度も、2つのテーマで研究を行う予定です。
 機械設備については、これまでも計画的に整備し、充実を図っています。

A15 現在、産業貿易センターの建替えを行う予定はありません。

A16 都では、各区や製靴産業事業者、東都製靴工業協同組合等と必要に応じて情報交換を行っています。

A17 都は、これまで「アジア・パシフィック・レザー・フェア」や「東京シューズグランドエキジビション」などの展示会出展や皮革産業技術研究員派遣事業のほか、制度融資など多様な支援を行っています。

以上