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文書質問趣意書

少子化対策について

2006年6月19日      
かち佳代子(大田区選出)

 2005年に日本はついに人口減少を記録しました。つづいて、去る6月1日に厚生労働省が発表した合計特殊出生率は、全国1.25、なかでも東京都は、戦後最低の0.98を記録し、全国で最低最悪の事態であり、衝撃が広がっています。
 政府はこれまでも、「少子化」対策をかかげてきましたが、その効果はでるどころか、ますます下降の一途をたどっています。対策の抜本的強化は急務です。
 ところが石原知事は、新たな少子化対策の検討にも着手しようとしないばかりか、今定例会でのわが党の質問に対し、「必要な施策はすでに実施しております」という、深刻な現状をまったく認識していない答弁を行いました。

Q1 政府でさえ、少子化対策について、第2次ベビーブームの年齢層の厚い世代を対象に今後、5年以内に、緊急かつ集中的な対策をとる必要があることを強調しています。都として、少子化対策の緊急性について、どう認識していますか。

Q2 全国的な少子化の状況をみると、合計特殊出生率が低いのは東京をはじめとした大都市部です。大都市の少子化に歯止めをかけることなしに、全国的な少子化に歯止めをかけることはできません。若者が全国から集まる大都市で、深刻な少子化が進行しているのです。こうした、大都市における少子化対策の特別の重要性を、都はどう認識しているのでしょうか。

Q3 少子化対策のためには、福祉・保健・医療、雇用・労働・中小企業、教育、住宅など、全庁的な推進体制の確立が必要です。たとえば、知事または副知事を責任者とした「少子化対策本部(仮称)」のような、政府や経済団体への働きかけなどもふくめ権限のある、少子化対策推進の全庁的体制を創設・強化すべきと考えますが、答弁を求めます。

 具体的対策の第一に、経済的支援について伺います。
 小泉内閣メールマガジンのアンケート結果(05年7月)でも、少子化に歯止めをかけるための政策の第1位が、「経済的支援の充実」(70.1%)となっています。内閣府が行った「少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査」(05年3月)でも、経済的支援措置(保育・教育費への補助、医療費補助、児童手当など)が第1位(69.9%)です。

Q4 このように、どの調査をみても、圧倒的に経済的支援を求める要望が高い結果がはっきりしていることを、どう受け止めていますか。経済的支援の拡充を、少子化対策の柱のひとつにすえることが重要だと思いますが、認識を伺います。

 本年5月25日に少子化対策について、東京都をはじめ9県の関東地方知事会合同で「国において現物給付方式による乳幼児医療費公費負担制度を早急に創設すること」「早急な実施が困難な場合は、少なくとも、地方単独事業として現物給付方式により実施されている乳幼児医療費助成制度に対する国民健康保険国庫負担金の減額調整措置を直ちに廃止すること」などを要望しました。
 猪口少子化担当大臣は「減額調整措置(ペナルティ)については、大変な力仕事ではあるが、この措置の廃止をめざしたい」と、報道インタビューに答えています。
 このインタビューで記者は、政府・与党が検討している方針にたいし、「地域格差がある乳幼児医療費の無料化など、もっと確実に子どもに届く経済支援の方法があるのでは」と質問し、これに答えたものです。
 すでに全国のすべての都道府県で、きびしい財政をやりくりして単独事業として乳幼児医療費助成制度を実施しているのですから、国が責任をもって制度化し、財政負担するのが当然のことです。
 東京都議会は、すでに1998年第3回定例会において、わが党の提案をうけ「乳幼児医療費助成制度の創設に関する意見書」を採択し、政府に送付しています。その後、都の対政府要望書にも、乳幼児医療費助成制度の創設がもりこまれましたが、石原知事の下で、削除されたままです。

Q5 いま改めて、東京都として政府に乳幼児医療費無料化の制度化を働きかけていただきたいが、どうか。

Q6 また、地方単独事業として現物給付方式により実施されている乳幼児医療費助成制度にたいする国民健康保険国庫負担金の減額調整措置は、ただちに廃止するよう政府につよく要請すべきです。これにより東京都と区市町村でそれぞれいくらの減額調整が行われているのか金額もあわせて、答弁を求めるものです。

Q7  同時に、18区2町にまでひろがっている小学生や中学生の医療費無料化、乳幼児医療費助成制度の所得制限撤廃に、都としてふみだすことをつよく求めるものです。法改定により、医療費負担3割から2割への軽減措置が、これまでの3歳未満から就学前に拡大されるため、乳幼児医療費助成の都の財政負担は、約23億円軽減されるとの試算が、3月の予算委員会において明らかになっています。この財源も使って、所得制限撤廃や小中学生の医療費無料化に、ぜひふみだしていただきたい。所見を伺います。

 妊婦健診や、出産時の経済的負担の軽減も、切実です。
 近年の出産費用は平均48万円。経済基盤の弱い若いカップルにとって、出産にともなって、50万近いまとまった金額を用意することは大変です。港区では、06年度から、出産時の経済的負担をへらすため、50万円を限度として、国保組合からの出産一時金35万円と、実費の差額分を補助する制度にふみきりました。港区では医療機関との協力で受領委任払い制度や、貸付制度もおこなっています。

Q8 子育ての第一歩を、安心してふみだすことができる支援策として、たとえば「妊婦検診と出産無料制度」など、妊婦健診の負担軽減、出産育児一時金の支払い手続きの改善に取り組むことを提案するものです。お答え下さい。

 子どもを何人ほしいか聞くと3人以上という人が多いのに、実際には経済的負担が大きな壁となっています。
 福井県は、沖縄県に次いで合計特殊出生率が高く1.47で、前年の1.45から上昇しています。ここでは、3人目以降の子どもについて、生まれる前の妊婦健診費から、3歳に達するまでの医療費と保育料を原則無料にする「ふくい3人っこ応援プロジェクト」を推進しています。
 また、名古屋市では、第3子以降について、月額2万円の手当てを支給するか保育料の無料化など、全国の多くの自治体が工夫をこらした経済支援に取り組んでいます。
 海外に目をむけると、出生率の回復で注目されているフランスは、とりわけ第3子以降の出生支援を中心に強力な家族政策を推し進めてきたことが注目されています。実際に、フランスと日本の大きな違いのひとつは第3子の出生動向で、フランスが維持・回復しているのにくらべ、日本では低下が著しいことが指摘されています。

Q9 第3子以降の子育て費用の負担を軽減する支援を思い切って拡充をすることを提案するものですが、どうですか。

 第二に、働き方の改革です。
 労働法制の規制緩和や企業の人件費抑制策の下で、パートや派遣などの非正規雇用社員は増える一方です。今や働く人の3人に1人を占め、若い世代では2人に1人が非正規雇用です。非正規は正規に比べ、収入が低く、不安定です。厚生労働省の調査でも20〜30歳の若者を対象に02年に行った調査では、正社員の男性は4割が結婚していたのに、非正社員は1割に満たない現状です。増えつづけている非正規雇用の若者は、そもそも結婚して子どもを産む育てることができる経済的基盤がないのです。
 一方、正規社員は30代を中心に長時間・過密労働を余儀なくされ、働きたい女性にとっても第T子が生まれると、7割の女性は職場を去っています。会社に残っても、なかなか2人目を産める環境ではないのが実態です。
 このような現状の打開は急務です。慶応大学の樋口美雄教授も「社会の土台を直さなければだめだ。公的保育の支援を強化したり、仕事と家庭の調和の努力をしている企業を助成する道もある。企業にとっては、少子化対策は短期的には、コストがかさむわけだから、政府が、音頭をとって支援していく必要がある」と主張しています。
 次世代を育もうとする若い世代への経済的支援とともに、仕事と生活のバランスがとれた働き方が土台になければ、出生率の回復は望めません。

Q10 育児休業や育児期の短時間勤務制度の充実・普及、残業の抑制、正規社員と非正規社員の均等処遇をはじめ、仕事と子育てが両立できる働き方の改革を推進するために、都としても全力をつくす必要があると思いますが、どうですか。

Q11 働き方の改革をすすめるために、経済団体や労働団体、都をはじめとした行政機関等が一体となった、たとえば「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の両立)推進協議会(仮称)」のような場をつくり、両立支援や働き方の改革をすすめる「東京ルール」の確立などの合意形成や、共同の取り組みを推進することを提案するものです。見解を伺います。

 秋田県では子育て支援課に6人の専任職員をおいて、300人以下の企業15,000社から2,000社を抽出して、アンケートをとり、これまでに550社訪問して1割の企業に「子育て支援推進計画」を立ててもらう目標で取り組み、49社で策定しています。
 静岡県でも、国と共同で300人以下の企業にたいしても、行動計画作成への協力をもとめ、啓発・啓蒙に努めています。
 また、秋田、鳥取、岡山、山口、佐賀の5県は、女性登用や育児・介護休業制度の導入、子育て支援をすすめる建設事業者等にたいし、入札参加資格等における優遇制度を実施しています。福島県は、子育て支援をすすめる中小企業を認証し、低利の融資、入札時の優遇措置を実施しています。
 都内でも千代田区、文京区は、次世代育成支援行動計画を策定した中小企業に奨励金や、補助、低利融資を実施しています。

Q12 都としても、圧倒的多数を占める300人以下の中小企業にたいし、「次世代育成支援行動計画」作成への具体的な支援を実施するとともに、仕事と家庭が両立できる働き方の改善に取り組む中小企業について、公契約や融資における優遇措置などを行うことを提案するものです。お答え下さい。

 今年度から国の中小企業への支援策として、はじめて育児休業を取得した企業に対し、100万円の補助金制度ができましたが、「半年以上休むこと・その後半年以上働くこと」が条件となっており、しかも休業補償は給与の4割という点では、あまりにも不十分です。

Q13 この育児休業補償制度を、実践的に活用できるよう拡充を国に求めるとともに、都独自に拡充することを求めるものです。所見を伺います。

Q14 従業員301人以上の企業の「次世代育成支援行動計画」については、公表することを、国につよく要請していただきたい。

Q15 また従業員301人以上の企業について、都独自に、男女平等参画基本条例の第13条2項の規定(知事は、男女平等参画の促進に必要と認める場合、事業者に対し、雇用の分野における男女の参画状況について報告を求めることができる)も積極的に活用し、次世代育成支援行動計画、および両立支援や働き方の改革の具体的な取り組み状況を公表することも重要だと思いますが、どうですか。

 男性の育児休業促進も重要です。

Q16 都は、昨年3月にまとめた「東京都特定事業主行動計画」で、都の「男性職員の育児休業等の取得率を向上させる」ことを明記しました。平成15年度に育児休業・部分休業を取得した男性職員34人となっていますが、その後の実績はどうですか。

Q17 広島市は、育児休業を取得した男性の市職員の所属職場にたいする市長表彰を実施しています。こうした努力もふくめ、都の男性職員の育児休業取得率を今後どのように向上させるのか、具体策を伺います。

 最後に、東京ではとりわけ切実な住宅問題です。経済基盤の弱い若い夫婦でも、安心して子育てできる住宅環境の改善・拡充は、急務です。

Q18 若者や新婚家庭むけの家賃補助や、家賃が安くて良質な公的住宅の増設、整備促進を求めるものですが、見解を伺います。

以 上

A1 我が国の総人口は、平成17年、統計上初めて自然減に転じましたが、社会経済状況にかかわらず、未来を担う子どもたちが健やかに育成される環境を整備することは、行政をはじめ、社会全体の責務であると考えています。 こうした考えのもと、都はこれまで福祉改革や教育改革など先駆的な取組を実施してきました。現在も、「次世代育成支援東京都行動計画」に基づき、子育て支援策を着実に推進しています。

A2 少子化への対応は、長期的な視点に立って国家の在り方を検討した上で、基本的には国全体で取り組むペきものです。都の役割は、東京の特性を充分に踏まえ、都民が必要とする施策を実施することであると考えでいます。
 都は、東京で暮らすすペての子どもとその家庭が安心して生活できるよう、福祉、教育、労働など、組織を超えた横断的、総合的な取組を進めるともに、地域の実情に応じた、よりきめ細かな子育て支援施策を展開できるよう、新たな補助制度を創設するなど、区市町村を支援しています。

A3 都は平成17年、福祉、保健、教育、労働など、さまざまな分野における子育て支援策を総合的に示した、「次世代育成支援東京都行動計画」を策定しました。
 これに基づき、現在、次世代の健全な育成を支援するために、組織を超えて連携し、横断的、総合的な取組を進必ています。

A4 少子化対策については、各種手当や税制、労働環境の整備など、さまざまな方策が議論されていますが、長期的な視点に立って社会全体で取り組むことが重要です。
 経済約支援については、税制の在り方も含めて社会保障制度全体を視野に入れ、国民的合意を得て、基本的に国の制度として行うペきものと考えています。
 こうした考えのもと、国においても、児童手当制度における乳幼児加算の創設や税制の見直しが検討されており、「新しい少子化対策について」や「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」において、平成19年度に向けで作業を進めていくこととしています。

A5 これまで都は国に対し、現在3歳未満となっている患者一部負担金の割合を2割に軽減する措置について、対象年齢の拡大を提案し、今般の国の医療制度改革の中で、平成20年4月から、義務教育就学前まで軽減措置が拡大される予定となっています。
 乳幼児医療費無料化について、都として国に対し働きかけることは考えていません。

A6 乳幼児医療費助成制度に対する国民健康保険国庫負担金の減額調整制度の廃止については、これまでも国に対して要望を行っており、平成18 年度も既に、提案要求を実施しています。
 都内の区市町村に対する減額調整額は、平成16年度で約10億9千万円となっています。
 なお、都は保険者では無いので、減額調整措置を受けることはありません。

A7 乳幼児医療費助成制度の対象年齢については、これまで、義務教育就学前まで段階的に拡大してきており、小中学生の医療費無料化については考えていません。
 また、本制度の所得制限の基準は、国における児童手当に準拠しており、一定の所得制限を設けることは必要と考えています。

A8 妊婦健康診査の負担軽減は、地域の母子保健サービスを担う区市町村が、それぞれの地域の実情に応じて実施しています。
 出産育児一時金は、医療保険各法に基づき給付しており、各保険者が判断すペきものです。なお、現在、国では、出産育児一時金の支払手続の改善について、検討を行っています。

A9 都はこれまでも、子どもの数にかかわらず、子どもを生み育てたいと望むすペての人が安心して子育てをすることができるよう、国に先駆けてさまざまな子育て支援策に取り組んできました。
 経済的支援については、社会保障制度全体の中で、基本的に国の制度として対応すペきものと考えています。

A10 都はこれまでも、仕事と子育ての両立支援のため、都内企業等に対して、労働セミナーや労働相談、「働く女性と労働法」など各種資料の作成・配布等を通じて、いわゆる育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)やパートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)等の普及啓発に努めています。

A11 都はこれまでも、国や区市町村、また経済団体や労働団体等と連携、協力して、仕事と家庭の両立支援や働きやすい雇用環境づくりに向けた取組として、各種セミナーを実施するほか、労働情勢懇談会や東京都男女平等参画を進める会などの場を活用して、幅広い団体との意見交換を行っています。

A12 都は、「東京都次世代育成支援事業」を平成18年7月から開始しています。
 この事業では、「一般事業主行動計画」を策定した企業を「とうきよう次世代育成サポート企業」として登録し、その「行勲計画」等が他の企業の自主的な取組の参考となるよう都のホームページで公表し、普及啓発を図ります。また、「とうきよう次世代育成サポート企業」として登録した中小企業は、提携金融機関において低利融資等の優遇融資載度を受けられるようになっています。

A13 育児休業中の給付については、国が所管する雇用保険から、育児休業基本給付金(休業開始前の賃金月額の30%)及び育児休業者職場復帰給付金(同10%)が支給されることとなっていますが、都としては、既に国に対して、育児休業給付の支給額をさらに充実するよう、提案要求しました。

A14 国において次世代育成支援対策推進怯の改正が検討されていると聞いており、国の動向を見守っていきます。

A15 国において次世代育成支援対策推進法の改正が検討されていると聞いており、国の動向を見守っていきます。

A16 育児休業・部分体業を取得した男性職員は、平成16年度は53人、平成17年度は48人と、平成15年度の34人に比ペて増加しています。
 なお、このうち育児休業に限ってみると、平成15年度の21人に対して、平成16年度は32人、平成17年度は34人と年々増加しています。

A17 仕事と子育ての両立を支援するに当たっては、子育てに関する様々な制度が有効に活用されるよう職員や各職場の理解と協力を得ることが重要であり、このことは男性職員の育児休業等の取得促進についても同様と考えています。
 平成17年度は、平成16年度末に策定した「東京都職員次世代育成支援プラン」 に基づく初年度の取組として、庁内の推進体制を整備するとともに講演会の実施や啓発ポスター、パンフレットの作成など様々な取組を行い管理職をはじめすペてめ職員に対し、制度の周知や意識啓発を進めてきました。
 この取組は、継続して行っていくことが肝要と考えており、引き続き様々な取組を通じて意識啓発と職場の雰囲気づくりを進め、男性職員の育児休業等の取得率向上につなげていきます。

A18 都内の住宅の戸数が世帯数を1 割以上上回っており、さらに、今後人口・世帯減少社会の到来が確実と見込まれていることなどから、都営住宅の供給に当たっては、既存ストックの活用に重点を置くこととしています。こうした中で、若年子育て世帯の入居機会の確保に向け、期限付き入居制度の活用等を行っており、今後とも、公的住宅のストックを子育て世帯のニーズに対して積極的に活用していきます。
 また、若者や新婚家庭向けの家賃補助については、都として実施する考えはありません。

以上