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文書質問趣意書

米軍横田基地の再編問題について

2006年6月19日    
曽根 はじめ(北区選出)

 昨年10月末に発表された日米安全保障委員会(2プラス2)の中間報告でうちだされた国内米軍基地の大規模な再編計画は、沖縄はじめ関係自治体の首長の大多数が反対し批判しているにもかかわらず、5月1日には日米で最終報告の合意文書が取り交わされ6月に閣議決定されました。関係自治体からは、改めて地元を無視した政府の姿勢に怒りの声が出されています。
 さらにこの間、沖縄の海兵隊のグアム移転に7000億円を拠出するのをはじめ、政府自らまったく筋の通らない3兆円もの米軍の移転費用への負担を約束したことが明らかになり、「3兆円出すぐらいなら、社会保障の国民負担増をやめるべき」などの叫びがあがっています。
 このなかで石原知事は、「防衛に必要」としていち早く横田の米軍基地再編を容認し、そのうえで横田基地の軍民共用化を進めようとしていますが、これは基地被害に苦しむ横田周辺をはじめ、平和で安全なくらしを願う都民の長年の願いを根本から裏切るものと言わざるをえません。

 これらの事態を踏まえ、横田基地再編に関わる以下の諸点について質問します。
 第1に、横田基地の再編を許せば基地は恒久化・機能強化され、石原知事自身が掲げていた「横田基地の返還」はますます実現が遠のくという問題です。
 横田の基地再編は、神奈川県の横須賀、相模原、厚木、座間など首都圏の米軍基地・軍港の再編の一環であり、横田の空軍、横須賀の海軍、座間の陸軍、など在日米軍における各軍の中枢機能が国道20号線に沿って集中・強化されることも重大です。わが党の横須賀基地の調査では、横須賀港を原子力空母の母港とするために、かなり以前から海底の浚渫、水路の確保、岸壁の改修などの手だてが打たれてきていた実態も浮き彫りになりました。同時に、周辺の港湾設備や岸壁が次々と民間企業から自衛隊に買い取られ、横須賀港全体が日米一体の軍港にされていこうとしていることも鮮明になりました。
 5月に防衛庁が開いた「米軍再編シンポジウム」でも在日米大使館政治部安全保障部長メア氏は米軍再編について「一番重要な目標はわれわれの同盟能力の維持・向上」だとし、「米軍と自衛隊をもっと融合して、ある意味で統合する必要がある」とまで述べています。

Q1.横田はじめ首都圏における米軍再編が、それぞれの米軍基地の恒久化・機能強化とならざるをえないことはあまりに明白です。これを容認することが「横田基地の返還」という知事公約となぜ両立しうるというのか、その根拠を示してください。

 第2の問題は、東京都が基地再編を容認することによって、現状でさえ「違法状態」にあると指摘されている横田基地の航空機騒音被害に自衛隊機の新たな騒音が加わることになり、さらに都が民間機の騒音被害を上乗せしてまで軍民共用化を進めようとしている問題です。
 昨年の新横田基地訴訟の東京高裁判決は、国が違法な騒音を放置してきたことを法治国家として怠慢だと厳しく批判しました。
 政府はこれを一顧だにせず、横田再編にあわせて航空自衛隊司令部と関連部隊を移転させようとしていますが、少なくとも年400回規模の自衛隊機の騒音を加えることになりかねず、司法の最終判断さえ無視したきわめて不当な態度といわざるをえません。
 同時に東京都が軍民共用化を進めることは、さらに民間航空機の騒音をこれに重ねるという、住民の苦しみなどお構いなしの地方自治体としてあるまじき姿勢というべきです。
 以上の点を踏まえて以下、質問します。

Q2.都は東京高裁で指摘された横田基地の航空騒音の違法状態についてどう認識し、どう解決していこうとしているのですか。

Q3.横田基地の再編で自衛隊の航空総隊司令部が横田に移駐すれば米軍機の騒音に加え、自衛隊員の移動用など自衛隊軍用機の騒音がこれに加わることとなり、違法状態がより悪化することは明白であると考えますが、どうですか。

Q4.その上さらに軍民共用化を推し進めれば、民間機の導入によって、現状でさえ違法な騒音状態の上に、東京都によって、さらに違法を重ねることは明白です。東京都は「違法状態」をいっそう悪化させ、騒音被害が続いてもかまわないというのですか。お答えください。

回答

A1 基地の機能は、軍事的な情勢に合わせて変更されうるものであり、今回の米軍の再編をもって恒久化などと単純に論じることはできません。それは、冷戦終結後のヨーロッパにおいて、在欧米軍の規模が大幅に縮小されることとなったことからも明らかです。
 東京都の米軍基地に対する基本姿勢は、「整理・縮小・返還の促進」です。しかし、我が国を取り巻く国際情勢の現状からすれば、日本の安全を確保するためには日米の連携と協力が依然として必要であり、直ちに横田基地が返還される状況にはありません。そこで、都では、返還までの対策として、既存施設の有効活用により首都圏の空港機能を補完し、多摩の振興はもとより日本経済の再生も含めて将来の国力の充実を図る観点から、横田基地の軍民共用化を目指しています。

A2 平成17年11月30日の判決は、東京高等裁判所が、一定の騒音レペルを超える地域の居住者について、損害賠償請求を認めうる状態にあると判断したものと認識しています。
 都としては、基地に起因する騒音問題については、国が責任をもって対処するという法律的な枠組みに基づき、適切な対策が講じられるペきものと考えており、今後とも、「国への提案要求」や渉外知事会による「基地対策に関する要望」などにより、基地周辺の騒音被害の軽減を図るよう、国に働きかけていきます。

A3 国は、航空自衛隊航空総隊司令部の移駐により、司令官等の移動用航空機の飛来はあるものの、軍用機が常駐されることはないとしており、航空機騒音の影響が拡大することはないと認識しています。

A4 民間機の騒音は、米軍機と比ペて極めて小さいことから、騒音に配慮した軍民共用化は可能です。
 今後とも、地元の理解と協力を得ながら、国と連携して横田基地の軍民共用化の早期実現を目指していきます。

以上