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文書質問趣意書

2006年6月19日       
村松 みえ子(日野市選出)

学校図書館の充実を求める

 昨年10月の決算委員会で、学校図書館と司書教諭の役割、司書教諭の配置状況、図書購入費などについて質問いたしました。今、子どもの学力や読解力が問題になっているとき、学校図書館の果たすべき役割は一層重要になっています。そこで、子どもの読書環境を充実させる立場から、何点か質問いたします。
 東京都は2003年3月に「子どもの読書活動推進計画」を策定しました。この「子ども読書活動推進計画」では「読書の果たす役割は、子どもが自分の将来に夢を持ち、自己実現を図っていく上で極めて重要であり、読書活動の推進に当たっては、子どもの発達段階を踏まえることが重要」と読書活動の意義を位置付けています。そして、子どもの読書活動の現状を、OECD (経済協力開発機構)の読解力調査結果や全国学校図書館協議会・毎日新聞社の調査などをもとに、日本の子どもたちの読書ばなれの実態をあきらかにしています。さらに、「東京の子どもたちは、他県に比べて情報量が多く、子どもが他のメディアに時間を費やすことにより、読書の時間が相対的に少なくなっているともかんがえられます」と現状を分析しています。

Q1、計画策定後3年間の東京の子どもたちの置かれている状況をみれば、子どもたちの読書にたいする興味、感心を強める努力が、いっそう重要になっていると思いますが、どうですか。

 学校図書館をより充実させるうえで、さまざまな取り組みが必要ですが、特に人員の配置と蔵書の確保は、学校図書館にとっては柱ともいえるものです。
 実際に、専門の職員が配置されたことにより、学校図書館がよみがえったという実践があります。東大和市では、2003年度から小学校2校、中学校1校に、1日4時間週5日で司書の資格をもつ指導員を配置しました。
その成果の研究発表会では、こんな報告がされたそうです。「子どもたち全学年を3年間通してみてきて、大きな変化があったと感じています。初めの頃、子どもたちは本を借りに来たり、何かを聞くことに遠慮がちでしたが、だんだん慣れてくるにつれ積極的・意欲的になってきた」とのことです。特に3年生は、入学した時から指導員のいる学校図書館を利用しているので、本が読みたいときや何かを調べたいときに、学校図書館に来ること、本のことでわからないことがあれば指導員に聞くことが当たり前になっているそうです。読書意欲も高く、『長い本が読みたいんだけどおすすめはありますか?』と聞いてくる子どももいるとのことです。
 また、読書指導が難しいといわれている高学年についても、担任の先生方との連携がすすむにつれ、だんだん貸し出し冊数や休み時間の利用が増え、友達が『これとこれ読んだ。』『この本おもしろいからおすすめだよ』などと話している声が聞こえてくるなど、子どもたちが本の魅力を伝え合うようになったことです。本の苦手な子も朝、読書の時間に集中して読めるようになったそうです。
大事なことは、学校図書館が、専任の司書が継続していること、蔵書が揃っていることで生きてくることが、実践を通して関係者に実感されていることです。発表会の中では、「このような読書や調べ学習の指導を先生方と連携して行えるようになったのは、3年という研究期間に専任・専門で継続してこの仕事ができたからです。学校図書館にある本の中味を知り、足りないものを補い、利用する先生方と子どもたちの要望を把握して必要なものを適切に提供するのは、1年程度でできるものではありません」、「どんなに面白い本や役立つ資料をそろえても、利用されないのであれば意味がありませんし、逆に読みたい本、読みたくなるような本や、調べるための資料が身近になければ、指導は難しいでしょう」、「学校図書館が変わり、先生方の意識も変わると、子どもたちは驚くほど変化を見せてくれました。このような活動を続けることが、子どもたちの読書意欲をますます高めていくことと確信しています」と語られていたそうです。
 東大和市の教育委員会は、市の研究指定校に指定された他の小中学校も同様の効果をあげていると高く評価し、今年度は、指導員をさらに小学校2校、中学校1校に配置し、今後も計画的に全小、中学校に広げていく方針だとのことです。
 学校図書館に司書教諭と司書または専門の職員がいることが、どれだけ大事なことかと思います。そのうえでボランティアや地域などの取り組みがあれば、いっそう充実したものとなるのではないでしょうか。
 このように、少なくない区市町村では、子どもの読書が子どもの成長に大きな役割を果たすことに確信を持つ保護者の要望にこたえて、何らかの取り組みをしています。
 しかし、東京都は都としての役割を十分果たしているかというと、決してそうとは言い切れないのではないでしょうか。たとえば、司書教諭の配置の問題です。前回の質問の答弁では、都内小中学校への司書教諭の配置状況は、2004年度で、12学級以上の学校では、法で義務づけられていることにより97%以上となっています。しかし全体の約4割の学校は11学級以下で、配置の義務はありません。しかも、中学校で司書教諭として教員が保障されている時間はたったの週2時間、小学校では全くありません。
 中学校校長会からは、「豊かな心と確かな学力を獲得するために読書指導の充実が求められている。また、魅力ある学習センターとなるためにも学校図書館の改善・充実と司書教諭の全校配置が必要である。全校に定数外に司書教諭を配置すること。それが可能となるまでは全ての学校の司書教諭の授業持ち時数の軽減を8時間以上とすること」とその必要性を東京都に要望しています。同じ趣旨の要望が、東京都市教育長会からも提出されています。

Q2、すべての小中学校に、定数外で専任の司書教諭または専任の司書を配置すべきですが、どうですか。

Q3、それが可能になるまで、せめて司書教諭の授業持ち時間の軽減を週8時間にとの要望にこたえること、また、小学校の司書教諭の授業の軽減も進める必要があると思いますが、どうですか。

Q4、都として、区市町村での学校図書館の司書や指導員等の配置状況や、そこでの取り組みの成果を、調査することを求めます。

 次に、学校図書館の蔵書の確保について伺います。学校図書館に専門の職員が配置されると同時に、量・質ともに豊かな蔵書を充実することが大切です。
 文部科学省の調査によれば、都内で学校図書館図書標準を達成している公立学校は、小学校で49.1%、中学校で41.4%(2005年3月末)にすぎません。文部科学省は各都道府県に「公立義務教育所学校の学校図書館の図書の購入に要する経費の地方財政措置について」の通知を出し、「学校図書館の計画的な整備を図るよう、貴域内の市(区)町村教育委員会に対し適切な指導及び助言等をお願いいたします。」としています。

Q5、東京都として、この文部科学省からの通知を具体的にどのように受け止め、区市町村に指導、助言したのでしょうか。

Q6、すべての小中学校が標準を満たした蔵書を確保できるよう、都として具体的な期限と数値目標を持った計画を策定し、区市町村を支援するよう求めます。

Q7、都立盲ろう養護学校の蔵書数および図書標準の達成率(小中学部)はどれくらいですか。都立盲ろう養護学校も基準を達成できるよう、ただちに手だてを求めます。

Q8、都立盲ろう養護学校では、教室不足を補うために学校図書館を普通教室に転用し、図書室のない学校や、廊下に本棚が1、2本置いてあるだけの学校もかなりあります。養護学校でも、ゆたかな感性や情操を身につけるためにも、学校図書館をきちんと位置づける必要があると思いますが、どうですか。

 都立図書館や市区町村の図書館と学校との連携も重要です。
Q9、都立多摩図書館で作成している「子どもたちに物語の読み聞かせを」などの「子ども読書活動推進資料」は好評です。小学校などで毎年配布したり、中高生向けの資料も作成、配布したらどうでしょうか。

以 上