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文書質問趣意書

「建築物の耐震改修促進計画」の策定にあたって 

2006年10月3日     
植木こうじ(中野区選出)

一、「耐震改修促進計画」の策定について

 いつおきるかわからない震災への供えは、とりわけ、東京は首都直下地震について「発生の切迫性」が指摘されており、ひとたび地震が発生するとその被害は甚大になることが予想されているだけに急がれています。特に、住宅など建物倒壊による死者数は阪神・淡路大震災でも全体の死者数の9割を占めていることに示されているようにその対策が急がれております。
 私ども日本共産党が、木造住宅やマンションの耐震診断・改修への積極的な支援策をと繰り返し求めてきましたが、今年度になってようやく木造住宅特別密集地域整備促進事業とマンション耐震診断助成に踏みきったことは重要です。しかし、あくまでも国制度の範囲内であり、全国的に耐震化率を75%から90%に引き上げようとしているとき、建築物が全国の中でも一番多い東京都にふさわしい取り組み、具体化になっておりません。
 国の「建築物の耐震改修の促進に関する法律」、いわゆる「耐震改修促進法」で都道府県に「耐震改修促進計画」の策定が義務付けられたことは重要です。都としてこの計画策定の中で実効ある具体化を行うために全力を尽くすことを求めるものです。

Q1、都として「耐震改修促進計画」策定に着手していることは承知しておりますが、「耐震改修促進法」では都道府県の計画策定について「すみやかに作成」となっているものの期限を決めておりません。直下地震の切迫性が叫ばれている東京としていつまでに計画を策定する予定なのか、明確にお答えください。

Q2、「耐震改修促進法」では、民間や公的住宅のみならず、百貨店や映画館など多くの住民が利用する建築物、公共的施設などについても耐震促進計画を立てることになっています。したがって、都市整備局の担当部局だけでなく、全庁的な協力はもちろんのこと区市町村を始め民間、専門家の協力が必要と考えるがどのような体制で検討をすすめているのか。また、その検討状況についてもお示しください。

Q3、また、区市町村では「耐震改修促進計画を策定することが望ましい」とされており、義務とはなっておりません。しかし、首都直下地震に備えるには区市町村での具体化は不可欠ですから、全区市町村からの意見集約を独自に行い東京都の計画に盛り込み、より充実したものにすべきではないでしょうか。併せてお答えください。

Q4、 耐震促進計画の基礎になる現状についてですが、民間や公的住宅、百貨店など多くの住民が利用する建築物、公共的施設などの昭和56年までの旧耐震基準の建築物とそれ以降の建築物の棟数はどのような割合になっているのか、現状を明らかにしてください。

Q5、「耐震改修促進計画」を立てた場合、これほど都民的に関心があり、重要なものである一方で、診断・改修共に多くの費用がかかるなど多くの都民・関係者の協力が不可欠です。それだけに都民の幅広い意見を求めるあらゆる努力すべきと思うがどうか。

二、木造個人住宅の耐震補強について

 「建築物の耐震改修促進計画」の策定に当たり、民間や公的住宅のみならず、百貨店や映画館など多くの住民が利用する建築物、公共的施設などの具体的整備をどう進めるかが重要になってきます。
木造個人住宅の耐震補強は倒壊被害や火災の発生する危険などからいっても対策が急がれています。

Q6、今年度から始めた20区にわたっている木造住宅密集地域の整備地域では、震災時に倒壊の危険性が高い建物が多く、その耐震化具体化にあたって行政の特別支援が必要な住宅が多いのが実情です。耐震診断・改修事業の区での具体化と進捗状況、その見通しはどうか。

Q7、また、多摩地域では木造住宅密集が多く存在しているにもかかわらず、「防災都市づくり推進計画」で重点整備地域指定がないためにこの面での取り組みはまったく行われておらず、多摩市長会からも要望がだされています。多摩地域の木造住宅密集地域にも耐震化事業をおこなうよう求めます。併せてお答えください。

 都は「住宅の耐震化は、所有者によって行うことが基本」ということで「震災上公共性が高い地域に限定」した木造住宅密集地域の整備地域に限定していますが、木造住宅72万戸のうちわずか3パーセントにすぎません。
 静岡県では専門家の診断結果が「倒壊、又は破壊の危険がある」との診断された場合は補助の対象にしていますが、都は、旧耐震基準の一般の戸建て木造住宅についてこれまでなんの対策もありません。私の地元の中野区では、一軒一軒担当者が訪ねて無料の簡易診断など普及を図ってきました。簡易診断を行った985件のうち耐震強度1.0以下が883件にも及んでいるにもかかわらず、補強工事につながったのは78件で、多くが高齢者世帯が多い、財政的な余裕がないなど耐震診断にも踏み切れないなどの実態が明らかになっています。

Q8、こうした戸建木造住宅の実態を調査し、一般の戸建て木造住宅についても耐震診断・改修助成を行うべきではないでしょうか。

同時に、進まない原因の一つに改修後、耐震強度が1以上になることが求められておりますが、神戸市では住宅が倒壊しない程度の小規模の補強も助成の対象にしています。神戸市の担当者は耐震の「評点が1未満で住宅が多少壊れても、すぐに倒壊しなければ逃げることはできる。建物を守るのではなく『命を守る』ため」と語っています。

Q9、都としても、財政が大変で抜本的な改修ができないが、居間や寝室など一定の負担で行える部分的な改修、或いは簡易な部分補強なども対象にすべきと考えますが、どうですか。それぞれ、お答えください。 

Q10、さらに、木造共同住宅、木造アパートなどの賃貸もしくは共同住宅の対策です。現在、旧耐震基準で何らかの耐震補強が必要とされる木造賃貸住宅は、都内に21万棟以上も残されています。その多くは個人が経営するもので、改善は進んでいません。都としても、既存不適格といわれる旧耐震基準時代の木造賃貸住宅の耐震診断、耐震補強を促進する仕組みづくりに踏み切ることが急がれていると思いますが、どうでしょうか。

三、マンション耐震診断・耐震改修の促進について

東京都の分譲マンションは全国の中でも一番割合が高い上に、築30年以上たっているマンションや旧耐震基準のマンションが建て替え、あるいは大規模改修の時期を迎えており、震災対策の必要性が極めて大きくなっています。

Q11、今年度からマンション耐震診断事業を始めましたが、区市町村での具体化が進んでいないのが現状です。9月に中野区が実施すると発表しましたが、区市町村での協力がなければ住民は受けられないことになります。区市町村での実施状況は23区と市町村では実施状況がおおきな開きがでていると聞いております。財政的に大変との声が上がっていると聞いているが、都としての支援策を講じるべきと考えますが、どう考えていますか。

Q12、マンションの耐震改修については、診断の結果が建替えや大規模改修費用がかさむ可能性があればあるほど住民の合意をうるのが大変になります。現実に旧耐震基準の建物は建設年度が古ければ古いほど資金の積み立てが不十分の所が多く、住民の年齢差や資金力、個々人の将来展望などの違いがあり合意が難しくなるケースが多くなります。したがって、耐震補強工事への支援策が現在のリホームローンの制度を使って1%利子補給を行うとしていますが、この事業を始めてからの応募実績がわずか4件にとどまっていることを考えれば実際の耐震化促進は見通しが立ちません。
 これまでも繰り返し求めてきましたが、耐震化に向けての合意、計画的な財政確保などマンション管理組合への啓発を行うと同時に、「耐震改修促進計画」策定の中でマンション耐震改修工事への助成を講じることを明確に位置づけるべきと考えますが、いかがですか。それぞれお答えください。

四、公共施設、とりわけ都営住宅や学校施設の耐震化について

Q13、「耐震改修促進計画」を策定する上で、公共施設の耐震化は特に多くの都民が住んで直接都が管理している都営住宅や公社住宅、震災時に子どもたちの安全を守るだけでなく、住民の避難場所・応急対応としての役割を持っている学校施設などの耐震化は不可欠です。こうした公共施設の耐震化率の目標は90%ではなく100%にすべきではないでしょうか。

Q14、都営住宅や公社住宅では、わが党の指摘にもかかわらず、ピロティ方式の住宅など一部を除いて目視による簡易な診断で済ましてきた住宅が多数あります。
 東海地震に備えて耐震化にいち早く取り組んできた静岡県では全県営住宅で2004年までに耐震診断を完了させて改修に取り掛かっております。
 都として、都営住宅や公社住宅について耐震改修を急ぐ必要がありますが、耐震診断を一刻も早く行うとともに耐震改修の計画をお示しください。
 公立学校の耐震化への支援の問題です。
 児童生徒の急増期に伴い建設された学校も多く、新耐震基準に適合していないだけでなく老朽化が進んでおります。震災防災対策特別措置法で補助率2分の1と5年間の延長は示されたものの、区市町村では一般財源の持ち出しが多くなり具体的には進まないのが実情です。

Q15、国に対して補助単価の拡充を求めると同時に、計画期間内の10年間で実現できるようにするためにも急増する需要に応えられるよう区市町村に対して都としての独自補助制度を創設するよう求めます。併せて、お答えください。

以上

回答

A1 耐震改修促進計画については、現在作業中であり、早急に策定していきます。

A2 耐震改修促進計画の策定に当たっては、関係各局、区市町村の代表者からなる検討会において検討を進めています。
 また、民間建築物の所有者や建築関係団体と耐震化に関する連絡会を設けて意見交換を行っています。

A3 都は、区市町村と耐震化に関する協議会を設けています。
 耐震改修促進計画の策定に当たっても、この協議会等を活用して、区市町村の意見を計画に反映させていきます。

A4 耐震改修促進計画の対象となる建築物は、昭和56 年以前に建築された、旧耐震基準の住宅及び百貨店、病院等の特定建築物などであり、その棟数については、現在区市町村を通じて調査中です。

A5 耐震改修促進計画については、都民、区市町村、関係団体の意見を聞きながら計画を策定していきます。

A6 住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、所有者によって行われることが基本ですが、建物の倒壊による道路閉塞を防止するなど、震災対策上公共性が高い地域の住宅については、耐震化の促進を図るため耐震診断・耐震改修に関する助成事業を平成18 年4 月から開始しています。
 この制度は、区と連携して実施することから、助成制度を設けた区が、平成17年度の9区から18区に倍増するなど、区の取組も強化されています。
 現在、関係区と協力して、耐震診断・耐震改修の実施を住民に働きかけるなど、制度の周知を進めています。

A7 都の助成制度は、都内にある木造住宅密集地域の中でも、危険度が高く震災時に甚大な被害が想定される「整備地域」を対象としています。
 多摩地域については、行政連絡協議会等において、国の補助制度の活用について情報提供するなど、今後とも市町村の耐震化事業を支援していきます。

A8 住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、所有者によって行われることが基本です。
 都としては、安価で信頼できる耐震改修工法の展示や施工業者に関する情報提供などを実施しています。

A9 住宅の耐震化は、自助。共助・公助の原則を踏まえ、所有者によって行われることが基本です。
 都では、既に、安価で信頼できる耐震改修工法や、地震から生命を守る装置を広く都民に紹介するなど、都民が多様なニーズに応じた工法等を選択し、安心して耐震化に取り組めるよう情報提供などを実施しています。

A10 住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、所有者によって行われることが基本ですが、建物の倒壊による道路閉塞を防止するなど、震災対策上公共性が高い地域の住宅については、耐震化の促進を図るため、耐震診断・耐震改修に関する助成事業を平成18年4月から開始しています。
 この助成制度では、一戸建ての住宅のほか、長屋、共同住宅も対象になっており、木造賃貸住宅も含まれています。

A11 平成18年4月から新たに耐震診断について助成を開始したところであり、区市町村や関係団体などとともに、管理組合に対し、こうした制度の活用を幅広く働きかけていきます。

A12 都では、平成17 年度発行したマンション管理ガイドラインのなかで、耐震化の必要性や管理組合による耐震化に向けた取組方法を解説するとともに、マンション耐震診断助成事業のPR などを通じ、管理組合への普及を図っています。
 また、自助・共助・公助の原則を踏まえ、耐震改修促進計画を検討していきます。

A13 公共建築物等の耐震化率の目標については、国の基本方針、防災上の位置付けなどを踏まえ、適切に検討していきます。

A14 都営住宅及び公社住宅においては、阪神淡路大震災の被害状況を踏まえ平成8年に専門家により作成した耐震に関する指針に基づき、震災で被害の目立った一階がピロティなどの住宅について耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を実施してきました。
 今後、耐震診断及び耐震改修については耐震改修促進法の改正を踏まえ、現在策定中の耐震改修促進計画の中で、位置付けていきます。

A15 公立小・中学校施設の耐震改修については、設置者である区市町村において国の助成制度も活用しながら進められており、都として、独自の補助を行うことは困難ですが、国に対して、区市町村が計画する耐震改修等の
工事が予定どおり実施できるよう、必要な財源の確保について引き続き要望していきます。

以上