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文書質問趣意書

障害者自立支援法への対応について

2006年10月3日      
吉田 信夫(杉並区選出)

 障害者自立支援法の一部施行から半年が経過しましたが、応益負担の導入による負担増は障害者と家族の生活を直撃し、通所を断念せざるをえない事態まで引き起こしました。日払い制度は施設収入を激減させ、多くの施設が運営の困難に追い込まれています。それだけに障害者団体からは「かめばかむほどひどさがわかる」「自立支援どころか自立阻害法だ」などの怒りの声が広がっており、8月には全国の障害者団体が一致して「早急な見直しを求める緊急要望」を厚生労働大臣に提出しました。
 わが党は、第2回定例会において、区内の100をこえる通所施設からのアンケート調査の結果にもとづいて、都として影響を調査し国に制度の改善、再検討を求めること、都として利用者負担軽減や施設運営への支援をはかることなどを要望しました。また、特別区障害福祉課長会からも、8月には地域生活支援事業等の東京都独自施策の継続についての要望書が東京都福祉保健局あてに出されています。
その後都は、10月からの全面施行を前に、移動支援・ガイドヘルプへの部分的な負担軽減や、今年度内のグループホーム運営費への都加算の継続などを打ち出しましたが、深刻な事態の解決には、国に抜本的な見直しを求めるとともに、都としてより全面的な支援策が求められています。以下、緊急に都として対応すべき課題について提案し質問します。

第1に、法施行による影響の調査です。
Q1、わが党は第2回定例会で、都が法施行による影響の実態把握をおこなうことを求めましたが、都としてどういう調査を実施したのですか。その結果について明らかにしていただきたい。

 第2に、利用者負担の軽減です。
Q2、利用者負担が工賃を上回るなど障害者と家族を圧迫している利用者負担の軽減が引き続き求められています。横浜市などで実施されているように負担軽減の対象事業を拡大し全額助成とすることを求めます。また、利用者負担軽減を実施する区市町村への財政支援を行うべきです。

Q3、厚生労働省は、授産施設の「工賃倍加計画」を概算要求で打ち出しましたが、都としても共同受注システム導入や製品の販路拡大をはじめ、工賃引き上げの支援等を検討する必要があると考えますが、見解をうかがいます。

 第3に、施設運営への支援強化です。
Q4、都は今年度内については、グループホームへの都加算補助の実施や地域生活支援事業に移行する小規模作業所などへの一定の支援策を実施していますが、今後も継続拡充が求められています。

Q5、4月からの日払い制度のうえに、10月からは障害程度区分によって施設の収入はますます減少しかねない状況にあり、これまでの施設の運営水準を維持することが困難なだけでなく施設運営の継続そのものが困難に直面しています。大多数の施設は新体系への移行はまだ見合わせており、都が行ってきたサービス推進費は継続すべきです。

Q6、精神障害者の授産施設などの場合は、他の身体障害者、知的障害者の通所施設以上に日払い制の影響がもっと深刻にあらわれていますが、逆にサービス推進費の対象となっていまおらず、都の支援策は不十分です。都としてどう対応しますか。サービス推進費を支給すべきです。見解を伺います。

 第4に、地域生活支援事業の問題です。
Q7、地域生活支援事業になっているコミュニケーション支援などの利用者負担はそれぞれの区市町村が定めることになり、都内でも地域によるアンバランスが生じています。都として各区市町村の実施事業と利用者負担について調査を行い、どの区市町村でも一定のサービス水準が維持され負担軽減がはかられるよう支援を図ることが求められています。

Q8、地域生活支援事業の一つである盲ろう者にたいする通訳介助者派遣事業は、盲ろう者1人当たり1日1時間にも満たない派遣時間を拡充することは急務と考えますがどうか。

Q9、また都の責任において、盲ろう者への通訳介助者の養成事業を復活することを求めるものです。見解を伺います。

Q10、特別区の障害福祉課長会からは、コミュニケーション支援事業の要約筆記や手話通訳者について、必要な人材の確保、派遣は困難であり、都として当面継続するよう要望が出されています。こうした要望にこたえ要約筆記、手話通訳派遣事業及び心身障害者(児)通所訓練事業は都の事業として継続すべきです。見解を伺います。

第5に、障害程度区分導入への対応です。
Q11、新たに導入された障害程度区分にたいし、障害者の実態が反映されないという意見が多くの障害者団体から出されています。自治体によっては独自の調査項目を追加するなどの努力もはじまっています。都として状態にあった障害程度区分が認定できるよう、認定審査にかかわる人材の育成・研修をはじめとした対策を講じることを求めます。

Q12、障害程度区分の導入後も、現行のサービスが維持されるよう、支給決定はあくまで標準であり上限でないことを周知徹底することが必要です。また、区市町村の超過負担という事態にたいし、国に改善を求めるとともに、都として財政支援策をはかることが求められています。見解を伺います。

Q13、第6に、障害者にたいする経済的支援及び就労支援策を拡充・強化することを求めるものです。以上お答えください。

以上

回答

A1 都は様々 な機会をとらえて、障害者自立支援法の施行状況について、区市町村、障害者関係団体、施設運営者等から意見を伺うなど、日ごろから実態把握に努めていますが、制度改正に伴う状況調査については、客観的な実態を把握することが可能な時期に実施することが必要です。このため、都は、身体障害者・知的障害者更生施設等を対象とした調査を平成18 年8 月に実施しました。
 その結果によれば、障害者自立支援法が施行された平成18 年4 月から7 月までの施設退所者や通所施設の一人当たりの利用日数は、いずれもおおむね前年並みの実績となっています。

A2 障害者自立支援法における定率負担の導入は、サービス利用者も費用を負担し、皆で制度を支える仕組みを構築するためのものです。定率負担の導入に当たっては、所得区分等に応じた月額負担上限額の設定や個別減免の実施など、低所得の方に配慮した様々 な軽減策が講じられています。
 これらの軽減策に加え、都としても独自に、ホームへルプサービスの利用者に対する定率負担導入の激変緩和、障害者施設等入所者への医療費助成制度の対象拡大及び精神障害者の通院医療費自己負担分の無料化などの負担軽減策を実施しており、これ以上の拡大は考えていません。
 また、こうした国の制度及び都の負担軽減策に加えて、一部の区市町村においても負担軽減措置を講じていますが、これは各自治体が地域の実情を踏まえて行う独自の取組であり、都として財政支援を行うことは考えていません。

A3 現在、各授産施設において、利用者の工賃を上げるため、創意工夫や努力をしています。
 具体的には、複数の授産施設で協力して、付加価値の高い自主製品の開発、販路の拡大や企業からの大量受注などにより高い実績を上げている施設もあります。
 都としても、東京労働局と共催で、福祉施設関係者、ハローワーク職員、企業関係者等を対象として、様々な取組を紹介するシンポジウムを開催するなど、授産施設への支援に努めています。

A4 都はこれまでも、都として望ましいサービス水準が確保されるようグループホームや小規模作業所等に対する都加算補助を行ってきました。
 都としては、事業者に対して、法内事業への移行や経営努力を促す一方、法の施行状況等も踏まえながら、引き続き適切に対応していきます。

A5 障害者自立支援法では、障害者が身近な地域でサービスが利用できるよう、施設の運営基準、施設基準及び運営主体などの規制緩和が実施されるとともに、定員を超えた利用も認められるなど、創意と工夫による効果的かつ効率的な運営が可能となっています。
 また、障害者施設の新体系への移行については、平成23年度末までの経過措置が設けられています。
 民間社会福祉施設サービス推進費補助金については、福祉サービスの質の向上を目的に、都として望ましい福祉サービスの水準を確保し、施設の様々な努力が真に報われるよう平成16年度に再構築し、その際、5年間の経過措置を設けています。

A6 民間社会福祉施設サービス推進費補助金については、5年間の経過措置期間中であり、現時点で同補助金の対象施設を変更する考えはありません。

A7 区市町村地域生活支援事業は、区市町村が義務的に実施しなければならない事業が障害者自立支援法に定められるとともに、事業実施に要する経費については、補助事業として、国が2分の1、都道府県及び区市町村が4分の1を負担することとされています。都は、こうした仕組みの下で、区市町村が責任をもって事業を実施すペきものと考えています。
 また、各区市町村の事業実施予定等についても平成18年9月に調査を実施しました。
 なお、国に対しては、地域生活支援事業について、事業の充実に取り組む区市町村に超過負担が生じないよう、十分な予算措置を行うことを提案要求しています。

A8 盲ろう者通訳・介助者派遣事業は、盲ろう者のコミュニケーション及び移動の自由を確保することを目的に、盲ろう重複障害者が外出するときなど、必要な場合に介助者を派遣する事業で、平成17 年度実績では、1 回につき約4 時間の派遣となっています。
 平成18年10月以降は、都道府県が実施する地域生活支援事業として引き続き実施していきます。

A9 通訳介助者の養成事業については既に自ら取り組んでいることから盲ろう重複障害者を支援する団体が都として事業を復活する考えはありません。

A10 要約筆記及び手話通訳者等派遣事業は、障害者自立支援法において、区市町村が実施すペき地域生活支援事業の中のコミュニケーション支援事業と位置付けられています。
 また、本事業は、区市町村が義務的に実施しなければならないものとして法に定められており、区市町村の責任において実施すペきものと考えています。
 一方、心身障害者(児)通所訓練等事業は、在宅の心身障害者(児)の自立促進を図るため、障害者の日中活動の場として区市町村が実施する法定外の事業です。
 今後、事業運営の安定性や透明性を確保し、利用者支援の充実を図るため、都は、法内化の促進を図っていきます。

A11 都は、区市町村において公正かつ公平な障害程度区分の認定が行われるよう、手続の詳細が明らかになった平成18年2月以降、認定調査員研修、区市町村審査会委員研修等を実施し、認定調査や審査にかかわる人材の育成に努めています。

A12 障害福祉サービスの支給決定は、各区市町村が定める支給決定基準に基づきサービスの支給量を決定するものです。支給決定に当たっては、個々の障害者の状況を勘案し、基準を上回る支給量を決定することも可能であり、その際には手続の公正性を確保する観点から区市町村審査会の意見聴取を行うこととされています。
 こうした支給決定の仕組みについては、既に区市町村説明会等の様々な機会をとらえて周知徹底を図っています。
 なお、国庫負担基準について、都は区市町村におけるサービス提供の実態を十分に反映したものとし、区市町村の超過負担を生じないよう国に対して提案要求しています。

A13 障害者の所得保障は、基本的に国の役割であり、都としても国に対して、障害者の経済的自立のために年金・手当制度を一層充実するよう、要求しています。
 一方、障害者の就労支援については、「障害者地域生活支援・就労促進3か年プラン」に基づき、関係局、関係機関などとも連携し、区市町村就労支援事業や企業内通所授産事業等の充実・強化に努めています。

以上