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文書質問趣意書

ワーキングプア対策について

2006年12月13日
曽根 はじめ(北区選出)

 いま、働いても働いても生活保護なみのくらしから抜け出せない「ワーキングプア」とよばれる階層が日本中に広がり、若い世代から中高年にまで急速に広がっていることから、深刻な社会問題として解決が求められています。
 しかも東京のような大都市ほどワーキングプア階層が集中しているとみられることから、都としての対策も急がれています。
 今日、年収が生活保護基準なみの3人世帯200万円を下回るというワーキングプアは、約550万人いるといわれますが、東京でも215万人を超えて常用労働者の3割以上を占めている派遣・パート労働者の多くがワーキングプアに当たると考えられます。
 パート労働者の7割近くが年収130万円未満であり、派遣労働者の場合も、大半が3ヶ月以下の短期契約であるなどきわめて不安定で劣悪な雇用状態です。
とりわけ非正規雇用が半分を占めている若い世代のなかでは、ワーキングプアが単身者はもちろん、家族世帯にも急速に拡大しています。
 夫婦ともフリーターで「月収二十万円に届かない」例や、昼と夜のパート労働で「ぼろぼろになるほど働いても子ども二人を育てるのがやっと」という母子家庭の母親など、深刻な実態は枚挙にいとまがありません。
一方、正規労働者のなかでも、高い学歴やスキルがありながら正当に評価されずワーキングプアに陥っているケースもあります。
 今年2月NHK「ホットモーニング」では、都立大を出てドイツに1年留学し通訳・翻訳能力も高い27歳の女性が、海外旅行の添乗員で月16〜17万円の給料、6畳の部屋にテレビも暖房器具もなく布団に重ね着で寒さをしのぎ、流しの給湯器で髪を洗い、月の半分近くを24時間拘束の添乗員として働く姿を密着取材で追って大きな反響がありました。
そのSさんが、首都圏青年ユニオンの仲間とともに訴えているのが、正規労働者の中でも長時間過密労働と低賃金構造で、食事と睡眠以外ゆとりも楽しみもなく働き続け、将来に希望も持てず、弱い者から心身を病んでいく若年労働者が広範に存在している東京の実態です。
首都圏青年ユニオンの調査では、職場で上司から暴力やいじめを受けたり残業代を全く払われなかったりしても、自らの労働基本権の知識もなく、誰に相談してよいかも分からず悶々としている青年が正規・非正規にかかわらず非常に多いことがレポートされています。
 都はようやく4年前から青年の雇用対策を取り組み始め、就職説明会やジョブカフェなどの取組みが始まりましたが、他県では財政の厳しい下でもジョブカフェなどを複数箇所配置したり、地元中小企業の若年者雇用に力を入れているのに比べ、東京都は、その財政力や若年人口規模から見ても、取組みはきわめて不十分といわざるをえません。
 私は、若者を中心に、ワーキングプアの増大を防止するとともに、働いてもくらしが良くならない現状を、労働者が自ら打開していけるよう、自治体として最大限の支援を求める立場から、以下何点か提案し見解を求めるものです。

Q1.都として東京のワーキングプアの実態を正確に把握するための調査を行い、都民に公表すべきですが、どうか。

Q2.若年者の正規労働者としての採用機会を増やすため、一括採用後の新規採用の枠を設け、拡大していくことや、中途採用者定着のための研修の充実など、若者の雇用拡大を企業に働きかけ、実績を上げた企業への支援または優遇策をとるよう提案します。

Q3.パート労働者への社会保険適用と処遇改善で正規・非正規の均等待遇をめざすこと。あわせて中小企業などの非正規から正規への採用を奨励・支援すべきです。

Q4.都の契約相手企業や調達先の企業において、若者雇用や育児休業制度等子育て支援、また正規採用の拡大などの取組みに、都の契約関係において何らかの優遇策を設けること、逆に、残業代未払いや偽装請負などの違法行為を行った企業については契約に制限を設けるなど、雇用の安定化に有効な措置を講じるべきですが、どうか。

 職につきたくても就けないでいる若者などへの支援も重要な課題です。

Q5.一定期間、職につけなかった若者に対し、都として緊急雇用事業を創設し、雇用の促進をはかること。また、教員、消防隊員や看護師をはじめ、都の職員の採用枠を拡大するよう求めます。

Q6.若者の商店街などの空き店舗を活用した開業を支援するため、家賃補助や経営相談、融資など資金力に乏しい若者を支援するしくみを検討すべきです。

Q7.中高年にも広がっているパート・フリーター労働者が、気軽に相談でき、これまで培ったキャリアを生かす場合や適切にスキルを身につけ就職を探す場合など、それぞれの適性に合った安心して働ける職場を見出せるよう、相談窓口、就職セミナー、カウンセリング、適性の診断、専門技術訓練、就職面接会、就職先の斡旋、訓練期間の生活支援など一貫したシステムを都として確立し、実施するよう提案します。

Q8.東京しごとセンター・ジョブカフェは、新たに多摩地域に展開するとともに、区市町村との連携で、区市町村の窓口にもサテライトの端末を置き、ネットワークで情報を共有化させることによって、身近な窓口で都内全域の求職情報を得られるよう思い切った機能の充実を求めるものです。

Q9.ジョブカフェなどの相談窓口には、「ニート」や「社会的引きこもり」といわれる若者でも仕事につき、社会に出られるための専門相談員も配置して、きめ細かい対応ができるようにする必要があると考えます。

Q10.大学等研究機関と協力して、若者が社会人としての権利や責任の自覚、労働の価値などを学ぶための教育プログラムの研究・開発を進め、都立高校や大学などに普及して、学校教育のうちから学べる機会を提供すべきと思いますが、いかがですか。

 ワーキングプアのくらしの安定化にも、自治体として取り組むべきです。

Q11.都内単身者の家賃も含めた生活保護費が13万円程度なのに比べて、実態に合わない時給700円台の最低賃金を引き上げるよう国にはたらきかけるとともに、都として独自基準を設定して民間企業に協力を呼びかけることを求めます。

Q12.東京の重い住宅費負担の軽減を進める必要があります。
都営住宅の募集対象と応募枠を若年単身者にも広げ、子育て世帯などに思い切って拡大すべきです。またそのためにも都営住宅の新規建設を再開すべきですが、どうか。

Q13.民間への家賃補助も重要です。大阪市は年間延べ3万7千世帯の新婚世帯に月2万円から3万円の家賃補助を行っており、若い世帯の定住に大きな効果をあげています。都としても、全国一高い住宅費の軽減のために、せめて大阪市並みの家賃補助制度を設けるよう提案します。また住宅手当を支給する中小企業への補助なども実施すべきです。

以上、それぞれの提案について、答弁を求めるものです。

【答弁】

A1 都では、就業構造基本調査に加え、毎月勤労統計調査や労働力調査等を実施し、都内で働く人々 の就業実態の把握を行い、その結果を公表しています。
 今後とも、都内で働く人々 の適切な実態把握に努めていきます。

A2 採用枠等は、個々の企業の経営判断によるものです。
 都は、若年者雇用に関する理解を得るため、中小企業団体等と連携して、「企業向けセミナー」を開催しています。

A3 国では、労働関係法令や指針等に基づき、就業実態や処遇の均衡を考慮して、雇用管理の改善に取り組むことを事業主に求めています。
 都においては、大企業も含め、都内企業への法令等の普及啓発を図っているほか、非正規労働者の雇用環境の改善に取り組む中小企業に対して、平成18 年度から、制度融資や専門家派遣などで支援しています。

A4 都はこれまでも、障害者多数雇用企業に対して優先指名などの措置を行っています。
 若年者雇用や子育て支援などについては、その取組に対する基準が確立されていないことや公正性、競争性の確保の観点から、慎重な対応が必要であると考えています。

A5 都は、若者の就業を推進するため、東京しごとセンターに「ヤングコーナー」を設け、各種セミナーやカウンセリングをはじめ、合同面接会の開催等の様々 な就業支援事業を実施しています。なお、一定期間職につけない若者に対する都独自の緊急雇用事業を創設する考えはありません。
 また、都の職員の採用は、事業執行に必要な人員の確保、職員の退職動向などを総合的に勘案して行っています。
現在、都では、「行財政改革実行プログラム」に基づき、内部努力として平成19 年度から平成21 年度までの3 年間で4 , 000 人程度の職員定数の削減に取り組むこととしています。
 今後とも都の職員の採用については、内部努力を継続しつつ、事業動向などにも留意しながら、適切に対応していきます。

A6 都では「新・元気を出せ商店街事業」で空き店舗の改修や家賃を商店街に補助しています。また、創業に関する各種問い合わせに対応する「創業相談」、創業に必要な知識を学ぶ「TOKYO 起業塾」、制度融資における「創業融資」など、様々 な支援事業を状況に応じてきめ細やかに展開しています。

A7 都は、東京しごとセンターにおいて、パート・アルバイト等の離転職者を含むすペての年齢層の方を対象に、カウンセリングからセミナーの受講、ハローワークや民間事業者との連携による職業紹介まで一貫して、仕事に関する各種サービスを提供しています。

A8 都は、平成19 年度から、多摩地域にしごとセンターの拠点を設け、全年齢層を対象としたカウンセリングや職業紹介などのサービスを行い、就業の促進に向けて取り組んでいきます。
なお、ハローワーク等の有する求人情報については、すでにインターネットで検索・閲覧できるサービスが実施されています。

A9 都は、平成18 年7 月に東京しごとセンターに「若者しごとホットライン」を開設し、若者の就業に関する各種相談に電話で応じています。さらに、東京しごとセンターに配置している就職支援アドバイザーが、担当制により、きめ細かなアドバイスや就職活動の支援を行っています。

A10 現在、首都大学東京において、大都市で活躍する人材の育成を目指し、学生を対象に自己の適性・志向を的確に把握し、職業観の醸成を図るとともに、自らの将来像を描き行動するカを育成するための教育プログラムの開発を進めています。

A11 都内の最低賃金は、法に基づき、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力を考慮し、東京地方最低賃金審議会の審議を経て東京労働局長が決定しており、都として独自基準を設定するなどの考えはありません。

A12 既に都内の住宅の数が世帯数を1 割以上上回っており、さらに将来の人口減少社会の到来が見込まれていることなどを踏まえ、都営住宅については、新規の建設を行わずに、ストックを活用して、公平かつ的確に供給することとしています。
 子育て世帯に対しては、期限付き入居の導入、収入基準の緩和などにより、入居促進に配慮しているところです。
また、若年単身者については、公営住宅法上、施策対象外となっており、都としても、高齢単身者などに比ペ、市場での住宅確保が容易であることから、都営住宅の施策対象とすることは考えていません。

A13 家賃助成については、生活保護制度との関係や財政負担のあり方など、多くの課題があることから、都として創設することは考えていません。
 また、住宅手当制度は、企業自らが決定するものであり、都が補助すペきものとは考えていません。

以上