過去のページ

2007年第1回定例会 文 書 質 問趣意書

中野区の小児救急医療の危機打開への支援を

2007年3月7日 植木こうじ(中野区選出)

 医師不足が深刻な社会問題になっています。とりわけ、乳幼児の命と健康を守る小児科医の確保は急務です。
 中野区では、区内でただひとつ365日24時間対応の小児救急を実施していた中野総合病院が、小児科医不足のため小児病棟を維持できなくなり、二次救急も対応できなくなりました。同病院は、中野区医師会と協力して、小児初期救急と二次救急をくみあわせて軽症から検査、入院まで対応する「中野方式」といわれる先進的な体制を構築し、実績をあげていました。
 その中野総合病院の小児二次救急が維持できなくなり、中野区内から休日・夜間の小児救急に対応できる病院がなくなってしまったことは、区と区医師会、そしてなにより区民にとって大問題になっています。
 私は先日、中野総合病院を訪問して実情を伺ってきました。病院では、「これまでは大学病院との連携によって医師の体制を組むことができましたが、大学側も研修医制度の影響もあって医師不足が深刻になり、他の病院への派遣ができなくなってしまいました。独自に医師を確保するなど努力をしてきましたが、残された医師の負担が重くなり、やむなく小児二次救急を断念せざるをえませんでした」と語っていました。
 
中野区が属している区西部医療圏で小児休日全夜間救急を実施している病院は5か所ですが、いずれも新宿区の大学病院、国立病院です。人口30万人の中野区がゼロ、人口51万人の杉並区もゼロです。
 40度の熱で脱水状態になった乳児が、三か所の大学病院が一杯で断られて4か所目の大学病院でようやく受け入れてもらうことができて一命をとりとめることができましたが、診療してもらうまで3時間もかかったということもおきています。

Q 東京都は都内60か所に小児休日全夜間救急を整備するとしていますが、区西部医療圏は6か所から5か所に後退し、中野区は1か所がゼロになっています。深刻な事態であり、早急に打開する必要があると思いますが、都の認識を伺います。

 中野総合病院の小児科は現在、外来のみで、平日午後7時から10時までの平日準夜間の小児初期救急については、中野総合病院の医師と医師会の19名の医師により維持しています。しかし、小児病棟がなくなることを予告してから、小児科外来、準夜間救急ともに、急速に患者数が減っています。やはり多くの区民は、初期救急と検査・入院の両方が一か所でできる「中野方式」の再開を期待しているのです。
 同病院では、地域住民の医療をまもるため、小児科医をなんとかして確保し、休日全夜間救急を再開したいと努力をつづけています。しかし、「医師確保のための広告費や人件費などがたいへんで、一病院の努力で小児二次救急を再開するのは困難だ」と訴えています。

Q こうした民間医療機関の小児科医確保に対し、都として助成をおこなうなどの支援が必要だと考えますが、どうですか。

Q たとえば三重県は、県の職員として医師を確保し、県内の医療機関に派遣するドクター・プール制度を実施しています。長崎県や北海道にも、医師の派遣制度があります。都としても、島しょ対策だけでなく、医師不足に苦しんでいる民間病院や公立病院に対する医師派遣制度を創設することを提案するものです。見解を伺います。

Q 八王子市では、都立八王子小児病院が小児休日全夜間救急を実施しているほか、東京医大八王子医療センターが偶数日、東海大学八王子病院が奇数日を担当するという分担方式で実施しています。こういう複数の病院が連携した方法で小児休日全夜間救急を再開することも緊急対策として有効だと思いますが、どうですか。

 飯田橋にある東京警察病院が、中野区に移転する計画で、新病院の建設をすすめています。区民からも、区医師会からも、同病院で小児二次救急をおこなってほしいという切実な声があがっています。
 私は2月19日に、日本共産党中野区議団とともに東京警察病院の新病院建設委員長を担当している病院副委員長を訪ね、新病院で小児二次救急を実施してほしいとの申し入れをおこないました。
新病院では小児科外来を開設することにしているが、「小児二次救急の体制を整えることは難しい」と答えました。話し合いの中で、「小児救急の必要性は認識している。医師不足の問題など多くの課題がある。将来の課題です」と話していました。

Q 中野区に開設予定の新しい東京警察病院において、休日・全夜間対応の小児二次救急を実施することは重要な意義があると思いますが、どうですか。また、都としても実施に向け働きかけていただきたい。答弁を求めます。

Q 都は病院が実施する小児休日・全夜間救急に対し病床確保などの財政支援をおこなっていますが、実態に見合ったものとなっていません。小児医療をめぐる今日のきびしい環境の下で目標の60か所を実現するには、思い切った拡充が必要です。私は、初期救急から検査・入院まで対応できる「小児救急医療センター」の整備・運営を支援する事業として抜本的に拡充することを提案するものですが、どうですか。

Q 中野区は、医師会や区民のつよい要望もあり、準夜初期救急の予算を拡充し、今年の4月から、これまでの平日だけでなく土曜、日曜も加えた体制整備の努力をしています。こうした小児初期救急体制整備に向けた区市町村のとりくみに対する都の運営費補助、整備費補助についても拡充することを求めるものです。見解を伺います。

 都は来年度予算で、大学病院等が、都内に不足する診療科を志望する後期臨床研修医を確保した場合に指導経費等を補助し、都における将来の専門医確保をはかる「東京シニアレジデント」や、都立病院における臨床研修医制度を整備・拡充する「都立病院医師アカデミー(仮称)」をもりこみましたが、小児科、産科などの医師の育成・確保対策については、いっそうの拡充が求められています。
 たとえば、医学生に対する奨学金制度は群馬県、長野県、和歌山県、鳥取県、山口県、宮崎県などが実施し、県内の医療機関に就職した場合は返済免除にするなど、地元への定着を図る努力をしています。
 三重県や宮城県は、地元の大学医学部に地域医療の寄付講座を開設しています。東京都も、都内の大学医学部に、地域医療、小児救急などの寄付講座を開設し、都が必要としている医療人材を積極的に育成してはどうでしょうか。
 山形県、愛知県、京都府、山口県などは、離職している医師の再就職を支援する無料職業相談所ドクターバンク事業を実施しています。なかでも京都府は、離職した女性医師対象の女性医師バンク、定年退職した熟練医師が対象のベテラン医師バンクなど、きめ細かい対応をしています。

Q こうした全国のとりくみも参考にして、都として小児科・産科医師育成奨学金、大学寄付講座、ドクターバンクの実施など、医師確保対策のいっそうの拡充にふみだすことを提案するものですが、答弁を求めます。

 また、小児科の医師は、女性医師のしめる割合が高いことが特徴であり、女性医師が働きつづけられる環境整備が重要です。

Q 都内の医療機関で働く女性医師の妊娠中の当直免除や、産休中の身分保障、育児休暇をとった医師の代替要員確保と現場復帰の保障、院内保育所整備など、女性医師の仕事と家庭の両立支援に、都としてとりくむことを提案するものですが、どうですか。

 これほど医師不足が深刻になった要因のおおもとには、政府が医療費適正化の名で、医師の養成を抑制してきたことにあります。政府はいまだに「医師は充足している」としていますが、大きな間違いです。日本の医師数は人口10万人あたり200人に対し、OECD加盟国の平均は310人で、OECD加盟30か国中、日本は27位という低い水準です。
 最近政府は、世論の高まりをうけて従来の立場を修正し、暫定的に医学部の定員増を認める方向をうちだしましたが、対象は10県にかぎられ、それも将来分の前倒しにすぎず、のちに定員削減を求められます。これでは、深刻な事態の根本的打開はできません。

Q 都として政府に対し、大学医学部の定員を大幅に増やし医師の計画的な増員をはかること、小児科、小児救急の診療報酬をひきあげることを要請すべきと考えますが、答弁を求めるものです。

以 上