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文書質問趣意書

ワンダーサイト事業の抜本的見直しについて

2007年6月25日
吉田信夫 (杉並区選出)

 石原知事によるワンダーサイト事業にみられる異常なまでの四男重用は、都政を私物化するものとして、超豪華海外出張での税金浪費の問題とともに都民から厳しい批判がよせられました。先の都知事選挙では、石原知事は「説明不足」という限定的いいかたであるものの、都民にたいし「反省」を強調せざるをえませんでした。都民は、知事の「反省」という発言がいかに実行されているのか注目しており、知事の態度が問われています。

 こうした観点から、ワンダーサイト事業について、人事やあり方の抜本的見直しをどのようにすすめていくのか、何点かうかがいます。

 知事は、知事選のなかで「反省」を強調したにもかかわらず、選挙直後から「根も葉もないアンフェアなバッシングがあった」と繰り返しのべています。そうした態度に、マスコミからも「反省の弁」は「本当か、ただの演出だったのか」などの疑問の声があがりました。

 ワンダーサイト事業は、その立ち上げから館長などの人選、さらに「能オペラ」の企画をはじめ運営に知事の四男が深くかかわって進められました。また四男のために架空の肩書きで名刺を発注し、公共芸術分野の代表として四男を国際会議の代表にし、ダボス会議での「東京ナイト」(知事主催レセプション)の背景画を四男に発注し公費による海外出張まで行わせるなど、異常なまでの四男優遇策がとられました。こうした点について、わが党だけでなく、マスコミからも批判があたったのは当然のことです。

Q1 選挙での「反省」はいつわりだったのですか、わが党やマスコミからの批判のどの点が「根も葉もないアンフェアなバッシング」といのですか、四男と今村夫妻を重用した都政私物化はなかったというのですか、お答えください。

Q2 ワンダーサイト事業は、企画した「能オペラ」は準備の不十分から中止となりそのために財政補填を余儀なくされるという事態や、館長らの飲食にまで公費を使うなど、きわめて乱脈な運営が行われてきました。知事自身も運営に不十分な点があったことは認めざるをえませんでした。乱脈な運営は、何よりも館長、副館長(当時)によって行われたものであり、その責任は見過ごせません。人事の刷新をはかるべきです。

Q3 館長、副館長の人事は、事実上知事のトップダウンによって行われたものであり、知事の責任が問われる問題です。

 ワンダーサイト館長の今村有策氏は、知事によって参与にも委嘱され月額33万円の報酬が支払われています。参与に委嘱するなら、専門分野での深い造詣と豊かな経験が当然求められます。しかも、委嘱を継続するなら、それまでの委嘱をうけた期間における助言等の実績が問われなければなりません。
 今村氏は、ワンダーサイト館長としての乱脈な運営を進めた責任こそ問われるべきであり、参与として継続することに都民の理解は到底得られないものです。にもかかわらず知事は、3期目のスタートとともに、今村氏を文化分野での助言者として参与に委嘱しました。

Q4 過去1年間の委嘱期間に、知事にたいし、どのような助言をおこなってきたのか、その経過、実績について示していただきたい。
 また、ワンダーサイトをめぐる運営の責任からみても、参与継続の資格はないと思いますが、どのように判断したのですか。

 ワンダーサイト事業のあり方も抜本的な再検討が必要と考えます。ワンダーサイトは本郷での若手芸術家育成のための展覧会場の提供からスタートしましたが、その後おもに企画展をすすめる渋谷、昨年には海外芸術家の滞在施設としての青山が開設されました。

Q5 しかし実際の利用状況をみると、公費による展開でありながら、入場者は少なく、施設の利用者も少ない状況が見られます。現状をまず、明らかにし、3施設のあり方の抜本的再検討が必要と考えます。そこで、今年1月から5月末までの5ヶ月における、3施設それぞれの1日当たり入場者数(重複はさけ)、公募による若手芸術家展示会の回数、さらに青山での海外芸術家の滞在者数、のべ利用回数、宿泊施設の稼動率を示していただきたい。
 また、海外芸術家にたいし往復旅費を支出した事例があれば、事例とその理由、支出した費用を示していただきたい。

 都は、ワンダーサイトについて既存の3施設についで、第4の施設まで準備をしていますが、いまなすべきことは、新たな拡大は中止し、ワンダーサイト事業全体の再検討を行うことです。

Q6 若手芸術家育成の事業では、この分野で豊かな実績をもち、専門的人材も有する都立現代美術館の役割が重要です。ワンダーサイト事業は現代美術館事業に統合し、これ以上の税金のムダ使いはやめるべきではありませんか。

吉田信夫議員の文書質問に対する答弁書

回答1 トーキョーワンダーサイトの運営については、立ち上がり当初には若干の混乱もあり、都民の皆様に誤解を招いた点もありましたが、組織、人事を順次、強化することですでに改善しており、お話しのような、都政私物化にあたる事実はありません。

回答2 トーキョーワンダーサイト事業については、東京都歴史文化財団に事業移管するなど、運営の改善を図っており、これまでの事業の実施においても、不適正な支出がなかったことを、調査の上、確認しています。
 さらに、平成19年1月以降、組織、人事体制を整備したほか、学識経験者等からなる、トーキョーワンダーサイト運営諮問委員会や、滞在アーティスト選考委員会を設置するなど、着実な事務事業執行体制の構築を図っています。
 引き続き、事業の積極的かつ適正な運営に努めていきます。

回答3 館長の今村有策氏は、建築家として、これまで、美術館等の基本設計や運営コンセプトの構築に関わってきた経験を有しています。
館の運営に当たっては、豊富な知識や発想、行動力などを発揮して、新しい試みを積極的に行っており、若手芸術家の育成に取り組んでいます。
 民間の優秀な人材を知事の責任で任命し、都政に役立てていくのは当然のことと考えています。

回答4 参与の今村有策氏は、平成18年度において、東京都文化振興指針の策定、指針を踏まえた重点事業の計画策定、東京芸術文化評議会の新規設置など、文化政策のための助言・進言等を行いました。
 今後も、「10年後の東京」の実現に向けた文化政策のあり方や、重点事業の実施・見直しなどについて、文化施策に知見を有する今村参与の助言・進言等が必要であると判断しています。

回答5 平成19年1月から5月末までにおける、本郷の開館日数は96日、入場者数は3,310人、1日当たりの入場者数は約34人、渋谷の開館日数は103日、入場者数は6,712人、1日当たりの入場者数は約65人、青山は基本的に展示施設ではありませんが、アーティストトークなどの事業の開催日数は24日、入場者数は467人、1日当たりの入場者数は約19人です。
 また、同期間における公募による若手芸術家展示会の回数は、本郷が3回、渋谷が1回です。
 青山は開設して間もないこともあり、同期間の芸術家の滞在者数は海外芸術家25人を含む30人で、延べ利用回数は416回、宿泊施設の理論上の最大利用可能回数2,416回に占める利用率は約17パーセントとなっていますが、4月以降に限った利用率は約23パーセントと上昇傾向にあります。
 同期間における海外芸術家に対する旅費については、滞在・交流拠点事業と協働スタジオプログラム事業、二国間交流プログラム事業で支出していますが、いずれも、トーキョーワンダーサイトの実施する事業において、ワークショップやイベント等の滞在・交流事業を行った芸術家13人に対して支出したもので、旅費の合計金額は約207万円です。

回答6 トーキョーワンダーサイトでは、まだ評価の定まっていない若手作家の発掘・育成に取り組んでおり、一定の評価を得ている作家・作品を扱う既存の美術館等とは異なる役割を果たしています。
 都の遊休施設を使ってスタートしたトーキョーワンダーサイトは、今や国際的にも注目される活動拠点になり、ここから、海外で活躍したり、作品に市場で値段がつく作家も出てくるなど、着実に成果が上がっています。
 平成18年に開設した青山の施設においても、海外のアーティストも呼び込んで交流を始めており、今後ともトーキョーワンダーサイトを東京の文化発信の先鋒として、積極的に事業展開していきます。

以上