過去のページ

文書質問趣意書

築地市場の豊洲移転問題について

2007年12月17日
小竹 ひろ子(文京区選出)

 東京都中央卸売市場築地市場を土壌汚染が激しい東京ガス工場跡地の豊洲へ移転する計画について、私たちは9月に農林水産省、環境省へヒアリングにいきましたが、環境省の見解は「食品の安全・安心確保という点では、土壌対策汚染法の範囲を超えている」というものです。農水省の見解は「移転の整備計画を審議した2005年3月の審議会では、豊洲は土壌汚染地との認識はなかった。流通の観点からのみ判断した」「土壌汚染対策法は食品の安全を担保するものではない」というものです。

 一方、石原知事も、2007年の第1回定例会2月26日の予算特別委員会で「もとより食の安全・安心を確保するのは、生鮮食品を扱う市場の基本的、もう絶対的な使命であります」と言っています。

 2004年に東京都が実施した「食品の購買意識に関する世論調査」によると、消費者も卸売市場にたいして望むものは「食品の安全・衛生対策の徹底」が79%でトップです。

 第8次中央卸売市場整備計画でも「消費者からの食の安全・安心に対する関心の高まりへの対応が求められている」と書かれています。
 移転先の豊洲の市場設備で、HCCAPシステム、トレーサビリティ・システムの導入など、市場内の衛生対策に力を入れるとしていますが、いくらそのような設備投資をしたところで、もっとも肝心な市場設置場所が土壌汚染の状態では、このような衛生対策も根底から崩れてしまいます。

 首都直下型地震は必ずあるわけですから、その時、豊洲は液状化現象で基盤は崩壊し、汚染物質も吹き出し、生鮮食品流通はストップすることは明らかです。地震以前にも、地中の土壌や地下水に残っているベンゼン等揮発性汚染物質がガスとなって噴出すなど、いつその影響がでるかわからないという危険な場所です。

Q1 このように、食の安全の確保が重大な疑義が指摘されているところに、都、国の基幹市場である築地市場を豊洲に移転すべきではありません。答弁を。

 これまで豊洲市場建設にあたって、都は莫大な財政投入をしてきました。すでに、護岸工事、用地取得などで980億円を投入しています。今後明らかにされているものでは、土壌汚染対策670億円、用地取得1650億円など3400億円以上が投入される予定になっています。知事は、さらに側方流動対策を追加することを明らかにしています。
 土壌汚染地を購入しようとするために、資金投入額が莫大にふくれあがるばかりか、今後も土壌汚染対策で税金投入がどうなるかは明確ではありません。

Q2 いったい、これから中央卸売市場はいくら負担することになるのですか。その市場会計の支出は、何によってまかなうのですか。一般会計などからの負担は、どのようになるのですか。伺います。

Q3 また、豊洲移転に係わる都財政投入の全貌を都民にあきらかにすべきではありませんか。答弁を。

 中央卸売市場がやろうとしている追加調査について、発注業者への仕様書によって問題点が明らかになっています。
 また、都は土壌汚染対策予算を、未だ汚染状態がはっきりしていないにもかかわらず、その枠を決めました。また、先に移転ありきで、きわめて問題です。さらに、汚染対策費の枠をあらかじめ決めてしまうということになり、今後必要となる対策の検討を遮断してしまうことになり、土壌汚染対策が費用の面から不十分なものになる可能性がはっきりしてきました。多額の都財政を投入して移転することは、都民にはとても理解を得られません。

 第1に、本来なら調査は、どのようにおこなうのか、調査の正確性をどう確保するのか、調査結果から何をどう導き出すかなど、十分な議論をおこない、調査を実のあるものにしていく必要があります。ところが、これまでの経過も踏まえずに、準備も、調査も、分析もきわめて短期間です。これでは、移転先にありきの調査になっています。
仕様書を見ると、随所に「監督員と協議して決定」「監督員と適宜打ち合わせ」などとあり、その時々の現場監督の裁量性を伴う指示で調査がやられます。このような調査では、統一した基準のもとで汚染の実態を正確に把握することはできません。

Q4 調査の正確性の確保は最低限の問題です。準備、調査、分析に充分な時間をとること。統一した基準で裁量の余地のないきちんとした調査にすべきです。答弁を求めます。

 第2に、東京都が調査会社に発注する仕様書を見ると、地質調査業務は「第1不透水層上端まで」になっています。
 第4回専門家会議に報告された「地下水・土壌の調査結果」を見ると、不透水層面がずれている可能性があることが明らかです。にもかかわらず、2008年調査は、こうした地層がどうなっているかを正確に把握する地質調査をやりません。これでは不透水層の地形を把握できない上に、汚染物質がどこまで浸透し広がっているのかわからないまま、汚染物質を封じ込めるという無謀な計画といわなければなりません。
 さらに、粘土層下の汚染状態を把握できません。長期にわたって高濃度の汚染があった場合は、粘土層も通過して汚染が浸透している可能性があると、専門家の間でも言われていることです。粘土層の下の汚染状態を調査せずして、汚染を封じ込めるなど危険きわまりない状況です。

Q5 不透水層下が安全とする根拠はなにか。不透水層の地質調査及び、第2不透水層までの汚染状況の調査はきちんとすべきであり、それを都民に公表すべきです。答弁を求めます。

 第3に、豊洲跡地では雨が降ると必ず長期間にわたって地表に雨水がたまっています。
地下水面が非常に高い証拠です。したがって、すでに覆土や盛土についても2次汚染されている可能性が非常に高いと考えられます。にもかかわらず、覆土した表層土の汚染調査を抜いています。季節変動も見ることができません。雨の多少によって汚染がどう変動するか。季節によって、地下水質や水位がどう変化するのかも見ていません。
 追加調査で、土壌は複雑な汚染状態にあることはわかったわけですが、すべての調査地点で土壌について深度方向の汚染調査をすることになっていません。深度方向の汚染状況をつかまずに行われる汚染対策は、きわめて危険です。

Q6 敷地全域について表層土壌を含め、深度方向に1bごとに土壌及び、地下水の調査を行うことは汚染の全容を把握する上で不可欠です。見解を伺います。

 さらには、環境学会からのクロス調査の要望も拒否し、都が行う調査以外調査を認めない姿勢を固持していることは、調査の公正・透明性確保の上でも問題です。

Q7 このように多くの問題がある調査では、汚染のメカニズムを正確につかめません。今後、汚染がどのようになっていくかの予測も不十分なものになります。それに基づく対策は当然不十分なものでしかなく、そのリスク管理では都民の納得は得られません。汚染実態の全容が明らかになる詳細調査を、土壌・地下水でも行うべきだと考えます。答弁を。

Q8 土壌汚染調査方法について、参考とする事例はいくつもあります。例えば、イタイイタイ病の神岡汚染で被害者住民団体と企業側が、同一サンプルをとって、別々に測定値を比較しています。豊洲の土壌汚染調査についても、すくなくとも、同じ調査地点を複数の会社が調査する、環境学会にもサンプルを提供するなど、クロスチェックを認めるよう求めます。答弁を。

 東京都の豊洲の土壌汚染対策の基本的考え方は、汚染物質を封じ込めてモニタリング調査をするというリスク管理の立場にたっています。リスク管理だけでは限界があり、専門家が「予防」の立場での対策を提案します。
 しかも、汚染物質を封じ込めるというなら汚染状態を正確に把握する必要があります。現状がどのようになっているかを正確に把握せずに、汚染物質の「封じ込め」を行ったら将来に禍根を残すことになります。
 熊本・新潟の水俣病、富山のイタイイタイ病など四大公害病裁判では、厳しく企業責任を追及し、合わせて行政に対しても強い反省を求めるものになっています。たとえば、四日市裁判の判決では、「人間の生命・身体に危険のあることを知りうる汚染物質の排出については、企業の経済性を度外視して、世界の最高の技術・知識を動員して、防止措置を講ずべき」「いかなる手段をとっても被害者を出すことは許されない」というものです。
これは「四大公害裁判の教訓」として、環境省の「環境白書」でも紹介されていることです。

Q9 四大公害裁判の教訓を生かし、世界の最高の技術・知識を動員して防止措置を講ずるという立場にたつなら、追加調査や対策のあり方、この精神に立つべきです。見解を求めます。

 「中央卸売市場事業概要」では、仲卸業者について「市場機構の中心をなすもの」「価格を形成するという重要な機能を有している」としています。このような役割をもった仲卸業者の協力無くして、市場の重要な機能である「公正な価格形成」「分荷」など、生鮮食料品等の円滑な流通を確保することはできません。
 都は、仲卸業者の団体である東卸組合に対し、12月3日〜12月8日まで業界別説明会を行っています。出席した市場関係者の方々は「築地の再整備はありえない」「移転先にありき」の都の一方的な説明で、これで「安全安心保てるのか」と都側の移転押し付けの姿勢に怒りが広がっています。このようなことでは、関係者の協力のもとで、市場を活性化することはできません。

Q10 東卸関係者のアンケート結果、東京都中央市場労働組合のアンケート調査でも青果の仲卸業者の合意は得られていないことは明らかです。農林水産省は、わが党の笠井亮衆議院議員の質問にたいして「中央卸売市場の移転や運営について、市場関係者や消費者の理解等を得ることは重要であると認識している」と答弁しています。東京都中央卸売市場は、国からどのような指摘、もしくは助言を受けていますか。答弁を。

 10mメッシュの「詳細調査」による土壌・地下水の汚染実態も明らかになる前に、都は従来のリスク管理による対策で行うことを表明していますが、汚染があるところをそのままにして封じ込めるという対策は、未来永劫大丈夫というものではありません。永久的に汚染状況をモニタリング調査をしていく専門家による観測体制をとることが必要不可欠になります。この土地から排出される水の浄化も、継続していく必要が最低あります。このような状態で移転することに、都民の合意を得られる考えているのですか。

 この点では、同じ東京ガス工場跡地を調査・対策をしている港区と大きな違いがあります。港区では、公共施設建設するに当たって汚染物質がなくなる所まで、深度方向を調査し汚染土壌を除去して、地下水も管理する対策を行っています。都の姿勢と大違いです。汚染実態の全容が明らかになる前に、対策を言うことは「移転先にありき」の姿勢です。
 このような危険な地域への築地市場の移転は中止すべきであることを強く求めます。

回答

A1 豊洲新市場予定地での土壌汚染対策については、専門家会議の提言に基づき、敷地全域にわたり、10 メートルメッシュで土壌と地下水の調査を行うこととしました。
 この調査と並行して、専門家会議では、汚染物質の特定と除去、盛土等による封じ込め、地下水の管理のほか、震災対策など、必要な対策についても検討が進められており、平成20年度の前半には、具体的な提言がなされます。
 今後、この提言を確実に実施し、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策に万全を期すことにより、都民が安心できる市場として早期に開場させていきます。

A2 豊洲新市場の整備に要する事業費は、市場施設の建設や新市場予定地の取得、土壌汚染対策に要する経費など、開場後の運営に係る経費を除いた整備費の総額を約4,4 0 0億円と見込んでいます。
 このうち、これまでに執行した事業費は、豊洲地区への移転を決定した、平成13年度から18年度までの6年間で、用地取得費など、合計約980億円となっています。
 したがって、平成19年度以降の執行予定額を約3,420億円と見込んでいます。
 なお、財源については、国庫支出金や企業債のほか、中央卸売市場会計が保有する損益勘定留保資金などで賄う計画です。

A3 豊洲新市場整備に要する事業費の財源については、一般会計などによる負担は予定していません。

A4 今回実施する土壌・地下水調査の内容については、専門家会議で十分議論され、決定したものです。
 この調査に必要な期間については、都建設局積算基準に基づき算定しています。また、採取・分析方法については、土壌汚染対策法及び環境確保条例で定める土壌汚染対策指針に準じたものです。
 したがって、この調査は、十分な議論を踏まえて内容を決定したものであり、調査の期間や手法についても、基準や指針に則っています。
 なお、調査に当たっては、監督員は作業手順や工程調整などについて受託業者や関係機関と打合せや協議を行いますが、これらの打合せで調査内容が決定されるものではありません。

A5 専門家会議において、関東地方の地層や土質に詳しい委員から、豊洲新市場予定地で不透水層を形成している粘土層は、水を通しにくく、汚染されている可能性は低いとの意見をいただいており、不透水層及び不透水層より下を調査する考えはありません。

A6 今回行う地下水調査は、専門家の科学的知見に基づき選定された手法であり、地中に有害物質があれば、地下水中に物質が溶け出すことから、地下水位の上端から不透水層までの中間地点で地下水を採取し分析することで、その地点の汚染状況を把握することができます。
 また、合わせて表層の土壌調査を実施し、さらに、土壌または地下水で高濃度の汚染が検出されたか所で、1 メートル間隔で深度方向について土壌調査を行うとともに、旧地盤面から上の覆土についても調査を実施します。
 専門家会議では、これらの調査を敷地全域で行うことから、豊洲新市場予定地の汚染状況の全容を把握することができるとしています。

A7 豊洲新市場予定地の敷地全域で、地下水調査と表層の土壌調査、さらに、高濃度の汚染が検出されたか所では、1 メートル間隔で深度方向と覆土の土壌調査を実施することから、汚染状況の全容を把握することができます。

A8 土壌汚染調査に当たっては、調査データの信頼性を確保していくことが重要であると考えています。
 このため、調査地点、調査方法、分析機関、調査結果等のすべての内容を公表します。また、分析は複数の機関で実施するため、同一の試料を各調査機関に分析させ、その結果を照合することで分析の精度を確保していきます。
 なお、約4,100か所の調査を都以外の者が同時に行うことは現実的ではなく、クロスチェックは考えていません。

A9 専門家会議は、有害物質、水質、土質、環境保健の各分野で国内有数の知識と経験を有する専門家から構成されており、現在、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策について、最新の知見や技術に基づいた検討を行っています。

A10 中央卸売市場の移転や運営に当たって、市場関係者などの理解を得ていくことについては、開設者として当然必要なことであると認識しており、国も同様に考えています。
 このため、都は、これまで、水産、青果の仲卸組合を含め、市場業界団体に対して検討会や説明会などを開催し、移転の必要性や土壌汚染対策等についてきめ細かく説明してきました。
 今後は、こうしたことに加え、小規模な説明会を開催するなどの試みも行い、市場関係者の理解がより一層得られるよう努めていきます。

A11 専門家会議では、土壌汚染対策として、汚染物質の特定と除去、盛土等による封じ込めなどのほか、施設完成後においても地下水の水位及び水質を継続的に監視し、地下水位を一定に保っなどの対策を議論しています。
 これらの対策は、法令が求める対策と照らしても、安全性を確保する上で、極めて手厚いものとなっています。
 今後、専門家会議の提言に基づく土壌汚染対策を確実に実施することにより、都民が安心できる市場として開場させていきます。

以上