過去のページ

文書質問趣意書

2007年12月17日
村松 みえ子(日野市選出)

一、東村山3・4・11号線について

1、「東村山3・4・11号線」事業の中止について

 東京都は平成18年4月「多摩地域における都市計画道路の整備方針」(第三次事業計画)を発表し、その中に突如「東村山3・4・11号線」を優先整備路線として発表しました。
 この計画路線は、都立東村山老人ホームを分断し、幅16メートルの大型道路を建設するというものです。敷地内には老人ホーム、ナーシングホーム、北部医療センターという「医療と福祉」を兼ね備えた施設があり、絶滅危惧種のキンラン、ギンラン、マヤラン等の貴重な植物が自生している場所です。

 東京都が一昨年11月に開いた「東村山3・4・11号線」地元説明会では、計画の見直し、中止を求める意見が圧倒的で、今後も説明会を開くことを約束していたにも係わらず、その後の説明会を開くことなく、工事着工に向けたキンラン、ギンランの移植作業を11月26日に強行しました。
 東京都が、「東村山3・4・11号線」を優先整備路線として位置づけた理由に交通渋滞を挙げています。しかし、警視庁調査の過去10年間の多摩地域の交通渋滞、「ワーストテン」には、所沢街道の交通渋滞は1度も入っていません。

 私は、11月26日の朝7時30分から8時30分まで所沢街道全生園前の信号付近約300メートルを歩いてみました。走行車の信号待ちの状態はなく、思ったより車の流れがよいことに驚いたほどです。長いこと交通整理をしているという男性や信号待ちしていた女性、バス停で待っていた女性にお話を聞くと、「車は順調に流れている。それより学校に通う生徒のために歩道を整備して欲しい」の声が上がっていました。

地元の議員からお話を伺うと、所沢街道と志木街道を結ぶ秋津町3丁目交差点のスイスイプランの交差点改良事業と久米川町のT字路のスイスイプランの整備で車の流れが大変改善したとのことです。

 東京都が、「東村山3・4・11号線」の建設を強行しようとしている都道226号線から野火止区間の470メートルの雑木林には、500株のキンランをはじめ、ギンラン、マヤランなどが生息し、近隣の皆さんの散歩道としても親しまれています。近隣住民でつくる「東村山老人ホームを分断する3・4・11号線を考える会」と「東村山老人ホーム構内の貴重な植物を保護する会」は、武蔵野の面影の残るこの雑木林をぜひ残して欲しいと訴えております。

Q1 都心に残されたこうした貴重な雑木林を残すことは、喫緊の課題である地球温暖化防止の観点からも非常に重要であると考えるがどうか。

Q2 東村山3・4・11号線の計画を中止し、抜本的見直しを求める。

2、 歩道の拡幅について

 私が現地に行くまでの、タクシーの運転手さんは恩多街道を走りながら「あれを見てくださいよ。いつまでこんな危ないところを子どもが通らなければならないのか」とダンプとダンプが行き交う間をランドセルを背負った小学生が、近くの野火止小学校に通うところを指差して話されました。私もその状況を見て、いつ事故があってもおかしくない場所と非常に危険性を感じました。
 むしろ今、やるべきことは、恩多街道都道226号線の改善です。

Q3 恩多街道都道226号線の歩道拡幅をただちに着手すべきです。また、所沢街道の歩道整備を急ぐことです。

Q4 青葉町4丁目全生園前の交差点改良事業を急ぐべきと思うがどうか。

二、南山開発について

 私は、昨年の第4回定例会で提出した文書質問で、稲城市の南山開発について、地震時の危険と、自然破壊について、東京都の姿勢を質しました。これに対して、都は適正に対処しているなどとして、開発を強行する姿勢を変えようとしていません。
 しかし、この間にも、温室効果ガスによる地球温暖化の影響は深刻さを増し、地球環境保全に関する認識と取り組みの緊急性は増すばかりです。東京都自身、「10年後の東京」において、環境重視を打ち出し、1000haの緑の創出を打ち出さざるを得なくなっています。

 例えば、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書は、地球温暖化の原因が人間の活動によるものであることをほぼ断定し、このまま温室効果ガスの排出を続けるのなら「回復不能な影響」により人類の生存が脅かされると警告しています。
特に東京は、地球全体が過去100年間で0,74度の気温上昇に対し、3度も上昇しているのですからヒートアイランド対策は喫緊の課題です。温暖化防止、ヒートアイランド対策の決め手は、経済活動の抜本的な見直しと、二酸化炭素を吸収し、冷却効果を持つ緑地を増やすことであり、少なくともこれ以上の都内の緑地を削減することは避けなければなりません。

Q5 知事、一方で88haの海の森をつくるといいながら、それに匹敵する87ヘクタールもの南山の緑地を開発にさらして、そのみどりを失わせることを認めるのですか。回答を求めます。

 前回の文書質問でも指摘しましたが、南山はオオタカやサンショウウオなど、希少動植物が生息する東京にわずかに残された里山であり、その保全は何をおいてもおこなわなければならいものです。ところが、区画整理組合は、サンショウウオとオオタカの奥畑谷戸への移動を行う計画をすすめているとのことで、住民から心配の声が寄せられています。

Q6 これは、環境局が条件とした「5つの特記条件」を逸脱するものと考えます。至急、区画整理組合に移動計画中止を求め環境保護の立場から指導すべきと考えます。

Q7 東京都自然保護審議会の自然保護委員会に提案し、意見を求めるべきと考えますがどうか。

 もう一つの問題は、里山をきり崩し、谷を埋めることで造成される宅地の危険の問題です。
 この点についても、第4回定例会の文書質問で、「南山開発事業は開発地内で土砂の処理をし、地区外に持ち出さないことから最大30メートル山を崩し、その土砂で谷を最大35メートル埋め立てる計画であること。稲城砂層は、雨水を大量に含むと流動化を起こし、大地震の時は、中越地震や宮城県沖地震の被害を上回る影響がある」と質したのに対して、東京都は、「中越地震等の災害状況を踏まえ、大地震時の滑動崩落等の被害防止に関する技術的基準が宅地造成等規制法施行例に追加された」と答弁。
 その後、南山東部土地区画整理組合に「造成工事検討委員会」の設置を指導し、南山東部土地区画整理組合は、今年7月「検討委員会答申書」を東京都に提出されました。
 それによると、施工にあたって液状化対策、盛土内の地下水対策、徹底した排水対策など様々な提案が検討委員会から提出されています。

 たとえば、排水対策として、厚さ30p毎に排水ブランケットの設置や盛土の高さ9m毎に砕石を敷設する。稲城砂は粒径がそろっているので、締め固めがしにくいので、盛土の締め固め管理をするなどの工事の具体的な提起もされています。また、施工する場合は、盛土内に滞水させないために、雨の日には施工しないこと。など具体的に指摘されています。
 私は、この報告書を土木学会の専門の先生にみていただき、ご意見を伺いました。
 先生は、排水ブランケットの地図を見て、こうした造成は宅地では初めてとしたうえで、「30メートルから40メートルの深さの排水ブランケットはダムをつくるようなもの」と指摘され、問題は、工費が莫大にかかること、施工がこの対策にそって確実に実施されるのか、だといわれました。
 実際に、この工法は都の村山貯水池の堤体工事で採用され、莫大な工事費が投入されたと聞いています。
 そこで、何点か伺います。

Q8 東京都は、検討委員会からの答申について、どのように評価されているのですか。また、この工法にしたがって施工する場合、いくらの工事費がかかるとお考えですか。

Q9 この工事費は、当初の予定額を上回ると予想されます。工事費用はだれが、どのように負担することになるのでしょうか。

Q10 検討委員会の答申どうりの工事がされるかどうか、その保証はどこにあるのか、回答を求めるものです。

 最後に、宅地造成の必要についてです。南山開発の目的は宅地開発とされていますが、お隣の多摩ニュータウンでは、宅地販売がゆきづまりを見せ、開発継続を断念しているではありませんか。また、東京都自身、今定例会の答弁で、住宅のストックは充足している旨の見解を明らかにしています。これらのことから、開発による宅地の供給の必要性は薄く、ましてや貴重な自然とみどりを犠牲にしてまで、おこなわなければならない根拠は見あたりません。

Q11 ただちに東京都の主導で地権者に工事中止を促し、貴重な南山の保全に乗り出すことを強く求めるものです。

回答

A1 現在、西東京市、東久留米市、東村山市を東西方向に結ぶ所沢街道( 都道東京所沢線) がこの地域における主要な道路となっています。
 この所沢街道の多磨全生園付近では1日約17,000台の交通量があり、特に志木街道と交差する秋津町三丁目交差点や都道2 2 6 号線( 都道東村山清瀬線) と交差する全生園前交差点などの混雑が激しく、この混雑を避ける通過交通が周辺の通学路等に進入しています。このため周辺地域の交通の円滑化や歩行者の安全確保を図る必要があり、所沢街道と並行する都市計画道路東村山3 ・4 ・1 1号線の整備は極めて重要です。
 当該路線の計画では、道路が整備されても雑木林のある約17 ヘクタールの東村山老人ホームの敷地は、約9 6 パーセントが残ります。
 また、整備に当たっては、幅の広い歩道を設けるとともに、できるだけ多くの街路樹を植栽し、周辺の自然環境に十分配慮していきます。

A2 都市計画道路東村山3 ・4 ・1 1号線の整備により、所沢街道( 都道東京所沢線) をはじめとする周辺の交通混雑緩和や通学路等における歩行者の安全確保、地域の防災性向上など、大きな効果が期待されています。
 本路線は、東久留米市南町一丁目から東村山市秋津町三丁目に至る延長6.24キロメートル、計画幅員16 メートルの地域幹線道路として整備を順次進めており、現在、約3.6 キロメートルが完成、約0.4 キロメートルが事業中です。
 残る約2.2 キロメートルについては、地元市とともに策定した「第三次事業化計画」において優先的に整備すべき路線として位置付けており、今後とも地元地権者等の理解と協力を得ながら、整備を進めていきます。

A3 都道2 2 6 号線( 都道東村山清瀬線) の歩道拡幅については、平成19 年度から野火止小学校に隣接する区間から事業に着手しており、既に地元説明会を終了し、用地取得を進めています。
 また、所沢街道( 都道東京所沢線) の歩道整備についても、青葉町一丁目交差点から青葉歩道橋付近までの約9 0 0 メートル区間で、平成16年度から用地取得を進めています。

A4 青葉町四丁目全生園前の交差点改良については、現在進めている所沢街道( 都道東京所沢線) の歩道整備事業の中で整備することとしています。

A5 南山東部地区は、「稲城市都市計画マスタープラン」において、都市防災上危険な崖地の解消や既存樹林地、寺社林を活かしたまちづくりを目指すことが位置付けられています。
 南山東部士地区画整理事業は、この都市計画マスタープランに則り、公園、緑地等を適切に配置し、周辺環境と調和した緑豊かで良好なまちづくりを実現するものであり、地区内の土地所有者の発意により進めてきたものです。都は、土地区画整理組合の設立認可申請を受け、法的な要件が整っていることから、平成18 年4 月に認可しました。

A6 保全計画に基づき、土地区画整理組合が行っているトウキョウサンショウウオの谷戸間の移動及び過去にオオタカの繁殖実績がある森での間伐などは、事業執行に際してのそれぞれの生息環境の維持・向上を目 ̄I的とした配慮です。
 この保全計画は、専門家や地元自然保護団体と十分に協議の上策定されたものであり、都として適切な内容であると認識しています。また、特記条件は、保全計画を踏まえた上で、より自然環境に配慮した事業とするために付したものです。

A7 土地区画整理組合が行っているトウキョウサンショウウオ及ぴオオタ力に対する配慮は、専門家や地元自然保護団体と十分に協議の上進めているものであり、その内容についても、都として適切なものであると認識しているので、東京都自然環境保全審議会に付議する予定はありません。

A8 「造成工事検討委員会」の答申は、学識経験者等で構成する委員会が、南山東部土地区画整理事業の造成工事の内容について、技術的な見地からその妥当性を審議し、結果を取りまとめたものです。
 都は、宅地造成等規制法の許可に当たり、この答申も考慮しながら、審査基準等の法令に則り、適正に審査していきます。
 また、工事費については、今後、組合がこの答申を踏まえ、見積もっていくと聞いています。

A9 南山東部土地区画整理事業の造成工事費は、今後、見積りが行われると聞いていますが、その費用については、基本的に組合が保留地処分金を充てることになります。

A10 都は、宅地造成等規制法の許可に当たり、この答申も考慮するとともに許可に係る工事に際しては、法の規定に基づき、技術基準等の適合について検査を行います。

A11 南山東部地区では、地区内に広く分布する崖地において、過去にも土砂崩落事故が発生するなど、崖地崩壊の危険性が高く、その解消が永年の課題となっています。
 こうしたことから、組合は、「稲城市都市計画マスタープラン」に則り、危険な崖地を解消するとともに、既存樹林地、寺社林を活かした、緑豊かで良好なまちづくりを実現するため、土地区画整理事業を進めており、都としても、円滑な事業の推進に向け、引き続き支援を行っていきます。

以上