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第一回定例会 一般質問 二〇〇八年二月二八日

かち佳代子(大田区選出)

都の政策に城南地域のものづくり振興をしっかりと位置づけ、支援を
「環境負荷の少ない都市」にむけ商店街がとりくむ地球温暖化防止活動に支援を

 

「一〇年後の東京」に城南地域の工業が位置づけられていない

 はじめに、城南地域のものづくり支援について伺います。
 今月十四日から三日間、大田区の第十二回工業フェアが、大田区産業プラザPIOで開かれました。私も見学しましたが、百四十社を超える企業や大学、工業高校、研究機関などが参加、新技術、工法、新製品の展示や、東京マイスターを受賞した金属彫刻職人によ実演など「日本を代表するものづくり大田」と言われるにふさわしい会場の雰囲気でした。
 展示ブースでは、携帯電話用のプラスチック精密金型を設計・作成する企業と樹脂部品の試作加工業とのコラボレーションの話や、高度な技術と品質管理が要求されるJISQを取得し、販路を拡大した航空機産業関連の企業の社長さんからも話を伺うことができました。
 現在、大田区は、工場数など後退しているとはいえ、付加価値額では、大規模な工場が立地する日野市や府中市についで都内第三位の位置を占め、ひきつづき東京の経済にとって重要な基盤産業の役割をになっています。それは工業フェアで示されたように、業者のみなさんが、かつての一方的な下請け構造から脱却して、他にない技術や知識を有した企業として地道に、再生にとりくんできた成果にほかなりません。そして大田区や業者のみなさんが切望しているのが東京都の支援です。
 しかし、残念ながら、二〇〇六年に東京都が策定した長期計画「一〇年後の東京」では、城南地域の工業が明確に位置づけられていません。知事もご承知のように、城南地区とりわけ大田区には、世界に誇るものづくりの技術が集積しています。また、今後の産業の動向を考えた場合、羽田空港をかかえ、少量・多品種、高付加価値のものづくりや基盤技術の有する城南地域の優位性には大きなものがあります
 知事、城南地域のものづくりの重要性をどう認識していますか。都の政策に、城南地域のものづくり振興をしっかりと位置づけ、支援することを、つよく求めるものです。見解を伺います。

JISQ取得支援の予算拡充を

 以下、具体的なとりくみについて伺います。
 大田区はかつて羽田空港の整備工場があり、部品の納入などもおこなっていたことから、巨大な市場である航空機産業への参入に期待を寄せています。こうしたもとで、最近、ボーイング社の新型機開発の動きが明らかになり、その部品供給に参入を模索する動きをつよめています。航空機産業は、JISQなどの資格が求められるものから、座席や内装などまで多岐にわたっており、参入のチャンスといわれています。
 都は来年度、JISQ取得の支援を予算化しましたが、五カ所にとどまっています。予算を大幅に拡充するとともに、都として参入対策窓口を設置するなど、東京都のステータスを生かしたとりくみが考えられますが、知事、どうですか。
 くわえて、小規模業者もチャレンジできるよう相談から取得のためのアドバイスなどいっかんしたサポートシステムを構築することが必要ですが、答弁を求めます。
 国は、昨年、京浜地域において多様な新事業創出、新産業創造分野の市場形成をはかるとして、川崎市や横浜市、大田区、品川区などと連携して、「京浜クラスター」を立ちあげました。これは東京都と神奈川県をまたがった広域的なとりくみであり、広域行政としての都や神奈川県が連携してこそ、生きた施策になると思われます。
 国に対して、都や県を交えてすすめるよう要請するとともに、都として連携事業や「クラスター事業」では対象とされていない、かつての工業集積地域活性化事業のような地元のとりくみ自体を支援する仕組みをたちあげることが欠かせませんが、どうですか。

工場の確保、人材育成など支援を

 工場の確保と操業環境の問題は緊急課題です。大田区では今年三カ所目の工場アパートを開設して製造業を支援していますが、建設費や維持費の負担が障害となっています。工場アパートの建設費、維持費への補助や入居者への家賃補助などが望まれています。また、工場跡地を活用して工場アパートを建設することなど、都が業者と関係自治体の要望に応えるべきではありませんか。答弁を求めます。
 もう一つの問題が、都市化による住工混在の進行です。このため、大田区では来年度から、工場が区内で移転する場合、六百万円の援助をおこなう予定です。江東区でも建て替え期間中の工場への場所の一時貸しを実施しています。このように各自治体では工場確保のためのとりくみを強めており、都の支援を切望しているのです。この声に積極的に答えることが必要と思いますが、見解を伺います。
 めっき関連の研究・開発をすすめる業者の方からも都に対する要望を伺いました。それは、都も重点事業に位置づけている環境分野で、たとえば、揮発性の有機化合物・VOCの処理設備など中小企業が開発した製品への支援で、特許取得後の実用化にあたっての社会的・客観的評価の実施や、企業をまわって技術の相談に乗るコーディネーターの派遣です。こうした要望に応えることが必要と考えますが、答弁を求めます。
 高度に蓄積された技術の伝承と人材育成は、ものづくりの現場でこそ生きたものとなります。大田区内の企業では、ものづくりにチャレンジする都立六郷工科高校の生徒を受け入れ、教育するとりくみをすすめています。一方、自治体のとりくみとしては、たとえば葛飾区では伝統工芸の職人を受け入れた場合、受け入れ企業に指導料を補助する仕組みを立ち上げています。
 人材育成にとりくむ自治体を都として支援することは、大変喜ばれると思いますが、どうですか。また、人材確保を社会的事業として位置づけて、都の広報番組などを使ったPRにつとめることで、人材の確保につとめ企業に橋渡しすることが必要と思いますが、対策を求めるものです。

地球温暖化対策にとりくむ商店街負担の軽減を

 次に、地球温暖化対策と商店街支援についてです。
 地球温暖化対策を地域社会全体に広げていくことが急がれています。その点で、地域経済を支え、地域社会の核としての役割を担っている商店街の位置づけを重視する必要があります。そこで伺います。
 知事、地域経済の主役である商店街が地球温暖化防止に積極的にとりくむことは、「環境負荷の少ない都市」をつくるうえで、大きな意義と効果があると思いますが、どう思われますか。
 すでに都は新・元気を出せ商店街事業のうち、特定施策推進型商店街支援事業のなかで、二酸化炭素削減のとりくみへの支援をおこなっていますが、これを抜本的に強化することが重要です。たとえば、商店街の街路灯は、地域を明るく照らす灯りとして、欠かせない都市施設となっています。その街路灯を省エネルギー型に転換することは、光熱費のコストダウンにくわえ、二酸化炭素の削減に大きく寄与するという点で一石二鳥の事業になります。すでに全国では、太陽光発電や風力発電をつかった省電力のハイブリット街路灯設置がはじまり、東京の赤坂では、二酸化炭素の固定化効果もつ古木を使用した環境にやさしいユニークな街路灯も生まれています。こうしたとりくみで年間八十万円もの電気代の節約が可能になった商店街も生まれています。
 また、新・元気を出せ商店街事業を活用したとりくみとしては、八十本の街路灯をLEDにきりかえた上野中央通り商店街や、太陽光発電を使った白髭商店街などではじまっています。しかし、特定施策の支援事業は、エコ事業には充分活用されておらず、五分の一の地元負担もあります。
 すべての商店街の街路灯を計画をもってエコ型に転換することは重要です。特定施策推進型商店街支援事業における地元負担のさらなる軽減につとめるとともに、事業の周知徹底をはかるべきと考えますが、答弁を求めます。
 エコ商店街のとりくみは、ワインの空き瓶を再利用したワインロード、二酸化炭素を吸収する「Vノックス塗装」の外壁をつかった建物、空き缶などの回収機を備えた「エコステーション」など、急速に普及しています。また、イギリスで広がっているゴミを使ったバイオマス発電をはじめ、家庭で排出される廃油の再利用、空き地などをミニ庭園にすることなども有効です。そこで、エコの街路灯にくわえ、これらの事業も新・元気を出せ商店街事業の対象として事業費を支援することで、一気にとりくみが広がることが期待できます。見解を伺います。

「ECO商店街支援事業」の創設を

 また、都として、東京都版エコバッグを製作し、各地の商店街で活用できるように無償配布するのはどうでしょうか。
 ロンドンでは、白熱球をなくすために省エネの蛍光灯を二十二万本用意して無料で配布しています。都は「白熱球一掃作戦」を掲げていますが、呼びかけだけで実行ある対策は見られません。そこで、都内商店街と連携して廉価で省エネ型の蛍光灯を提供する事業を実施すべきと考えますが、それぞれ答弁を求めます。
 以上の商店街のエコのとりくみを総合的に支援するために、「ECO商店街支援事業」を創設し、地域商店による地球温暖化防止のとりくみを推進することを提案するものです。知事、お答えください。
 最後に、新・元気を出せ商店街事業を活用した、エコのとりくみについては、地元負担ゼロにするために環境局として補助することも有効です。見解を伺い、質問を終わります。

【答弁】

○知事 かち佳代子議員の一般質問にお答えいたします。
 城南地域のものづくり振興についてでありますが、城南地域、特に大田区は私の昔の選挙区がございまして、世界に誇り得る高度な技術力を持つ中小企業が多数集積し、東京だけでなく、日本のものづくりを支える重要な役割を果たしていることは十分承知しております。これまでもナノテクノロジーセンターを開設するなど、先進性と独自性を持った施策を展開してまいりました。
 「十年後の東京」においても、基盤技術や試作品開発を担う一大集積地として位置づけておりまして、今後とも城南地域のものづくり産業の強化に取り組んでまいります。
 地球温暖化防止に向けた取り組みについてでありますが、これまでも繰り返して申してまいりましたけれども、温暖化ガスの大幅な削減を実現するためには、商店街はもとより、都民、企業などすべての主体が、それぞれの役割と責任に応じて温暖化ガスの削減に取り組む必要があります。
 都はこうした考えに立って、カーボンマイナス東京十年プロジェクトを掲げ、さまざまな施策を着実に推進しております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。

○産業労働局長 十点のご質問にお答えを申し上げます。
 航空機関連産業への参入についてでございますが、航空機関連産業は、今後の需要予測におきましても高い伸びが予想されております。
 このため、都は、既に今年度から、航空機関連産業への参入セミナーを開催し、支援を行っているほか、参入に意欲のある中小企業に対しまして、民間企業のOBを専門家として派遣するなど、相談体制を構築しております。
 次に、一貫したサポートシステムの構築についてでありますが、航空機関連産業への参入に当たりましては、高い技術力だけではなく、品質管理能力が求められます。
 このため、品質管理の国際規格でありますJISQ九一〇〇の認証取得に取り組む中小企業に対しまして、セミナーの開催や専門家の派遣、取得経費の助成を行うこととしております。
 次に、国のクラスター事業への対応についてでありますが、都は、国や他県との情報交換を定期的に行いまして、クラスター事業も含め、緊密に連携して地域工業の振興に取り組んでおります。
 また、共同研究や共同開発など、工業の振興に資する民間事業者の取り組みにつきましては、中小企業経営・技術活性化支援事業などにより支援をしているところでございます。
 次に、工場アパートの整備に対する支援についてでありますが、都はこれまでも、基盤的技術産業集積活性化支援事業の国庫補助金の活用などによりまして、区市町村が行う施設整備を支援してまいりました。
 また、来年度から、創業者を対象とする施設の整備について支援することとしております。
 次に、工場確保の取り組みに対する支援についてでありますが、都はこれまでも、中小企業の組合や区市町村が行う工場の整備に対しまして、高度化資金等によって支援をしてまいりました。
 また、昨年発表されました「十年後の東京」の実現に向けました実行プログラムにおきましても、産業集積の形成に取り組む区市町村を支援することとしております。
 次に、製品の実用化に向けた支援についてでありますが、実用化に当たっての評価に関しては、中小企業の新製品についての事業計画の妥当性や事業化の有望性などについて、専門家が評価、助言を行う事業可能性評価を実施しております。
 また、技術支援に関しましては、産業技術研究センターにおきまして、中小企業の要請に基づき、外部専門家を現地に派遣をしております。
 次に、人材の育成、確保についてでありますが、区市町村では、それぞれの地域の特性にあわせて、独自の政策として人材の育成、確保に取り組んでおります。
 都は既に、地域の人材育成を行う拠点といたしまして、職業能力開発センターを設置し、区市町村や企業の意見も反映しつつ、きめ細かな対策を講じております。
 また、人材の確保につきましては、中小企業の認知度を高めることが必要であることから、今後、民間企業やNPO等とも連携をしまして、中小企業の魅力の発信に取り組むこととしております。
 次に、商店街における環境に配慮した街路灯の設置についてでありますが、このような街路灯の設置につきましては、特定施策推進型商店街事業により、実施する商店街に対しまして、既に五分の四の高い補助率で特別に支援をしております。
 なお、この事業については、商店街及び区市町村向けの説明会や東京都ホームページなど、さまざまな機会を通じ周知を行っております。
 次に、商店街における環境に配慮した取り組みへの支援についてでありますが、商店街の活性化に資する環境に配慮した取り組みは、既に新・元気を出せ商店街事業の支援対象としております。
 最後に、エコ商店街支援事業の創設についてでありますが、商店街の活性化に資するエコ活動に対しては、既存の制度の活用により支援を行うことが可能であることから、新たな事業の創設は考えておりません。

○環境局長 まず、エコバッグの配布についてでございますが、社会全体の環境意識が高まる中、温暖化対策に意欲的な商店街では、独自のエコバッグを作製するなど、既に多くの取り組みが進んでおります。また、消費者も、みずからのニーズに適したエコバッグを購入するなど、エコバッグの利用は着実に広がりつつあります。
 都は、こうした状況を踏まえつつ、環境配慮の意識が都民の間にさらに広がるよう普及啓発を進めてきており、今後とも、その充実に努めてまいります。
 次に、電球形蛍光灯の普及についてでございますが、都は昨年から、白熱球一掃作戦を展開し、都内の電気店やコンビニエンスストア等に対し、電球形蛍光灯の売り場拡大や割引セールの実施などを働きかけ、都民が電球形蛍光灯をより身近に購入できるような取り組みを進めております。
 この取り組みを開始して以来、電球形蛍光灯の販売個数が大幅に増加し、コンビニにおいても、メーカー希望小売価格の半額程度で販売されるようになるなど、普及拡大が進んできております。
 最後に、商店街の温暖化対策に関する取り組みについてでございますが、商店街における温暖化対策につきましては、新・元気を出せ商店街事業などにおいて、関係局が連携して実効性のある施策を推進しております。
 温暖化ガスの大幅な削減を実現するため、今後とも、全庁横断型の戦略組織であるカーボンマイナス都市づくり推進本部のもと、全庁一丸となって取り組みを進めてまいります。

以上