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第一回定例会 代表質問 二〇〇八年二月二六日

松村友昭(練馬区選出)

「二十一世紀の都市モデル」といいながら、貧困の打開策がない

 日本共産党都議団を代表して質問します。
来年度予算で都税収入が過去最高を記録する一方、雇用の破壊、増税と負担増、物価の高騰で、都民のくらしは本当にきびしさを増しています。都政にとって、都民のくらしを守るために何をやるかが、いまほど問われているときはありません。
 なかでも、全国的に問題となっている貧困と格差の是正は重要です。世界の都市でもいま、社会的孤立とむすびついた貧困を打開するため、真剣な取り組みをすすめています。ところが石原知事が発表した、十年後の東京にむけた「実行プログラム」では、「二十一世紀の都市モデル」をつくるといいながら、貧困の打開はまったく位置づけがありません。
 「都民税減税」の公約はなげすてられました。そのかわりだといって来年度予算にもりこんだ「低所得者生活安定化プログラム」は、三か年の期限つき事業であるうえ、中身も規模もきわめて不十分なものです。
 そればかりか知事は、都民のくらしに追い打ちをかける、消費税引き上げを政府に提言しています。とんでもない話です。

経済給付の充実と、所得の再配分の強化に

 そもそも、格差や貧困の存在は否定しないが一部の問題にすぎないという、知事の認識が大きな間違いです。
 若者の三人に一人が非正規雇用で、多くは月収十万円台。企業の都合のいい非人間的な働き方をしいられ、「働き過ぎとストレスで体はボロボロ」「これでは生きていけない」、こういう声が渦巻いています。
 勤労世帯も所得の低い階層の収入が大きく落ち込み、生活保護基準を下まわる世帯が急増しています。
 都内高齢者の老齢基礎年金の受給額は全国平均以下で、月五万三千円にすぎません。高齢者世帯の三割は、年収二百万円未満です。わが党は聞き取り調査をおこないましたが、買い物を控え、食費を削る、外出は控えるなど、涙ぐましい生活実態がうきぼりになっています。
 知事、若者や勤労世帯から高齢者まで、多くの人が月収十万円未満から十数万円でくらしている実態を調べたうえで発言しているのですか。一部の問題にすぎないというなら、その根拠を明らかにして下さい。
 深刻な貧困がひろがっているときに、東京から貧困をなくす課題に緊急にとりくむ必要があります。この問題を都政でどう位置づけてとりくむのか、知事の答弁を求めます。
 石原知事は、老人福祉手当やマル福などの経済給付的事業のきりすてを強行し、所得の少ない人に追い打ちをかけてきた責任は重大です。ヨーロッパなどでは公的扶助と社会保険制度にくわえ、無拠出かつ所得調査を大幅に緩和した社会手当を、社会保障の重要な柱としています。
 知事が国にモノをいうのなら、消費税増税ではなく、庶民減税こそ提言すべきです。また、現時点にたって、東京都があらためて、経済給付の充実と、所得の再配分の強化に踏み出すことが求められています。知事、答えて下さい。

収入の少ない世帯に民間住宅の家賃助成を

 以下、貧困の打開と生活応援の具体策について、提案します。
 第一は、民間賃貸住宅に住む世帯への家賃助成です。都内二千人、全国で二万人の高齢者の生活実態調査を分析した専修大学の唐鎌(からかま)直義教授は、生活保護の住宅扶助とは別に、低所得層を対象とした家賃補助制度を設けることが、社会保障の大きな課題だと強調しています。
 住宅家賃が全国平均の二倍におよぶ東京では、若者から高齢者まで家賃負担の軽減は貧困を打開するカナメというべき課題です。月収十万円の非正規雇用の若者が、東京でアパートを借りると五万円ぐらいしか残りません。その中から国民年金保険料や国保料を払い、食べていくことがどれほど難しいか。国民年金だけの高齢者はさらにきびしい現状におかれています。
 知事、収入の少ない世帯にとって、民間住宅の家賃が重い負担になっていることを、どう認識していますか。
 イギリス、フランスなどヨーロッパの多くの国々で、社会保障の大事な施策として住宅手当が実施されています。
 収入の少ない世帯に対する民間住宅の家賃助成に、東京都が全国に先駆けてふみだすことを提案するものです。答弁を求めます。

若者の雇用対策を

第二に、若者の雇用対策です。
 国会でのわが党の追及で、福田首相も、若者の雇用でひろがっている日雇い派遣は決して好ましいものではないと認め、派遣はあくまで臨時的・一時的な制度という位置づけに変わりはないと答弁しました。
 知事、日雇い派遣について、どのように認識していますか。
 都として、日雇い派遣の実態調査を実施することを提案するものですが、どうですか。
 最低賃金を時給千円以上とする東京ルールをつくり、経済団体などに協力を求めるとともに、都の公契約では時給千円以上を条件とすることが重要です。都で働く派遣や非常勤などの職員が増加しています。これらの非正規雇用職員の正職員化や待遇改善にとりくむべきです。
 来年度実施予定の「低所得者生活安定化プログラム」を改善し、貸付の返済猶予期間の延長や、職業訓練受講奨励手当の対象を拡大するとともに、職業訓練の定員や科目を大幅に増やすなどの拡充が必要です。それぞれ答弁を求めます。

妊婦健診無料化にむけた都の財政支援を

 第三に、出産や子育てに特別のお金がかからないようにすることです。
 知事は施政方針で、「社会全体で子育てを応援」するといいました。知事が公約した中学三年生までの医療費無料化を、ただちに実施すべきです。ところが驚いたことに、来年度予算はもちろん、二〇一〇年度までの三か年計画である十年後の東京への「実行プログラム」でも、まったく言及されていません。
 中学三年生までの医療費無料化は二十三区は全区で実施となり、多摩格差がまたしても深刻な問題になっています。都として踏み出すことが急務です。
知事、「実行プログラム」の三年間に具体化するつもりはないということですか。「都民税減税」の公約撤回につづいて、子どもの医療費無料化の公約を投げすてるのですか。そうではないというなら、いつまでに実施するのか、明確に答えていただきたい。
 妊婦健診無料化にむけた都の財政支援も急がれます。
 厚生労働省の通知で、「母体や胎児の健康確保を図るうえで、妊婦健康診査の重要性、必要性が一層高まっている」、「公費負担についても、十四回程度行われることが望ましい」と明記されたことをうけ、二十区が、十四回までの無料化にふみだしました。ここでも多摩格差が問題になっています。
 東京都は、妊婦健診は市町村事業だから補助はしないといいますが、すでに秋田県や福井県など全国八県で市町村への補助を実施しています。妊婦健診をうけないまま出産をむかえて来院する「飛び込み出産」といわれる事態がひろがっており、その背景に経済的困難があることが指摘されています。東京都が市町村に一円もださないという道理はありません。
 知事、厚生労働省でさえ認めた妊婦健診の重要性を、どう認識していますか。「社会全体で子育てを応援」というなら、東京全体で妊婦健診は十四回まで無料化できるよう都として財政支援にふみだすことが必要です。答弁を求めます。

低所得者の保険料軽減にむけた財政支援を

 第四に、高齢者への支援です。
 知事は、「世界に先駆けた超高齢社会の都市モデルを創造する」としています。それなら、いま大問題になっている後期高齢者医療制度を中止させないで、どうするのですか。
 いま、保険料が四月以降、年金から天引きになるという通知が高齢者世帯に送付され、「なぜ天引きするのか」「納得いかない」など、驚きと怒りの声が役所に殺到しています。今後、三月末に保険証が送付され、四月はじめに保険料が通知され、多くの区市町村では四月十五日支給の年金から天引きされます。このまま実施されたら、高齢者の怒りはますますひろがることは明らかです。
 七十五歳という年齢で差別をもちこみ、「後期高齢者」などというレッテルをはって他の健康保険制度からおいだし、保険料の負担増をしいるばかりか、年金から容赦なく天引きする、滞納者は保険証をとりあげる、診療報酬を別立てにして医療内容にまで差別をもちこもうという、こんな世界に例のない高齢者いじめの制度は中止するよう、政府に求めるべきです。知事の見解を伺います。
 東京における保険料は、区市町村の財政負担により、当初の見込みよりおさえられましたが、なお現行の国保料より高く、さらなる対策が必要です。政府があくまで実施を強行するなら、都として低所得者の保険料軽減にむけた財政支援にふみだす必要があると考えますが、答弁を求めます。
 特別養護老人ホームや老人保健施設、療養病床など介護施設の整備率も、認知症グループホームや小規模多機能型施設の整備率も、東京都は全国最低水準です。一人暮らし高齢者や高齢者のみ世帯が多い東京において、この遅れは深刻な問題であり、整備促進と質の充実を強力に推進する必要があると思いますが、見解を伺います。

低所得者、障害者作業所へ原油高騰対策支援を

第五に、原油高騰への支援です。
 わが党が実施した高齢者の生活実態調査で、「生活が苦しくなった」という回答が八割をこえ、その理由として四割の人が「灯油など物価上昇」と答え、灯油は買わず重ね着をして暖房費を節約している実態がうかびあがりました。
 群馬県などが実施にふみだした低所得世帯に対する灯油代助成を、都として実施すべきです。また、障害者の作業所は、送迎などのガソリン代がかさむうえ、紙代などの原材料費高騰の二重の困難に直面しています。緊急の支援が必要です。それぞれ答弁を求めます。

豊かな財源を福祉、教育、中小企業対策などへ

 以上、都民の切実な要望を私は提案してきましたが、これに応えるべき財源は十分にあります。
 来年度の予算は都税収入だけでも都政史上最高の五兆五千億円と見込まれ、一九九九年以来三六%も伸びているのです。
 ところが、これだけ豊かな財源がありながら、都民のために使おうとしていません。都税収入が三六%も伸びているのに、福祉保健費の伸びはその半分にも満たないものです。教育費も石原知事就任の一九九九年度と比べて九七%にとどまり、中小企業対策予算にいたっては六割にまで減っています。
 福祉でいえば、高齢者人口も三割も増えており、少子化対策の拡充も急がれています。教育はゆきとどいた教育のための少人数学級や教職員の増員、中小企業対策は制度融資や商工予算の拡充など課題は山積しています。これらの予算を一九九九年度水準に戻すだけでも、福祉保健費は千三百億円、教育費は二百五十七億円、中小企業対策費は一千億円増やすことができるのです。
 知事、これだけ豊かな財源があるのに、なぜ、福祉保健費や教育、中小企業対策などの予算を増やすために使おうとしないのですか。

投資型経費は一兆円、ため込みは二兆九千億円

 その一方で、オリンピックや新銀行などの浪費には湯水のように都民の税金がつぎ込まれようとしているのです。この都政のあり方を変えなくて、都民の暮らし、福祉は守れません。
 まず、第一に、来年度の投資的経費は七年ぶりに七千億円台に達し、経常費にふくまれる投資予算をふくめた投資型経費は、バブル前の水準の二倍、一兆円を越えていることです。調布・保谷線、環状二号線などの骨格幹線道路、さらには、羽田空港への出資・貸付、多摩モノレールへの追加出資などへ大盤振る舞いしていることによるものです。
 第二は、主に、オリンピックやインフラ整備につぎこむことを目的とした空前のため込みです。
 投資型のため込みだけで、一兆六千億円、これに、これも主に石原都政がおこなった投資のための借金払いに使う減債基金を加えると、なんと二兆九千億円と史上最高のため込みとなります。
 こうした石原知事の逆立ちした予算の提案によって、本来、都民のために使うべき予算が犠牲になっているのです。
 知事、「オリンピックの名で何でもできると思ったら大間違いだ。新銀行へ四百億円を使うなら、都民のために使ってほしい」という都民の切実な声をどううけとめるのですか。見解を求めます。

晴海地区のメインスタジアムで二千八百億円

 はじめに、都政をゆがめる最大の問題である、浪費型の東京オリンピック招致計画と、それを口実にしたとんでもない大型投資事業について質します。
 一月十日に、立候補申請ファイルが出されました。わが党はあらためて、調査、分析しましたが、いかにひどい浪費の計画かに驚いています。
 まず、競技施設建設費についてです。
 申請ファイルによれば競技施設のうち、恒久施設は二千三百三八億円とされています。
しかし、その数字には、晴海地区のメインスタジアム用地の買い入れ費用を入れていません。また、晴海地区の避難経路の費用は入れながら、液状化対策や耐震護岸の費用は見込んでいません。
 わが党の試算によれば、メディアセンター、選手村を除いた、オリンピック競技の恒久施設整備費は、こうした関連費用を含め、実は、約七千五百億円もかかるのです。
 知事、こんなに競技施設にお金をかけるオリンピックだという認識はありますか。また、このことを都民にもきちんと伝え、判断をあおぐべきではありませんか。見解を求めます。
 大体、ムダ使いがひどすぎます。都立のメインスタジアムを一千二百十四億円もかけて晴海地区に建設する必要があるのでしょうか。年間維持管理費も百億円と試算されます。
国立霞ヶ丘競技場と国体の会場に予定されている味の素スタジアムをいれれば都内に3つもの大規模競技場が競合することになり、後利用も大変です。
 日本陸連の関係者は、「今後とも陸上競技の聖地として、霞ヶ丘競技場を使用していく、日本陸連は七万人ものスタジアムはいらない、スーパー陸上をやる場合でも四万人。巨大競技場は使用料が高くなるし、サッカーなどとバッティングすると使いたいときに使えなくなる」と明確に語っています。
 私は、文科省に話を聞きました。「霞ヶ丘国立競技場については、来年度に耐震診断を実施し、それにもとづいて陸上の国際大会基準にあわせてトラックを九レーンにする改修など行う予定」と言っています。また、「オリンピックのメインスタジアムも、世界陸上を開催したときのように、サブトラックを仮設で近隣につくればオリンピックも可能」とと言っています。
 メインスタジアムを国立霞ヶ丘競技場にすれば、都民の税金は一円も使わずに済むではありませんか。なぜ、国と協議をしないのですか。知事の見解を求めます。
 仮に、晴海地区にメインスタジアムをつくる場合でも、恒久施設にする必要はありません。
 日本陸連関係者は、「陸上のトラックだけつくるのは数億円でできるが、スタンドの構築物で何百億円かかる、オリンピックのときは仮設でやることもできる」と話しています。
 仮設にすれば、土地代を含め、二千八百億円ぐらいのムダ使いをなくすことはできるのです。極力経費をおさえることこそオリンピック精神にこたえることではありませんか。知事、お答えください。

バレーボール会場で百四十五億円

 バレーボール会場は、代々木公園B地区に、百四十五億円かけ、新設アリーナを建設する計画に変更しました。バレーボールは、もともと、駒沢オリンピック公園総合運動場に一万人規模の恒久施設を二つつくることで競技団体とも合意していたものです。
 変更理由は、競技場を半径八キロの円内におさめ、クラスターを形成すれば、IOCからの高い評価をえられるということです。しかし、一方で、IOCは、オリンピックの遺産、レガシーを重視しています。駒沢オリンピック公園総合運動場こそ、一九六四年東京オリンピックのバレーボール会場であり、オリンピックのレガシーそのものです。バレーボール関係者も「輸送手段さえあれば、駒沢が一番よい」との考えを示しています。
 しかも、駒沢総合運動場は、もともと大規模改修が必要になっているのですから、駒沢を利用してこそ、経費面でも安上がりになることは明らかです。
 なぜ、駒沢オリンピック総合運動場を活用して、経費の節約を図ろうとしないのですか。見解を求めます。
 この二つの点で節約するだけでも三千億円近く安上がりになるのです。
 招致活動経費も雪だるま式に限りなく膨れあがっています。
 IOC申請ファイルでは、五十五億円としながら、招致経費とは別枠でムーブメント経費として九十五億円を計上し、すでに当初の三倍近い百五十億円の招致推進活動経費となっています。申請ファイルには、招致に必要な経費は、民間資金及び東京都の資金提供により賄うとしていますが、民間資金がいくら集まったかも明らかにできない有様であり、都民の税金を注ぎ込む一方ではありませんか。
 知事、金にものをいわせる招致活動は、IOCの「倫理規定」で戒め(いましめ)られています。この認識はあるのですか。見解を求めます。

インフラ整備費だけでも七兆五千億円

 インフラ整備費については、申請ファイルで、環状五号線の改良工事費など、既存インフラ整備費で一千億円、圏央道、首都高中央環状品川線など、計画中のインフラ整備費が九千五百八十億円で、合計一兆五百八十億円としており、これだけでも莫大な費用がかかります。
 しかも、追加のインフラについては、該当なしと回答していますが、とんでもありません。石原知事がオリンピック招致と一体となって、都政の最優先課題などとし、二〇〇九年度にも「事業着手することを国に強く要求」している外郭環状道路がぬけています。事業費は、基本計画路線になったとたんに一兆六千億円と二千五百億円もはね上がり、そのうえ、都民の税金六千億円が直接使われる、「外かんの二」も実施が検討されています。
 また、わが党が、第四回定例会で、石原知事が言及している羽田―築地間のトンネル道路や横田基地と都心を結ぶ高速道路多摩新宿線建設の意思を質したのに対し、研究している、検討を進めると答弁しています。さらに、石原知事が国との密室取引によって、メインスタジアムへの地下鉄の延伸も浮上させました。
 こうしたものをふくめれば、インフラ整備費だけでもわが党の試算によれば、七兆五千億円を越える巨額な事業費がかかるのです。オリンピックの名でこのようなムダ使いを強行するならば、「税金を大手ゼネコンの食い物にする」との都民の批判はまぬがれません。
 知事、二〇〇三年に確認されたIOC指針は「巨大化傾向を抑え、様々な国や都市のオリンピック開催への意欲を挫(くじ)かないようにする」としています。知事の進めようとしているオリンピックはこの精神に反するではありませんか。
 少なくとも、知事の思いつきの羽田〜築地間のトンネル道路や、高速道路多摩新宿線の建設はやらないときっぱりいうべきではありませんか。
 巨額の建設費となり、住民や関係自治体の批判が強い外かん道路の建設も根本から見直すべきではありませんか。それぞれ知事の答弁を求めます。

新銀行東京への追加出資は道理がない

 もう一つのムダ使いで、今議会の焦点になっているのが新銀行東京への四百億円の追加出資です。
 私はこの間、たくさんの都民、とりわけ中小業者の方から都民のくらしや営業をそっちのけにして、乱脈経営のツケ払いに四百億円も税金投入をするとは何ごとか、やるべきことは他にたくさんあるではないかと、訴えや怒りの声をぶつけられています。マスコミ各紙もいっせいに社説でとりあげ、「『石原銀行』幕を閉じる時だ」など、破たん処理をもとめる見解を出しています。
 ところが、知事はこうした声に真摯に耳を傾けるのではなく、債務超過で店じまいしたら、もっと大変なことになるなどといって開きなおっています。しかし、知事がどう言いつくろおうと、追加出資がいかに道理のないものであり、都民の貴重な税金をどぶに捨てるものとなるかは、隠しようがありません。

金融庁の検査と指導を要請し、第三者機関を設置して対応を

 第一の問題は、再建の見通しもないのに経営をつづけ、傷口を拡げることです。今回の追加出資は、新銀行の経営陣が、民間に増資を要請して回ったが、のきなみ断られ、万策尽きての決定ではありませんか。また、再建計画は、四年後に八億円の黒字にするとしていますが、営業店舗を本店以外はすべて閉鎖し、社員も四分の一にリストラして、まともな営業活動ができるはずがないではありませんか。仮に黒字化できたとしても一千億円もの累積損失を解消するには百年もの時間がかかります。
 再建計画そのものも信用できません。知事、専門家がこんどの計画をどう見ているか、知っていますか。まず、新銀行が発表した再建計画は、公的資金が投入される際に銀行が策定し金融庁に提出する「経営健全化計画」と比較して、基本的な情報が開示されていないため、計画の信憑性を判断できないと言っています。そのうえ、経営再建には、業務損益を黒字にすることが必要だが、昨年九月の中間期決算では、すべての指標が他の銀行より劣っており、黒字化の見通しも再建計画からは見えてこないと言っているのです。
 知事、こんなズサンな再建計画を前提とした追加出資は撤回すべきです。どうですか。
 今の時期には、三月期決算の見通しはたっているはずです。当然、今回の措置もそれをふまえたものと考えるのが妥当です。したがって追加出資を云々する前に、三月期決算の見通し、とりわけ不良債権の状況と処理について情報公開すべきです。そのうえで、金融庁の厳密な検査と指導を要請し、第三者機関を設置して対応すべきではありませんか、知事の答弁を求めます。
 知事は、根拠も示さず、店じまいをしたら一千億円以上の資金が必要となると言っています。また、四百億円の追加出資の提案にあたって、その根拠すら示していません。こんな無責任なことはないではありませんか。それぞれ、根拠を具体的に示して下さい。

存立目的からおおきくはずれたものに

 第二の問題は、もともと新銀行東京は、中小企業のための銀行という存立目的からおおきくはずれたものであり、ここへの出資の意義がないことです。わが党は、設立当初から中小企業に役立たないことを明らかにして反対してきましたが、実際、新銀行は、本当に資金繰りに困っている小零細企業には、「ラーメン屋には貸さない」などといって貸さず、市中金利の三倍もの十%などという法外な利息を押しつけてきたのです。しかも、追加出資にあたって出された再建計画は、融資目標を当初計画のわずか十五%、七百億円に引き下げ、かつその運用も東京都の公共事業にシフトするというものです。
 マスコミ各紙は「自治体が納税者にしわ寄せしてまで銀行経営する意義はもはや見当たらない」などと厳しく批判しています。知事、都民やマスコミの批判をどう受けとめているのですか。見解を求めます。
 中小業者のためというのであれば、資金繰りに苦しむ業者のための借り換え融資や超低利の無担保無保証人融資などの制度融資を拡充すればよいのです。新元気をだせ商店街事業や工業活性化事業などの予算を増やす方が、はるかに役に立ちます。答弁を求めます。

知事と大塚元副知事は私財をなげうって責任を

 第三の問題は、知事が破たんの責任について、旧経営陣にあげて責任を押しつけていることです。本当に無責任です。新銀行の破たんの一番の原因は、知事と側近でつくった制度設計がでたらめで、欠陥計画であったことではありませんか。例えば、都議会に報告されたマスタープランでは、融資の返済が滞った場合に備える個別引当金がまったく計算されていず、金融専門家から机上のプランと指摘されていました。
 そもそも、この制度の設計は、金融ビジネスに関係のない東京税務協会に委託され、石原知事と当時の大塚出納長による密室協議で策定されたもので、金融部門を担当する産業労働局はカヤの外に置かれていたのです。
 いわば素人が思いつきではじめたいいかげんな計画でスタートさせたことこそ、最大の原因です。旧経営陣はこの計画の上で走らなければならなかったのではありませんか。知事の責任は明確であり、人のせいにするのはやめるべきです。また、旧経営陣に問題があったにしても、東京都は開業以来、幹部職員を派遣しており情報は掌握できていたはずです。何よりも最大株主として、投資した税金を保全することをおこたった責任はまぬがれません。
 知事、あなたが元凶です。都民は、知事と大塚元副知事は私財をなげうってでも、責任をとるべきといっているのです。この声にどう答えるのですか。それぞれ、知事の明確な答弁を求めます。
 都政の主人公は都民であり、知事個人のものではありません。知事が都政を私物化し、都民の税金をドブにすてることは断じて許されないことを、きびしく申し述べておくものです。

二酸化炭素・・二〇二五年までに六割削減を目標に

 最後に二一世紀に解決すべき地球温暖化問題です。
 知事は、「一〇年後の東京」で「世界で最も環境負荷の少ない都市を実現する」ことをかかげました。これは氷河の溶解や集中豪雨をはじめとする異常気象など、地球環境が危機にさらされているもとで、当然のことです。
 問題は、知事の対策が、地球温暖化をくい止め、持続可能な社会を実現するのにふさわしい目標と内容となっているかどうかです。
 そこで何点か伺います。まず、基本姿勢についてです。世界の流れはバックキャスト、すなわち、環境負荷の少ない、人と自然が共生できる持続可能な社会像を設定し、そこに到達するための目標と道筋を示すことによって、現在に生きる世代がしなければならないことを見定めるという方向です。しかし、石原知事のスタンスはまったく違って、現在、できる範囲のことを積みあげて目標にするというものです。これでは、温暖化阻止にはほど遠いといわざるを得ません。
 それは、東京都が二酸化炭素の削減計画について、基準年を京都議定書の目標から十年先に伸ばしたことに示されています。これは目標年である二〇一〇年までに、六%削減目標を達成するのをあきらめたものです。「気候変動に関する政府間パネル」いわゆるIPCCの第四次報告が、削減対策が遅れた場合、取りかえしのつかないことになることを指摘していることから見ても大問題です。報告は、「五年の遅れでさえ大きな違い」が生まれ、二十年遅れた場合には、最大で七倍のスピードでの削減をおこなう必要に迫られることを警告しているのです。
 一方、バックキャスト方式を採用しているロンドン市は、すでに二酸化炭素を一・八%削減しています。それにとどまらず、二〇二五年までに六〇%削減するよう計画を見直し、とりくみを強力にすすめています。また、ロンドン市はニューヨーク市と「気候変動保護協定」を結び、「世界全体の排出量を二〇五〇年までに一九九〇年比で六割減らす」ための拘束力のある国際協定を呼びかけています。東京都とは大違いではありませんか。
 知事、「世界で最も環境負荷の少ない都市」をめざすというのなら、計画を先送りするのではなく、二酸化炭素について、二〇一〇年までに六%削減を達成するために、全力をつくすことが必要です。さらに、ロンドンなど先進都市・国家に学んで二〇二五年までに少なくとも六割削減を達成することを目標にすべきではありませんか。それぞれ知事の見解を伺います。

自動車交通にメスを入れ「低炭素都市」に

 これは無理なことではありません。ロンドンでは目標達成のために、二酸化炭素の排出の大半を占める自動車交通と大規模発電所の電力を抑制するとりくみをすすめています。自動車交通では、都心部への自動車の流入を抑制するために、国の炭素税とあわせて、ロードプライシング・渋滞税を導入して効果を上げています。ロンドン市は公共交通にシフトした市民に、地下鉄運賃を三分の一程度を割引するシステムを導入し、また、路線バスの増便と割引などを制度化しています。電気自動車の普及にも力を入れており、渋滞税の免除や駐車場料金の一部無料化、都心部での無料の充電スタンドの設置などをおこなっています。こうしたとりくみで削減できた二酸化炭素は、二割にも及んでいます。
 東京都はどうでしょうか。石原知事は、「都市再生」で超高層ビルを林立させることで、都心部の自動車交通を十万台も増やそうとしています。三環状道路などを建設することで、自動車依存型をいっそう激しくし、二酸化炭素を増やしつづけています。
 知事が公約していたロードプライシングはどうなったのですか。自動車交通にメスを入れなければ、「低炭素都市」も絵に描いた餅に過ぎません。答弁を求めます。

スクラップアンドビルドから修復型都市づくりへ転換を

 東京都が力を入れなければならない独自の問題がオフィスビルの対策です。石原知事の「都市再生」の推進で超高層ビルが乱立したため、業務部門から発生する二酸化炭素が三三%も増加し、東京都における排出量の二一%を占めているのです。しかも、都内事業所の一%にも満たない大規模事業所が業務・産業部門の排出量の四割を占めています。事業所に排出抑制を義務化させることや環境性能を向上させることは当然ですが、同時に、ビル開発そのものを抑制しなければ総量を減らすことはできないのに、石原都政のもとでビルの床面積は百三十ヘクタール、サッカー場にして二千面に近くに増え、環境に大きな負荷をあたえているのです。ロンドンでは、超高層ビルの建設は限られた地域に抑えているのとは大違いです。
 環境負荷の大きい超高層ビルを中心としたビル開発を総量抑制の立場から抑制すること、環境アセスの対象に二酸化炭素の発生を加えることが必要ではありませんか。
 また、ビルの利用によって二酸化炭素がふえるだけでなく、ビル建設にともなって使用される資材の製造や建て替えによって発生する廃棄物が二酸化炭素を増加させていることが、あらたな問題となっています。
 スクラップアンドビルドではなく、修復型都市づくりへの転換をすすめるとともに、ビル建築時の資材や建設廃材と建設残土の発生を抑制することは「低炭素都市」づくりとって不可欠と考えますが、それぞれ答弁を求めます。

都市開発によるみどり破壊の防止を

 温暖化対策で欠かせないみどりの問題について言えば、東京ではこの四半世紀の間に、みどりを増やすどころか山手線内の面積に匹敵する、延べ二万二百五十ヘクタールのみどりが失われています。
 しかも、今後、八十ヘクタールの稲城市南山開発をはじめ、五十ヘクタールの八王子市川口の物流拠点用地などの緑地、八十七ヘクタールの青梅インターチェンジ周辺地域、五十五ヘクタールの武蔵村山の多摩開墾、十九ヘクタールの三鷹市の外環道のジャンクション建設予定地の農地など、開発の危機にさらされている緑地や農地はわかっているだけで三百ヘクタール近くに及んでいるのです。
 かつて、東京都には「東京緑の倍増計画」や「みどりのフィンガープラン」などのみどりの計画があり、既成市街地の樹木を倍増して二億本にすることや、都市公園を二倍の都民一人当たり六平方メートルに倍化すること、多摩の丘陵のみどりを保全することなどが目標にかかげられていたのです。
 知事、都市開発によるみどり破壊を防止し、二つの計画を復活させるなど、環境との共生に力をつくすべきではありませんか。答弁を求め、再質問を留保し、質問を終わります。

【再質問】

 石原知事に四点の再質問をします。

 第一に、知事は、ようやく自らの「責任」にふれましたが、1000億円をどぶに捨てた事態になっている。このことについて、都民への謝罪は一言もありません。知事が、簡単に撤退できない銀行業に十分な成算もノウハウもなしに、乗りだしたことこそ、諸悪の根源です。この自覚があるのかどうか、答えてください。

 第2に、業者の方々は、経営破たんした時は退陣したり、借りたお金が返せない時は、自分のお店や家まで処分して責任を果たしているのです。知事も最大の責任者として、私財をなげうってでも、都民の負担を軽減する決意を示すべきではありませんか。答えてください。

 第3に、誰もが、「再建の見込みはない、破たん処理にふみだせ」といっていることです。大体、再建計画についても根拠となる情報が何も公開されていません。再建計画は表紙を合わせても7頁にすぎず、自己資本比率や不良債権の状況など、経営を判断をするための基本的なデータは何も明らかにされていないではありませんか。
 再建計画をいう前に、経営の情報を公開すべきです。

 第4に、中小企業を守るために銀行をつづけるとくりかえし言っていますが、中小企業を守る方法はたくさんあります。制度融資なら新銀行よりもずっと低利で、しかも、400億円の預託原資があれば、10倍の4000億円貸し出すことも可能なのです。この方が中小企業は歓迎するではありませんか。以上四点、知事の責任で答弁をしてください。

【答弁】
○知事(石原慎太郎君)
 松村友昭議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、低所得者についての認識でありますが、先ほどの質問でも具体的に数字を挙げておりましたけれども、所得の低い世帯がふえているのは高齢化の進展によるものという指摘もあります。
 また、さまざまな調査を見ても、低所得の方々の中には、世帯主以外にも収入のある方や一定の資産を有する方も含まれております。したがって、低所得者すべてが直ちに生活に困窮しているとまではいえない、そういう趣旨で申し上げました。
 格差や貧困の存在を決して否定する立場ではありませんが、それが日本全体に充満しているかのような意見にはくみするものではありません。
 次いで、低所得者への支援についてでありますが、懸命に努力しているにもかかわらず低所得の状態から抜け出せずに不安定な生活を余儀なくされている一人一人が、意欲と能力に応じて活躍し、将来に向かって明るい展望を持てる社会を実現することは極めて重要であります。
 こうした考えのもとに、共産党の指摘をまつまでもなく、低所得者層への支援についても、「十年後の東京」実行プログラムの中で緊急総合対策として位置づけておりまして、さまざまな施策を着実に推進してまいります。
 次いで、中学三年生までの医療費助成についてでありますが、既にお答えしましたとおり、実現に向けて準備を進めております。しかし、所得制限については当然設けます。
 次いで、予算についてでありますが、平成二十年度予算においては、ご指摘をまつまでもなく、福祉、教育、中小企業対策はもとより、環境や治安対策、インフラ整備など、都民が直面する諸課題にはしかるべく財源を投入し、必要な施策を実施すべく手当てをしております。
 なお、お話を伺っておりますと、税収がふえたから使ってしまえとの主張でございますが、そうした安易な態度は、私の財政運営の考え方とは全く相入れないものであります。
 次いで、オリンピック競技会場の整備費についてでありますが、競技施設は可能な限り既存の施設を活用することとし、大会後も都民のスポーツ、文化の拠点として残すことが望ましい場合に、新たに恒久施設として建設をいたします。
 これにより、全三十一会場のうち二十一会場は既存の施設を使い、新たな恒久施設の建設は、オリンピックスタジアムを初め五会場といたしました。
 共産党が試算した数字の根拠は不明でありますが、施設の整備費全体については、昨年十一月に発表した開催基本計画において、恒久施設整備費が二千四百六億円、仮設施設整備費が八百四十三億円であることを既に都民に対しても明らかにしております。
 次いで、オリンピックスタジアムと既存の国立霞ヶ丘競技場についてでありますが、現在、国立霞ヶ丘競技場があります神宮では、IOCが求める十万人規模のスタジアムや補助競技場の建設用地は確保できません。そのために、立地条件にすぐれている晴海に国立のスタジアムと補助競技場をつくるよう繰り返し求めてきましたが、国は新たに建設することは難しいとの立場でありました。
 こうした経緯から、都は、開催都市の責任を果たすために晴海に都立施設としての整備をすることとしました。
 国に対しては、もちろん整備費について引き続き負担を求めてまいります。
 次いで、オリンピックにかかわるインフラ整備についてでありますが、これまで再三答弁してきましたように、三環状道路を初めとする都市インフラの整備は、オリンピック開催の有無にかかわらず、オリンピック開催の有無にかかわらず、東京の機能をさらに向上させるために必要な将来への投資であります。
 また、競技施設の整備についても、既存施設の活用などにより経費を極力抑制しております。
 申請ファイルも、こうした考え方に立って作成しまして提出したものであります。IOCの理念と軌を一にするものであります。
 次いで、新銀行東京への追加出資の撤回についてでありますが、新銀行東京の再建計画は、これまでの三年間で蓄積してきた営業ノウハウや反省点を踏まえ、抜本的な執行体制の見直しのもと、着実に収益を見込める事業への重点化を柱に策定されたものでありまして、都としては、この再建計画によって、中小企業支援の継続という都の施策に沿った取り組みが確実に実施されるものと考えております。
 このような考え方に立って、今回、追加出資を提案したものであります。撤回するつもりはございません。
 次いで、追加出資の意義についてでありますが、新銀行東京自体の経営努力とあわせ、追加出資を行うことで、銀行の経営の安定化が図られ、新銀行設立の趣旨である、高い事業意欲がありながら資金繰りに窮している中小企業への支援を継続していくことが可能となります。
 追加出資は、都民の方々の負担を考えたとき、限られた今後の選択肢の中ではこれしかないものでありまして、必ずやご理解をいただけるものと考えております。
 新銀行東京の経営計画についてでありますが、新銀行マスタープランは、金融の専門家のほか、旧経営陣も多数参画して策定したものでありまして、素人の思いつきで策定したものでもなければ、都が一方的に策定したものを旧経営陣に押しつけたものでもありません。
 実際、開業後、旧経営陣は、このマスタープランの経営理念を踏まえ、みずからの経営判断で中期経営目標や事業計画を策定をしており、これに基づき銀行の事業運営が行われてきました。ご指摘は当たりません。
 次いで、私の責任についてでありますが、経済・産業の担い手として懸命な努力を続けている中小企業に円滑な資金供給がなされなければならないという使命感から、銀行は設立いたしました。
 新銀行東京は、これまで既存の金融機関では支援が難しい、赤字や債務超過に陥っている中小企業に対しても支援を行うなど、中小企業を支える銀行として独自の役割を果たしてまいりました。
 新銀行東京は、これまでも一万七千社に対して支援を行い、そのうち九千社の業績を回復させ、今でも一万三千社の中小企業を支援しております。
 一方で、計画を上回るデフォルトが発生し、不良債権処理費用が増加したことなどから、厳しい経営状態に陥っております。
 事ここに至り、追加出資をお願いいたしましたが、この方法は、都民の方々の不安を考えるとき、限られた選択肢の中でこれしかないものと思っております。
 繰り返しになりますが、新銀行東京は、中小企業を中心に既に一万三千もの事業者を支援しておりまして、再建をあきらめることは彼らを見放すことになります。困難な道でも、ここで投げ出すわけにはいきません。是が非でも立て直し、都民のお役に立つ銀行とするのが私の最大の責任と思っております。
 次いで、温暖化ガスの削減についてでありますが、今世紀半ばまでに温暖化ガスを世界全体で半減する必要があるという考え方は、昨年のサミット以降の国際社会における共通認識であります。
 都は、一昨年末、こうした考え方を先取りし、二〇二〇年までに二五%の温暖化ガス削減をする目標を掲げまして、カーボンマイナス東京十年プロジェクトに盛り込んださまざまな施策を全庁一丸となって展開しております。
 なお、二五%の削減目標は、将来あるべき姿を想定し、今から何をすべきかを考えて設定したものでありまして、お話のように、できる範囲のことを積み上げた目標という指摘は全く当たりません。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。

○主税局長(熊野順祥君) 税制のあり方についてでございますが、少子高齢化の進展などの社会経済情勢の構造変化の中で、社会保障費を含めた国民負担の増加が不可避の状況となっており、我が国の税制は抜本的な見直しが求められております。
 今後の国民負担のあり方につきましては、消費税の見直しも含め、広く国民的な議論を重ねることが重要であると認識しております。

○福祉保健局長(安藤立美君) 九つの点にお答えをいたします。
 まず、低所得者に対する経済給付などについてでありますが、所得保障は、社会経済状況を踏まえ、基本的に国の責任で対応すべきものであり、都として実施する考えはございません。
 次に、低所得者に対する新たな貸付制度についてでありますが、現在、具体的な内容について検討を行っているところであります。この制度は、生活向上への意欲がある方に対し、生活資金等の貸し付けにより、安定した生活及び就労の促進を図るものであり、基本的に長期の据置期間を設定する考えはございません。
 次に、妊婦健康診査についてでありますが、妊婦健康診査は、妊娠中の定期的な健康管理により、安全な出産や母と子の健康を支えるだけでなく、子育て相談等の支援に結びつけるきっかけになると認識をしてございます。
 国においても、今年度、区市町村が行う妊婦健康診査の公費負担について、財源措置を拡充し、健康な妊娠、出産を迎える上で最低限必要な五回相当分としたところでございます。
 次に、妊婦健康診査に対する都の財政支援についてでありますが、ただいま申し上げたとおり、妊婦健康診査の公費負担について、国は、実施主体である区市町村に対し、既に必要な財源措置を講じていることから、都として新たな財政支援を行う考えはございません。
 次に、後期高齢者医療制度についてでありますが、この制度は、疾病リスクの高い高齢者を社会全体で支える仕組みであると認識しており、国に対し制度の中止を求める考えはございません。
 次に、後期高齢者医療制度の保険料軽減についてでありますが、都は、保険料の法定軽減分の負担など、国や区市町村とともに応分の役割と負担を担うこととしております。さらなる保険料軽減について、都として財政支援を実施する考えはございません。
 介護施設の整備についてであります。
 都は、介護保険の保険者である区市町村が地域の介護ニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づき、計画的な基盤整備に努めております。引き続き、多様な手法を活用しながら、介護基盤の整備に努めてまいります。
 次に、低所得世帯に対する灯油代助成についてでありますが、物価上昇などへの対応も含めて、低所得者に対する生活保障は、基本的に国の判断と責任によって実施されるものと認識をしておりまして、都として独自に実施する考えはございません。
 次に、障害者の作業所への支援についてでありますが、障害者自立支援法の円滑な定着を図るための国の特別対策を受け、都では、平成十九年二月に東京都障害者自立支援対策臨時特例基金を設置し、事業者のコスト増対策などを実施をしております。その一つとして、原油価格の高騰に対応するため、平成十八年度、入所及び通所施設へ特別助成を行いました。今年度も引き続き特別助成を実施することとしております。

○都市整備局長(只腰憲久君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、民間住宅の家賃についてでございますが、都内の民間住宅の家賃は、最近の十年間を見ますと横ばいで推移してございます。また、最低居住水準未満の世帯数の割合につきましては、大幅に改善をしております。
 今後とも、住宅に困窮する都民に対しましては、居住の安定を確保するため、都営住宅などの公共住宅のストックを有効に活用するとともに、民間住宅も含めた重層的なセーフティーネット機能の構築に取り組んでまいります。
 次に、民間住宅の家賃助成についてでございますが、家賃助成は、生活保護制度との関係や財政負担のあり方など、多くの課題があることから、都として実施することは考えておりません。
 次に、羽田─築地間のトンネル道路でございますが、羽田空港アクセスの向上は重要な課題でございます。お尋ねの道路につきましては、研究してまいります。
 また、多摩新宿線につきましては、これまでの調査におきまして、整備の必要性は高いものの、事業主体や採算性が課題とされておりまして、引き続き長期的な視点で検討を進めてまいります。
 次に、外環でございますが、外環は、首都圏の人と物の流れを円滑化するとともに、首都東京の国際競争力を高め、快適で利便性の高い都市を実現する上で必要不可欠な道路でございます。今後も国に対し、平成二十一年度に事業着手するよう、あらゆる機会をとらえて強く働きかけてまいります。
 最後でございますが、都市づくりにおきます建設廃材等の発生抑制についてでございますが、都はこれまでも、東京都建設リサイクル推進計画などに基づきまして、建築物等の長期使用とともに、コンクリート塊などの建設廃棄物を現場内で再利用することや、建設発生土の少ない工法を採用するなどして、積極的に発生抑制に取り組んでまいりました。いうまでもございませんが、これらの施策は低炭素型都市づくりに大きく寄与するものであると考えております。

○産業労働局長(佐藤広君) 十点のご質問にお答えをいたします。
 まず、日雇い派遣についてでございますが、働き方の選択は個人の問題であると考えております。雇用形態が多様化している中、日雇い派遣も一つの働き方でありますが、より安定した就業を希望する方々に対しましては、都は既に、しごとセンターなどできめ細かな就業支援を実施しております。さらに、来年度からは、低所得の方々を対象とした緊急対策におきまして、職業能力開発も含め、支援を実施してまいります。
 次に、日雇い派遣の実態調査についてでありますが、都では昭和六十二年以降、継続して派遣労働に関する実態調査を実施しております。また、国におきましては昨年、東京都と大阪府における日雇い派遣労働者の実態に関する調査を実施をし、就業日数、賃金、希望する就業形態等につきまして調査結果を明らかにしております。
 次に、最低賃金についてでありますが、東京都内の最低賃金は、法に基づき、国において、東京地方最低賃金審議会の審議を経て決定をしております。都として独自の基準をつくる考えはなく、また、それを契約の条件とすることも考えておりません。
 なお、昨年の法改正によりまして、最低賃金の決定に当たっては、生活保護に関する施策との整合性に配慮するとされており、今後、国の動向を見守ってまいります。
 次に、低所得者生活安定化プログラムにおける職業訓練についてでありますが、この職業訓練は、安定した就業のために訓練が必要な方が受講するものであり、受講奨励金は、実際に受講された方に支給することとしております。また、職業訓練の定員及び科目については、既存の訓練に加えまして、適正な規模、内容で実施するものであります。
 次に、新銀行東京の三月期決算の見通しについてでありますが、三月期決算における累積損失は、計画を上回るデフォルトが発生したことによりまして、不良債権費用が増加したことから、一千億円程度の見込みであると聞いております。
 次に、金融庁検査等の要請と第三者機関の設置についてのお尋ねでありますが、銀行に対する指導監督は、業務の公共的性格に照らしまして、銀行法により内閣総理大臣の権限とされており、金融庁の判断により実施されるものであります。第三者機関の設置につきましては、都としては考えてございません。
 次に、清算に必要な資金の根拠についてでありますけれども、銀行が清算する場合には、預金者保護が大前提であり、すべての預金者の払い戻し請求に対応できる体制を確保しなければなりません。新銀行東京は、資産は十分にありますが、預金の払い戻しに当たりましては、保有する有価証券等の現金化とあわせ、約一千億円の資金を確保する必要がございます。
 また、清算により融資継続が行われないことによりまして、既存融資先の経営悪化が発生することや、清算の公表により融資先にモラルハザードが起きる可能性があることなどにより、融資返済の滞りから多額の損失の発生が予想されます。
 次に、四百億円の根拠についてでありますが、銀行においては、健全性確保のため、銀行の自己資本比率に関する新しい国際合意である新BIS規制によりまして、事業を展開する上で避けられないリスクに対応する資本を確保することが求められております。新銀行東京への追加出資四百億円は、この考え方にのっとって算出された結果でございます。
 次に、制度融資等の商工業施策と新銀行東京についてでございますが、都はこれまでも、制度融資や新・元気を出せ商店街事業を初めとする商工業施策の拡充を図り、中小企業の利便性の向上に努めているところでございます。
 新銀行東京は、債務超過企業など、制度融資では対応しにくい中小企業を融資対象といたしまして、制度融資とその役割を補完し合いながら、資金繰りに苦しむ中小企業に資金を供給してまいりました。
 今後とも、新銀行東京は、都の多様な金融施策や商工施策と相まって、中小企業を支えていく重要な役割を果たすものと認識をしております。
 次に、大株主としての都の責任についてでございますが、株主としての新銀行東京に対する経営監視は、銀行法により、通常の事業会社との関係とは異なりまして、会計帳簿や資料の閲覧が制限をされております。
 都は、新銀行東京が、中小企業支援など、この銀行が担う役割を適切に果たしているかという観点から、事業の進捗状況や決算内容等の報告を受けまして、中小企業支援の一層の拡充などについて株主としての意見表明や申し入れを行うなど、経営の大枠を監視をしてまいりました。平成十八年度中間決算時には、今後における経営計画の見直しを要請をいたしました。また、平成十九年三月期決算時に表面化をいたしました深刻な経営悪化に対しましては、早急な計画の見直しや、経営陣の交代が必要であると判断をいたしまして、役員の刷新や都職員の派遣を実施し、経営改善に当たらせたところでございます。

○総務局長(押元洋君) 非常勤職員等の正職員化等についてお答えを申し上げます。
 都では、個々の職務内容や業務量などを十分に勘案した上で、非常勤職員や人材派遣などを適切に活用し、スリムで効率的な執行体制を確保してきたところでありまして、これらの職員を都として正職員化していく考え方はございません。
 また、非常勤職員等の待遇につきましては、職務内容や社会状況等を踏まえ、適切に設定をしております。
 なお、派遣労働者の待遇については、派遣元企業が定めるものであり、派遣を受ける側である都としては関与する立場にございません。
 今後とも、事業動向に留意しつつ、非常勤職員などを適切に活用しながら、最適な執行体制を構築してまいります。

○財務局長(村山寛司君) 予算についてのご質問でございます。
 今回の予算では、東京の都市機能の充実や福祉保健施策の充実など、都民にとって必要な施策に財源を振り向けるとともに、こうした取り組みを将来にわたり継続して実施するため、今後の税収減や財政需要の増大に対応すべく、基金の充実を図っております。都民の期待に十分こたえた予算であると考えております。

○東京オリンピック招致本部長(荒川満君) 三点お答えいたします。
 オリンピックスタジアムを仮設とすることについてでございますが、晴海のスタジアムは、二〇一六年オリンピックのシンボルであり、水と緑に囲まれたスポーツ、文化の新しい拠点として、都有地を活用し、恒久施設として整備するものであります。
 IOCは、オリンピックによってもたらされる有形無形の遺産、レガシーを重視しており、スタジアムを恒久施設とすることは、IOCの考えに合致するものでございます。
 なお、施設の整備に当たっては、国費や民間資金の導入に努め、都費の負担軽減を図ってまいります。
 次に、駒沢オリンピック公園総合運動場の活用についてでございます。
 一昨年六月に発表した開催概要計画書では、駒沢公園の屋内球技場を全面改修してバレーボール会場とすることを予定していました。しかし、当該施設は選手村から遠いこと、また、周辺道路が狭隘で交通アクセスに課題があること、さらには、全面改修の経費が新設の場合とほぼ同程度であることなどの理由から、このたびIOCに提出した申請ファイルにおいては、代々木公園内に会場を新設することといたしました。
 この結果、申請ファイルの計画は、半径八キロメートル圏内にほとんどの競技施設を配置する、よりコンパクトな会場計画となっており、IOCから高い評価が得られると確信しております。
 最後に、招致活動経費についてでございますが、申請ファイルでは、IOCが求めている大会計画策定費、IOC委員の賛同を得るための国際招致活動費及び立候補申請料、立候補手数料の合計額を招致経費として計上いたしました。
 一方、オリンピズムの普及啓発事業は、IOCが提唱するオリンピックムーブメントの推進を行うためのものであり、オリンピック開催の有無にかかわらず、その活動そのものが長期的な利益をもたらすものでございます。
 いずれの経費につきましても、当然、IOCの倫理規定を踏まえつつ、必要な予算を適正に見込んでおります。

○環境局長(吉川和夫君) 四点についてお答えいたします。
 まず、温暖化ガスの削減目標についてでございますが、東京都も、ロンドン市を初めとする世界の大都市も、地球温暖化のもたらす危機を回避するためには、今世紀半ばまでに大幅に温暖化ガスを削減することが急務であり、そのために世界の大都市が先導役を務める必要があるという認識では全く一致しております。
 これまでも、一昨年締結したロンドン市との政策協定や世界大都市気候先導グループの活動を通じて、世界の大都市間で緊密に情報を交換し、ともに施策を高め合ってきております。
 なお、各都市の削減目標設定に当たっての基準年や削減率などの考え方は、その都市の社会経済状況等の違いに応じた戦略の立て方の違いであり、単純に削減率の高い、低いだけを比較する議論は適当でございません。
 次に、CO2削減に向けた自動車交通の取り組みについてでございますが、都は、これまでのディーゼル車対策の成果を踏まえ、自動車からのCO2排出量を削減するために、三環状道路等の整備を促進するとともに、ハイブリッド車などの低燃費車の普及、環境に配慮して自動車を運転するエコドライブの推進、公共交通機関への転換促進による自動車交通量の抑制など、さまざまな施策に既に積極的に取り組んでおります。
 なお、ロードプライシングは、交通量抑制策の一つではございますが、迂回交通の確保や公平、確実な課金方法など難しい課題があることから、引き続き検討を行っております。
 次に、業務部門における温暖化対策についてでございますが、都はこれまでも、全国に先駆けて建築物環境計画書制度を導入するとともに、現在、大規模建築物等に対する省エネ性能の義務化などの検討を進めております。
 東京が国際競争力を有した世界都市であり続けるためには、都市再生が不可欠であり、今後とも、都市機能の整備や更新を最新の省エネ設備導入などの絶好の機会ととらえ、低炭素型都市の実現に向け、業務部門の温暖化対策を推進してまいります。
 なお、環境アセスメント制度におきましては、対象事業に対する予測・評価項目である十七項目の中に温室効果ガスも含まれており、対象事業の種類や地域に応じて、必要な場合に予測・評価が行われております。
 最後に、都市開発と環境との共生についてでございますが、都市における緑の機能は、地球温暖化対策のみならず、都民に潤いや安らぎを与え、都市防災やヒートアイランド対策、美しい都市景観の創出など、多様かつ重要でございます。
 緑の持つこれらの機能を活用した、環境と共生する持続的発展が可能な都市を目指して、都はこれまでも、東京の緑づくりに継続的に取り組んでまいりました。
 現在も、このような観点から、緑の東京十年プロジェクトを全庁横断的に推進しており、都市開発に当たりましても、開発許可制度を強化するなど、今ある緑の保全と新たな緑の創出に積極的に取り組むこととしております。
 このようなことから、過去の計画を復活すべきとの主張は意味のあるものとは考えられません。

【再質問答弁】
○産業労働局長(佐藤広君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、知事の責任、自覚というお話でございますが……
 本日の本会議の知事の答弁にも再三ございましたが、知事も、この今回の結果につきましてはもろもろの責任を感じているというふうにはっきりと申し上げたところでございます。
 また、二点目の、私財をなげうってでもというお話につきましては、先ほど知事がご答弁したとおりでございます。
 また、再建計画にまつわる情報についてでございますけれども、この点につきましても、先ほど私から答弁を申し上げたとおりでございます。
 また、中小企業振興のための制度融資につきましても、先ほど同様の質問があって、私がお答えしたとおりでございます。