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第二回定例会 一般質問 二〇〇八年六月一八日

植木こうじ(中野区選出)

石原都政が進める都市再生路線で、二酸化炭素が減るどころかふえ続けている
地球温暖化防止計画・・中長期の目標、都の責務、分野ごとの年次計画、財源の裏づけなどを明確に

二酸化炭素が一九九〇年比で一四・三%も増加

 地球温暖化問題について質問します。
 今、世界規模で、地球温暖化に起因する異常気象や氷河の溶解による海面上昇などが自然環境と世界経済に深刻な打撃を与え、東京においても、時間当たり一〇〇ミリを超える集中豪雨や酷暑が日常茶飯事になっています。
 こうしたもとで、世界の国々が人類の未来をいかに救うかという立場に立って、緊迫感を持った温室効果ガス削減の取り組みを開始していることに注目する必要があります。
 EUを中心とした先進国では、バリ合意に基づいた二酸化炭素の野心的な削減目標を掲げた取り組みが進められています。イギリスは、京都議定書の基準年である一九九〇年比で一五・七%、ドイツは一八・七%も削減し、ロンドンは二〇二五年までに六割削減するという意欲的な取り組みを開始しました。
 ところが、京都議定書の会議を主催した日本の場合、長期的取り組みではラストランナーと酷評されているように、取り組みは大きく立ちおくれています。
 また、東京も、こうしたEU諸国、諸都市の取り組みに比べて、二酸化炭素が減るどころか、ふえ続けています。それは、石原都政のもとで、都市再生による大規模開発が推進され、見るべき地球温暖化対策が進められてこなかったからにほかなりません。知事、一九九〇年と比べて、既に一四・三%もふえている現状をどう認識し、反省しているのですか。
 また、都は二酸化炭素削減の基準年を二〇〇〇年としていますが、EUではこんなことをやっていません。東京都がトップランナーとなるにふさわしいレベルを目標とするために、EU諸国やロンドンなどに学んで基準年を一九九〇年にすること、二〇二〇年の削減目標を少なくとも三〇%以上に、二〇五〇年目標は七〇%程度とするべきではありませんか。
 さらに、ことしからスタートした二〇一二年までの京都議定書の第一約束期間中に、少なくとも六%削減に努めるべきではありませんか。知事、それぞれお答えください。

低炭素都市実現に都市の成長のコントロールはさけて通れない

 東京都で二酸化炭素が減るどころか、ふえ続けている原因の第一は、石原都政が進める都市再生路線が挙げられます。このために、業務部門、オフィスビルでの二酸化炭素排出量は二〇〇〇年比で七%削減という低い目標ですから、二〇二〇年までの削減目標を達成できたとしても、九〇年比で見れば一二%も増加することになってしまいます。
 さらに、運輸部門は、都の見込みとは違い、都市再生で都心での自動車交通が十四万台もふえますから、減るどころか大幅に増加する危険があります。
 日本弁護士連合会は、提言で自動車総量抑制を掲げ、CO2排出削減を渋滞解消に求め、このための道路建設を進めるべきとする議論は有害なものといわなければならないと指摘しています。今求められているのは、サスティナブルシティー、すなわち持続可能な都市づくりです。
 知事、低炭素都市を実現するというのなら、都市の成長をコントロールすることは避けて通れないではありませんか、違いますか。

業務部門で三〇%減目標と総量規制を

 具体的な取り組みに当たっては、部門別のきめ細かな対策が欠かせません。
 まず、業務部門についていえば、個々の大規模ビルの削減義務化は当然のこととして、大規模ビルの環境負荷を考えれば、少なくとも九〇年比で三割以上の削減目標とすることが必要です。そのためにも総量規制を行うべきです。
 また、スクラップ・アンド・ビルドの促進でなく、ニューヨークのように新規建設を抑制し、大規模改修による長寿命化など修復型や、ビル建設時の廃棄物の抑制、再利用や、建物の断熱性能の拡充などによる省エネルギー型都市づくりへの転換を提案するものです。それぞれ答弁を求めます。

自動車依存型から脱却は世界の流れ

 ふえ続ける自動車対策は待ったなしです。ところが、今回提案された環境確保条例の改正案では、事前の環境審議会の答申で条例化を提案していたにもかかわらず、盛り込まれませんでした。
 環境確保条例に自動車から排出される二酸化炭素対策を入れるべきです。さらに運輸部門では、都の基礎データを正す必要があります。それは、都市開発でふえる自動車の増加分を反映する必要です。
 もう一つは、石原都政になって基礎数から外してしまった国際、国内線の航空機と船舶を算定することです。とりわけ航空機と船舶は、現実に全体の六%に当たる二酸化炭素を排出しているわけですから、排除する理由はありません。知事、きちんと積算して、それに基づく対策を講じるべきではありませんか。
 昨年、パリで開催された環境グルネル会議では、環境負荷の少ない交通体系への抜本的な転換として、貨物輸送の鉄道へのシフト、高速道路建設の凍結、排出量の少ない自動車への奨励金付与、航空輸送機は二〇二〇年までに四〇%削減など、具体策が提案されました。このように、自動車依存型から脱却が世界の流れです。
 知事は就任直後に、山手線内側の自動車乗り入れ規制、ロードプライシングを提案しましたが、一体どうなったのですか。お手本にしたロンドンでは、公共交通への転換とあわせて、既に電気自動車の無料駐車場や無料充電スタンドなど矢継ぎ早に対策を進め、自動車を減らしています。このように効果あるものをなぜやろうとしないのですか。
 また、交通対策は、貨物輸送へのシフト、バスレーンの確保、自転車専用道の設置などこそ重点にすべきではありませんか。それぞれ答弁を求めます。

二カ所の火力発電所を削減義務の対象に

 エネルギー対策も立ちおくれています。排出の大きな事業の一つが火力発電です。都内には、品川、大井の二カ所ありますが、削減義務の対象になっていません。
 国は今、燃料の石油を石炭にかえて、化学的処理を加えることで二酸化炭素ゼロ発電にする実験を行っています。都としても、化石燃料からの転換、再生可能エネルギーの拡充などを踏まえ、EUで効果が上がっている電力業者への削減義務化を導入すべきと考えますが、どうですか。
 都市を支えるエネルギーを地方や海外に依存するのでなく、みずから確保することが二酸化炭素削減の決め手となります。EUでは、再生可能エネルギーはほとんど域内で調達しているとのことです。東京のエネルギー自給率の目標を立て、太陽光、風力、バイオマス発電などを大胆に導入する取り組みを進めることが不可欠と考えますが、どうですか。

コンビニやスーパーなどの深夜営業の自粛を

 世界都市を標榜する東京は、二十四時間の経済活動、社会活動が営まれるエネルギー消費都市となっています。東京を省エネルギー都市にするためにも、経済社会活動のあり方を再検討すべき時期に来ていると思いますが、どうですか。
 便利最優先のライフスタイルの改革も必要です。コンビニやスーパーなどの深夜営業の自粛、自動販売機や過度なネオンサイン、広告照明の抑制などに取り組むことを検討すべきと思います。
 また、各家庭でのソーラーパネルの取りつけへの支援、外断熱や地中熱の利用など、省エネ建築物の普及のための助成が求められています。さらに、低所得者世帯へのエコ電球の無料配布を行うべきと思います。それぞれ答弁を求めます。
 中小企業分野は、省エネを進める上でかぎを握っています。しかし、多くの中小企業は原油、物価高騰などで経営が圧迫されており、環境対策に取り組む余力がないのが現状です。
 そこで、商店のLEDなどの省電力照明への切りかえ、工場や事業所の省エネ装置の導入のための改修などへの補助や、超低利の融資の拡充を進めることが温かい支援になりますが、どうですか。

石原都政で緑の対策がたな上げ・・都市公園の倍増計画を

 二酸化炭素を吸収する緑の喪失を食いとめることなしに、温暖化をストップすることはできません。ところが、石原都政のもとで、二酸化炭素を吸収する緑の対策はほとんど棚上げされてきました。
 二酸化炭素を排出するビルや自動車がふえ続ける一方、二酸化炭素を吸収する緑は減り続けています。かつて東京は、緑の倍増計画で、二十年間で一億本の樹木を提案したことがあります。また、横浜市では苗木を配り、百五十万本植樹行動を呼びかけています。都として苗木供給を大幅に拡充し、都民参加で緑の倍増に取り組むべきではありませんか。
 都民一人当たり六平米しかない都市公園の倍増計画を立てるとともに、生産緑地の追加指定を積極的に行うことを提案するものです。また、南山などの里山開発は中止すべきです。
 最後に、全庁的な取り組みの問題です。
 都は、一九九五年に地球温暖化防止の推進計画をつくりましたが、石原都政のもとで棚上げされ、その後策定された環境基本計画と東京都気候変動対策方針も実効性に乏しいものです。改めて、法に基づいて中長期の目標、都の責務、分野ごとの年次計画、財源の裏づけなどを明確にした地球温暖化防止計画を策定することを提案します。
 知事の答弁を求め、質問を終わります。

【答弁】

〇知事(石原慎太郎君) 植木こうじ議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、温暖化対策についてでありますが、都は、平成十二年に環境確保条例を制定し、全国に先駆けて地球温暖化対策計画書制度や建築物環境計画書制度を導入いたしました。さらに、平成十七年に計画書制度を充実強化するとともに、家電の省エネラベルやマンション環境性能表示などを、国や他の自治体に先駆けて導入してまいりました。
 こうした取り組みと相まって、設備機器の省エネ化が進んだ結果、東京は既に、先進国の大都市の中ではエネルギー効率が最も高い都市になっております。
 ちなみに、東京の一人当たりのCO2の排出量は、ロンドンやニューヨークに比べ、二割から三割低くなっております。
 都は、このCO2をさらに大幅に削減するため、国に先んじて掲げた、二〇二〇年までに二五%の温暖化ガスを削減するという具体的な中期目標達成に向けて、今回、条例を改正するなど、実効性のある施策を着実に推進してまいります。
 次いで、温暖化防止の推進についてでありますが、都は、「十年後の東京」においてCO2削減の中期目標を設定し、全庁挙げてカーボンマイナス十年プロジェクトを推進しております。
 今回提案しております削減義務化などの取り組みについては、国内外から高い評価を受けておりまして、実効性に乏しいというご指摘は全く当たりません。
 ちなみに、先般東京で行われました……(発言する者あり)黙って聞け。先般行われました東京でのシンポジウムで、同席しましたトニー・ブレア前英国首相は、東京都の気候変動に対する取り組みに敬意を表したい、世界的に見て最も見るべきものがあると発言してくれました。
 都は、昨年度設置した地球温暖化対策推進基金を活用しながら、本年三月に策定した環境基本計画に基づき、今後とも取り組みを強力に推進してまいります。
 なお、お話しの計画を策定する考えはございません。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。

〇環境局長(吉川和夫君) 十二点のご質問にお答えいたします。
 まず、削減目標の基準年についてでございますが、基準年については、事業者などの取り組みを促進する上で最も合理的な年次を設定すべきであり、都は、条例の制定により大規模事業所のエネルギー消費量などを正確に把握できるようになった二〇〇〇年を基準年度といたしました。
 本年一月に発表されたEU委員会の新たな包括政策案におきましても、同様の理由により、二〇〇五年を基準年とした二〇二〇年目標が新たに導入されております。
 いずれにしても、現在、国際社会において最も重要な課題は、中期目標の明確化と、それに向けた着実な取り組みでございます。
 次に、京都議定書の第一約束期間における地球温暖化対策についてでございますが、都は、今回提案しているCO2排出量の削減義務化と排出量取引制度を初め、我が国で最も強力な温暖化対策を推進しております。これらは、全国を牽引する先駆的なものであり、京都議定書の全国レベルでの六%削減にも大きく貢献するものと考えております。
 次に、業務部門の削減についてでございますが、このたび全面改定した環境基本計画において、二〇二〇年までに二〇〇〇年比で二五%削減するという東京全体の総量削減目標とあわせ、部門別の中期的な削減目標も設定いたしましたが、設定に当たっては、削減目標年である二〇二〇年に向けた、事務所ビルなど業務床の増や世帯数の増加、自動車交通量の動向なども見込んでおり、東京の都市活力の維持とCO2の大幅削減の両立を図ってまいります。
 次に、運輸部門の二酸化炭素排出量についてでございますが、都が取り組む気候変動対策は、都内の都市活動に伴う温室効果ガスの排出抑制を対策の対象とするため、航空、船舶では、排出量算定の国際ルールに準じ、都内運航量を基準に算定しております。
 なお、自動車のCO2排出量は、燃費の改善などにより、一九九七年度をピークに減少傾向となっております。
 次に、自動車交通のCO2削減の取り組みについてでございますが、CO2削減を進めるに当たっては、それぞれの都市の構造や交通状況等に応じた取り組みが効果的でございます。
 都は、世界最高水準の公共交通機関網を有しており、自動車への依存度が低いものの、その特徴を生かし、これまでも自動車交通量の抑制を進めるほか、低燃費車の普及等にも積極的に取り組んでまいりました。
 なお、ロードプライシングについては、回交通の確保など難しい課題がございますが、引き続き検討を行ってまいります。
 次に、削減義務の対象についてでございますが、東京はエネルギーの大消費地であり、都内CO2の排出量を減少させるためには、生産側ではなく需要側でエネルギー消費を低減させる施策を進めることが効果的でございます。
 今回の条例改正案におきましても、この観点から、オフィスや工場など、業務、産業部門の大規模CO2排出事業所への削減義務の導入を提案しているものでございます。
 次に、再生可能エネルギーの拡大についてでございますが、都は既に、昨年十二月に発表した「十年後の東京」への実行プログラムの中に、太陽エネルギーの導入拡大を目指す三カ年プロジェクトを位置づけ、太陽光発電や太陽熱機器についても飛躍的な普及を図っております。
 次に、経済社会活動のあり方についてでございますが、超高密な大都市である東京におけるさまざまな経済社会活動は、多くの企業や住民、あるいは東京を訪れるいわゆる昼間都民など、多くのエネルギッシュな行動の積み重ねであり、このあり方は、行政が一様に定められるものではございません。
 しかしながら、地球環境の危機にかんがみ、環境負荷の少ない都市の実現を目指すことが重要であるとの認識に立ち、本年三月に策定した環境基本計画では、東京において、都市間競争の中で人や企業に選択され続ける低炭素型の都市モデルの実現を目指すこととしております。
 次に、ライフスタイルの改革についてでございますが、知事が繰り返し表明しているとおり、既に都は、広告用照明の消灯など、省エネ、節電につながる具体的行動の実践に向けて、関係業界団体等と協議を進めております。
 次に、家庭に対する省エネ促進についてでございますが、都は既に、太陽光発電や太陽熱利用機器の拡大を図る仕組みづくりや、高効率給湯器の導入を図るための認定制度の構築と支援策の導入に取り組んでおります。
 なお、省エネはすべての家庭で行われることが望ましく、ご指摘のような施策を行う考えはございません。
 次に、中小企業の省エネ対策への支援についてでございますが、昨日も繰り返しお答えしておりますが、中小企業の省エネ支援策については、今後具体的に検討してまいります。
 最後に、緑の都市づくりについてでございますが、都は現在、緑あふれる東京を目指して、緑の東京十年プロジェクトを全庁を挙げて積極的に推進しております。
 この取り組みは、都民、企業等と協働しながら、海の森の整備、街路樹の倍増、校庭の芝生化等による新たな千ヘクタールの緑の創出や今ある緑の保全などを行うものであり、今後ともこのプロジェクトを推進してまいります。
 なお、苗木の配布については、都民参加型のイベントなどで行っております。

〇都市整備局長(只腰憲久君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、低炭素型都市の実現に向けた取り組みについてでございますが、東京が環境と調和した国際競争力を有する都市であり続けるためには、計画的な都市施設の整備や都市機能の更新が不可欠でございます。こうした取り組みによりまして、慢性的な交通渋滞が解消され、CO2の削減が図られるとともに、建物の省エネ化や開発に伴う緑の創出などが促進され、都市活動に伴う環境負荷が低減されるものと考えております。
 今後とも、都市の更新を適切に進め、環境に十分配慮した高度な都市機能を備えた東京の実現を推進してまいります。
 次に、修復型や省エネルギー型の都市づくりについてでございますが、都はこれまでも、東京都建設リサイクル推進計画に基づき、建設廃棄物の再利用や建設発生土の少ない工法の採用など、積極的な発生抑制に取り組んでまいりました。
 また、都市の更新におきましては、建物の高断熱化を初め、効率の高い熱源機器の導入や下水熱の利用など、最先端の省エネ技術や未利用エネルギーの導入を積極的に促進しております。
 今後も、これらの施策を推進し、環境負荷の少ない都市を実現してまいります。
 次に、交通対策についてでございますが、東京には既に、世界に類を見ない高密度な鉄道ネットワークが形成されておりまして、環境負荷の軽減に大きく貢献しております。
 また、東京の最大の弱点でございます交通渋滞を解消することがCO2の大幅な削減につながることから、三環状道路の整備の促進などを推進しております。
 これらに加えまして、お話ありましたバスレーンや自転車走行空間の確保、荷さばき施設の整備など、物流の効率化にも既に取り組んでおります。
 最後でございますが、都市の緑についてでございます。
 水と緑の回廊に包まれました美しいまち東京を復活させるためには、あらゆる都市空間で緑の創出と保全に取り組むことが重要でございます。
 これまで都は、都市公園等の整備、緑のネットワーク化を目指す環境軸の形成、生産緑地の指定拡大などを進めるとともに、お話の稲城市南山の土地区画整理事業などにおきましても、緑の保全に取り組んでおります。

以上