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文書質問趣意書

2008年6月23日
たぞえ民夫(世田谷区選出)

都営住宅建て替えは、居住者の声を反映したものに

 東京都は、入居を希望する都民がふえ続けているのに、都営住宅の新規建設を打ち切り、もっぱら既存住宅の建て替えを進めています。今後、昭和30年代に作られた団地を中心に2万4千戸、さらに、40年代の10万6千戸について、建て替えをおこなう計画です。
 20年度は、都内で20ケ所の団地を建て替える計画ですが、実施にあたっての移転スケジュールは、多くが居住者への説明会から移転まで、六ヶ月程度と短い期間です。
 私の地元、世田谷区内の都営下馬アパートでは、「最近まで予定はないと言っていたのに、急に話しが出たことに不満と驚きで腹立たしい限りだ」「突然のごとくビックリとはこのこと」と都の提案に驚きを隠せません。
 さらに、居住者は「急な話しで血圧も上がり、体調も良くなく毎日が気が重い」と健康を害したと語り、せめて「人間としての心の余裕を持てる生活を保障してほしい」と訴えています。
東京都は、自治会との関係を強調し、自治会や町会から了解を得ているからと、居住者に知らせないことが、各地から聞かれます。

Q1 自治会などが居住者の意向を十分反映することは当然のことですが、問題は居住者の生活と権利がかかわる問題であり、一人ひとりの入居者に直接伝え、合意形成に努めるのが最低限の責務ではないですか。見解を伺います。

 高齢者世帯の多い都営アパートだからこそ、貸主である東京都の一方的なスケジュールや都合で進めるのではなく、建て替え計画のスケジュールや規模、間取りなどプランを、まず住民に丁寧に説明するべきです。

Q2 建て替えは、住民合意をふまえ、計画も一年以上の期間をおき、住民の生活実態を十分考慮し、慎重に提案する必要があるのではありませんか。見解を求めます。

 次に、建て替え説明会のあり方です。都営下馬アパートの説明会は3月29日、東京都の主催で開催されました。
私は、この説明会に参加し、三回にわけて実施する工事計画、そのための仮移転や工事期間などの説明についての住民の声を直接聞きました。
 「すべて先に決められており最低限の希望など何一つ取り入れられていないではないか」「老朽化が進み更新するというが、耐震化こそおこなうべきだ」など、会場から質問や不満が続出しました。1400世帯一人ひとりの住まいに関わる重大問題であるにもかかわらず、全体の説明会は後にも先にもこの一回です。住み慣れた団地でいつまでも暮らし続けたい、その願いに答えることこそ、自治体の責務です。

Q3 そのためには、一度説明会をもてば次のスケジュールに進めるという立場ではなく、住民の意向を十分尊重したきめ細かな説明会にする必要がありますが、どうですか。

 建て替えにあたって、大きな問題になっているのは、都が居住者の生活実態把握を行なっていないことです。各地で移転説明会後に意向調査書が配布されますが、居住者名や仮移転先の希望団地名、自動車の保有の記載を求めています。これはあくまでも移転への参考のための意向調査であり、子どもたちの学校や保育園・幼稚園への通学・通園、病院などへの通院、介護を必要とする状況などについては、一切記載を求めていないのです。これでは居住者の生活実態が把握ができないではありませんか。
 あるご婦人は、「私は目の難病を持っています。すぐ近くの東邦医大に行っています。都内にはそこと日大駿河台の2ケ所しかないのです。そのようなことをつかまずにおこなうのは考えられない」と怒りを隠せません。

Q4 建て替え計画に先立ち、居住している人々の暮らし向き実態の把握があってこそ、これからも住んでもらえる必要な建物規模や戸数、間取りが計画できるのではないですか。居住者の生活実態把握こそまずおこなうべきと思いますが、見解を伺います。

 建て替え後の間取りについても居住者から不安の声が上がっています。居住者から私に寄せられた声の中で多数占めているのは、「今より狭いのは困る」との声が九割を示していることです。間取りが狭いとの声が一番上がっているのは、いわゆる一人世帯の「1DK」と二人世帯の「2K」の間取りです。
 例えば、東京都は住戸標準規模について、平成5年度には1DKを35u〜43uと設定していましたが、平成15年度はこれを下回る32uまで切り下げました。この年には、これまで二〜三人用の2DK45u〜55uの中間に新たに37uの2Kという間取まで設定したのです。2Kは六畳と三畳半というきわめて狭い間取りです。
 「13年前に建て増ししたのに、今回建て替え面積がずっと狭いのは納得がいかない」「毎週泊りがけで息子が心配して来てくれるが、泊まるところがなくなるのは困る」「2Kは死体置き場か霊安室のようだ」「生きたまま墓に入る気分です」と、面積規模がきわめて狭い型別供給実施基準に強い批判の声が寄せられています。

Q5 「団地で一緒に育ち、不幸にも亡くなってしまった二人の兄弟の荷物もあります」と居住者は語っていますが、多くで家財を捨てなければならないと悲鳴の声が広がっています。東京都の型別供給は、こうした思い出も、何もかも捨てろということなのですか。

 葛飾区では、区民の居住水準を引き上げようという区自身の計画と目標を定めた「住宅基本計画」があり、一人世帯で35u、二人世帯で40u、三人世帯で60u、四人世帯で70uと目標を立てています。東京都の最低居住水準に設定している1DK25uをはるかに上回るサイズをめざしています。都が提案している2Kサイズはあまりにも非人道的であると言わざるをえません。

Q6 昨年12月の第四回定例会で都市整備局長は、建て替えに当って「住みやすい間取りとなるよう工夫しながら、適切な面積規模の住宅を供給する」と答弁していますが、住みやすいと言うのなら、2K住戸型式は再検討し、面積規模など必要な見直しをただちにおこなうべきと考えますが、見解を伺います。

 同時に、機械的に世帯人数で居室や面積を決めることは許されません。東京都の住宅政策の基本を、「住まい」は人権・福祉の観点に立って、都民が人間らしく住み続けられる住居の確保とその整備をはかるべきです。

Q7 住戸面積は、1DK、2DKなど小規模住戸に偏ることなく、若年ファミリー世帯や三世代ファミリー世帯などに対応できるよう、必要な広さの住宅を供給するべきと考えますが、見解を伺います。

Q8 また、狭隘な間取りで進めている建て替え計画は、いったん白紙にもどし、住民参加で再検討した住宅供給計画をたてることを提案しますが、見解をうかがいます。

以上