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文書質問趣意書

2008年6月23日
河野ゆりえ(江戸川区選出)

葛西臨海公園のカヌー・スラーロム施設建設計画について

 今年1月、東京都はIOC(国際オリンピック委員会)に2016年のオリンピック開催都市立候補の申請ファイルを提出しました。6月5日、IOCは東京都を含めた4都市を候補都市として選定しました。
 すでに、東京都は2006年度からオリンピック開催のための基金を毎年1000億円ずつ積み立てている上に、招致推進活動経費は150億にもふくれあがっています。
 貧困と格差拡大のなかで、厳しい生活を余儀なくされている都民は、「なぜ今、東京がオリンピックを開催しなければならないのか」「オリンピックより先に都がやるべき仕事はたくさんある。震災対策や、雇用の安定、福祉の充実にこそ力を入れてもらいたい」と、疑問の声を呈しています。
 東京都がIOCに提出した申請ファイルには、競技施設整備の計画が記されています。新設が予定されている施設として、カヌーのスラローム施設があり、場所は江戸川区の葛西臨海公園となっています。東京でのオリンピック開催はまだ決定されたわけではありませんが、葛西臨海公園へのスラローム施設建設計画は、いくつもの問題点がありますので、以下、質問します。

 計画ではスラローム競技施設は、新設、常設で2015年5月31日完成予定、建設位置は人工なぎさ西側の真向かいの汐風広場で、観客席数は8000人規模となっています。申請ファイルの前の概要計画書には、建築面積6550u、延床面積13,100uと記されています。
 申請ファイルに記載されている建設費は10億円ですが、これは、オリンピック終了後も残す恒久的な施設部分の建設費のみで、暫定的につくられる観客席などの費用は含まれていません。暫定施設の建設費用は、オリンピック運営委員会が負担(放映権や入場料、スポンサーからのお金などを財源)することになりますが、恒久施設部分の倍以上の建設費が必要になると考えられます。
 現段階のおおまかな施設計画は、高さ6メートルのところから下方に水を流し、蛇行しながらカヌーがゴールに向かうコースを作る案のようですが、仮に汐風広場にこのような競技施設を建設したらどうなるでしょうか。

Q1 葛西臨海公園は、今から20年前の平成元年に開園した都立公園です。総面積は、805,861.13uです。H15年時で年間346万人の来園者数です。同じ区内にある都立篠崎公園は年間95万2千人の来園者数ですから、3倍以上の来園者数です。水族園、鳥類園、バーベキュー広場、大観覧車などの施設と合わせて、すぐ隣にディズニーランド、ディズニーシがあることで、区内都内だけでなく関東近県を中心に多くの人が訪れています。開園以来20年の時を経た今、樹木は豊かに成長し、海辺の景が楽しめ、緑の下で憩える公園です。
 汐風広場にスラローム施設を新設することは、せっかくの恵まれた自然環境を破壊する結果をまねくことは間違いありません。緑の芝生は剥がされ、樹木は伐採されることが予想されます。
 高さ6m、長さ400m以上におよぶ競技コースの建設と合わせて、8000人の観客席、選手の更衣所や待機所、カヌーなど競技用具の収納場所に加え、係員の事務を執り行う事務所の確保、観客のためのレストハウスやトイレ、売店の設置など付随する多くの施設建設が必要となります。
 都のオリンピック招致本部は、「施設を建設しても都立公園の緑は減らさない」と説明していますが、その約束は可能なのでしょうか。ご見解をお聞かせください。

Q2 観客を移動させる交通機関の問題もあります。
  東京都は、選手は江東区有明に建設予定の選手村から専用シャトルバスで搬送し、要する時間は13分と説明しています。
  しかし、競技場に来る観客の移動はどうなるのでしょうか。招致本部は、オリンピック競技施設は自家用車の利用は認めず、公共交通を使ってもらう、と言っています。葛西臨海公園は、JR京葉線の葛西臨海公園駅がありますが、平日の快速電車停車はありません。東京メトロ東西線の西葛西、葛西の両駅も快速電車は停車せず、人口増の葛西地域では長年にわたって住民から不満が出ています。JR京葉線、東西線ともに葛西地域の人口増に伴い乗客数が増加しています。特に東西線は、朝夕、殺人的とも言える混雑です。一日の乗降客数は、両駅とも約10万人を数えます。超過密と言える状況が続いてきたのに、これまで改善策が進んできませんでした。
 このような状況のもとで、もしオリンピックが開催された場合、万の単位の人々が瞬時に集まることが想定される競技施設に、観客の安全、安定的な輸送、移動は果たして可能なのでしょうか。ご見解をお聞きします。
 また、帰途も問題です。つい最近、ある女性人気シンガーが葛西臨海公園で野外コンサートを開き、数万の聴衆が集まりました。コンサート終了後、帰途につく人の移動が一斉に始まったために、大パニックになったのです。
 スラローム競技の終了後、大勢の観客移動が予想されますが、公園外に出る人の流れなどについて、具体的に検討の上、葛西臨海公園をスラローム施設建設予定地としたのでしょうか。それぞれお答えください。

Q3.駐車場の利用について伺います。
  葛西臨海公園は、水族園、鳥類園に保育園、幼稚園、小学生、中学生が見学、学習に訪れています。大型バスに乗って園ぐるみ、学校ぐるみで来園しています。浦安のディズニーランドに来る人も葛西臨海公園の駐車場を利用する場合があり、特に土曜、日曜は車で人口なぎさ等に遊びに来る人が大勢います。もし、オリンピック競技施設が作られ、車での来園が禁止になったら、こうした人々は大変な影響を蒙ることになります。
  2700台の収容能力をもつ駐車場がまったく使えなくなれば、大混乱になる事態が予想されます。一般来園者の車利用への対応はどうされるのでしょうか。お答えください。

Q4.オリンピック終了後の施設はどうなるのでしょうか。
 現在の計画では、スラローム競技施設は恒久的なもので、オリンピック終了後は一般利用に開放するけれども、観客席やレストハウス、選手の更衣室などは仮設で取り壊しになるとのことです。
  私は、数年前、長野オリンピックのジャンプ施設などを見る機会がありました。当時つくられた施設は、ほとんど活用されず、周辺に出店した飲食店などは閑古鳥が鳴いて廃業に追い込まれていました。地元では「オリンピック不況」ということさえ言われていました。スキーは冬に盛んになるスポーツですが、カヌー競技も季節によって利用が増減するスポーツではないでしょうか?
  一般利用がどれだけあるかわからない施設を、公的資金だけでも10億円もの建設費をかけて、わずか2週間あまりのオリンピックのために、新設する必要があるのでしょうか。
 1964年の東京オリンピックでは、河川にコースをつくって競技を行なったとのことです。コンパクトで、環境に優しいオリンピックと銘うっているのなら、それにふさわしい計画を立てるべきではないですか。
 後利用の見通しを含めて、あらためて施設建設の必要性についてお考えをお示しください。

Q5.葛西地域で生活している江戸川区民の意見を聞きました。
  まず、スラローム施設建設の計画があること自体が知られていませんでした。東京都は、都民及び施設建設や改修計画がある地域住民への説明や意見聴取を全く行わず、IOCへの申請ファイルを提出しているのではありませんか。その点について、お答えください。

Q6.カヌーのスラローム施設が建設された場合、せっかくの自然環境や景観が台無しになってしまいます。葛西地域の住民は、海浜のおおらかさと緑の安らぎを感じることができるこの公園は、今のまま守って欲しいと要望しています。
さらに、日々の生活が困難な事態になっている経済情勢なのだから、東京都はオリンピックに多額の予算を使うよりも、生活を守ることに力を注いで欲しい、と切実に訴えています。
 医療改悪の影響で、江戸川区唯一の総合病院である臨海病院は、夜間小児救急診療もとりやめてしまいました。ワークライフバランスの大切さが強調されていても、保育園不足も依然深刻です。都心に近いことから賃貸住宅の家賃も高額です。大型店の出店で商店街は疲弊してきています。「オリンピックより私たちの生活を、仕事を何とかしてほしい!」というのが、率直な都政への要望です。
 厳しい生活を応援してほしい、この都民の声に東京都はどう応えるのでしょうか。お聞かせください。

以上