過去のページ

文書質問趣意書

2008年10月2日
植木こうじ(中野区選出)

集中豪雨対策の抜本策について

1、集中豪雨

 今年の雨の異常さは台風による豪雨、局地的な集中豪雨、さらに加えてゲリラ豪雨という言葉も使われるようになり、その言葉がぴったりな雨で被害が多く発生しています。
 八王子市では8月25日夜半からの豪雨で、JR高尾駅では線路が水につかり、民家の裏山が70mに及び土砂崩れしたために倒壊してしまうなど被害が広がった。裏山は開発業者の造成地ですが、開発業者が復旧しないために東京都が代執行するという事態になり、開発を許可した東京都への批判の声さえあがっています。
 東京が集中豪雨に弱い都市であることを露呈した豊島区の事件がありました。
 8月5日、豊島区雑司ヶ谷下水道幹線の工事現場では、雨が降り出して数分後には下水管が瞬く間にあふれ、管内で工事していた作業員が避難する時間すらなく逃げ遅れて3km先まで流されて5人が死亡するという事件がおきました。1 時間最大雨量57.5mmですが、大雨警報発令前の突発的な局所的集中豪雨で、これまでの安全対策では短時間の避難は想定していなかった事故でした。

2、効果的でタイムリィな豪雨情報、警報システムを

 わが党が代表質問でゲリラ対策として効果的でタイムリィな的確な豪雨情報、雷雨情報システムの確立を求めたのに対して、水防情報システムや東京アメッシュの活用がありインターネットで提供しているから大丈夫という答弁でした。しかし、この情報は豪雨が降り出してからの雨量であり河川の水位ですから今回の下水道工事現場の事故では情報がまず届かない、届いても既に遅いということになりかねません。このために、天気予報専門のウェザーニュース社が、局地的に発生する積乱雲を"ゲリラ雷雨防衛隊員"の協力を得て、レーダーが捕捉する前に「ゲリラ雷雨メール」で情報提供するサービスを始めていますが、こういう情報提供こそ東京都が率先して実行すべきなのです。
 東工大の神田学工学博士は、気象庁、東京都、研究者などの成果をスーパーコンピューターで処理して、情報の一元的な活用システムを確立すれば局地的な雷雨や豪雨を降り出す前に予測し、現場に提供できるようになり被害を抑えることが可能だと警告しています。

Q:現状では、アメダス、メトロス、東京アメッシュなどの情報が別々に存在し、情報の共用がしにくくなっています。局地的な雷雨や豪雨の予報や、現場への情報提供などができるよう情報の一元的な活用システムを確立すること、そのため、神田工学博士など専門家の協力を得てプロジェクトチームを立ち上げることを提案しますが、見解を伺います。

Q:また、親水河川での避難の遅れで犠牲者も出ています。この点でも監視員がいるところは都内で一か所しかなく、大半は警告板が設置されている程度です。この点でも、警報による告知システムを全都的に確立すべきです。

3、豪雨対策基本指針の充実の提案

 今年、都は豪雨対策基本指針を発表し、わが党がかねてから求めていた豪雨流域ですすめている雨水浸透マス設置促進事業など具体化しました。

Q:しかし、最近の豪雨地域は河川流域とは必ず一致するとは限りませんから雨水浸透マス設置促進事業を豪雨流域に限定せず都内全域に広げることによって雨水の地下浸透量を倍加すべきです。

Q:また、雨水浸透率の高い関東ローム層地域では雨水浸透管(トレンチ管)の設置など雨水を涵養する各種対策を豪雨流域に広く普及すべきです。同時に、江戸川、江東などゼロメートル地域など低地では雨水浸透が十分にできない状況がありますから地域の実情に合わせて小規模の雨水貯留管の設置を行うべきです。事業所ビルや公共施設での一時貯留施設や雨水再利用の促進のためにも貯留槽の設置の遅れている現状を打開するための指導強化、助成制度の創設を図るべきです。それぞれお答えください。

Q:さらに、被害を抑制するために、豪雨流域に計画的に緑地や公園の整備を進めることも重要です。また、豪雨対策促進エリアでの集合住宅建設は、下水道への負荷が増大し水害時の効果が少なくなることを考えて、豪雨対策計画期間については集合住宅の建設については一定のルールを確立し、抑制策を講じ、それらを公園や緑地への転用を図ることも被害を減らすために効果的だと考えます、合わせて見解を伺います。

4、水害対策の目標の設定基準の見直しについて

 以上の努力を踏まえて、水害対策の目標の設定基準の見直しについても提案します。
 このたびの豪雨対策基本指針では「豪雨や浸水被害の発生頻度を踏まえ、」重点的に「対策促進エリア」の設定を提案していますが、現在の総合的治水対策の基本は「昭和61年答申」に基づき、「河川整備や下水道整備に加え、流域対策を実施」するとして、当面の暫定計画は河川・下水道施設のみで対応することが前提になっています。 
豪雨実態の変化に対応した水害対策の目標はこれまでの都市の在り方や流域対策を見直すことで目標設定基準を改善することが可能になります。

Q:河川・下水道施設の整備はこれまで以上に充実することは前提ですが、基本対策の柱の一つに「家づくり・まちづくり対策」と「雨水浸透」を加えて、現在、全体では10ミリとなっている雨水浸透ます設置・貯留対策を倍に引き上げ、豪雨地域においては15ミリの目標を30ミリに改善することです。これまで述べてきた都市づくりと雨水の涵養対策を強力に進めれば達成できる提案です、積極的な回答を求めます。

5、豪雨を生む都市構造、災害に弱い都市構造

 豪雨対策基本指針に基づく対策の実施が急がれていますが、近年の豪雨は都市構造にかかわる根本問題にふれた対策を考えなければなりません。
 この10年間では、50m以上の雨量が377回になり、その前の20年間の195回に比べて実に2倍近くなり、100mmを超えた場合は13回と、その前の20年間の2回からみても、降雨状況が大きく変わっているのです。
 NHKのクローズアップ現代では、なぜ、不安定気象、集中豪雨、ゲリラ豪雨が発生するかを特集し、東工大の都市気象研究者の神田学先生の実験を紹介し、@地球温暖化の影響などグロ−バルな影響、A従来から考えられてきた九十九里海岸からの風、相模地方からの風、東京湾の海風の影響、それに加えてB23区規模で建物などが集積するヒートアイランド現象と、人工的な排熱、水蒸気がこもることによってピーク時には太陽エネルギーを超える場合があり、この三つ要素が重なりあって局地的に上昇気流が起き、不安定気象、集中豪雨、ゲリラ豪雨が発生するという研究成果を紹介していました。
 実際に、都市の人口集中、高層ビルなど都市化が激しくなってきたバブル時の建設ラッシュ、「メガロポリス計画」などの大規模開発、さらに石原都政が進める「都市再生」などで都心に超高層ビルが急増してきた時期と、東京における集中豪雨の増加時期とが一致していると言わざるをえません。
 「東京都豪雨対策基本指針」でも、「降雨状況の変化」について、「地球温暖化やヒートアイランド現象などの影響も考えられ」「今後も豪雨の増加傾向が持続する可能性」があると分析しており、「東京湾からの海風」が「暖まった地面」で上昇気流になることの要因になっていると分析しています。
 東京への都市の建築物の集積、人口の集積など新たな一極集中が集中豪雨やゲリラ豪雨に大きな影響を与え、今後も進められる「都市再生」計画で都市の集積が一層加速されれば、現在でもヒートアイランド現象が豪雨など自然災害に与えている影響が一層加速され、被害を増大させかねません。
 わが党の代表質問で「都市の成長管理をおこない、持続可能な都市づくりに転換をはかるべき」だとの指摘に都市整備局長は「環境と調和した国際競争力を有する都市でありつづけるために」とこれまでどおりの答弁を繰り返しており、全く危機意識を持っていません。

Q:EU諸国の大都市では「都市の成長管理」を含めた地球温暖化問題に真正面から取り組み大きな成果を上げつつある事例もあるように、東京でも、これ以上の豪雨など自然災害を増やさないためにも勇気を持って都市の集積の大元になっている「都市再生特別措置法」の是正と、都市再生緊急整備地域指定を中止するよう国に求めるべきです。そして、高層・超高層ビル建設など大規模開発の抑制に踏み切るべきです。水害対策や被害に対する巨額の投資費用が必要になることを考えたらむしろ思い切って実行に移しすほうが効果的です。それぞれお答えください。

Q:また、都市化が進み雨水が河川や下水にストレートに流れこむという都市の弱点の克服が重要で、雨水を涵養する街づくりを本格的に進めることが重要と思いますが見解を伺います。

Q:この点でも、わが党が代表質問で多摩の緑地開発の規制や公園の倍化など緑地の保全と拡大について質問したのに対して「適切に対応」しているとか、「鋭意整備に取り組んでいる」と従来の答弁を繰り返していましたが、実際には緑地開発はどんどん進み緑地が減少する一方であり、公園もニューヨークの一人あたりの面積が約30uなのに比べて東京では約6uしかないという認識が欠如していると思いませんか、答えください。

Q:改めて、里山など自然緑地や都市計画公園や地域の公園を倍化して公園のグリーンベルトをつくるなど緑地全体を倍加することを求めます。また、高層建造物については総合設計など容積率をプラスするのでなく、緑地空間確保を義務付け、その割合を増やすこと、コンクリートをはりめぐらせる大規模幹線道路計画を中止し、地域の街路樹はCO2吸収量を大幅に増やすこと、臨海副都心の未処分地には緑地を整備することです。さらに、苗木の配布の倍化など都民の植林を促す取り組みを求めるものです。それぞれ答弁を求めます。

以上