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第一回定例会 一般質問 二〇〇九年二月二五日

たぞえ民夫(世田谷区選出)

都立梅ケ丘病院の廃止問題について

 最初に、都立梅ケ丘病院の廃止問題です。
 世田谷区にある梅ケ丘病院は、全国最大の子どもの心の専門病院です。児童虐待による情緒障害、自閉症を初めとした発達障害、統合失調症などの子どもたちの治療には、落ちついた環境と温かい人間関係が欠かせません。低層の病棟で、樹木の緑や土の香りなど、息遣いの感じられる広い敷地の中でゆったりと治療をしています。外来患者は年間四万人で、年々ふえています。入院は長期に及ぶことが多く、退院後の支援も必要です。六十年という長い歴史の中で、地域の人たちとの温かい関係もつくられています。梅ケ丘病院の職員は白衣を着ていません。入院前の生活の場と大きく違わないようにするためです。こういう病院だからこそ、存続を求める署名が十七万人から寄せられているのです。
 ところが、石原知事は、その梅ケ丘病院を廃止して、小児総合医療センターに移転統合する条例案を今議会に提出しました。子どもの精神科病院はふやさなければならないのに、頼みの綱の梅ケ丘病院をなくすなんて考えられない、六十年の歴史でつくり上げた大切な病院の医療を解体しないでという声が広がっています。梅ケ丘病院の元院長は、梅ケ丘のように一つの病院が子どもの精神科の病院という形は世界的にも貴重なもの、なくすことは、東京都にとっても国にとっても、大きな損失だと語っています。
 小児総合医療センターは府中病院の隣に建設中ですが、府中病院は救急車の受け入れ台数は日本一で、年間一万台を超えています。新しいセンター整備により、この台数がさらにふえることは明らかです。しかも、八王子市との協議により、ドクターヘリを使うことも検討されています。年間一万台を超える救急車が出入りし、発着に爆音を伴うドクターヘリまで飛来する環境が、重度の精神疾患や環境変化への適応が難しい発達障害の子どもたちの療養環境として好ましいものだと考えているのですか。
 そもそも梅ケ丘病院と清瀬、八王子小児病院の統廃合計画案をまとめた有識者らによる都立病院改革会議の小委員会では、梅ケ丘病院をどこかへやってしまうわけにはいかない、本当に清瀬小児病院がなくなっていいのか、八王子小児病院を府中と一緒にするには無理があるなどの異論が続出したのです。それを抑え込んだのが、委員長代理の、財政問題から発しているものですから、何かしないことには、経営の効率化も大きな課題になっているという発言でした。
 都は、小児総合医療センターで心と体の一体の医療が提供できるといいますが、そんなことは後からつけた理屈にすぎません。オリンピックの立候補ファイルによれば、東京都みずからが現在十一の都立病院を運営しており、患者中心の医療の実現など質の高い医療サービスを都民に提供していると書いてあります。それをこれから八カ所に減らすのは、欺瞞といわざるを得ません。世界に十一の都立病院を売り込んだのですから、少なくとも十一の都立病院を都立として充実していくことが世界への責任ではないですか。答弁を求めます。

私立幼稚園への支援について

 次に、私立幼稚園への支援について伺います。
 幼児期は心も体も大きく成長する時期であり、幼稚園は、家庭ではできない貴重な体験を積み重ねていく場となっています。集団生活を通じ、子どもたちの内面には、仲間との連帯や自分が必要とされ役に立つことへの誇りなど、人間らしい成長、発達への強い思いがはぐくまれているのです。また、子育ての相談や交流を通じ、親も成長できる場所となっています。
 知事、人格の基礎を形成する上でも、子育て支援としても、幼稚園は欠かすことができない重要な役割を果たしていると思いますが、いかがですか。
 東京都では、幼稚園の八割が私立幼稚園で、三歳から五歳の幼児の五五%に当たる十六万三千人が通っています。都は私立幼稚園に対し全国的にも高い水準の助成を行い、子どもたちがよりよい教育を受けられるよう支援を行ってきました。ところが、この十年間は助成が伸び悩み、何とか充実できないかとの要望が大きくなっています。
 都が実施している私立幼稚園経常費補助の園児一人当たりの単価は、一九九九年度に比べて一万円近く減り、九九年度には全国で第三位だったのに、二〇〇七年度は四十六位に急落してしまいました。ここまで経常費補助の単価が下がった原因は何なのですか。大事な役割を果たしている幼稚園への補助がこんなにも下がってしまったことをどう考えているのですか。
 例えば公立幼稚園の園児一人当たりの支出は八十二万円、保護者の支払う保育料を除いても七十数万円になります。一方、私立幼稚園への経常費補助の園児一人当たりの単価は十四万五千円しかありません。余りにも安過ぎるではありませんか。経常費補助の総枠を拡大する必要があります。私立幼稚園経常費補助は重要だと思いますが、どうですか。また、今後どう充実していく考えなのか伺います。
 幼稚園が幼児教育の専門機関として、保育の質を高め、子育ての相談にも乗り、さらに若手を育成するためには、経験のある保育者が一定以上の割合でいることは大切な要素です。民間教育研究所が行ったアンケート調査によると、現在幼稚園が抱える教育上、経営上の最大の課題は、教員の質の維持と向上でした。その中でも、特に私立では経験年数が短いのが課題であると分析されています。都内でも、平均勤続年数は六年程度で、それより長く勤めている人は激減してしまうのが実情です。幼稚園教諭が経験を積んで働き続けることは重要だと思いますが、どう考えていますか。
 私は、ある園長先生から、本当は若手からベテランまでバランスよく教員を雇用したいが、現在の補助では何ともそれが難しいと苦悩の訴えを聞きました。人件費に相当する補助単価は百六十六万円で、若い先生を安い給料で雇わなければ経営が成り立たないのです。幼稚園教諭の補助単価を小中高校の単価に近づけることや、経験年数に応じた単価に設定することが必要だと考えますが、どうですか。
 保育の質の向上には、クラスの規模と教員の配置も重要です。欧米の多くの研究では、保育者の配置状況やクラスの規模が子どもの発達に大きな影響を与えていることが明らかになっています。アメリカの調査では、クラス規模が小さいほど、考えて工夫する行動と協力する行動がふえ、目当てのない行動など消極的な行動が減っています。
 三歳児から五歳児まで、一クラスが三十五人で担任一人の現行基準では、子どもの発達段階にも合いません。実際に多くの私立幼稚園では、一クラスの人数を少なくしたり、複数担任制をとっています。こうした努力を現場に任せるだけでなく、都として支援することが求められます。一人一人の子どもたちの力を伸ばす上でも、保護者への対応を十分にする上でも、一クラスの人数を少なくすることが重要だと思いますが、どうですか。
 三歳児就園促進補助、チーム保育推進補助を増額することや、障害児のための加算を充実させること、預かり保育の補助の単価を増額することが現場から要望されていますが、この要望にどうこたえるんですか。
 保護者負担の軽減も切実です。私の地元、世田谷区私立幼稚園PTAの子育て支援に関する意識調査では、私立幼稚園の保護者に対する現在の助成金について、十分ではない、少な過ぎるが、合わせて六割にもなります。経済的負担が重いので三年保育は我慢して一年分の保育料を節約することにしたなどの話も珍しくありません。
 都内の私立幼稚園の入園料と保育料を合わせた初年度納付金は、平均四十四万円を超えています。これとは別に、入園時には制服などの費用、入園後も通園バス代や遠足代、暖房費、教材費など負担をしなければなりません。そんなにかかるとは思わなかったと、悲鳴の声が上がっています。私立幼稚園の保護者負担軽減を行うことは重要だと思いますが、どうですか。また、今後どう充実させていくのですか。答弁を求め、質問を終わります。

【答弁】

〇知事 たぞえ民夫議員の一般質問にお答えいたします。
 私立幼稚園についてでありますが、子どもの教育については、私立幼稚園のみならず、公立、私立を問わず、また学校の種類も問わず、幼稚園は極めて重要なものであると存じております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。

〇病院経営本部長 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、小児総合医療センターの療養環境についてでありますが、センターでは、患者さんが安心して治療を受けられるよう、国分寺崖線など周辺の恵まれた自然環境との調和を図り、緑のいやしの空間である庭園の設置や、院内のアメニティーへの配慮を行っており、患者さんにとって好ましい療養環境が整備されることとなっております。
 お話の救急車については、構内においては消音することとしており、また、緊急時にヘリコプターの発着がある場合でも、事前に患者さんに周知するなどの対応をとることとしておりますので、療養上の問題はないと考えております。
 次に、オリンピック立候補ファイル中の都立病院の記載についてでありますが、これはIOCからの、貴都市及び貴地域で現在実施されている医療制度の一般的な概要を示してくださいという質問項目の回答として、現時点における東京全体の医療サービスを紹介する中で、都立病院の現況を記載したものであります。したがいまして、十一カ所を八カ所に減らすのは欺瞞だとの指摘は当たりません。
 都立病院改革は、これまでの方針どおり着実に進めてまいります。

〇生活文化スポーツ局長 私立幼稚園に関する七点のご質問にお答えをいたします。
 まず、経常費補助についてでございますが、私学助成の中でも、基幹的な補助でございます経常費補助につきましては、教育条件の維持向上、保護者負担の軽減、学校経営の健全化を目的として、標準的な運営費の二分の一の補助を堅持し、私立幼稚園の振興に努めております。
 園児一人当たりの単価につきましては、経常費補助を算定するに当たり、補助対象とする幼稚園教職員数の基準を設けたことなどを反映し、平成十一年度との対比で、平成十七年度には約一万七千円下がり、十三万六千円となりましたが、その後は増加いたしまして、平成十九年度は十四万五千円となっております。
 次に、経常費補助の重要性等についてでございますが、幼稚園児の九割以上が通う私立幼稚園は、その建学の精神に基づき、個性的で特色ある教育を展開し、都民の期待にこたえており、東京の幼児教育に大きな役割を果たしております。したがって、その運営を支える経常費補助は重要だと考えております。
 また、経常費補助につきましては、私立幼稚園の振興を図るため、これまでも充実に努めてきており、これまでどおり適切に対応してまいります。
 次に、幼稚園教諭についてでございますが、幼稚園教諭としての経験を積むことを一概に否定するものではございませんが、それ以上に、幼児教育を担う教諭の資質及び専門性の向上が求められておりまして、国も、幼児教育振興アクションプログラムにおいて、施策の柱の一つとしているところでございます。そのため、私立幼稚園においては、独自の研修、研究活動を実施しており、都では、それらに対して支援を行っております。
 なお、先ほど都内の私立幼稚園の教諭の在籍年数が六年程度というご指摘がございましたが、文部科学省が行っております学校教員統計調査、これは三年に一度で十六年度のデータしかございませんが、都内の私立幼稚園の教員の在職年数は、十六年度八・二年となっております。
 次に、幼稚園教諭の補助単価の設定についてでありますが、経常費補助の算定に当たり導入している標準的運営費方式は、それぞれの学種ごとに標準的な運営費を算出し、その二分の一を補助単価として設定するものであり、適切な算定方式であるというふうに考えております。
 次に、幼稚園一クラスの人数についてでありますが、国の幼稚園設置基準では、一学級の幼児数は三十五人以下を原則としており、都の基準においても同様であります。この基準のもと、各私立幼稚園の一学級の人数については、設置者がそれぞれの教育方針などに基づき判断しているものと承知しております。
 なお、東京都が二十年五月一日現在の状況を調査いたしましたところ、園の八四・三%が三十人以下の学級でございました。
 次に、補助の充実に関する要望についてでありますが、都は、三歳児就園促進補助や預かり保育補助などについて、これまでも補助単価を増額するなど、その状況に応じて充実に努めてきたところでございます。これまでと同様、私立幼稚園を取り巻く環境等を適切に勘案しながら対応してまいります。
 最後に、保護者負担の軽減についてでありますが、私立幼稚園に入園を希望する幼児の就園を容易にするため、保護者負担軽減は重要であると考えております。都はこれまでも、園児保護者負担軽減事業費補助の充実を図っており、経常費補助や国の就園奨励費、区市町村の補助等の施策とあわせて、これまで同様、保護者の負担軽減に適切に対応してまいります。

以上