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第一回定例会 一般質問 二〇〇九年二月二六日

松村友昭(練馬区選出)

外かく環状道路について

 初めに、外かく環状道路について伺います。
 知事は、施政方針で、外環道の練馬区大泉から世田谷区東名インター間の建設について、都市計画変更後も、八十回を超える住民との話し合いを重ねてきたことをもって、住民の合意が得られた、建設事業化に向けた障害はなくなったかのようにいいました。しかし、こんなに身勝手ないい分はありません。
 昨年、国土交通省と東京都が外環道の整備手法について沿線住民と協議を行うために組織した地域課題検討会が、沿線六地域で開催されましたが、その結果は、国と東京都の思惑に反して、整備手法以前の、地下本線と地上部道路建設の是非について意見が集中し、建設反対が大勢を占めたのです。
 また、関係町会員の九割の人が反対している練馬区青梅街道インターチェンジ周辺地域では、検討会すら開かれていません。
 にもかかわらず、国と都は、話し合いを打ち切って、対応方針素案なるものを一方的に発表して、建設強行を示しました。これでどこが知事のいう、機は熟したといえるのでしょうか。地域住民からは、話し合いの継続を強く要望されているのです。
 問題は、話し合いの回数ではありません。むしろ、話し合いの回数が重ねられるほど、住民の道路建設についての疑問が膨らみ、反対する住民がふえてきたのが実際のところではありませんか。答弁を求めます。
 こうしたもとで、二月二十一日、地域住民は自主的に地域課題検討会報告会を開催し、問題が山積みしていることを明らかにしました。練馬区民からは、八の釜湧水と憩いの森が消失することについて何ら改善策が示されていないことを初め、巨大排気塔の中止など、住民から検討会で出された意見や疑問が全く反映されていないこと、各地域からも、検討会の性格について、行政側の既定路線を押しつけていく場に住民を立ち会わせたもの、ガス抜きの会議など、検討会の強権的、非民主的なやり方に怒りの声が噴出しています。知事が直接、住民の意見に耳を傾けるべきです。
 関係自治体からも疑問と意見が表明されています。杉並区は、青梅インターチェンジ周辺地域の交通面や環境面への影響などについて対策が明らかになっていないとして、現段階では外環事業の着手まで容認することはできないとしています。武蔵野市も、外環ノ2、すなわち地上部道路が残る計画の事業着手は絶対認められないとしており、議会が一致してこれを支持しているのです。
 杉並区長や武蔵野市長、そして武蔵野市の議会全会派の意向を無視するのですか。答弁を求めます。
 外かく環状道路は、自動車公害も二酸化炭素による地球温暖化も今日のように顕在化していない、今から四十年以上も前の高度成長期に、しかも右肩上がりの成長を前提に計画されたものです。しかし、二十一世紀を迎えた現在、地球温暖化を防止するための対策として、自動車中心社会の見直しが世界の流れとなっています。
 こうしたことを考えるならば、自動車中心から鉄道やLRT、バス優先の交通マネジメントなどを中心とする交通政策への転換という時代の要請に、どうこたえるのかが求められています。答弁を求めます。
 知事は、定例記者会見で、経済や車の交通量にも変動があるとして、見直しの必要を聞かれて、論外な話といいました。
 さらに、我が党が代表質問で、外環道計画を白紙に戻すことを求めたのに対して、論外などといい張りました。
 関係住民や自治体の意見に耳を傾けず、まともな検討すら拒否して、論外などと一蹴する。まさに強権政治としかいいようがないではありませんか。知事、どうですか。
 巨額な工事費も重大問題です。
 大深度地下方式では、一メートル一億円もの巨額な公共事業となります。地下方式の計画は、結局のところ、専ら大手ゼネコンや鉄鋼メーカー、セメントメーカーを潤わすための計画になります。景気対策の点からも、経済効果の高い福祉や教育、生活密着型公共事業などに税金を使うべきです。答弁を求めます。
 地上部道路は、少なくとも三千棟の住宅の立ち退きと、大型道路に伴う再開発など、東京で有数の閑静な住宅街に破壊をもたらします。知事自身、一九九九年に武蔵野市の予定地を視察した際に、マイナス要因が発生している道路の問題だから、これを地上につくるということは考えられないと表明しているのです。にもかかわらず、地下本線の事業化の見通しが立ってきたからといって、地上部道路建設を持ち出すのは、まさにだまし討ち以外の何物でもありません。断じて許されません。きっぱりと地上部計画を取り下げるべきです。知事、答えてください。

地域医療について

 次に、地域医療についてです。
 私の住む練馬区は、人口七十万を超え、都内で二番目に人口の多い区になりましたが、都立病院も国立病院もなく、人口当たりの病床数は二十三区平均の三分の一にすぎません。全国のすべての政令都市、中核都市と比べても最低です。例えば、人口六十九万人の岡山市は、一般病院五十三カ所、四百床以上が、市民病院、国立岡山医療センター、赤十字病院など六カ所あります。これに対し練馬区は、一般病院十九カ所、四百床以上は一カ所しかありません。区内には、救命救急センターも、がん診療の拠点病院もなく、回復期リハビリ病床も一床もないのです。
 こうした医療過疎ともいうべき問題の打開は、区民の切実な願いですが、これは練馬区だけの問題ではありません。もともと東京の人口当たりの一般病床数は、全国平均よりはるかに少なく、中でも環八道路沿線各区、二十三区東部、多摩地域など、都内には多くの医療不足地域があるのです。
 ところが、都の保健医療計画は、病床抑制のため、病院の少ない区と多い区を組み合わせて同じ二次医療圏としているために、病院不足地域の問題が一向に解決しないのです。練馬区の場合、病院の多い板橋区と同じ区西北部医療圏とされ、医療圏全体では病床過剰地域のため、病院の増設ができない状態に長く置かれていました。
 知事、同じ医療圏の中で医療基盤に大きな偏在があることをどう認識していますか。実態に合わない医療圏を押しつけて、練馬区の医療過疎の解決を阻んできた都の責任は重大です。神奈川県は、病院不足地域で増設できるよう、県内八医療圏だったのを十一医療圏に見直しました。これが自治体としての当然の姿勢です。
 日常の生活圏とは違う板橋区に病院が偏在し、練馬区からは交通の便が悪く通院困難という問題を打開するには、医療圏の見直しが避けて通れません。練馬区の医療過疎を打開できるよう、区西北部医療圏の見直しを求めるものです。見解を伺います。
 練馬区は、日大光が丘病院に続く第二の医療拠点として、四百床の順天堂大学附属病院を誘致しましたが、既に飽和状態で、焼け石に水と関係者が嘆く事態が続いています。
 練馬区は、さらに五百床はふやす必要があるとして、既存病院の増床や、新たな病院誘致などを含む検討を開始しました。病床不足の打開を目指す区の取り組みに対し、都としてどういう援助ができるか、検討を開始するときではありませんか。
 多摩の公立病院には、施設整備費と運営費の補助がありますが、二十三区には区立病院がなかったため、補助制度がありません。しかし、初の区立病院である新台東病院がこの四月に開設予定です。区立病院の施設整備費及び運営費に対する新たな財政措置が求められていますが、どう対応するのですか。
 人口七十万を超える練馬区に、がん診療の拠点病院を設置することは、がん診療の地域格差是正に向けて重要です。都は、国が指定する地域がん診療拠点病院十二カ所と、それと同等の東京都認定がん診療病院を十カ所指定しています。東京都認定がん診療病院の指定は都の裁量であり、今後さらに指定医療機関をふやすことも検討課題ではありませんか。
 また、区西北部医療圏を初め、都内の回復期リハビリ病床が不足していることをどう認識していますか。早急にふやす必要があると思いますが、答弁を求めます。
 練馬区では、年間六千人の子どもが生まれるのに、分娩を実施する病院は四カ所、診療所は三カ所しかありません。都内の産科、産婦人科の病院や診療所は、この十年間に百七十四カ所から百二十四カ所へ大幅に減っています。この深刻な事態を打開し、身近な地域で安心して子どもを生むことができる環境整備に向け、分娩を実施する産科や産婦人科の診療所や中小病院への支援に都として取り組む必要があると思いますが、どうですか。
 院内助産所や助産師外来をふやしていくことも重要であり、都の支援を強める必要があります。お答えください。
 国は、救命救急センターの整備促進に向け、これまでの百万人に一カ所という枠を外す方向であり、来年度予算案では補助対象が広がっていると聞いています。新たな変化が生まれていることを都はどう把握していますか。また、どう対応するのかを伺い、質問を終わります。

【答弁】

〇知事 松村友昭議員の一般質問にお答えいたします。
 外環道についてでありますが、私が論外と申しましたのは、文明工学的、都市工学的と申しましょうか、外環の必要性を全く理解しようともせず白紙撤回を主張されることが、いかにも的外れということをいったものでありまして、強権政治とのご批判は当たらないと思います。
 繰り返しになりますけど、外環道は、ひとり東京のためだけではなく、広く国全体に便益の及ぶ重要な社会資本であります。外環道は、費用対便益が全国でもトップレベルにありまして、これは指数の上ではっきり出ておりますが、まさに必要な、必要な道路であります。景気対策としてもこれほど効果のある事業はほかにありません。
 平成二十一年度の事業着手を果たすよう、引き続き国に強く求め続けてまいります。
 次いで、医療基盤の整備についてでありますが、都は、限りのある医療資源を活用し、保健医療のニーズに的確に対応するため、二次保健医療圏を単位として、救急、がん、脳卒中などの医療基盤を整備しております。
 今後とも、都民ニーズを踏まえ、二次保健医療圏を基本としながら、安心かつ質の高い医療提供体制を実現してまいります。
 他の質問については、関係局長から答弁します。

〇都市整備局長 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、外環事業への住民の理解についてでございますが、都は、都市計画変更の後も、国や沿線区市とともに、外環の事業化を前提とした地域ごとの話し合いを重ねてまいりました。
 先月、環境対策、アクセス道路の整備、まちづくり等の住民から出された意見や要望に対しまして、国や都の対策の素案を取りまとめ、公表いたしました。
 こうした取り組みも通じまして、外環事業に関して沿線住民の大方のご理解が得られたものと認識しております。
 なお、都は、幹部職員が出席した八十回を超える地域ごとの話し合いを行ってきております。加えて、現地においてオープンハウスを開催して、直接住民の声も聞いております。
 次に、地元区市の理解についてでございますが、二年前の都市計画変更時に、地元区市長から事業着手に関する意見が出されたことは承知をしております。
 都は、その後、地域ごとの話し合いなどを重ねてきておりまして、これらを通じて、地元区市長からは、外環事業への一定の理解が得られていると受けとめております。
 なお、今後の事業実施段階におきましても、引き続き、国などとともに沿線住民との話し合いを継続的に実施していく考えでございます。
 次に、交通政策の転換ということでございますが、東京における交通政策は、先ほど知事からもご答弁ありましたが、鉄道などの公共交通のみならず、自動車交通も重要な役割を担うことから、それぞれの特徴を生かしながら総合的な交通ネットワークを構築していくことが重要でございます。
 東京の最大の弱点は交通渋滞でございまして、外環を初めとする環状方向を重視した道路ネットワークの整備を強力に推進してまいります。
 次に、外環の経済効果についてでございますが、外環の費用対便益、すなわち、工事費などの費用に対する時間短縮効果などの便益の比率は十分高いとされておりまして、景気対策の観点からも効果は大きいものであります。引き続き、平成二十一年度の事業着手に向けて、一刻も早く国幹会議を開催し、整備計画を策定するよう、国に強く求めてまいります。
 なお、都市計画道路の整備など、地域の利便性向上や渋滞緩和のために必要な公共事業は着実に進めるべきものと考えております。
 最後になりますが、外環の地上部街路につきましてでございます。
 地上部に計画されている外環ノ2につきましては、四区市にまたがっておりまして、地域によりましても、地元住民にさまざまな意見があることは承知をしております。
 都といたしましては、この道路のあり方について地元と話し合う必要があることから、地上部街路の取り組みを、早期整備が必要な外環本線とは切り離して進めるべきと考えております。

〇福祉保健局長 八点についてお答えいたします。
 まず、二次保健医療圏の見直しについてでありますが、二次保健医療圏は、住民の日常生活行動の状況、交通事情、医療資源の分布等、必要な要素を総合的に勘案の上、定めており、見直す考えはございません。
 次に、病院誘致などの区の取り組みへの支援についてでありますが、病院の新設や増設に伴う建設費に対する補助制度はございません。救急や災害医療などの個々の行政医療に必要な施設整備については、現行の施策により対応してまいります。
 次に、区立病院に対する補助についてでありますが、市町村公立病院運営費補助金は、多摩及び島しょ地区に公的医療機関が少なかったという歴史的経緯と市町村の財政状況にかんがみ、市町村が設置する病院の運営に対し補助を行っているものであります。二十三区においては、これに類似するような補助制度を創設する考えはございません。
 なお、台東区立病院に対しましては、旧都立台東病院の病床を継承したことから、病院整備事業費償還補助を行っているものであります。
 次に、東京都認定がん診療病院についてでありますが、東京都認定がん診療病院は、高度ながん医療の提供が可能で、がん診療拠点病院に準じた要件を満たす病院を指定しております。今年度新たにスタートしたところであり、その事業の効果等を検証することとしております。
 次に、回復期リハビリテーションについてでありますが、回復期リハビリを行う患者の医療を確保するために必要なことから、来年度、都では、回復期リハビリテーション病棟の整備に要する経費を補助することとしております。
 次に、分娩を実施する医療機関等への支援についてでありますが、都では、ミドルリスクの妊産婦に対して緊急診療を行う周産期連携病院を来月指定し、ネットワークグループの中で二次医療機関の中心となって医療連携を推進できるよう支援をいたします。
 これらにより、それぞれの医療機関が持てる機能を発揮しながら、協力して地域の産科医療を支える体制づくりを進めてまいります。
 次に、院内助産所や助産師外来への支援についてでありますが、都は今年度から、医師勤務環境改善事業により、医療機関における院内助産所や助産師外来の設置を促進するため、施設整備への補助を開始いたしました。
 来年度は、周産期連携病院をこの対象に加えることにより、院内助産所等の開設促進を図ってまいります。
 最後に、救命救急センターの整備についてでありますが、救命救急センター整備の考え方については、昨今、厚生労働省においてもさまざまな検討がなされております。都としては、国の基本的な考え方を踏まえて対応してまいります。

以上