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第二回定例会 討論  二〇〇九年六月五日

村松みえ子(日野市選出)

 

 日本共産党都議団を代表して、第一〇七号議案「平成二十一年度東京都一般会計補正予算」ほか五議案に反対する立場から討論します。
 自公政権による雇用破壊、庶民増税、社会保障の相次ぐ切りさげに加え、アメリカに発した金融不況によって都民生活の困難は、日をおって深刻になっています。いま、自治体がなすべきことは、都民のくらし・福祉を守るために全力をつくすことであり、補正予算もこの立場から編成することがつよく求められました。
 しかし、知事が提案した補正予算案は、一部にわが党や都民が要求した施策が盛りこまれてはいるものの、規模、内容ともに、不況から都民生活を守るということから見れば、全体としてはきわめて不十分で、都民の期待を裏切るものといわざるを得ません。

 第一に、融資を除き、都民のくらし・福祉に直接役立つ予算は、二〇一億円、全体の十五%にすぎません。危機的状況にある雇用対策、高齢者福祉・医療の拡充、格差と貧困是正のための施策などについては、見るべきものはありません。東京都には、都民のくらし、福祉を充実させるために五千億円規模で緊急対策をくむ財力は十分あります。
 浪費をあらためるとともに、何よりも、東京都には、三千億円のオリンピック基金をはじめ、自由に使える基金が、一般会計予算の四分の一にあたる一兆六千億円もあるのですから、これを都民のために適切に活用すべきです。

 第二に、予算案では、国のバラマキ経済対策に追随し、あいかわらず大型幹線道路など従来型の公共事業が重視されていることです。
 とりわけ、オリンピックをテコにした景気対策として計上された外郭環状道路予算は、東名以南も含めれば総事業費三兆六千億円、一b一億円と過去の最高額になるものです。しかも、東京都の負担は最大八千億円にものぼりかねません。大深度地下トンネル工事の受注は、ひとにぎりのスーパーゼネコンの独占を許すもので、景気対策としても福祉や雇用対策など都民のふところを暖める政策と比べて著しく劣ります。中小企業対策としてもほとんど役に立ちません。
 外環道の整備費として提案された直轄事業負担金については、そもそも地方自治体が負担する必要のないものです。知事も一度は疑問を呈し、全国知事会もその廃止を国に求めているではありませんか。しかも、東京都の負担金が、国土交通省の職員の退職金や都外で使われている機器などの支出にあてられていることも明らかになりました。
 わが党が、この問題をただしたのに対し、知事は答弁に立つこともできませんでした。このこと自体、知事が直轄事業負担金を計上することが、いかに道理がないかを示すものです。
 加えて、外郭環状道路は、閑静な住宅地や自然の破壊などで周辺住民、自治体から反対や疑問の声があげられ、住民合意が形成されていないものです。外環整備費の撤回と計画の中止をつよく主張するものです。
 雇用効果でいえば、わが党が代表質問で提案したように、都営住宅三千戸、認可保育所百五十カ所、特養ホーム百カ所の建設、歩道や路面補修の予算を今年度の二・五倍にすることなどによって、合計のべ二百四十八万人の建設労働者の仕事を確保することが可能です。
 景気対策というのであれば、くらし・福祉を拡充する予算とともに、このような生活に役立ち、しかも中小建設業に直接、仕事がまわる公共事業にこそ予算を配分すべきです。
 そして何よりも、高齢者福祉や子育て支援予算を抜本的にふやすことが緊急に求められています。日本共産党が提案した、少なくとも七十五歳からの高齢者の医療費無料化や、特別養護老人ホーム整備の用地費補助の再開と一万人分の緊急整備、急増している保育所待機児の解消にむけ、もっとも要望されている認可保育所を三年間で一万五千人分ふやすこと、小児救急や産科の医療体制強化をおこなうとともに、これ以上、三十人学級をタナ上げせずに、ただちにふみだすことこそ、都民の願いにこたえる道であることをあらためて申し述べておきます。

 なお、議会は本来、各党が政策を提案しあい、都民の立場から行政をチェックする場です。にもかかわらず、公明党がまたまた、他党の批判を行政側にさせるという、あるまじき質問をおこなったことは、議会の品位をけがすものです。公明党は、知事の言葉を借りなければ、他党への「反論」もできないという姿を浮きぼりにしたといわざるをえません。
 公明党がとりあげたことの一つは、わが党が石原都政のもとで、歳出総額にしめる老人福祉費の割合が、全国二位から、四十七位、最下位に転落した事実を指摘したことです。石原知事は、「都合のいい数字のみをとりあげた根拠のない批判だ」と答えましたが、わが党の指摘は、総務省の公式統計にもとづく明確な根拠があるものです。知事は、こんなことも知らないのでしょうか。しかも、高齢者がふえているのに、都の老人福祉費は、九九年度の二千四百四十二億円から、二〇〇七年度は千九百六十五億円に、なんと実額で二割もへらしているのです。また、福祉保健局長は、当初予算こそ重要だと答弁しましたが、今年度当初予算で高齢社会対策費は、三十二億円の減額になっている事実を指摘しておきます。たとえ自分たちに都合の悪い数字であっても、事実は率直に認めて、あらためて高齢者の福祉に光をあてて拡充することこそ、政治家と行政のとるべき姿勢であることを、きびしく申し上げておくものです。

 また、中学生三年生までの医療費無料化について、わが党は、今期二回にわたり条例案を提案しましたが、自民党、公明党、民主党によって否決されました。しかし、結局、都がこの方向にむいて、とりくまざるをえなくなったことは、厳然とした事実であることを指摘しておきます。

 新銀行東京の二〇〇九年三月期決算についても、その内容は、四年連続の赤字であり、赤字幅が再建計画より改善されているといっても、東京都の手厚い支援と劣後債の前倒し償還などによるつじつま合わせに過ぎません。最大の問題である不良債権は減少するどころか、五六億円も増加しているのです。
 自民党や公明党は、四〇〇億円の追加出資に手が着いていないから問題はないとしていますが、今回の決算で、もともとの資本金で残されたのは、わずか七十七億円にすぎません。公明党の幹事長が「都政新報」で認めたように、新銀行東京は失敗だったのです。設立に賛成した自民党、公明党、民主党の責任は重大です。
 知事自身、くりかえし新銀行東京の譲渡を表明しており、本気で、新銀行東京を立て直し、中小企業に役立つ銀行にする気などないことは、明々白々ではありませんか。
 中小企業への融資は三割にすぎません。存在意義を失った銀行は必要ありません。ただちに破たん処理にふみだすことを求めておくものです。

 最後に、都議会議員選挙が目前に迫りました。日本共産党は、この四年間、知事自らののトップダウン事業と、オリンピックをテコに巨大開発を最優先し、都民のくらし・福祉をないがしろにする石原都政と真正面から対決し、貧困と格差の是正、都民生活防衛のために全力をつくしてきました。この中で少なからず都民要求を実現してきました。
 都議選で前進し、都民要望を実現する力をさらに大きくするために全力をつくす決意をのべ、討論を終わります。

以上