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文書質問趣意書

2009年6月5日
たぞえ民夫(世田谷区選出)

技術開発にともなう契約のあり方について

 下水道局は、内径70センチ以下の管渠の維持管理の仕事について、その管渠の破損状況などを把握するのに、「より効率的、効果的な維持管理をすすめるため」として、2005年から管路内でデジタルテレビカメラを走行させて、管路内の状態を撮影して調査、展開図化、自動診断、分析を一連で実施できるデジタル方式ですすめるもので、2010年度からは全面的にすべてこの新方式でおこなうと発表しています。
 この下水道局が使用しているデジタル方式による管渠診断方式は、東京都下水道サービス株式会社が、日本工営株式会社、東芝テリー株式会社と共同開発してきたものです。それは、数年前から、下水道局の設備を利用して、下水道局確認のもとで進められてきました。その後、東京都下水道サービス他2社が共同開発したミラー方式TVカメラシステムの特許がとられ、現在は独占状態です。
 業者が、都の下水道の管渠診断調査事業を受注するには、東芝テリー(株)のミラーカメラの使用が条件となり、データの分析・診断をするには、そのソフトである展開図化システム、自動診断システムの使用も必要不可分で、この分析ソフトの開発者である、3社との間で使用許諾契約を結ぶことになり、分析ソフト開発者に使用料として自動的に230万円が支払われます。
 このシステムについて下水道局は「下水道管渠の効率的な維持管理のために開発された技術」といいます。下水道サービス(株)が自主的にすすめた共同開発といっても、分析結果は下水道局の台帳情報システム(SEMIS)につなぐことが前提で開発されたものです。したがって、下水道局は、このシステムが開発されれば、今後の管渠診断調査事業については、企業各社が特許を取り、独占契約になることはあきらかでした。
 今回のような下水道サービス(株)がすすめた共同開発方式が、野放しにされるなら、今後、このような形で管理団体を通して、独占契約につながる契約方式が横行しかねません。
 下水道局は、これ以外にも、2008年4月から下水道処理施設を太陽光発電パネルの設置の実験場所として提供する形で、シャープの負担で共同開発をすすめてきた太陽光発電システムがあります。
これも結局は、下水道局が下水道処理施設への太陽光発電整備工事として発注すれば、工事を請け負う企業は競争入札で選定するにしても、太陽光発電システムそのものは、シャープが開発したものを使用することが条件になり、下水道処理施設への太陽光発電システムの導入を拡大することはシャープに自動的に利益が入る仕組みになります。

Q1 都の施設、設備を使用する技術開発にあたっては、公募式でおこなったものであろうと、あるいは場を提供するだけの形で開発が進められたものであろうと、その後、都として開発技術を利用する事業委託、工事契約するようなものについては、公営企業を含めて都としてその契約に透明性、公平性、公正さを担保できるようルール化をすすめることを求めますがどうですか。

Q2 下水道局、下水道サービス(株)など、公営企業局、およびその監理団体などは、都内の中小企業振興の立場から、その関連の技術開発にあたって中小企業との連携を積極的にすすめ、開発技術を中小企業に解放するような、中小企業連携型の技術開発を進めてはどうですか。

 今年の第1回定例会で、宇田川施設管理部長は「撮影した映像はパソコンにより自動診断されるため精度の向上が図られる」と説明しています。
 しかし、実際に使用している業者からは、まだまだ未開発で、「映像処理に時間がかかりすぎる」「カメラが、ありとあらゆるものを撮影してしまうため最終的には人間の判断が必要で自動的とは言い難い」などと言っています。
 ハード的な弱点も指摘されています。「段差に弱い」「カメラのレンズが傷つきやすい」「一番故障の多いカメラヘッド部分の修理に100万円かかる」「洗浄車が必要で常に現場にもっていく必要があるため、テレビ車や洗浄車を駐車する道路使用許可が必要」、したがって「狭い道路では効率的でない」など、実際に使用した人でなければわからない、具体的な情報が寄せられています。

Q3 下水道局は、こうした業者の声を把握しているのですか。まったく問題なく使えている、完成した技術だと言えるのですか。下水道局は、2010年度から全面導入するといいますが、まだまだ開発途上の機械設備であることは明らかです。中小業者が安心して、設備投資できる機械に改善されるまで、全面導入時期を延期すべきではありませんか。

Q4 今回のミラー方式TVカメラシステムは、性能がよく、都内の下水道管の調査にあたっては、数台あればまかなうことができるというのが、下水道局の説明です。また、ミラー方式TVカメラシステムも、いずれは技術革新の中で、より優秀なシステムが開発されることになります。ならば、下水道局として必要分を保管して、受注する中小業者に貸与する方式をとってはどうですか。

 今、業者のあいだでは、このテレビカメラ方式が全面的に採用されるようになると、仕事を受注できるのは今期限りだということで、入札での「たたき合い」がおきているということです。
 一方では、下水道局は東芝テリー(株)との独占契約では問題になるということで、来年度からは他社製品でも入札参加を認めるという動きもあります。各下水道事務所で、ミラーカメラ方式は1件ずつしか発注しないなど、噂だけが一人歩きしているとのことです。
 この下水管路内テレビ調査業務を受注できる競争入札参加有資格者は384社で、うち中小企業は364社・95%です。

Q5 業者の多くは、従来式のアナログ式テレビカメラ調査でおこなっており、今回のような設備そのものを入れ替えなければ受注参加資格が得られないというのは、この不況の中で、都が追い打ちをかけることになります。下水道局として、今後の対応について、関係者に正確な情報を一日も早く告知することが必要だと思います。たとえば、新システムでの全体の仕事量がどうなるのか。そのために必要な設備は、最低限どれだけあれば間に合うのか、当面中小業者の営業を配慮してどのような対策を打とうとしているのかなど、業者が正確な情報のもとで、仕事ができる環境にするよう求めますが、いかがですか。

Q6 今回の新システムでは、設備、仕事方式などが大きく変化します。中小企業振興をはかるために、中小企業から今後の仕事のやり方について要望を聞き取る必要があると思いますが、いかがですか。

以上、答弁を求めるものです。

回答1 都では、より効率的・効果的な維持管理を実現することなどを目的に、必要な技術力を有する民間企業等と共同研究を行うなどして、技術開発を行っています。
 これまでも、共同研究の結果、有効性が確認された技術の導入に当たっては、契約の透明性、公平性等に配慮して、事業委託契約や工事契約を行ってきました。
 今後も、このような観点に立って、技術開発及びその導入を進めていきます。

回答2 都は、より効率的・効果的な維持管理を実現することなどを目的に、必要な技術力を有する民間企業等と共同研究を行うなどして、技術開発を行っています。
 その中には、例えば伏越人孔の清掃機械など、中小企業と連携し開発を行ったものもあります。
 今後とも、技術力を有する様々な企業や大学などと連携し、技術開発を進めていきます。

回答3 都では、下水道管路内の損傷等を調査するため、TVカメラ調査を実施しています。
 これまでのアナログ式TVカメラによる管路内調査では、調査員がビデオに撮影した映像を見て管きょの損傷度合いを診断するため、調査員によって診断結果にばらつきが生じるなどの課題とともに、ビデオに撮影した映像や報告書にまとめられた診断結果などの情報の検索に時問を要するという課題がありました。
 そこで、都ではこうした課題に対応し、より効率的・効果的な維持管理を実現するため、デジタル技術を活用したミラー方式TVカメラによる管路内調査を導入することとしました。
 この方式では、撮影した映像はパソコンにより自動診断されるため、精度の向上が図られます。また、映像から得られる展開図と診断した情報を、電子データとして「下水道台帳情報システム」に取り込むため、データの活用が迅速かつ容易になり、予防保全を重視した維持管理が進めやすくなります。
 なお、導入に当たっては、平成16年度から3ヵ年にわたり、デジタル技術を活用したミラー方式TVカメラによる管路内調査の実施に向けた検証を行った結果、作業の効率性や品質の安定性などを十分に確保できることが確認できました。それを受け、平成19年度から段階的な移行期間を設け、平成22年度から全面的に実施していきます。

回答4 TVカメラ調査については、従来からカメラを所有していない業者もカメラを借り入れて業務を遂行することが可能であり、受注実績もあることから、カメラの所有の有無が受注を大きく左右することはないと考えています。
 したがって、都がTVカメラを貸与することは考えていません。

回答5 都は、管路内調査の方法を、アナログ式TVカメラ調査からデジタル技術を活用したミラー方式TVカメラ調査に移行するに当たり、段階的な移行期間を設けて十分な周知を図った上で、平成22年度から全面的に実施することを、平成19年12月に下水道局のホームペ賢ジでお知らせしました。
 さらに、TVカメラ調査の競争入札参加有資格者に、カメラの取扱方法等、必要な事項をあらかじめ理解していただくため、平成21年2月に講習会を開催しました。
 講習会については昨年度に引き続き、今年度も開催することとしています。

回答6 TVカメラ調査の競争入札参加有資格者を対象とする講習会は、昨年度に引き続き、今年度も開催することとしており、今後とも、こうした講習会など様々な場面で意見・要望等を伺いながら、管路内調査が円滑に実施できるよう、適切に対応していきます。

以上