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二〇一〇年第一回定例会本会議 中途議決討論  三月九日

古館 和憲(板橋区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第百十二号議案「平成二十一年度東京都一般会計補正予算」ほか一議案に反対の立場から、討論を行います。

 まず最終補正予算案です。わが党は、国の補正予算に伴う緊急雇用創出事業臨時特例基金の拡充など、くらしや福祉にかかわる施策には賛成です。しかし、いずれも都独自の施策はなく、都民の切実な願いに照らせば、きわめて不十分です。
 都民の暮らしの困難を緊急に打開するためには、補正予算においても、オリンピック準備基金などの一部を取り崩して活用すべきです。また、不用額の削減はありうることですが、耐震改修促進事業費等を三十一億円以上も削減することは、あまりにも安易で、うしろ向きです。むしろ、耐震工事の助成基準を緩和するなど拡充し、耐震化を促進すべきです。
 他方で、本来国の責任で行なわれるべき羽田空港再拡張事業に、十九億円もの都債を発行して無利子貸付を行うことは、納得できません。

 重大なのは、「全国瞬時警報システム」、いわゆる「Jアラート」の整備に四億三千万円を計上していることです。これは、地震・津波等に関する緊急情報システムを整備するためとされています。しかし、もともと「Jアラート」は、有事法制の一環である「国民保護法」にもとづくものです。有事法制は、米軍が他国に対し先制攻撃戦争を行なった場合でも、日本にとって「武力攻撃予測事態」であると称して発動され、地方自治体、企業、住民を戦争協力に動員するものです。「Jアラート」は、基本的にそのための仕組みづくりであり、容認できません。
 しかも「Jアラート」の誤作動により、混乱が各地で相次いでいます。マスコミも、ある自治体の担当者が「災害情報なら気象庁の情報を自治体が判断して防災無線で流せば十分。その方がかえって間違いが少ない」と言い、軍事問題の専門家も「防災ばかりか、有事対応にもまったく役立たない。ムダの見本みたいなもの」と断言していると報じています。

 次に、第百四号議案、環状2号の工事契約についてです。
 今回の工事区間は、もともとは築地市場の現在地再整備を前提とした地下化の都市計画決定であり、臨海副都心へのアクセス道路として開発者負担とすべきものでした。ところが、破たんした臨海開発を救済し、築地市場の豊洲移転を進めるために地上化し、一般会計で負担することになったのです。築地市場の再整備が都政の重大争点になっているときに、豊洲移転前提の橋りょう工事を認めることは、断じてできません。

 わが党は代表質問で、十一年間の石原都政は、自民党の小泉構造改革路線を都政において先取りしてきたものと指摘しました。これに対して知事は、何をもって構造主義といわれているのかわからない、などと答弁しました。
 小泉構造改革とは、「小さな政府」「民でできることは民で」と言って、社会保障を切り下げ、行政サービスを縮小・民営化し、弱肉強食の社会経済づくりをおし進めるものでした。国民、都民は庶民に痛みをおしつける、この路線に審判を下したのです。石原都政は、まさにこういう路線を先取りしてきました。雑誌「世界」の昨年十二月号でも、研究者が共通して、石原都政を構造改革路線とし、きびしく批判しているではありませんか。石原知事には、冷静かつ客観的に自己分析されるよう、申し上げておきます。
 また、石原都政のもとで歳出総額にしめる老人福祉費の割合が全国二位から最下位に転落したことについて、福祉保健局長は、決算額による比較はまったく意味がないという驚くべき答弁をしました。
 だとしたら、東京都はなぜ普通会計決算を毎年発表しているのですか。総務省に、普通会計決算は意味がないとモノ申したことがあるのですか。
 かつて与党議員も、「普通会計とは、総務省の定める基準によって全地方公共団体の会計を統一的に集計したもの」と評価する発言をしたではありませんか。さらに、高齢者人口がこの間に三割増えているのに、老人福祉費の額を二割、四百七十七億円へらしていることも明白な事実です。マル福や老人福祉手当の廃止などを、つぎつぎ進めた結果です。都合の悪い事実であってもいさぎよく認め、発言を撤回すべきことを指摘しておきます。

 わが党は、都が官製ワーキングプアをつくりだしていることについて知事の認識をただしましたが、総務局長が「指摘は当たらない」と答弁しました。これまた事実をゆがめるものです。知事のもとで、東京都では非常勤や臨時の職員は知事部局だけで七千人をこえ、教員や公営企業、財政監理団体にもひろがっています。
 都立学校のある時間講師の方は週五日働いて月十二万円、生活保護費にもとどかず、明け方五時までダブルワークをせざるをえません。これが官製ワーキングプアではないというのですか。
 総務局長の発言のように、都政のコスト削減だけを至上命題とし、都民や職員の生活をかえりみようとしない立場は、地方自治体の職員としてあるまじきものです。都の正規職員を増やすとともに、非常勤や臨時職員の待遇改善を行うべきことを申し上げて、討論を終わります。

以上