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二〇一〇年第二回定例会本会議討論 六月一六日

かち佳代子(大田区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第116号議案「平成22年度東京都一般会計補正予算」及び第30号議案「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」ほか6議案に、反対する立場から討論をおこないます。

 本定例会では、ますます深刻化する都民生活の困難をどう打開するかが、問われていました。ところが知事は、「税制度もふくめて再構築が不可欠だ」、「痛みを避けているだけでは、いずれさらに大きな痛みを余儀なくされる」、などと言って、もっぱら都民に消費税増税の痛みをおしつけようという姿勢を表明しました。
しかし、賃金が低下し、非正規雇用や失業者、生活保護世帯がふえ、商店街は消費の冷え込みに苦しんでいるときに、消費税を引き上げるようなことをしたら、庶民のくらしを破壊し、消費をますます冷え込ませ、日本経済の危機をいっそう深刻にすることは明白です。そもそも消費税は、法人税減税や金持ち減税の穴埋めにされてきただけです。いままた財界は、消費税増税とひきかえに、法人税減税を要求しています。こんな身勝手な話はありません。
 経済悪化のもとでも大企業は利益を確保し、過去最高の二百二十九兆円もの内部留保を積み上げています。この内部留保を国民、都民のために還元させることこそ必要であることを、申し上げておきます。

 都として、いま補正予算を組むというなら、高すぎる国民健康保険料の引き下げや、がん治療をはじめとした医療費の負担軽減、崩壊の危機ともいうべき現状にある中小製造業者への貸工場の家賃補助をはじめとした直接補助など、都民のくらし・福祉の拡充こそ、求められています。
 ところが、本定例会に提案された補正予算は、くらしや福祉の充実はただのひとつもなく、知事の肝いりで進める東京マラソン法人化のために、八億円もの巨額の公費を投じることが中心でした。しかも、質疑をとおして、なぜ八億円もの資金を都が出す必要があるのかという根拠も明確に示すことができませんでした。

 さらに、わが党の情報開示請求により、東京マラソン法人化のため都として八億円出資することを、所管の生活文化スポーツ局が発案し意思決定したことをしめす稟議書すら存在しないことがわかりました。驚くべきことです。こんないいかげんな予算支出を、認めるわけにはいかないではありませんか。
しかもそのために、わざわざ財団法人道路整備保全公社から都の道路事業を進めるという趣旨で十億円の寄付金を受けることとし、実際は、そのうち八億円を東京マラソン法人化のための財源に流用するという、重大な問題があるのです。
 わが党が入手した情報開示文書によれば、五月六日に建設局が公社に対し、建設局事業への指定寄付にすることを検討するよう要請していますが、公社の理事長は、多額の寄付に難色をしめし、手続きとしても「十分な検討が必要」だとしています。にもかかわらず、都は、寄付金について公社が方針決定する前に、補正予算を組んだのです。
 道路整備保全公社は、五月末の評議員会で、十億円の寄付金の根拠について、新宿西口地下道のリニューアルなどの事業費を積み上げたものだと説明しています。そして公社の理事長は、「なかなか税金でできない部分がある」、「特にそういうところに充当していただければという思いで指定寄付させていただきます」、「私どもの思いが東京都に十分理解をしていただいていると信じております」と発言しています。
 ところが補正予算で、寄付金十億円を全額、交通安全施設費に充当するかわりに、一般財源十億円を削減して東京マラソン法人化などの財源にあてたため、交通安全施設事業費は一円もふえていないのです。公社の指定寄付の趣旨をふみにじる結果になっていることは明白ではありませんか。

 以上、のべたように、今回の補正予算は、東京マラソン法人化の是非以前に、歳出、歳入とも、重大な瑕疵とも言うべき欠陥があるものであり、とうてい認めることはできません。明らかになった事実を総合すれば、今回の補正予算は、知事のトップダウンで強引に進められたとしか言えないものです。このようなやり方を議会が認めるなら、行政をチェックすべき議会の見識が問われることを、きびしく申し述べておきます。
 本定例会に、スポーツ振興局の組織編成も提案されました。都がスポーツ振興に取り組むのは当然のことです。しかし、いま都のスポーツ振興策に求められているのは、知事がオリンピック招致の名ですすめてきたイベント偏重を抜本的に見直し、地域や学校など、「草の根」からの都民のスポーツ要求にこたえて、すそ野をひろげることを土台にすえ、スポーツの多面的な発展の条件を整備することです。こうしたスポーツ施策の転換なしに、組織だけをつくるというやり方には賛成できません。

 次に、青少年健全育成条例改定案についてです。青少年の心身のすこやかな成長の環境をととのえるために、図書の販売等に一定の規制をおこなうことは、一般的に認められることです。しかし、本条例案は、その範囲を超えています。第一に、新たに規制の対象をひろげる基準が恣意的に判定されかねず、また、「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害するおそれがある」という、抽象的な理由で規制をおこなうため、出版及び創作活動の萎縮をもたらす危険が否定できないことです。  
 第二に、インターネットや携帯電話の利用に関して、新設される規制措置によって、民間の自主的なとりくみや家庭教育にたいする行政の過度な介入が危惧されることです。このような重大な問題のある条例を認めるわけにはゆきません。
 いま都が青少年対策としてやるべきは、このような条例改悪ではなく、青少年が性的自己決定能力や情報リテラシーを身につけることができるよう総合的施策を具体化することであることを、重ねて申し上げておくものです。

 最後に、引き続き都政の重大な焦点となっている築地市場の豊洲移転問題についてです。今議会では、わが党の調査で、都が土壌汚染対策の有効性を実証しようと進めている「適用実験」なるものも、いまや破綻に直面していることが明らかになりました。
 すなわち、都は第一回定例会で、第一回目の「中間報告」を発表し、「無害化できることが実証された」と宣言しましたが、土台となる初期値を「都民に説明できないから」と言って、隠しました。この時は、あとでホームページに出すと約束していたのです。しかし今は、この約束をふみにじり、実験結果などを「継続的にオープンな形で検証」するとした都議会の付帯決議さえ無視して、最終報告までは、実験・分析をおこなったかどうかも含め、すべての基本的情報を隠し通そうとしているのです。都民に説明がつかない実験データだからと言わざるをえません。
 わが党の追及に対し、都が、技術会議の助言を受けたからかまわない、とする発言をおこないました。特定の専門家の言うことだけをほとんど唯一の根拠に、議会にたいする約束すら踏みにじり、すべてを暗やみの中で進める、こんな行政による独走は許されるわけがありません。
このままでは、都は最終報告で、都合の良いデータをしめして、技術会議の「お墨付き」を根拠に、「実験の有効性が実証された」と宣言するであろうことは容易に推察できることです。こんな暗やみの、かつ「欠陥実験」で、豊洲移転に「ゴーサイン」を出すとしたら、都民は百年の悔いを残します。すみやかな実験の中止とすべての基本情報の公開を重ねてつよく要求するものです。

 以上述べたように、今議会でも、東京都政は、石原知事のトップダウン政治のゆがみが噴出する異常な状況にあることが、これまでにもまして鮮明になりました。
 わが党は、こうしたゆがんだ都政を正し、都民第一に転換するために全力をあげることを表明し、討論を終わります。

以上