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二〇一一年 第一回定例会 本会議討論 三月一一日

かち 佳代子(大田区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第一号議案「平成二三年度東京都一般会計予算」ほか二四議案に、反対の立場から討論します。
 今、都民の間で、「収入が減り続け、くらしていけない」など、悲鳴の声が渦巻いています。ここまで都民のくらしの困難が深刻なのは、自民党型政治による社会保障切り下げや雇用破壊などの政策が今なお続いているからです。これに加えて国の悪政を先取りしてきた一二年間の石原都政の責任は免れません。
今議会では、一二年間の石原都政の在り方がするどく問われました。

 石原都政最大の問題は、知事が、「何が贅沢かと言えばまず福祉」と言って、都民にとって大切な福祉を切り捨てたことです。

 とりわけ、ねらいうちにされたのが、高齢者の福祉で、老人福祉手当、老人医療費助成は廃止され、シルバーパスは全面有料化されました。特別養護老人ホームへの用地費助成も廃止され、整備費は四割に削減、人材確保のための人件費補助もなくなりました。高齢者一人当たりの老人福祉費は、一三万円台から八万円台に減らされ、歳出総額に占める老人福祉費の割合は、全国二位から四七位、最下位に転落したのです。この結果、どのような事態になったのか、今議会におけるわが党の論戦で浮き彫りになりました。
 特別養護老人ホームについていえば、石原知事は就任当初、二〇〇四年度までに「入所が必要とされる人数に見合う定員数を確保する」との計画を打ち出したにもかかわらず、入所できない待機者は四万三千人に激増したのです。特養ホームの整備率の順位は全国二七位から四三位に後退しました。認知症グループホームなど、他の介護施設の整備率は、軒並み全国最下位です。だからこそ、行き場がなくて通所介護施設での宿泊を数カ月から、二年もせざるを得ない高齢者まで生まれています。
 知事はこうした事実を否定できないために、来年度予算案では、福祉保健費が額、比率とも過去最高だと言い訳しました。しかし、それは、子宮頸がんワクチン接種や介護保険負担金など国事業に連動するものが三百億円以上増えたことによるもので、決して知事が誇れるものではありません。逆に都の事業は廃止・終了される事業が四三事業に及ぶのです。しかも決算で見れば、民生費全体の歳出総額に対する比率は、全国二位から四二位に後退しています。

 都は苦し紛れに一人当たり児童福祉費の決算額をもちだして、全国三位から二位になったと答弁しました。しかし、政令市や中核市は、県レベルの事業をやるので、大都市を抱える府県の一人当たりの額が低くなることは当然であり、適切な比較ではありません。児童福祉費も歳出決算総額に対する比率を下げているのです。とりわけ保育園の整備は大きく立ち遅れています。石原都政の一二年間に整備された認可保育園は、一五七か所、二万八百人程度であり、かつて革新都政の一二年間で、認可保育園を七八四カ所、九万三百人分増設したのと比べると、二割程度に過ぎません。だからこそ、石原知事は就任後五年間で、〇、一歳児の待機児童をゼロにするとしたのに、昨年四月の待機児は、逆に一万千九百八人と目標をたてた時の2倍近くにふえたのです。しかも、革新都政の時につくった公私格差是正事業や国基準を超える人員配置などを行う都基準なども廃止しました。まさに、質・量とも大後退しました。

 中小企業対策予算や教育予算も同様です。歳出に対する商工費比率は、決算で全国平均の6割という冷遇ぶりです。その中小企業対策予算を来年度は、四百億円も減らします。教育費も来年度予算は知事就任時から八百億円以上少ないのです。

 その一方、知事が熱中してきたのは、内外の大企業を東京にいっそう集めるために、超高層ビルを乱立させ、大型幹線道路などのインフラ整備に巨額のお金をつぎ込むことでした。このため、大型幹線道路を中心にした投資的経費は七年連続増え続け、首都高への出資金なども入れると、毎年一兆円規模とバブル前の三倍もの水準に膨れ上がり、百mを超える都内の超高層ビルは、二五〇棟も建ち並ぶことになります。この結果、内外の大企業がさらに東京に集中しました。しかし、それで経済はよくなったでしょうか、都民福祉は充実したでしょうか。断じて否です。大企業の利益の多くは内部留保としてため込まれ、都民や中小企業は潤いませんでした。都民の生活の苦しみはひどくなるばかりです。

 中小企業はどうでしょうか。製造業で言えば、石原都政のもとで二万二千所以上の工場がなくなり、二二万人近い雇用が失われました。出荷額は約八兆円も減ってしまったのです。
 環境問題も深刻です。ヒートアイランドやゲリラ豪雨が頻発し、各地に被害をもたらしています。熱帯夜でいえば三〇日を二〇日に減らす計画だったのに、五六日と約一・九倍に増えました。それをおさえる東京の緑も減らし続ける一方です。

 来年度予算はこうした逆立ちしたお金の使い方を進めるものであるからこそ、わが党は大型開発にメスを入れ、オリンピック基金を計画的に活用することで、福祉やくらしを充実する組み替え動議を提出したのです。これに対し、「インフラ整備を軽視するもの」とか「増額を求めている内容は、継続して取り組まなければならないと思われ、将来に過度な負担をもとめるものだ」などの意見がありました。しかし、一m一億円もかけて外環道をつくることが許されるでしょうか。また、国直轄事業などは、本来都が負担する必要のないものです。税収が減った今こそ、本来負担すべき国などに出させるときではありませんか。
 財源についても、石原知事が自民党政府に求めた外環道整備の促進の約束と引き換えに容認してしまった、法人事業税の年間千八百億円もの国税への吸い上げを速やかに取り戻すこと、さらには大企業への超過課税によってそのため込み金を適正に都民に還元させれば将来とも十分確保できます。
この組み替え動議の方向こそ、自治体本来の役割を果たすものであると申し上げておきます。

 今議会でも大きな焦点になったのが、築地市場を土壌汚染にまみれた豊洲の東京ガス跡地に移転することを許すかどうかという問題です。
 そもそも、東京ガスが豊洲の工場跡地の汚染を発表したのは二〇〇一年一月です。この時点では汚染対策の詳細すら明らかにされていませんでした。ところが知事がその一カ月後の都議会の施政方針演説で、「豊洲地区を新しい市場の候補地として、今後、本格的に協議をすすめていく」と述べ豊洲移転の第一歩を踏み出してしまったのです。その後も嫌がる東京ガスを、無理やり説得し、移転を決めてしまいました。知事が三〇年にわたるガス工場の跡地がどれだけ汚染されているのか、安全・安心の確保がいかに困難かということに思いもよせず、突き進んだことこそ、今日まで築地市場の再整備を遅らせてきた最大の原因であることは明白です。知事には、「もう時間がない」などと、都民と関係者を脅す資格などひとかけらもありません。土壌汚染地に市場を移すこと自体が誤りなのです。

 しかも、土壌汚染対策も欠陥だらけだという批判が専門家からも都民からも渦巻いているではありませんか。
 今議会でも、わが党は、東京都のこれまでの主張「シルト層などは不透水層で汚染を通さない」という汚染対策の大前提が崩れたことを、厳しく指摘しました。その結果、都は「シルト層が即不透水層とはいっていない」と従来の答弁を訂正せざるをえなかったのです。有楽町層内部まで汚染が広がらないとか、汚染があってもその下二mまで調査し、対策するから大丈夫などという都の言い分はもはや通用しません。何よりも食の安全・安心を確保しなければならない東京都が、欠陥調査が明確になりながら、調査のやり直しもせず、移転を強行することは断じてゆるされません。
築地市場の老朽化については、ただちに補修・改修を行えば解決しますし、現在地再整備については、都が必要な財政負担をおこない、日本が誇る技術を駆使すれば必ずや都民も関係業者も納得しうる、より良い案は作れます。
 日本共産党は、今後とも広範な都民、市場関係者と力を合わせ、豊洲移転にきっぱりと終止符を打ち、現在地再整備を実現するために引き続き全力を尽くすものであります。

 最後に、今議会終了後、東京都知事選が行われます。日本共産党は、石原都政の転換で、失われた東京の福祉をとりもどし、都民が主人公の新しい都政を実現するために、広範な都民の皆さんとともに、全力を尽くすことを、申し上げ討論とします。

以上