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二〇一一年都議会第三回定例会本会議 討論  一〇月一八日

畔上三和子(江東区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第134号議案ほか3議案に反対する立場から討論を行います。

 第134号議案は、都立特別支援学校の併置校などを設置することによる条例の一部改正です。
 あらたに設置される府中けやき学園は、知的障害児と肢体不自由児の併置校ですが、96学級447人と大規模で、学校規模としては大きすぎ、障害児教育の環境としてふさわしくありません。
 これまでも併置校になると、養護教諭などの職員配置が半減して、教育の質の低下を招いており、特別支援学校の増設、教室不足解消、教職員の増配置をはじめ、障害をもつ子どもたちの教育条件の早急な改善こそ強く求めるものです。

 防災対策では、ことさら行政による公助の限界と自助、共助を強調する石原知事の姿勢が、するどく問われました。実際、今議会では、東京都のように震災対策条例に第一は自己責任原則とまで明記している道府県は他にないことを、東京都自身も認めざるをえなかったのです。
 わが党が、予防対策第一に転換すべきことを求めたのに対し、知事は、「施設の耐震化など行政の責任として主体的に取り組んできた」と答弁しました。しかし、都としての自己責任すら、満足に果たしていないのが実態です。
 たとえば、都が管理する中川、新中川、綾瀬川などで、液状化対策の強化が必要な防潮堤、堤防、護岸が約50キロメートルもあることが、9年前にわかっていたのに、計画では2年後でもやっと必要カ所の三割に到達するにすぎません。
 また、木造住宅密集地域のうち、大きな被害が想定される地域ですら、耐震化されていない木造住宅は約13万棟も残されているのです。都が必要な助成をおこたっているからです。「公助の限界」どころか、都が責任を果たしていないのです。
 自己責任原則第一で、被害が生じてからの応急復旧対策を中心とした都の防災対策を、予防対策中心、都民のいのちと財産を守る行政責任を明確にしたものに転換することを、強く求めるものです。

 知事は、世界中から人、もの、金融、情報を引き寄せて、東京をアジアのヘッドクォーター、つまりアジアの司令部へと発展させていきたいとのべ、海外企業を五百社以上東京に呼び寄せるためなどに、いたれりつくせりのサービスを行う特区をつくったり、莫大な財源を投入する外環道や巨大港湾整備など、過大な都市インフラ整備を進めることを打ち出しました。
 「アジアの司令部になる」といったごう慢な宣言を、アジア諸国はどう受け止めるでしょうか。アジア諸国とお互いに利益をわかちあう平等な経済関係こそめざすべきです。
 また、「アジアの司令部になる」といって東京一極集中をさらに加速させれば、被災地をはじめとして地場産業に依拠する地方ではますます衰退に歯止めがかからなくなるのです。現に、これまで進められてきた大企業中心の経済政策は、格差と貧困を拡大しただけではありませんか。
いまやるべきは、低炭素・国民生活重視型の経済への転換、外需主導から内需優先に切り替え、日本の経済を土台で支えてきた中小企業や労働者を元気にすることです。

 都は、豊洲新市場予定地の液状化について、都が委嘱した一部の「専門家」の見解を錦の御旗に、まともな調査もしないで、土壌汚染対策を進めようとしています。
 多数の専門家や都民から、欠陥対策という批判の強い土壌汚染対策の有効性の根拠も、つまるところ一部の「専門家」の見解でしかありません。その「専門家」とは、東京都の元職員、つまり客観的第三者ではなく、都の身内です。しかもこの方は、自らの研究論文すら何一つ示せません。私たちの公開質問にも、何一つ回答できませんでした。これまでも、検証ぬきの推測で都の土壌汚染対策にゴ―サインを出し、東京都に都合の悪いデーターを隠したままの、一方的な「安全宣言」も擁護してきたのです。経済産業省が、身内の保安院に安全だと言わせてきた「原発の安全神話」と同じ構図です。
 このようなお墨付きを信用するわけにはいきません。日本共産党都議団は、豊洲新市場の対策工事の中止と、意見の異なる専門家をふくめた汚染状況の全面的再調査、公開討論を求めます。

 放射能から都民をどう守るのかも鋭く問われました。
 知事は、「総力を挙げて放射性物質への対策を進めている」と答弁しました。しかし、「ホットスポット」の存在を認めるなどの変化はあるものの、都教委が、都立学校の測定と除染や、給食の食材の測定への支援を拒否したことをはじめ、とうてい都の総力を挙げての取り組みとは言えません。
都は、「除染措置に関する国の検討会の議論を注視し、対策を検討する」と答弁しました。国まちにならず、すみやかに子どもたちの生活エリアとなっている公園や学校、保育園などの測定と除染等の対策を講じ、子どもや妊婦の命と健康を守る立場にたちきるべきです。

 わが党は、原発技術が本質的に未完成で危険であるという事実を、知事が前定例会で否定した根拠を示すよう求めました。ところが知事は、今回も何一つ根拠を示せず、フランスを持ちだすことだけで、「廃棄物を含めて適切に管理することで原子力を有効に活用できる」と強弁しました。
 いまや福島原発事故を受けて、日本でも世界でも脱原発の流れが大きく広がっています。フランスでも、世論調査で、脱原発派は77%にものぼっているのです。原発は、いったん暴走したら放射性物質が大量に放出される事態が避けられないからです。ふたたび今回のような事故が起きたら、それこそ日本は壊滅的被害を受けかねません。そのような事態はなんとしても避けなければなりません。
 知事はかつて、原発について「あまり知らない」と発言しましたが、いまだに「安全神話」にしがみつき、公党に対して「いたずらに不安をあおる」とか、不規則発言に同調し「日本人ではないのか」などと誹謗することで切り抜けようとしたことは、知事としての資質を疑わせるものです。発言の撤回と猛省をうながすものです。

 最後に、本日提案される2020年東京オリンピック招致決議について、わが党は反対することを表明しておきます。
 その第一は、民意にそむくからです。
都に寄せられた「都民の声」は、420件の内、招致反対は82%に達しています。
朝日新聞の調査で反対が八割におよび、日経ビジネスインターネット版読者の調査でも、七割が招致に否定的です。都が持ち出した、日本世論調査会の調査ですら、都民の賛成は五割にとどまっているのです。

 第二に、多数の都民の声は、「五輪より復興・防災」だということです。実際、都に寄せられた都民の多くの声は、「東北の復興、防災対策こそ優先すべき」「原発事故、放射能汚染が深刻で招致するべきでない」「税金はオリンピックではなく、都民の福祉の向上のために有効に使ってほしい」などというものです。
提出される招致決議は、大震災と巨大な津波、原発災害について「現在、復興と収束に向けて大きく歩みだしている」としていますが、これは間違っています。
事実、代表質問で、民主党は、「原発事故の収束の見通しが立たない」と述べ、自民党は「未曽有の大災害のつめ跡が依然と残り、被災された方々の苦難が続いている」と述べたではありませんか。いま、国や都がなすべきことは、何よりも復興と、放射能除染に総力をあげることです。

 第三に、知事が、「裏の裏の裏がある。どろどろしている招致運動」と述べ、さらに「大きな利権があって、そのことを知らなかったら戦いに勝てない。きれいごとでは勝てない」とまで述べたことです。
 知事のおこなおうとしている招致活動は、オリンピック憲章の精神を踏みにじるものです。
 これだけの問題があり、都民の強い反対があるにもかかわらず、民主、自民、公明の三党が、趣旨説明もせず、反対討論も封殺して、招致決議を強行することは、議会制民主主義にもとるものであることをきびしく指摘し、討論を終わります。

以上