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2012年第1回定例会予算特別委員会  討論 3月27日

清水ひで子(八王子市選出)

 日本共産党を代表して、第一号議案、平成二十四年度東京都一般会計予算外九議案に反対し、第十八号議案、平成二十四年度東京都中央卸売市場会計予算に対する修正案及び第一号議案外三会計の編成替えを求める動議に賛成する立場から討論いたします。

 はじめに、知事提案の予算についてです。
いま都政にとって、昨年の東日本大震災と原発事故という大惨事を教訓に、防災や放射能対策、原発ゼロにむけた再生可能エネルギー対策の抜本的拡充が、緊急課題となっています。同時に、雇用の破壊、社会保障の切り捨てなどで子育て世帯も高齢者も若者も、くらしの困難がますます大きくなっているなか、いまこそ住民の命と健康、財産を守る、住民の福祉の増進を図るという地方自治体本来の責務を果たすことが求められているのではないでしょうか。
 ところが予算案は、防災対策や放射能対策は、きわめて不十分である上、福祉やくらし、中小企業支援等は、引き続き軽視されています。
その一方で、アジアの司令塔になると言って、外環道をはじめ巨大な道路や港湾施設の建設、八ツ場ダム建設などの浪費的投資を拡大し、全国で失敗が相次いでいる外国企業誘致の開発の推進などが最重視されています。

 このことは、本予算特別委員会の質疑を通じて鮮明になりました。
 震度7の首都直下地震の危険も指摘されるもとで、都の震災対策の抜本的強化が求められています。知事と都議会が、この問題で議論を深め、よりよい方向に進むべきなのに、知事は、わが党の防災問題の質疑に対して、1度も答弁に立つことができませんでした。都の防災対策への知事の自信のなさと、熱意のなさを示すものです。同時に、そうした中でも質疑を通じて、防災にお金を使いたくないという石原知事の立場が、明確になりました。
 わが党の質疑で、石原都政が、震災予防条例を、都民の自己責任を第一原則とする震災対策条例に改悪したことを契機に、震災対策事業費を大きく減らしてきたこと、そしてその弊害が、木造住宅の耐震化や河川の堤防などの耐震化の遅れに顕著に表れていることが明らかになりました。
 現行の耐震基準さえ満たしていない木造住宅が、いまだに3割近く残されています。東京湾北部地震の震度が6強から7へと強まれば、全壊する木造住宅が16万棟から39万棟へと2倍以上になることが警告されています。このようなときに、いまだに全国で唯一、耐震改修助成制度を一部地域に限定し続ける石原都政の立場は、驚くべきものです。
対象地域を全都に広げ、高齢者や障害者のいる世帯には上乗せすることなど、耐震改修助成制度を抜本的に拡充することを、重ねて求めます。

 東部低地帯の河川施設について、都は、17年前に、耐震性の点検をおこないながら、対策が必要と判明した堤防の約4割に相当する68キロメートルについては、「レベル1地震動」に対する耐震対策もいまだに完了させていません。
いまのペースでは、完了するまでに15年もかかります。わが党は、こうした堤防は、震度7の地震が来れば堤防自体が損傷し、水害を発生させる危険がつよいことを指摘しましたが、都は答えられませんでした。緊急に対応するとともに、「レベル2地震動」に耐えられる、ハード・ソフト両面の計画を具体化し、取り組みを急ぐよう、重ねて強く要望しておきます。

 石原都政の都民の命と健康を守る立場の欠如は、放射能対策でも浮き彫りになりました。東京で問題になっているのは、空間線量だけでなく、食品や水、土壌などを通じた低線量の内部被曝の問題です。
 ところが都は、抜け穴だらけの食品検査や、海外から食品の輸入規制を受けている事実を示されても、検査が不十分なことを認めようとしませんでした。

 とりわけ環境局は、空間線量だけを考慮すればよいというかたくなな立場をとりつづけ、こともあろうに、キログラム当たり2万3千ベクレルという土壌が、わずか1.6キログラムあるだけで、法に基づいたら放射線管理区域以外にはあってはならないのに、その汚染土壌が、公園などにあっても、そこで子どもたちが遊びまわっても問題ないという立場をとったのです。
 いま東京で問題になっているのは、面的汚染よりも局所汚染です。ところが、どのようにこの事実を示しても、測定すらしないばかりか、わが党が独自に測定し、発表したことすら誹謗するという驚くべき態度をとりました。
 自民党も同調して、わが党を誹謗する発言を行いました。自民党のみなさんも2万3千ベクレルの汚染土の上で子どもを遊ばせても良いと言うのでしょうか。わが党議員の発言に対して「放射能を浴びた方がいい」とヤジって都民の大きな批判を受けましたが、謝罪したのですか。
 都のこうした全国にも例のない異常な対応は、知事が原発推進、オリンピック招致優先の立場をとっていることと、密接にかかわっています。 

 知事は本会議の場で、原発について「極端なことを言えば東京湾や千葉県の鋸山の頂点につくってもいい」と答弁したのです。知事はわが党が、謝罪と撤回を求めたにもかかわらず、ひとつの論として言ったのだと開き直りました。1300万都民の命に責任をもつ立場として、言っていいことと、言ってはならないことの区別さえつかない知事をもった都民は、本当に不幸だと思います。
 私たちは、これまで知事に対し、原発は安全だというなら根拠を示すべきことを再三求めてきましたが、全く根拠を示せません。本予算委員会でもわが党が、ひとたび原発事故で放射能が外部に漏れだしたら、それを抑える手段、技術をいまだ人類は手に入れていないと発言した時、知事は自席から「そんなことわかりきってるよ」と叫びました。それなら、なぜ堂々と答弁に立って答えないのですか。原発は安全ではないと言えないのですか。
同時に、震災や放射能の危険性について、リスクを覆い隠しても安全だと言い張るのは、何よりオリンピック招致のためには、東京は安全だと言わなければならないという、知事の政治的意図がつよくはたらいていることも指摘しておきます。
石原知事がこうした立場を改めない限り、都政に未来はありません。わが党は住民の命と健康、くらしと財産を守るという自治体としての魂を取り戻すために、奮闘することを、改めて申し述べるものです。

 最後に豊洲新市場計画の問題についてです。
 石原知事は、市場関係者と都民の反対の声を無視して、猛毒のシアンなど有害物質で汚染された豊洲の東京ガス工場跡地への市場移転になりふりかまわず突き進んできました。
 都の土壌汚染対策工事は、その成否の鍵をにぎるのは、都のいう「不透水層」の存在ですが、いまだ全容が明らかになっていないのです。シアン、ヒ素、発ガン性物質のベンゼンが、地下でどのように分布しているかも未解明のままです。多くの専門家は、「不透水層」の内部深くまで汚染が拡散している危険性を指摘し、有害物質の存在状況、地質汚染断面図を明らかにしない限り、浄化対策はもとより、液状化対策の設計はあり得ない「欠陥土壌汚染対策だ」と言っています。
 にもかかわらず与党にささえられ、なりふりかまわず既定事実を積み重ね、公約に「移転反対」をかかげた民主党までがその旗をおろすなか、反対する業者が最も多い鮮魚の仲卸業界団体をも、豊洲移転を進める協議に参加せざるをえない状態をつくりあげてきたのです。民主党は、「土壌汚染対策を着実に実施」などという附帯決議をつけると言いますが、その工事が欠陥だらけなのです。食の安全を守る何の担保にもなりません。
 市場会計予算では、土壌汚染対策工事の経費など、約603億円余が計上されていますが、大地震対策で費用がますます増大します。その負担は、市場関係者の使用料への重い負担となってはねかえります。
 いま必要なのは、土壌汚染対策工事をストップし、都民や専門家、関係者の意見に耳を傾けることです。
関係者の多くは、「できることなら現在地での再整備を」と言っています。大手食品流通業者のために巨大市場化する計画を見直し、かつ事業者に重い負担にならないよう都が財政援助をするなら、現代の技術水準をもってすれば、安全で快適な現在地再整備は可能です。
 以上の立場から、私は東京都中央卸売市場会計予算に反対し、修正案に賛成するものです。