2013年度第2回定例会 文書質問趣意書 6月5日

たぞえ 民夫

都の公共工事における下請け取引の適正化について

建設工事の多くは、公共工事を含めて、下請契約が行われています。日本共産党都議団には、東京都発注の公共工事にかかわった方々から、下請け代金未払い被害にあった方の相談が、数多く寄せられています。特に最近、その数が多くなっています。

Q1 東京都では、担当部署を設け、建設業者に対して、不正行為等の指導監督等をおこなっています。東京都発注の公共工事における、下請け代金未払い被害の相談件数は、この5年間、どのようになっていますか。

回答 公共工事に限らず、建設工事の請負契約を巡る元請下請間等に関するトラブルの相談窓口として、国において建設業取引適正化センターが設置されています。下請代金未払についても、同センターが相談窓口となっています。

 「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」では、建設業者等にたいして都道府県がおこなった監督処分の対象になった企業情報を得ることができます。東京都から許可取り消し処分、営業停止処分、指示処分した事例も見ることができますが、この4年間を見ても、下請け代金の未払いなどが原因となって処分された事例は、ありません。

Q2 下請け代金未払いは、あってはならない問題です。特に、小規模建設業者にとっては、そのほとんどが労務費になるため、経営、従業者の賃金・生活に直結する大問題です。特に国民・住民の貴重な税金で行われる公共工事では、発注者としても、一日も早く必要な対策をとり、確実に下請負人へ支払われるようにする必要があります。
 東京都の公共事業のなかで、下請契約企業が未払い被害を受けないようにするために、特に悪質なものについては、その企業、事例について具体的に情報提供をする必要があると思います。これらの情報は、建設業者にとっても貴重な情報であるばかりでなく、発注者側としても契約先の選定にあたって貴重な情報になると思います。都として、建設業者の方々、都庁内の発注関係の方々の間で、こうした情報が共有されるようなしくみをつくるよう提案するものですが、どうですか。

回答 建設業法等関係法令に違反し、営業停止、許可取消等の処分を行った事業者については、監督官庁においてホームページで公表しており、情報の提供はされています。

 国土交通省と中小企業庁は、建設業者の下請取引実態調査をおこなっています。たとえば、2012年度調査によれば、請負契約書の交付について「工事ごとに請負契約書を交付」している業者は、知事が許可する一般建設業が最も低く11%です。注文書・請書の交換のみ、注文書の一方的な送付、メモ、口頭は合わせて、64%にのぼっています。
 また、下請負人が元請負人からしわ寄せを受けたことがあるというのは、知事許可の一般業者では18%にのぼり、昨年度の1.6倍に増加しています。契約金額別では、3000万円未満が最も多いという調査結果です。
 このように最も矛盾が集中しているのは、3000万円未満の工事契約です。日本共産党都議団に来ている下請負人への代金未払い問題でくる相談者も、そのほとんどが契約金3000万円未満のケースです。

Q3 東京都は、契約金額3000万円未満の公共工事も含めて、下請負人との契約について適正にし、下請負人への代金未払い問題が生じないようにするために、どのような具体的対策を取っていますか。

回答 下請代金の支払は、契約金額にかかわらず、建設業法第24条の3で定められた元請負人の義務であり、都は、工事請負契約書で、契約の相手方に対して法令の遵守を求めています。また、建設業団体や元請企業に対して、文書により下請負人等に対する契約の適正化等を求めています。

 建設業法、建設業法遵守ガイドラインなどで、下請け取引の適正化のルールがあります。東京都においても、2012年6月1日付けで「下請負人等に対する契約の適正化及び支払の迅速化並びに必要な技術者の配置等について」という通知を出し、建設業界団体に法令等の遵守を周知しています。
 これらを見ると、本来なら、適正な契約という観点から、施工段階において、下請契約の請負代金や支払い方法等について、適正に履行されているかどうか点検をして、発注者として確認が行われていることになります。時には、下請業者に対してヒアリングを実施することもあって当然です。
 私は、先日、ある局が発注している約1800万円の工事について、下請負人が元請負人から代金未払いになっているという相談を受けました。さっそく、発注者側に事実関係を確認しました。ところが、発注者側は、工事が契約額3000万円未満であることをもって、受注企業が下請契約しているかどうかを確認する必要がない。発注者側は、あくまでも契約者との関係だけがあるだけだとの認識でした。
 また、下請け代金未払い問題の相談に応じている担当部門でも、下請契約における代金未払い問題は「民民の取引問題」との認識が基本となっています。
 このままでは、たとえ建設業法、建設業法遵守ガイドライン、通知などがあっても、東京都発注の工事では、下請契約代金未払いの被害者も救済されないということになりかねません。

Q4 建設工事の場合、重層下請け構造が常態化しているわけですから、早急に、何らかの対策をつくる必要があると考えます。たとえば長崎県では、下請け代金等の未払いをおこなった業者については、入札参加規制をはかるため、下請け業者からの相談を受けたり、裁判所より判決を受けたり、督促等の措置を受けた場合には、専門の部署が事実認定をして元請けに入札参加規制を通知する仕組みになっています。未払いが解消した場合に、解除されます。東京都としても、このような対策を検討してはどうですか。

回答 下請代金の未払等、元請下請間のトラブルについては、当事者の話合いによる解決を図るとともに、紛争となった場合には、建設業法に基づき東京都建設工事紛争審査会など紛争処理機関が設置されています。また、都発注の工事に限らず建設業法等関係法令に違反し、営業停止処分を行った事業者については、東京都競争入札参加有資格者指名停止等取扱要綱により、指名停止により入札から一定期間排除することとしています。

 下請け代金未払いなど、たとえ建設工事紛争審査会などの機関などに持ち込んでも解決できる事例は少数です。少額契約工事の場合は、その手続きの手間、契約方法から泣き寝入りしているケースも少なくありません。
 また、発注者がたとえ厳しくチェックするなかでも倒産、破産など様々なケースで、下請け代金を回収できない場合はあり得ることです。しかし、工事を請け負った下請け業者、労働者には、本来なら確実に支払いが適切に支払われるのが当然です。

Q5 諸外国では、下請け企業や労働者の賃金等を保護する下請代金債権を、様々な方法で保全しています。また、国も下請代金債権保全策を検討しました。
 都の発注した公共工事では、元請け企業の倒産、破産した場合、不慮の事故など、様々な要因で下請け代金の支払いが遅らさざるをえなくなったり、支払われないなどの事態が起きないように、都としても、こうした検討をすすめ、下請け代金未払い問題が起きないように具体的な対策をとるよう提案するものですが、どうですか。

回答 下請事業者の債権保全については、国において「下請債権保全支援事業」を実施しており、都としては関係団体を通じて周知を図っています。