2013年都議会第3回定例会代表質問 9月25日

曽根はじめ (北区選出・日本共産党)

オリンピック・パラリンピックについて
都民のくらし・福祉について
ブラック企業対策について
国家戦略特区について
中小企業支援・雇用対策について
「新たな長期ビジョン」における少子高齢化対策について
答弁
再質問
再質問答弁

 日本共産党都議団を代表して質問します。
 先の都議選で、わが党は、安倍政権の暴走ストップ、都政ではくらし・福祉第一の東京への転換を訴えて、都民のみなさんの大きな支持をいただき、都議会第3党に躍進させていただきました。さらに、つづく参議院選挙の比例選挙の得票では、東京で第2党という、いっそう大きなご支持をいただきました。
 多くのみなさんの日本共産党への期待にこたえて、公約実現、都民要求実現に向け全力で奮闘するものです。

一、オリンピック・パラリンピックについて

 はじめに、2020年オリンピック・パラリンピックについてです。
 9月8日にIOC総会が、東京での開催を決めました。私たちは、IOC総会の決定を尊重し、来るべきオリンピックがスポーツを通じて国際平和と友好を促進するという、オリンピック精神の実現の場となるように力をつくすものです。同時に、東京開催には内外から様々な不安と疑問の声が出されており、無条件で信任するものではありません。国民、都民の生活や環境と調和のとれた、無理のない取り組みを進めることが、人間の尊厳保持に重きをおき、環境問題に関心をもち、持続可能な開発を促進するというオリンピック憲章にかなうことだと思います。この立場から、知事の所見をただします。

第一は、深刻な事態となっている福島第1原発の放射能汚染水の問題です。

Q1 IOC総会で安倍首相は汚染水について「状況はコントロールされている」と発言しました。健康への影響についても、「現在も将来も、まったく問題ない」「抜本的解決に向けたプログラムを私は責任をもって決定し、すでに着手しています」と発言しました。
 しかし、これらは明らかに事実をねじ曲げた発言です。高濃度の汚染水が漏れ出す事態が相次ぎ、放射能汚染の拡大を制御できないどころか、汚染水の現状さえ把握できないという非常事態に陥っているのです。健康への影響が「問題ない」という発言も、根拠がありません。ところが安倍首相は、いまなお「完全に安全だ」などと言いはっています。このことは、政府の汚染水対策の真剣さを疑わせるものと言わなければなりません。
 知事が定例会見で、汚染水は必ずしもコントロールされていないとの認識を示したことは当然です。だとしたら、知事は安倍首相に対し、ごまかしはやめ、英知を結集して汚染水対策にあたるよう、つよく申し入れるべきです。
 安倍首相の発言は、いわば国際的公約です。知事が言うように今後への意思表明だなどといって済ませるわけにいかないのです。同席していた猪瀬知事も共同責任を負っています。
 政府は、放射能汚染水の危機打開のため総力をあげ、国際的公約に対する責任を果たすことがきびしく求められていますが、知事いかがですか。

第二に、生活や環境との調和の問題です。

Q2 全国紙の世論調査では、東京開催決定はよかったと回答している人もふくめ、72%の人が「できるだけ支出をおさえるべきだ」と回答しています。
 東京開催のために都が責任を果たすことは当然ですが、オリンピック関連事業への財政投入が優先され、国民、都民のくらし・福祉の施策がおろそかにされることは、絶対にあってはなりません。ましてや、オリンピックを口実にした過大なインフラ整備やムダづかいはゆるされません。いかがですか。

Q3 競技場等の会場整備の都負担は、立候補ファイルでは1540億円とされていますが、倍以上にはね上がるとの報道があります。現時点の見通しを明らかにして下さい。今後、計画を変更する場合は都民に明らかにすべきであり、整備費は競技を保障し安全を確保する必要最小限の費用におさえる必要があると考えます。いかがですか。

Q4 また立候補ファイルでは、オリンピックに利用する輸送インフラとして12本の幹線道路整備を記載し、約6千億円の事業費を計上していますが、現時点で事業費はいくらになるのですか。計画の見直しもふくめ、費用を野放図に拡大させず極力おさえるべきです。お答え下さい。

Q5 オリンピックに必要な輸送インフラとされていない外環道の整備を、国と都が、2020年までの完成に向けて加速しようとしていることは重大です。外環道の関越・東名間は、総事業費1兆2820億円、世界一建設コストが高い道路といわれています。くらしや福祉など、やるべき課題が山積しているのです。再検討すべきです。見解を求めます。

Q6ア さらに、京急と東急の蒲田駅をつなぐ蒲蒲線、成田空港と羽田空港を結ぶ成田羽田線とそのための新駅整備などが、つぎつぎ打ち出されています。知事は新聞のインタビューで「旧来型の発想だ」と答えていますが、こうした立候補ファイルに記載されてない成田羽田線を、どのように考えているのですか。

イ また蒲蒲線について、どのように考えているのですか。

Q7 推進した場合の二つの事業費総額は、国や関係機関でいくらかかると推計されているのですか。お答え下さい。

Q8 知事は、東京オリンピックを推進力として「一人ひとりが輝く都市にしたい」と述べました。であるなら、貧困と格差が解消され、都民だれもが幸福を実感できる生活を保障するために全力をつくすべきです。オリンピック開催にむけて、都民のくらしと福祉向上の明確な目標と計画をもって取り組むことを提案します。知事、いかがですか。

Q9 カヌーの競技会場として予定されている葛西臨海公園は、都内有数の野鳥の宝庫です。226種類もの野鳥が生息し、23区で絶滅危惧種に指定された生物が26種類生息しています。そこにスラロームの巨大な施設や、1万人規模の観客スタンドが整備されれば、豊かな自然環境が破壊されることは明らかです。日本野鳥の会や江戸川区も、現在の計画に反対を表明しています。
 環境との調和について、オリンピックムーブメントにおけるアジェンダ21は、スポーツ活動や施設整備にあたって環境の保護を規定しています。知事、この立場にたつなら、葛西臨海公園でのカヌー会場計画は、日本野鳥の会や江戸川区などと協議し、全面的に見直すべきです。見解を求めます。

Q10 第三に、オリンピック憲章は、「スポーツを行うことは人権の一つである。各個人はスポーツを行う機会を与えられなければならない」と宣言しています。スポーツをする権利についての知事の所見を伺います。知事は「スポーツをする人をもっと増やす」と発言しましたが、どのように進めていくのですか。

Q11 そのためにも身近な地域のスポーツ施設整備が重要です。総務省の調査で、人口100万人当たりの社会体育施設数では、全国平均374カ所にたいし東京都は157カ所にすぎず、全国46位です。スポーツ団体からは、練習や試合の場所を確保できないという、切実な声があがっています。区市町村と協力し、整備を大幅に促進すべきです。お答え下さい。

二、都民のくらし・福祉について

 次に、都民のくらし・福祉の問題です。
 安倍首相が来年4月から消費税率を5%から8%へ値上げすることを決断しました。国民の所得が減りつづけるなかで8兆円もの大増税を実施したら、くらしも営業も大きくこわされてしまいます。97年に3%から5%に増税したときは国民の所得が増えていました。それでも経済もくらしも落ち込みました。いまは国民のくらしと営業が長期にわたって痛手を受けているのです。くらしも経済もどん底に突き落とされてしまうのは、火を見るより明らかです。

Q1 知事は、消費税増税について記者に聞かれ、政府が決めることと言いながらも、地方消費税の配分に期待する発言をしています。しかし、消費税を増税しても、経済が悪くなれば全体の税収も減る危険があるのです。そして、消費税の増税が必要だと考えている方々の中にも、来年4月の増税は国民生活や日本経済を悪化させることになるという懸念を持ち、反対の声をあげている方がたくさんいます。最近の世論調査でも、増税を予定通りに実施すべきだという意見は2割から3割しかなく、「中止すべきだ」や「先送りすべきだ」という意見が7〜8割と圧倒的なのです。
 これが、都民の多数の声です。知事として都民のくらしと東京の経済を守る立場で、少なくとも来年4月の消費税増税はやめるよう国に求めるべきです。いかがですか。

 さらに許せないことは、社会保障の充実を口実に消費税増税を決めたにも関わらず、逆に大改悪を進めようとしていることです。

Q2 医療では70歳から74歳の窓口負担の2割への引き上げをはじめ、後期高齢者医療制度の継続、入院給食費や高額療養費の負担増、ベッド削減・患者追い出し・受診抑制のための法改定も行うとしています。
 介護では要支援1・2と認定された人から介護保険サービスを取り上げ、特養ホーム入所は要介護3以上に限定、デイサービスの利用制限、一定収入以上の人は利用料負担を2割へ引き上げなど、更なる負担増・給付削減がねらわれています。
 年金は2・5%削減の着実な実施とともに、恒久的な支給削減を行っていく方向が打ち出され、年金支給年齢の引き上げも視野に入れています。
 知事、こんなことを許してよいのですか。社会保障の改悪はやめるよう、国に厳しく物申すべきです。お答え下さい。

Q3 毎年のように繰り返される国民健康保険料の値上げも都民生活を苦しめています。とりわけ23区の場合、母子世帯、障害者世帯、多人数世帯で大幅な負担増となりました。国保料の通知が送られてから、保険料が高くなった理由や減免方法などの問い合わせが殺到しています。国保世帯の3世帯に1件の割合で問い合わせがあった自治体もあり、1万件を超える問い合わせがあった自治体も複数あります。
 値上げの影響は本当に深刻です。たとえば難病の妻と体の弱い娘さんの3人家族の運送業の男性は、営業所得は100万円、年金が夫婦合わせて120万円です。所得税も住民税も非課税ですが、国保料は毎年上がりつづけ、今年度は昨年から2万円上がって年間13万円にもなりました。この男性は、「あまりに負担が大きい。自分が死んだり、働けなくなれば、一家心中しかないのか」というのです。
 必死に働いて、ぎりぎりの生活をしている家族を、国保料値上げが、さらに追い詰めている現実をどう認識していますか。


Q4 国民健康保険法は、公的医療保険のなかで唯一、その目的の中に、社会保障と明記しており、国民健康保険は皆保険制度を根底で支えるセーフティーネットとしての役割を果たしているのです。高すぎる保険料を引き下げるために、都が必要な財政支援を行うべきではありませんか。

Q5 また、後期高齢者医療保険料は、来年度に改定となります。広域連合の検討案では、区市町村が一般財源を投入しない場合で約1万8千円、19%もの値上げになります。一般財源を投入した場合でも約1万円、11%の値上げになり、値上げ幅、値上げ率ともにこれまでで最大になります。前回の保険料改定の際は東京都が不十分ながらも財政支援を行い、値上げ幅をおさえましたが、今回はより大きな支援を行うべきです。いかがですか。

 子どもたちの豊かな成長を保障するための保育園を増やしてほしいという声が、大きくひろがっています。
 東京都がこの4年間で2万4千人分の認可保育園を増設したことは重要です。しかし、まだまだ足りません。認可保育園に申し込みながら入れなかった乳幼児は今年4月1日で、2万1360人にのぼります。働く意欲があるのに子育てで働けない――これは本人にとっても社会にとっても不幸なことです。少子高齢社会を乗り切るためにも、認可保育園を思い切って増設することが求められています。
 東京で認可保育園をつくる場合、最大のネックになるのは土地の確保です。認可保育園の増設を加速させるために、わが党は認可保育園の用地取得費に補助をする「東京都保育所建設用地取得費補助条例」を提出しました。  都内では、この2年間に7つの社会福祉法人が土地を購入して認可保育園をつくっていますが、本当に苦労しています。たとえば北区内の保育室が共同して社会福祉法人を設立して認可保育園をつくることにしましたが、土地代は2億3千万円もかかったのです。あらゆるつながりで何とか約1億円の募金を集めることはできましたが、それでも金融機関から多額の借り入れをせざるをえませんでした。用地取得費への補助があれば、どんなに助かったでしょう。市長会も来年度予算要望で、「保育所の新設に伴う用地費にかかる補助制度の創設」を東京都に要望しています。
 各会派のみなさん、ともに力を合わせて実現させようではありませんか。ご賛同、よろしくお願いいたします。


Q6 知事は今定例会の所信表明で、都有地などの資産も活用していくなど、東京都自らもより積極的にかかわっていく少子高齢対策を検討すると重要な発言をしています。いまこそ、都有地の積極的活用に本腰を入れるときです。決意を伺います。

Q7 都有地活用を進めるための情報提供は、きわめて重要です。区長会も来年度予算要望で「十分な情報提供」を求めているのです。
 このため、私たちは財務局と公営企業3局の普通財産となっている5百から1万uの土地の所在地と面積を調査しました。この4局だけでも233カ所の都有地の所在地が明らかになりました。たとえば北区の赤羽警察跡地は、認可保育園にちょうどいい広さの上、駅にも近く便利なところです。そこで伺います。
 財務局および公営企業3局の普通財産となっている未利用地をはじめ、都民のために活用可能な都有地について、区市町村および都民に情報提供すべきです。そして、これらの都有地を認可保育園や、特養ホームをはじめ福祉施設などに優先的に提供することが求められていますがどうですか。

Q8 同時にこれらのことを円滑に進めるためには、都庁内各局や区市町村との連携をスムーズに進めるためのシステムづくりが求められています。早急に取り組むことを求めますが、どうですか。

Q9 都有地活用を進めるためには、負担の軽減も重要です。23区では、この3年間だけでも10区が、区有地を無償もしくは大幅減額で認可保育園に貸与しています。区や市が新たに土地を購入し、無償で貸しているケースも複数あります。
 都有地の場合、都営住宅に併設されている認可保育園は原則無料で貸与されていますが、そのほかの都有地は半額貸与であり、保証金も30ヶ月分が必要となっているため、利用が難しくなっています。
 このため、区長会は来年度要望で、「無償または大幅に減額して」貸与することと「保証金の廃止」を要望しています。市長会も「都有地や国有地を無償借用」できるようにと要望しています。都としてこうした要望をどう受け止めているのですか。この要望にこたえるべきではありませんか。

 認可保育園の増設を進めるために、保育士の確保は欠かせません。
都内で平均的な100名規模の保育園だと、保育士は1園で18人から19人必要です。年間75カ所の保育園をつくることになれば、純増で年間1400人以上の保育士が必要になります。認証保育所など認可外の保育施設も、十分な保育士が必要です。保育士確保のためには、十分な賃金と人員配置の保障が重要です。

Q10 都内の保育士養成校で保育士資格を取得するのは、毎年4千人前後ですが、そのうち保育園に就職する人は約半数です。やりがいはあるものの、低賃金で、仕事はきついからです。保育園に就職しても、数年で離職してしまう人も少なくありません。
保育士資格を取得した人が就職したくなる職場、就職したら継続して働き続けられる環境をつくることが、保育士不足を解決する道です。都の対応を伺います。

三、ブラック企業対策について

 次にブラック企業対策です。
 若者の不安定な非正規雇用が半数をこえて拡大し、ワーキングプアが増えつづけている問題とあわせて、正規雇用でも、多数の新卒者を採用しながら過重労働やいじめなどで短期間に身も心も会社に従わせ、ついて来れない者は精神を病むなど次々退職に追い込まれるというブラック企業が、社会問題になっています。

Q1 私はワタミ系列の居酒屋で約2年正社員だった男性から話を伺いました。「出世のためには身も心も創業者に奉げることが要求される。自分の考えを言えば、あらゆるいじめで追い出される」と、切々と語ってくれました。
 ワタミのブラック企業と言われるゆえんは、人を人とも見ない労働者の使い捨てです。まず異常な長時間過重労働を強い、連日午後4時から翌朝4時まで12時間勤務で、始発電車でしか帰宅できません。明らかに厚労省の示す時間外労働の限度基準の、月上限45時間、年間360時間をこえています。
 しかも給与からの天引きが、社内用のブレザー、社員旅行費、ボランティア経費、研修用の書籍代、はては余った食材の買い取りが多い月で数万円におよび、年収総額300万円近くが、手取りで約170万円まで削られます。
 そして店長らのパワハラに改善を求めたこの男性は、ローテーションからはずされ退職に追い込まれました。
 アパレルの大手ユニクロの社員も、長時間勤務とパワハラで入社3年以内に半数が退職し、休職中の社員の4割が精神疾患という異常さが、マスコミでも大きく報じられました。
 知事は、若者を使い捨てにする、こうした働かせ方をどのようにとらえていますか。

Q2 国もついに、若者の使い捨てが疑われる四千社の調査に乗り出しました。厚労大臣は8月8日の閣議後の会見で「問題を野放しにしては日本の将来は無い。ブラック企業と言われているような、若者を使い捨てしている企業を無くしていきたい」と話しています。
 大企業が集まる首都・東京の知事として、未来をになう若者が希望をもって働けるよう、ブラック企業根絶に向けた行動にふみだすべきです。第一歩として、新採用後の短期間で大量に離職している実態を、企業ごとに毎年の離職率を公表させていくことが重要です。知事を先頭に、離職率を明示するよう大企業と経済団体に求め、公表を渋る企業名を発表すべきです。また労働法規を守らせるのは国の責任と決めつけるのでなく、法令上、問題がある大企業の実態について、都が情報を把握し、ひろく提供すべきではありませんか。

四、国家戦略特区について

Q1 知事は、アジアヘッドクォーター特区をさらに強化し、企業が世界一活動しやすい国際都市にするとして、安倍政権の成長戦略の一つである「国家戦略特区」の指定を受けようとしています。
 そもそも安倍政権による国家戦略特区の狙いは、国民の強い反対で実行できなかった日本の労働や医療、農業などさまざまな規制を緩和していく突破口にしようとするものです。雇用の分野では、労働時間の規制の適用除外、解雇規制の緩和、残業代ゼロ、深夜・休日の出勤手当を出さずに働かせることなどを進めようとしています。政府はこの内容の一部を特区関連法案に盛り込み、臨時国会に提出予定です。まさに労働者の働くルールを大きく切りくずす、とんでもない無法地域になりかねません。
 知事、大企業の利益第一に労働者を使い捨てにする、このような方向を、どう考えているのですか。

Q2 都は、それに加えて、多国籍企業を呼び込むために法人実効税率を引き下げ、さらに所得控除の拡大で16・8%にまで引き下げる提案をしています。
 減税など、いたれりつくせりのサービスをして、欧米の企業を呼び込んでも、都民のくらしも経済もよくなりません。これまで多国籍企業が利益をあげても、それは労働者や中小企業にはまわらず、株主配当や経営者への報酬を引き上げ、巨額の内部留保をためこみ、金融投機に使われてきたではありませんか。いま大事なことは、大幅な減税や規制緩和で多国籍企業を呼び込むことではなく、国際的に協調して、多国籍企業に適正な納税や雇用ルールを守らせる社会的責任を果たさせることではありませんか。

Q3 購買力が落ち込み、実体経済の停滞が続く日本と東京には、製造業、サービス業の直接投資が大規模に展開される余地は少なく、外資の呼び込みといっても結局、アメリカなどの金融、投資関連会社が中心になることは明らかです。
 知事自身、国家戦略特区では24時間活動する国際都市としての環境整備をおこなうとして、都営バスの終夜運行、標準時間2時間前倒しなどの提案をしています。まさに国家戦略特区は多国籍企業が金融などの情報をいち早く収集できるようにする、24時間眠らない都市づくりを進めることに最大の眼目があることを示しているといっても、過言ではありません。知事、いかがですか。

Q4 私たちは、金融機能や本社機能などの一定の集積を否定するものではありませんが、こうした特区づくりが都民や労働者にとっても、東京の中小企業の振興にとっても役に立つのでしょうか。金融などに特化し、雇用を破壊する無法都市にする国家戦略特区は進めてはならないと考えますが、知事の所見を伺います。

Q5 東京における企業を活発にするというなら、賃金を引き上げ、社会保障を充実することで、日本の経済の6割をしめる家計をあたため、国民の購買力を強めることです。そのためには何よりも、事業所の99%を占める中小企業を元気にすることではありませんか。

五、中小企業支援・雇用対策について

Q1 この十年間で、都内製造業の従業者4人以上の事業所数は約50%も減少し、製造業の多い5都府県のなかでも、最も大きな落ち込みとなっています。東京には世界でもまれな製造業の工業集積が存在していますが、その実態は危機的状況であり、フルセット型の工場地域機能の崩壊が懸念されています。
 全国でも有数の工業集積地域である大田区の製造業は、仕事量の大幅減少が続いているなか、大企業による下請け単価の容赦のない切り下げで、休廃業が続出し、事業所数がかつての3分の1を割りかねない状況にまで至っています。
 中小事業者の新分野進出、再生、事業承継などを支援するために、東京都の果たすべき役割は重要です。都はこうした支援をどう拡充するのですか。また、地域経済の牽引役である中堅企業への支援を強めるとともに、異分野、異業種が集まって、新しいブランド品を開発、製品化するための支援を大幅に拡充することが必要ですが、いかがですか。

Q2 中小企業支援の中でも、創業時の資金繰りが重要となっています。
 都の創業支援融資は「自己資金を必要としない」とうたっていながら、実際には「2分の1あるいは3分の1の自己資金がなければダメだ」など、自己資金要件を求められているのが実態です。
 事業を始めたい人が、創業支援融資を受ける際、自己資金がなくても、融資が受けられるよう実態を改善すべきです。お答え下さい。

Q3 中小企業が融資を受ける際、経営者自らが保証人になることを求められます。これに同意すると、事業を一度失敗しただけで、経営者が資産を失う現状があり、再チャレンジの道をはばみ、多額の債務で自殺にまでいたるケースが後をたたないなど様々な問題があります。このため、政府で個人保証の見直しが検討されています。
 融資制度において、経営者の個人保証を原則なくす制度を実現するよう、国に要請するとともに、都としても、国に先駆けて個人保証を原則なくすことを求めます。お答え下さい。

 都内の労働者の約7割が、中小企業で働いています。若者が安心して働きつづけられる職場になるよう、労使双方に支援することが求められています。労働法などの雇用ルールを正しく理解し、身につけることは、労使双方にとって重要です。
 都は、各労働相談情報センターで労働条件、パワハラ、労使関係問題などの労働相談、問題解決を助けるあっせん、労働法に関するセミナー、普及・啓発活動などを行っています。

Q4 毎回参加者が殺到している労働法の講座やセミナーについては、経営者団体などと連携して経営者が受講できるよう機会を拡大すること、人材養成の支援も進めるとともに、労働者の受講機会も増やすよう求めます。

Q5 都がつくっている「ポケット労働法」など大幅に増刷し、労働者だけでなく多くの企業にも普及するように提案するものです。それぞれお答え下さい。
 労働相談情報センターの統廃合は中止し、人員体制を抜本的に拡充・強化するよう求めておきます。

六、「新たな長期ビジョン」における少子高齢化対策について

 最後に、猪瀬知事が策定を進めている「新たな長期ビジョン」について提案します。
 知事は所信表明で、「新たな長期ビジョン」は石原前知事が策定した「2020年の東京」を進化させて、十年後の東京の姿をしめすものだと述べました。しかし、「新たな長期ビジョン」は、大型開発優先、福祉・くらしに冷たい「2020年の東京」を引き継ぐものであってはなりません。

Q1 「2020年の東京」にもとづく3カ年の重点事業計画として、猪瀬知事が今年1月に発表した「アクションプログラム2013」では、総事業費の31%を大型開発につぎ込む一方、少子化対策は2%、高齢者対策は3%にすぎません。若者雇用にいたっては、「若者の挑戦を応援し世界で活躍する人材を輩出する」事業と、「意欲と能力に応じて活躍し、将来に希望を持てる社会を創出する」事業あわせても、わずか0・7%です。
 知事は、少子高齢化、人口減少社会の到来といった、社会や生活の存立そのものを危うくしかねない根本的な問題に本腰を入れて取り組むために、「新たな長期ビジョン」を策定すると表明しました。であるならば、いままでの計画のように少子高齢化対策が、合わせても5%台にとどまるようなことは許されません。
 「新たな長期ビジョン」は、多くの課題があるなかでも、何よりも都民の福祉・くらし・雇用対策の拡充を最重点にしたものにすること、とりわけ少子高齢化対策は、これまでの2倍、3倍の事業費をあてることが必要です。知事の答弁を求めます。

 その際、認可保育園や特別養護老人ホームの思い切った整備を進めるため、10カ年の目標と計画を明確にして取り組むことを求めておきます。

Q2 そして、人口減少社会に対応するというなら、「新たな長期ビジョン」では、右肩上がりの経済成長を前提にした巨大開発への投資を、今度こそ抜本的に見直すことが必要です。知事の答弁を求め、再質問を留保して、質問を終わります。

【答弁】

〇知事 曽根はじめ議員の代表質問にお答えします。  今、ちょっと耳を疑いましたが、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック、賛成するということですね。僕はこれまで反対だと聞いていましたので。IOC総会の決定を尊重するということは、協力していただくということですね。  汚染水漏れ問題への対応についてでありますが、安倍総理は、IOC総会の場で、福島第一原発の汚染水対策について、政府として責任を持って取り組むという本気の覚悟を示された。大事なことは、日本国政府が本気で取り組むことを意思表明したことなのです。帰国後、総理は早速、福島第一原発の現場に赴かれました。既にこの問題への対策として、四百七十億円の国費を新たに投入することになっています。総理が真剣に取り組んでいるということは明らかであります。  汚染水の危機打開のため総力を挙げるべきことは、皆さんのご指摘をまつまでもない当たり前のことです。ご質問にあった英知を結集して汚染水対策に当たるという話も、既に政府は、廃炉、汚染水対策の関係閣僚を集めた会議で、国内外の英知を活用することを確認しています。  共産党の皆さんは、IOC総会での発言を云々していますが、この問題は、オリンピック・パラリンピック招致のいかんにかかわらず、政府と東京電力の責任でしっかりと対応すべき事柄であります。政府の汚染水対策の真剣さを疑わせるとか、ネガティブな物のいい方はやめた方がいいと思います。政府も、東京電力も、ぜひとも懸命にやってもらいたいし、国民の皆さんにも一生懸命応援していただきたい。

 成田、羽田空港を結ぶ都心直結線についてでありますが、本路線は、都心と二つの空港間のアクセス改善を図るため、国が成長戦略の一つに位置づけるなど、以前から検討を進めてきたものであり、東京オリンピック・パラリンピックを契機に浮上してきています。  成田空港と東京の所要時間は、既にかなり短縮されています。二〇一〇年には、成田アクセス線も開業し、成田空港と上野の所要時間は、五十六分から四十一分にまで短縮されています。  また、かつては、国際線が成田、国内線は羽田という機能が二つに分かれていましたが、現在は両方とも国際空港となっています。そうした中で、二つの空港を結ぶ需要がどれだけあるか、事業採算性や費用対効果も見きわめる必要があります。こうした点を十分踏まえながら、必要か必要でないかということを、これから詰めていきます。

 福祉の向上に向けた目標と計画についてでありますが、既に東京都は、日本の再生と東京のさらなる進化を目指した都市戦略として「十年後の東京」計画、「二〇二〇年の東京」計画を構え、少子高齢化社会における都市モデルの創造を目指して、福祉、保健、医療の各分野において、さまざまな独自の先駆的な取り組みを展開しています。今年度の福祉と保健分野の予算額を見ても一兆円を超え、一般歳出に占める割合は二二・二%といういずれも過去最高となっています。  また、現在、私たちの先に横たわる少子高齢化、人口減少社会という根本的な問題に取り組んでいくために、副知事をトップとする構造的福祉プロジェクトチームを立ち上げ、将来を見据えた中長期の視点に立った施策を局横断で検討しています。  このプロジェクトチームの検討結果は、今年度策定する長期ビジョンや、来年度予算に反映させ、自助、共助、公助を適切に組み合わせながら、都民ニーズに応える具体的な施策を展開していくということになっています。

 消費税の増税についてでありますが、少子高齢化が急速に進展する我が国においては、持続可能な社会保障制度の構築を図ることが喫緊の課題となっています。こうした中、広く消費に負担を求め、世代間の公平を確保することができる消費税率の引き上げにより、社会保障財源の拡充を図ることは避けて通れません。  消費増税を定めた税制抜本改革法においては、いわゆる景気条項が設けられ、消費税率の引き上げに当たっては、我が国経済の成長に向けた措置を講じるとともに、経済状況を総合的に勘案し判断することとされています。こうした法の規定に基づき、政府において適切に対応がなされていくものと考えております。

 社会保障制度改革についてでありますが、我が国は、世界一の長寿国として、世界にもまれな、豊かで平等な社会を実現し、相対的に高い生活水準を維持してきました。これは国民皆保険、皆年金制度など、社会保障制度がこれまで有効に機能し、社会的リスクに対応してきたからであります。  しかし、少子高齢化が進み、人口減少社会が到来する中で、人口の増加と右肩上がりの経済成長を前提につくられた現在のシステムが制度疲労を起こし、行き詰まりを見せているのは明らかなのです。  将来にわたって社会保障制度を安定的に維持し、国民全体の信頼を得ていくためには、公の責任、国と地方自治体の役割分担、給付と負担の公平性などについて根本から問い直し、成熟した国家にふさわしい持続可能なシステムにつくりかえていくことが必要であります。  国が現在進めている制度改革は、こうした観点に立った改革であると認識しており、給付と負担のバランスを無視した主張にはくみすることはできません。東京都は、東京スマート保育や高齢者のケアつき住まいなど、先駆的な東京モデルを展開しており、福祉や医療の現場を持つ立場から、国に対して必要な提案は積極的に行っていきます。

 若者の雇用環境についてでありますが、人口減少社会を迎える中、我が国の成長を確実なものにするためには、将来を担う若者が能力や個性を十分に発揮し、働き続けることが必要であります。労働基準法など関係法令を遵守し、従業員が安心して働ける雇用環境を整備することは、企業の当然の責務であります。法令に違反する企業に対しては、法に基づき厚生労働省が指導や取り締まりを実施しています。  東京都は、事業主の方を対象に、従業員が安心して働き続けられる職場づくりをテーマにセミナーを開催し、職員も企業に直接足を運ぶことで、法令の周知とその遵守を促してきました。また、都内六カ所の労働相談情報センターで、長時間労働や残業代不払い、職場の嫌がらせなど、年間五万件を超える労働相談に応じ、解決に向けたアドバイスを行ってきています。このように、労使双方に対し働きかけることにより、企業において若者が活躍できる雇用環境の実現に取り組んでいます。

 国家戦略特区についてでありますが、東京都は、外国企業の積極的な誘致を通じ、都内の中小企業を初めとする国内企業の海外との取引や新たなビジネスチャンスの創出を目指しています。これにより、日本の心臓である東京の経済を活性化させ、停滞する日本経済の成長を促し、新たな雇用も生み出すことができます。  このため、国家戦略特区制度を活用して、ロンドンやニューヨークに匹敵するビジネス環境や外国人にとって暮らしやすい生活環境を整備し、東京に世界の資本、人材を呼び込むべく、これまで進めてきたアジアヘッドクオーター特区の取り組みを抜本的にバージョンアップする提案を行ったところであります。  こうした取り組みは、東京の立地競争力を高め、日本経済の再生に不可欠なものであり、特区の取り組みが東京を無法都市にするという指摘は全く当たらない。  新たな長期ビジョンにおける少子高齢化対策についてでありますが、新たな長期ビジョンでは、少子高齢化の進行と人口減少社会の到来を初めとする首都東京に山積する重要課題の解決への道筋を描き、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会のさらなる先を見据えた将来像を示していきます。  長期ビジョン策定に当たっては、少子高齢社会への取り組みを単体としてではなく、構造として捉え、ソフト、ハードが一体となった対策を推進し、少子高齢社会に対応し得る東京の新たな姿を示していきます。  なお、「二〇二〇年の東京」へのアクションプログラム二〇一三の総事業費に占める各事業費の割合に関する言及がありましたが、アクションプログラムは「二〇二〇年の東京」で示した八つの目標を確実に実現するために、特に重点的に推進すべき事業を示したものであります。  したがって、個々の事業内容を論じることなく単純に総事業費に対する比率のみを取り上げて議論することには意味がありません。  新たな長期ビジョンにおける事業実施に当たっても、これまで同様の考え方で臨んでいきます。  共産党がオリンピックに賛成してくれるということで、きょう初めて耳にしましたので、ぜひ協力してください。  その他の質問については、東京都技監及び関係各局長から答弁いたします。

〇東京都技監 二点のご質問にお答えいたします。  まず、東急線蒲田駅と京急蒲田駅とを結ぶ新空港線、いわゆる蒲蒲線についてでございますが、本路線は、運輸政策審議会答申第十八号におきまして、二〇一五年までに整備着手することが適当である路線として位置づけられております。  本路線の整備につきましては、多額な事業費のほか、事業採算性、東急線と京急線との線路幅の違いなど、さまざまな課題がございます。  都としては、引き続き区と議論を重ねるなど、必要な対応を図ってまいります。

 次に、成田、羽田両空港を結ぶ都心直結線及び蒲蒲線の事業費についてでございますが、都心直結線の概算事業費は、国の試算によりますと約三千七百億円、蒲蒲線の概算事業費は、大田区の試算によりますと約一千八十億円と聞いてございます。

〇財務局長 五点の質問にお答えいたします。  財政運営についてでありますが、都はこれまでも、無駄をなくすという視点に立って、歳出の精査を徹底しつつ、都市インフラの整備はもとより、福祉や医療、防災対策、雇用や中小企業支援など、都民にとって必要な施策に的確に財源を振り向け、都民生活の向上に努めてまいりました。  今後、オリンピック・パラリンピック開催への準備を進めていく中にあっても、引き続き、財政の健全性に留意しながら、都政の諸課題に取り組んでまいります。

 次に、少子高齢対策における都有地の活用についてでありますが、都有地は、都民から負託された貴重な財産であり、都政の喫緊の課題解決のために最大限有効活用していく必要があります。  都はこれまで、都有地を福祉インフラ整備や木造住宅密集地域の解消に向けた種地として提供するなど、都の重要な施策の支援に活用してきております。  都として取り組む今後の少子高齢化対策においても、当然のことながら、都有地の活用を有効な手段として考えてまいります。

 次に、活用可能な都有地の情報提供についてでありますが、都有地の活用に当たっては、まず、都みずからの施策への利用の検討を行い、利用予定がない土地は、お話の福祉施設だけでなく、幅広く区市町村に情報提供し、重要な施策の支援を行ってきております。  今後とも、活用可能な都有地の情報提供等について、適切に対応してまいります。

 次に、都有地の活用に関する庁内各局や区市町村との連携についてでありますが、これまでも都有地の活用のため、各局の未利用地の状況を定期的に把握するよう努めるとともに、都有財産利活用推進会議等で全庁横断的に各局と情報共有や連携を行ってきております。  また、具体的な都有地活用に当たっては、担当局を通じて地元の区市町村と密接に連携し、円滑な事業推進に努めているところであります。  今後とも、庁内各局や区市町村との連携を適切に図ってまいります。

 最後に、区市町村からの負担軽減の要望についてでありますが、認可保育所の整備については、区市町村事業であることから、都有地活用による地域の福祉インフラ整備事業として、民間事業者が整備する認可保育所への都有地の貸付料及び保証金に対しても、小中学校などの義務教育施設の整備と同様に五〇%減額し、負担軽減を図ってきたところであります。  こうした取り組みにより、認可保育所が本事業の対象とされた平成二十年以降の民間事業者による整備決定件数は四件あり、さらに今後の事業者公募に向けて区市町村と具体的に協議を行っている事案が数件ございます。  今後とも、区市町村との役割分担のもと、都は広域的自治体としての立場から、引き続き適切に区市町村を支援してまいります。

〇スポーツ振興局長 五点のご質問にお答えいたします。  まず、オリンピック・パラリンピックの施設整備費についてでございます。  立候補ファイルでは、都における施設整備費は、十の新設会場と二つの既存会場の増改修により、千五百三十八億円となっております。  これらの施設については、今後、詳細な調査や具体的な設計等を行い、適切に整備費用を精査してまいります。

 次に、オリンピック・パラリンピック開催に向けた輸送インフラの事業費についてでございます。  立候補ファイルの輸送インフラに関する記載については、「二〇二〇年の東京」などで計画されている輸送インフラの中から、大会の開催に必要とされるものを記載しておりまして、いずれもオリンピックの開催にかかわらず必要不可欠な事業でございます。  事業費については、ことし一月の立候補ファイル策定に当たり、今後必要となる残事業費を記載したものでございまして、現時点においては大幅な変更はございません。  高密度な輸送インフラを活用して、確実な大会運営を実現してまいります。

 次に、カヌーの会場計画についてでございます。  葛西臨海公園は、選手村からの近さや、大会後に都民が水辺に親しめる施設とするにふさわしい場所であることなどを考慮するとカヌースラローム会場に適した候補地でございます。  施設計画においては、観客席を仮設とし大会後は撤去するなど、環境への影響をできるだけ少なくすることとしております。  引き続き、詳細な環境影響評価を実施するとともに地元江戸川区や日本野鳥の会の話を伺うなど、自然環境と調和した計画となるよう検討を進めてまいります。

 次に、オリンピック憲章にうたわれたスポーツをする権利についてでございます。  都は、平成二十年に東京都スポーツ振興基本計画を策定し、都民の誰もが、いつでも、どこでも、いつまでもスポーツを楽しむことができるスポーツ都市東京の実現を基本理念に、さまざまな施策に取り組んでおり、その考えはオリンピック憲章に通ずるものと認識してございます。また、本年三月に改定した東京都スポーツ推進計画も、この考えを前提にしております。  これを踏まえ、より多くの都民がスポーツを楽しめるよう、TOKYOウオークや「ニュースポーツEXPO in多摩」など、誰もが気軽に参加できるスポーツイベントを通じたきっかけづくりから、ねんりんピックへの選手派遣まで、世代を超えたスポーツの振興、障害者スポーツの理解促進や場の提供など、スポーツの裾野のさらなる拡大を一層推進し、世界トップレベルのスポーツ実施率七〇%を目指していきます。

 最後に、スポーツ施設の整備についてでございます。  都は、東京都スポーツ推進計画に基づき、都民の身近なスポーツ活動の場である区市町村の施設との役割分担を踏まえ、地域や区市町村を超えるスポーツ大会や国際的な大会も開催できる広域的な機能を重視した施設の整備に取り組んでおります。  この方針に基づき、今年度は、都の新たなスポーツ振興拠点となる武蔵野の森総合スポーツ施設の整備に取りかかる予定でございます。  なお、平成二十三年度に文部科学省が実施した調査によりますと、社会体育施設数は、スキー場やキャンプ場など広大な自然を生かした多数の施設を有する北海道に次ぎ東京都は全国第二位の二千百十八施設となっております。スポーツ施設の評価は人口対比だけでなく、区域の面積、施設需要や交通の利便性など、さまざまな要素を総合的に勘案すべきものと考えております。  今後も、都や区市町村のスポーツ施設が、それぞれの目的や役割を踏まえ、相互にその機能を補完することにより、都民の多様なスポーツニーズに応えてまいります。

〇建設局長 外環についてでございますが、外環は、交通分散による渋滞解消や、排出ガスの大幅な削減による環境改善のみならず、首都圏の陸海空の要衝を結ぶ交通ネットワークの形成により、我が国の国際競争力を高め、その経済波及効果は広く日本全体に及びます。  ことし七月に国が行った事業再評価によれば、直接的な便益だけでも、総費用の二・三倍となっております。  さらに、首都直下地震が発生した場合などにおいても、日本の東西交通の分断を防ぎ、支援、復旧活動などを支えるなど、国民の生命と財産を守る、まさに命の道として、一刻も早く完成させることが必要であります。  都は、引き続き国などと連携し、オリンピック・パラリンピックのためにも、二〇二〇年早期の開通に向け、外環の整備に全力で取り組んでまいります。

〇福祉保健局長 四点のご質問にお答えいたします。  まず、国民健康保険についてですが、国民健康保険制度の保険者は区市町村であり、保険料や保険税の賦課方式や料率は、それぞれの自治体の議会で審議され、決定されるものでございます。  現在の国民健康保険制度には、医療費が高く所得の低い高年齢者や、失業者などの低所得者の占める割合が高く、保険料の確保が困難であるなど、構造的な問題があることは認識しておりますが、こうした課題には、国民皆保険制度を守るという観点から、制度設計者である国が責任を持って抜本的な解決策を講じることが必要でございます。  現在、国は、社会保障制度改革の中で国民健康保険制度についても見直しを進めており、都は既に、国に対し、構造的な課題の解決、必要な財源の確保等について提案要求をしているところでございます。

 次に、保険料負担軽減のための財政支援についてですが、都は、国民健康保険制度の健全かつ安定的な運営を図るため、法令等に基づき、各保険者に対する財政支援を行っております。  保険料負担軽減のため、都として新たな支援を行うことは考えておりません。

 次に、後期高齢者医療の保険料改定についてですが、保険料は、制度を運営する東京都後期高齢者医療広域連合の自主的な判断によって設定されるものでございます。  後期高齢者医療制度の財源は、一割を被保険者の保険料、残りの九割を公費等で賄うことが原則でございます。

 最後に、保育人材の確保についてですが、都はこれまで、保育人材を確保するために、保育所勤務経験者で、現在勤めていない人を対象に、就職支援研修と就職相談会を一体的に実施するなど、さまざまな取り組みを行っており、現在、保育士有資格者を対象に、就労等の調査も実施しているところです。  また、質の高い保育人材を育成するため、区市町村が保育士等に対して実施する研修の支援に加え、今年度からは、保育士資格の取得を目指す保育従事者への支援を行っているところです。

〇産業労働局長 七点のご質問にお答えいたします。  まず、若者の離職についてでありますが、若者が退職する理由はさまざまであります。また、企業に重大かつ悪質な法令違反があった場合には、国は司法処分を行い、企業名や内容を広く公表しております。  都としては、単に離職率のみに着目した企業名の公表や、独自に情報提供を行うことは考えておりません。

 次に、中小企業の振興についてでありますが、都は、中小企業の活性化を図るため、経営や技術の面からのサポートや資金繰りの支援を行うなど、必要な対策を適切に実施しております。

 次に、中小企業に対する支援についてでありますが、都は既に、新分野への進出や事業の再生等に取り組む中小企業に対し、相談や経営支援を行っております。  また、中小企業の共同による新製品や新技術の開発などへの支援も実施しております。

 次に、創業融資についてでありますが、都の制度融資における創業融資では、自己資金の有無にかかわらず、経営者の資質、事業の実現性や将来性などを総合的に勘案し、適切な資金繰り支援を行っております。

 次に、中小企業融資における個人保証についてでありますが、国は現在、中小企業の資金調達の円滑化を図るため、個人保証制度の見直しに向け、これを不要とする場合の条件や、個人保証によらない資金調達手法の確立などの課題について、関係者による詳細な検討を進めており、都としては、その状況を注視してまいります。

 次に、労働関係法令のセミナーについてでありますが、都は、労使双方を対象とした労働関係法令のセミナーの開催や事業主団体が行う研修への支援等により、必要な受講機会の確保と人材養成を行っております。

 最後に、労働関係法令の啓発資料についてでありますが、都は既に、労働者に加えて、使用者に対しても、必要に応じて啓発資料を配布し、普及啓発を行っております。

〇知事本局長 四点のご質問にお答えいたします。  まず、国家戦略特区の考え方についてでありますが、国家戦略特区は、国際ビジネス環境や外国人の生活環境の整備を進め、日本や都市の立地競争力を高めるプロジェクトでございます。この取り組みにより、国内企業の生産性向上や都市の国際競争力の向上などを目指すものと考えております。  こうした国の取り組み方針を踏まえ、東京都としては、国際ビジネス環境を整備する上で必要となる規制緩和や、国内企業も活用可能な税制の創設など、これまでのアジアヘッドクオーター特区を抜本的にバージョンアップさせ、東京の国際競争力を強化する提案を国に行ったところでございます。  国家戦略特区制度を活用しようとする東京都のこうした提案が、雇用分野などに悪影響を及ぼすとのご指摘は当たらないと考えます。

 次に、東京都の外国企業誘致についてでありますが、外国企業の誘致は、すぐれた経営資源の受け入れにつながり、また、国内の企業にとっては、販路拡大や新たなビジネスチャンスが創出されるなど、東京と日本の国際競争力の強化につながるものであります。  現実の国際社会では、台頭するアジアの諸都市との間で外国企業誘致に向けた都市間競争が激しさを増しており、今後とも戦略的に外国企業誘致を進めていく必要があると考えております。  なお、ご指摘のありました多国籍企業に対する課税制度につきましては、国際社会の枠組みの中で適切なルール化が検討されているものと承知しております。

 

次に、国際都市としての環境整備についてでありますが、安倍政権は、新たな成長戦略である日本再興戦略におきまして、日本や都市の立地競争力を高め、ロンドンやニューヨークに匹敵する国際ビジネスの環境や外国人にとって暮らしやすい生活環境を整備するため、国家戦略特区の取り組みを進めております。  今回の東京都の提案におきましては、ビジネス環境の整備に加えまして、外国人の生活環境を整えるために必要となる教育や医療の規制緩和のほかに、経済のグローバル化に対応し、二十四時間活動する国際都市としての環境整備を進めることを提案しております。  こうした取り組みは、金融ビジネスに限らず、幅広い分野の企業から立地対象として選択され、他の国際都市と比肩し得る東京を実現していくためのものでございます。

 

最後に、新たな長期ビジョンにおける政策展開についてであります。  少子高齢化の進行と人口減少社会の到来、首都直下地震の脅威など、首都東京には重要課題が山積しておりまして、新たな長期ビジョンでは、その解決の道筋を描き、十年後の将来像を示してまいります。  同時に、この将来像の実現に向けて、東京は成長を維持し、安定した財源を確保していく必要がございます。このため、さらに激化する世界の都市間競争に対しまして、世界一の都市を目指して、引き続き国際競争力の強化を推進してまいります。  今後、真に必要となる政策展開を、ハード、ソフト両面からしっかり示してまいります。

【再質問】

 知事に再質問いたします。

 まず、新たな長期ビジョンについて、知事は、これまでと同じ考え方で臨んでいくとの答弁をされました。  しかし、「二〇二〇年の東京」に基づく今年度重点事業の総事業費は七千八百億円に対し、少子化対策は二百二十五億円、高齢化対策は二百七十八億円にすぎません。  知事は、少子高齢化は社会や生活の存立そのものを危うくしかねない根本問題だとおっしゃっているんですから、幾ら重点的な事業に絞ったといっても、この程度の財政投入で本腰を入れた対策が進むと考えているのでしょうか。  私は、少なくとも二倍、三倍の事業費を充てるべきだとただしました。少子化高齢化の対策事業をふやすのか、ふやさないのか、はっきりお答えいただきたい。

 二つ目に、ブラック企業についてです。  私が、ワタミ系列の社員の例を挙げて質問しましたが、知事は、法に反するかどうかという一般論をおっしゃるだけでした。  ブラック企業とは、合法か否かの境目を超えた劣悪な労働を押しつけて、激しい選別、非情な使い捨てなどを行っている企業です。私が話を聞いた労働者は、まさにそうした扱い方を受けてきたのです。だからこそ厚労大臣も、問題を野放しにしては日本の将来はないといっているんです。  神奈川県では、ブラック企業対策としてリーフレットをつくり、セミナーも開催するとしています。  知事、以前からの事業に甘んじて傍観するのでなく、ブラック企業問題を新たな社会的大問題としてとらえて、都として対応すべきです。もう一度、お答えください。

 

第三に、社会保障についてです。  知事は、国が進める社会保障の改悪を評価する立場を示されました。  しかし、改悪が進められたら、都民は給付の切り下げと重い負担増で、社会保障を受ける権利を奪われかねない事態です。  知事は、その痛みをひたすら我慢しろというのでしょうか。この痛みに思いを寄せる気持ちはないのでしょうか。そこの点をお答えください。  以上、三問についてお答えいただきたい。

【再質問答弁】

〇知事本局長 再質問のうち、新たな長期ビジョンに対するご質問にお答えいたします。  先ほど知事からお答え申し上げましたとおり、新たな長期ビジョン策定に当たりましては、少子高齢社会への取り組みを単体としてではなく、構造として捉え、ソフト、ハードが一体となった対策を推進し、少子高齢社会に対応し得る東京の新たな姿を示していくとお答えしております。  その上で、「二〇二〇年の東京」での総事業費の比率の言及がございましたので、個々の事業の内容を論ずることなく、単純に総事業費に対する比率のみを取り上げて議論することには意味がないと、このようにお答えしたものでございます。

〇産業労働局長 若者の雇用環境についてのお尋ねにお答えいたします。  労働関係法令を遵守し、従業員が安心して働ける雇用環境を整備することは、企業の当然の責務であります。  都は、使用者に対し、法令の周知を遵守するとともに、長時間労働や残業代不払い、職場の嫌がらせなど、労働相談に対応しておりますし、十月にも該当の相談を実施いたします。

〇福祉保健局長 社会保障制度改革についてですが、先ほども知事が答弁したとおり、将来にわたって社会保障制度を安定的に維持し、国民全体の信頼を得ていくためには、公の責任、国と地方自治体の役割分担、給付と負担の公平性などについて根本から問い直し、成熟した国家にふさわしい持続可能なシステムにつくりかえていくことが必要であります。  国が現在進めている制度改革は、こうした視点に立った改革であると認識しております。  東京都は、スマート保育や高齢者のケアつき住まいなど、先駆的な東京モデルを展開しており、福祉や医療の現場を持つ立場から、国に対して必要な提案は積極的に行っていくということであります。

サ場を持つ立場から、国に対して必要な提案は積極的に行っていくということであります。