二〇一三年第四回定例会 討論 12月13日

松村友昭(練馬区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第193号議案「東京都電車条例の一部を改正する条例」外5議案に反対の立場から討論します。

 本定例会では、開会直前に発覚した、徳洲会から知事への5千万円もの巨額資金提供問題の真相究明が、重要課題になりました。わが党は、知事としての資格が問われることはもちろん、都政のあり方にかかわる重大問題として、その真相と知事の責任を徹底追及してきました。知事は、個人の借り入れであり、しかも返したのだから問題ないという立場をとっていますが、そのような居直りは許されないことが浮き彫りになりました。

 第一に、5千万円が知事選の裏献金であった疑惑です。知事は発覚直後の会見で、知事選直前に徳田虎雄氏を訪ねた際、「資金提供という形で応援してもらうということになった」と発言していたのです。その後の徳田毅代議士との話し合いなかで、知事選の費用が話題となり、仲介者から1億円などの話がでたことについても知事は否定できませんでした。しかも無利子、無担保、返済期限なしで受けた資金提供は、貸与ではなく事実上の贈与です。過去の判例でも、自治体の長が3千万円を受け取りながら借りたと弁明した事件で、利息や返済期限がなかったなどの事実をもって、賄賂と認定し実刑判決が言い渡されているのです。
 さらに、昨年十一月二十日に受け取った5千万円について、そのまま自宅に運んだという知事の答弁は偽りであり、実は知事の事務所に運んだことが、庁有車の運行記録から明らかになりました。事務所は知事の政治資金団体である「猪瀬直樹の会」の事務所でもあり、個人の借り入れどころか、猪瀬知事の政治資金団体とのかかわりがある疑いが濃厚になったと言わなければなりません。
 しかも、資金提供を表に出さないために、銀行口座ではなく妻名義で貸金庫を借りて保管したという経過は、5千万円が裏献金以外のなにものでもないことを示しています。にもかかわらず5千万円について、公職選挙法ないし政治資金規正法にもとづく報告をいっさい行ってないことは、法違反が問われる重大問題です。

 第二に、知事になる可能性の高いとされていた猪瀬氏に対する、立候補直前の資金提供は、当選後の見返りを期待したものと言って過言ではありません。わが党が解明したように、徳洲会は都内での医療、介護施設のさらなる展開、JCI認証の推進と東電病院の取得などの戦略をもっていたのです。知事は、徳洲会から、便宜などの働きかけは一切なかったと強弁してきましたが、当選後の知事の行動も、徳洲会の狙いにそったものになっている疑いがつよいのです。
 たとえば、知事が今年五月、国に提出した国家戦略特区の提案では、外国人むけの医療を進める一環として、徳洲会が重視してきたJCI認証の取得支援を打ち出しました。注目すべきは、わが党が明らかにしたように、昨年十一月六日、知事が徳洲会の湘南鎌倉病院に徳田虎雄氏を訪ね、選挙応援を求めた2時間前に、同氏は、湘南鎌倉病院がJCI認証を取得した報告を受けていたことです。その興奮がさめやらぬ中、訪れた猪瀬知事に対し、JCI認証にふれ、東京での展開について話題にならなかったという方が無理な話です。
 徳洲会は、都心に徳洲会病院の旗をたてることを悲願としてきましたが、知事が株主総会で東京電力にせまって売却を約束させたことが、徳洲会の悲願実現の道を開いたという疑惑も浮かび上がりました。わが党は徳洲会を訪れ、徳洲会がタイムリーだとして東電病院売却の入札に参加したことを確認しました。知事は株主総会で東電病院の売却をせまるために、福祉保健局に働きかけ総会前日に東電病院の検査を行わせました。徳洲会が東京地検の強制捜査を受けたことで入札を辞退し、担当者が逮捕されたこと、東電が入札の経過をいまだに明らかにしていないことも、知事と徳洲会にかかわる疑惑をうかがわせるものです。

 第三に、公務員として副知事として絶対許されない、利害関係者から巨額の資金提供を受けた問題です。
 都の職員服務規程では、便宜供与の有無にかかわらず、利害関係者から借り入れをしただけで懲戒の対象となることは、99万円を借りて懲戒免職処分となった職員の例でも明らかです。わが党の質問に対し、都は、職員服務規程と同趣旨の服務紀律が副知事に適用され、処分の対象になりうることを認めました。当時、副知事として都の利害関係者である徳洲会から資金提供を受けた猪瀬知事は、資金提供を受けたその時点で懲戒免職にあたるという問題なのです。
 こうした重大問題であるにもかかわらず、知事が答弁を二転三転させ、不都合なことは覚えていないと繰り返し、資料は処分したなどという欺まんに満ちた答弁に終始してきたことは断じて許されません。
 しかも、知事が公表した徳洲会からの借用書が、ニセモノではないかという疑惑が濃厚となっています。
 二十二日の記者会見では「借用書と書きました」さらに「返済したことも記載されています」と説明しながら、公表した借用書はこの説明とはまったく違うものでした。さらに知事は、借用書が本物であることは、徳田毅代議士に見てもらえば証明できると言い、あたかも徳田代議士に連絡を取り本物であることを確認したかのように会見で発言しました。ところが、わが党の追及で、徳田代議士側から、届いているかの確認があっただけだったと訂正しました。さらに借用書の送り主は、仲介者の木村三浩氏であった、借用書が返送されてきた証拠である封筒は処分した、借用書が入っていた郵便は書留や速達ではなかった、つまり普通郵便だったとの驚くべき答弁もありました。こうした追及で浮かび上がったのは、知事が示した借用書なるものは、実は問題が発覚してからつくられたものではないかという疑惑です。

 以上、わが党の調査と追及などによって浮き彫りになった主な問題点を指摘してきましたが、いまだ全容は明らかにされていません。知事の発言は日を追うごとに変わり、知事答弁の多くはとうてい信用できません。この問題は、知事としての資格が問われることはもちろん、都政のあり方が問われる重大な問題です。二度とこうした事態を繰り返さず、都政への都民の信頼を回復するためにも、真相究明が求められています。知事は、真相を全面的に明らかにすべきです。そのうえで責任をとって辞職すべきです。真相にフタをしたままで、給与一年間の返上でお茶を濁し、知事の座に居座りつづけようとすることは断じて許されません。

 わが党は、総務委員会でも真相究明に全力を尽くしますが、知事が真相を隠す態度をとりつづける以上、偽証を許さず、証人の出席や資料提出も強制力がある百条委員会の設置は不可避と考えます。あらためて、各会派のみなさんに強くよびかけるものです。
 いま求められていることは、一刻も早く今回の猪瀬知事の裏献金疑惑を解明し、都政停滞から抜け出すことにより、都民に開かれた都政、福祉・くらしの充実をはじめ、都民第一の都政をめざして都が総力をあげることです。それこそが、都政への信頼をとりもどす道だと考えます。そのためにわが党は奮闘する決意を表明するものです。

 議案について意見を述べます。
 第193号から197号の5議案は、安倍内閣が閣議決定した来年4月の消費税8%増税施行を前提に、都営地下鉄、都バス、都電荒川線、日暮里・舎人ライナーの運賃をそれぞれ値上げするものです。
 来春の消費税の増税は、国民・都民のくらしに深刻な打撃をもたらし、経済も財政も再生するどころか、共倒れの破綻に追い込まれることは明らかです。
 だからこそどの世論調査でも、4月実施の中止を求める声が圧倒的多数です。
 ところが、猪瀬知事は「消費税率引き上げは避けて通れない」と都民の痛みに背を向けました。
 しかも、質疑で明らかになったように、都営交通運賃は、都民生活への影響について調査も検証も行わず、値上げしようとしています。これは、公共の福祉の増進という公営企業の立場に反するものです。
 交通局の2会計を合計すると、107億円の純利益で資金剰余は155億円におよび、内部留保をこの5年間で714億円も積み増ししています。これを活用して40億円の値下げをすれば、現行運賃を維持できることも質疑で明らかになりました。
 以上、消費税転嫁による値上げはすべきでないとの立場から5議案の撤回を求め、討論を終わります。