2014年都議会第一回定例会 最終本会議討論 3月28日

大島よしえ(足立区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第一号議案、平成26年度東京都一般会計予算外38議案に反対の立場から討論を行います。

 舛添知事になって、初めての議会だっただけに、知事がどのような立場で都政をすすめるのかが問われました。知事は施政方針で、「政治は強いもののためではなく、弱いもののためにある」と述べました。
 ところが知事が提案した来年度予算案は、石原・猪瀬都政を継承し、外かく環状道路や過大な港湾施設などの大型開発や不要不急の事業に莫大な予算を計上する一方で、基本的に福祉・くらしに冷たく、雇用対策などを軽視するものでした。
 これでは、都民は報われません。わが党は都民生活のリアルな実態を明らかにし、それを打開する積極的提案を行いました。  第1に都民の暮らしを守る問題です。
 いま、賃金や年金の切り下げ、アベノミクスの円安による影響で物価も上がっています。さらに4月からの消費税増税が追い討ちをかけるのです。
 ところが、知事は、消費税増税にともなって、上下水道料金など使用料、手数料の値上げを提案しました。しかし、水道事業会計には2300億円もの内部留保金があり、その一部を使えば消費税増税による利用者負担74億円は抑えることができるのです。生活に不可欠な水道水に消費税を転嫁することは避けるべきです。わが党は、都が、今後少なくとも都民や中小零細業者の料金負担を軽減する措置をとるよう強く求めておくものです。

 第2に、福祉を拡充する問題です。
 国民皆保険の最後のとりである国民健康保険の保険料の相次ぐ値上げ、後期高齢者医療保険料や70歳から74歳の医療費自己負担の2割への引き上げなどで医療にもかかれない都民が増えています。わが党が、国保料などの負担軽減を求めたのに対し、知事は「現在の国民健康保険制度には構造的な問題がある」ことを認めながら、日本の社会保障制度で困っている方々が救済されるかのような答弁を行い、負担軽減は冷たく拒否しました。これでは知事がいう「世界一の社会保障の進んだ都市にする」ことはできません。
 わが党は東京から日本の社会保障制度を立て直していくことをめざし、提案を続けていくものです。

 わが党が保育園の2万人をこえる待機児解消について、目標を明確にして取り組むよう求めたことに対し、都は、都民が求める認可保育園を中心にすえる立場を示せませんでした。同時に、都は、「待機児ゼロにするための工程表をつくる」と答え、園庭の役割については、「園庭の確保が望ましい」と答えたのは一歩前進です。本会議で「質を確保しながら量の拡大を図るのは当然」と知事は答弁しているのですから、認可保育園を中心に園庭もあり、安心できる保育園の大増設に取り組んでいただきたいと思います。

 また、43000人を超える特養ホーム待機者解消をめざし、増設を求めたのに対して、知事は待機者解消という立場を示さず、国と呼応して、特養ホーム入所者をしぼりこむ立場を示した事は重大です。同時に、知事が、「特養など介護施設の定員は増やしていく必要がある」「そのため、来年度は特養ホームの整備費補助の単価を増額し、更なる促進策も検討するよう指示した」と答弁したことは評価しますが、入所を必要とするすべての方を対象に整備計画をつくるよう重ねて申し述べておくものです。
 「お泊りデイサービス」における、男女が同じ部屋で、プライバシーも保護されないなどの実態を質したのに対し、知事が「都独自の指導をさらに行っていく」と答えたことも重要です。高齢者の尊厳を守るため、ショートステイの整備促進をはじめ在宅介護体制の充実に努め、高齢者が真に住んでよかったといえる東京をめざす取り組みをすすめるよう強く求めておきます。

 保育園や特養ホームを増設するために、都有地、国有地等の活用について、局を横断する検討チームをつくり、第1回の検討会を直ちに開いたことも重要です。知恵を出し合い、活用の可能性がある都有地を将来の見込みも含め洗い出すことが必要です。都の監理団体を含めた国公用地を、無償もしくはそれに近い値段での提供などを改めて求めておきます。

 一方、わが党が介護士や保育士の処遇改善を求めたのに対し、知事が「国がやることだ」と答弁したことは、知事が、「国に上乗せして」賃上げできるようにすると発言していただけに、都民の約束をくつがえすものです。都もかつては独自補助を行っていたのですから、ぜひ実効性のある補助制度をつくり、保育や介護の人員不足を解消することを強く求めておきます。

 第3に、アベノミクスから雇用と中小企業をどう守るかです。
 わが党は若者を劣悪な賃金、労働環境で働かせ、使い捨てにするブラック企業の実態を公表し、社会的に追い詰めていくよう提案しましたが、知事は「国が実施している」と答え、取り組もうとしませんでした。「若年者の使い捨てが疑われる企業等が社会で大問題になっています」というリーフを作成するなど、一歩踏み出しましたが、まだまだ不十分です。都がブラック企業対策を、本格的に進めることを重ねて求めておくものです。また、職業訓練校の1,2年生コースの授業料を値上げすることは許されません。無償にこそすべきです。
 わが党は中小企業の技術、技能の継承、発展、そして、商店をまもり、育てるために、「小規模企業振興計画」をつくるよう提案しました。
 東京には優れた技術をもつ小規模企業が集積し、商店街が高齢化社会の中で果たす役割が高まっています。都がこれまでの枠組みを超えた抜本的対策をすすめるよう求めておくものです。

 第4に、大地震から都民の命と財産を守る問題です。
 わが党は、中央防災会議が強調した、住宅の耐震化と出火防止対策など予防対策の抜本強化を求めました。ところが知事は、「大地震への備えを万全にしていく」と答弁しながら、著しく狭く限定している木造住宅耐震助成の地域の拡大と助成拡充には背を向ける態度をとりました。都はその理由として「財政の効率性」を挙げましたが、倒れる前の助成こそ、都民の生命・財産を守れるだけでなく、仮設住宅、復興住宅など被災による1兆、2兆円もの財政負担を大幅に軽減できるのです。財政的観点からも予防重視への転換を求めておきます。
 また、都は、延焼遮断帯をつくるといって多数の住民の立ち退きにつながり、反対と懸念の声が広がっている28本もの幹線道路整備を強引に進めていますが、あくまでも住民の理解と合意、住み続けられるための手立てをつくすことを求めておきます。

 第5に、子どもたちのためによりよい教育条件を整える問題です。
 わが党は、都立特別支援学校の8割以上が特別教室を普通教室に転用し、8割近くがカーテンなどで教室を仕切り2学級で使っているという異常な状況を取り上げ、早急な改善を求めました。わが党が示した「町田の丘学園」について、校舎増築が完成するまでの間、仮校舎を整備するというと答弁があったことは一歩前進ですが、全体では今後計画されている479教室を整備しても、現在の不足数と比較して、なお221教室も不足するのです。一日も早く当たり前の教育環境を整備することを強く求めるものです。
 また、都民の強い要望である35人学級の小学校3年生などへの拡大を求めましたが、教育長は、これに応えようとしませんでした。多くの道府県で独自に拡大している少人数学級に、都もとりくむよう重ねて求めておきます。

 最後に、予算の使い方の問題です。
 知事は、「金は天から降ってこない」と繰り返し発言しましたが、お金は使い方を変えれば生み出すことができます。
 だからこそわが党は、不要不急・大型開発や無駄遣いの見直しと、財政調整基金の積み立ての一部の活用で、一般会計予算案を3.4%組み替えるだけで、都民施策を充実する、緊急対策など132項目を拡充する予算組み替えを提案しました。これによって、待機児、待機者を解消のため、今後4年間で認可保育所3万人分、特養ホーム2万人分の整備を計画的にすすめ、国保料、後期高齢保険料の値上げを抑え、ブラック企業対策や職業訓練の充実、都営住宅新築の再開、若者家賃助成、所得制限で打ち切られた高校生の就学支援金を独自に継続することなど、都民の願いにこたえることが可能になります。
 この方向こそ都民の利益にかなう予算の使い道であることを強調しておきます。

  舛添知事は、施政方針で「知事の最大の使命は都民の生命と財産を守ること」であり、「さまざまな声に耳を傾け、声なき声にもしっかりと耳を澄ませる」と述べています。この発言どおり、最優先すべき都民の命と財産、暮らしを守る立場に立つことを強く求めて討論を終わります。