2015年第1回定例会 一般質問 2月25日

白石たみお(品川区選出)

若い世代の働き方の問題について
災害医療体制の整備について

若い世代の働き方の問題について

 若い世代の働き方の問題について質問します。
 私は、高校を中退し、すし職人の見習いとなりました。その後、アルバイト、日雇い派遣など、非正規雇用を経験してきました。大手運送会社の倉庫内作業での日雇い派遣では、名前も呼ばれず、モノ扱いされ、自分自身の存在価値を見失う思いをしました。こうした経験を通して、今の非正規で働く若者の気持ちを痛感しています。こうした若者をつくりだす社会を何とか変えたい、その思いで、「ネットカフェ難民調査」、労働相談などに取り組んできました。
 今日は、若者が希望をもって働ける東京にするため、私が出会ってきた、仕事をめぐる問題で苦しむ声なき声、若者の思いを取り上げて質問します。
 非正規から抜けだせない若者の実態は深刻です。

 地方から上京して13年となる38歳の男性は、大手求人情報誌を通じて、携帯WEBサイト開発会社に契約社員として就職しました。面接では「頑張り次第で正社員になれる」と言われ、希望を抱き働き始めました。しかし、日を追うごとに重いノルマがのしかかり、成績が悪い時には社長から「仕事をなめているのか」とパワハラを受け、身も心も凍える日々を送り続けました。一日12時間働いても、給料はどんどん減額され、月10万円にも満たず生活は崩壊寸前で、退職に追いこまれました。
 その後は、派遣労働をくりかえしながら、正社員になろうとハローワークに通いつづけています。しかし、何十社と面接を受けても採用されません。不採用でも連絡はほとんどなく、理由も告げられないので、正社員になる手がかりも見えず、心も体もすり減らしたといいます。

 このような働かされ方に追いこまれるのは、個人の責任、一部の気の毒な人だという問題ではありません。
 知事は、第4回定例会の所信表明で、「働く人の3人に1人が非正規という状況は尋常ではない」「国も巻き込んで、非正規の方々の正社員への転換を強力に推し進めていく」という考えを示しました。
 この男性は「知事の発言には励まされる。自分みたいな人を広げないでほしい」と切実に訴えています。

Q1.非正規から正社員への転換を進める予算をつけたことは重要ですが、同時に一人ひとりのおかれた現状や背景を十分に把握し、それを踏まえた親身で継続的な支援がどうしても必要だと思いますが、いかがですか。
 また、そのためにも非正規雇用の実態を把握する調査を進めることが必要だと考えますが、都の認識および対応を伺います。

Q2.とりわけ、不本意な非正規雇用にならざるを得ないきっかけとなっている高校中退、未就職状態での卒業などの問題に対応した、就労支援施策をすすめる必要があります。区市町村からの要望にもなっています。知事は、施政方針演説で「高校中退の問題などは、雇用の問題にも繋がる大きな課題だと思っております。知事と教育委員会が、さらに力を合わせ、子供の可能性を伸ばし、引き出してまいります」といいましたが、具体的に、これらの課題をどのように解決していこうとしているのですか。

 さらに知事が目を向けるべきは、正規の職場であっても、「ブラック企業」「若者の使い捨て」という言葉に代表されるような実態になっていることです。
 IT関係で働いていた20代男性は、朝9時30分に出勤して、帰りは午前2時、3時まで働くことが日常的となっていました。職場には、残業するのが当たり前という雰囲気がただよい、いくら残業しても残業代が出ず、社長からは「仕事が遅いからだ」と長時間労働が強要されました。休日出勤も日常的に行われ、心身を患い、退職にまで追い込まれました。この男性は、過密労働は「仕方ないもの」と思っていましたが、友人と仕事について話すなかで、初めて、そのひどさに気付き涙がとまらなくなりました。この男性は今でも、医者から働くことを止められ、既に6年が経過しています。
 このように、正社員だったとしても過重労働により使い捨てとなるケースがあいついでいるのです。それにもかかわらず、安倍政権が、派遣法の改悪、「残業代ゼロ」制度など、雇用ルールの破壊をすすめるということはとうてい許されません。
 このような動きにブレーキをかけなければ、若者が安定した仕事につき、能力を発揮する機会は失われ、少子化にますます拍車がかかり、社会保障の基盤がくずれ、社会の持続的発展はありえません。

 知事は、2月、「国と都が協力して雇用対策をすすめ、みんなが安定して雇用を確保し、能力を十分発揮して、安心して家庭生活、子育てができるような世界一の都市を目指す」と述べています。ならば、大企業の本社が集中する首都の知事として、財界・大企業、政府に、今こそストップをかけるべく、行動をすべきです。
 「ブラック企業」を減らしていくうえで重要なのが、「働きがいのある人間らしい仕事」つまり、ディーセントワークがあたりまえの社会の実現です。
 これは、世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国際労働機関・ILOが二十一世紀の目標として提唱しているものです。
 「働きがいのある人間らしい仕事」とは、まず仕事があることが基本ですが、その仕事は、権利、社会保障、社会対話が確保されていて、自由と平等が保障され、働く人々の家族を含めて生活が安定する、すなわち、人間としての尊厳を保てる生産的な仕事のことです。
 日本でも、すでに労働組合で運動がはじまりました。政府は二〇一二年にディーセントワークの実現を閣議決定しています。
 私は、こうした動きを、より前にすすめる必要があると考えます。

Q3.知事は、厚生労働大臣時代に、ILO90周年シンポジウムで、ディーセントワークの実現は「わが国にとって大きな課題であると受け止めている」「ILOのディーセントワークの実現に向けた活動に協力を惜しまない」とメッセージを送っています。知事は「ディーセントワーク」について、どう認識していますか。
 また知事は、施政方針演説で政策をインクに例え「透明な水の上にインクをたらすと、それが水面に大きく広がっていく。その最初の一滴が東京の政策」と述べ、東京が真っ先に課題に取り組むことで地方を牽引していく決意を表明しました。であるならば、働くルールの確立や住宅の確保など、安定した生活の実現をめざす「ディーセントワーク東京推進宣言」をおこなうことが重要と思いますが、いかがですか。

Q4. 知事は、労働分野の様々な課題への対策をさらに進めるため、国と連携して「より実効性の高い取り組みにつなげていきたい」と述べています。若者の「使い捨て」が疑われる大企業に、人間らしい雇用環境を確保させるため、企業名の公表をはじめ様々な具体策を国とともに取り組むよう求めますが、いかがですか。

 東京都の労働相談活動、働く権利の普及啓発活動を、大幅に拡充することも必要です。
 日本労働組合総連合会の若者への調査によると、働いていて困った時に労働局などの相談窓口に相談したのは、わずか1%でした。労働相談窓口が地方自治体にあることを知っているのは、2割を切っています。働く上での権利・義務について「学校教育でもっと学びたかった」「理解すれば、今より安心して働ける」と7割の若者が回答しています。

Q5.働く権利について普及啓発、相談窓口の重要性について、どう認識し、どのように充実を図るつもりですか。

Q6.JRや東京メトロの車内CMなどで、都は、生活習慣病予防や消防団員募集などの政策広告をおこなっています。同じように、こうした手段を利用して、労働相談窓口の所在地や、連絡先などの情報を、都が積極的に発信していけば、若者に自分たちの悩みを届けることのできる場所があるというメッセージとなり、相談を増やすことにつながります。いかがですか。

Q7.都が発行しているリーフレットは、派遣で働く若者にもわかりやすく労働者の権利を伝えています。これが、コンビニでも無料で配布されていることは重要ですが、都内のわずか二〇〇店舗程度にしか置いていません。コンビニは、若い世代が多数利用するので、置いている店舗数を抜本的に増やすことが大切です。
 また、東京メトロなどの駅の改札や通路には、アルバイト情報誌をはじめとした無料の情報誌がおいてあるコーナーがあります。ここに、都のリーフレットなどもおけば、アルバイト情報などをつかもうとする若者の目にふれやすく、ブラックバイトなどにまきこまれないための手助けとなります。それぞれ答弁を求めます。

 若者の働き方の問題について質問をしてきましたが、この問題の最後に、
Q8. 東京の働く若者の雇用実態をもとにした支援施策を、これから策定する「子ども・若者計画」に盛り込むよう提案します。いかがですか。

災害医療体制の整備について

 次に、災害医療体制の整備について質問します。
 いつ起こるかわからない首都直下地震から都民の命と財産をどのように守るかは緊急の課題です。
 発災時に全ての病院などが、都民の生命を守るため、施設の機能を維持し、地域の応急救護や情報拠点として役割を果すため、都が必要な支援を拡充することが求められています。
 地元品川区内の医師会は、緊急医療救護所などに医師会会員の医療スタッフなどを派遣させる情報拠点となる位置づけを持っています。
 発災時にライフラインが消失し、施設の全ての機能が使用できなくなるのを防ぐため、非常用発電設備となる、発電機や全天候型のコードリールなどを自前で購入しています。
 それぞれ26年度に購入した装備・備品の購入額は、約230万〜400万円となり、区からの補助もなく、負担となっていました。
 医師会からの強い要望もあり、品川区の来年度予算案では、それぞれの医師会に補助が新設されることとなりました。

Q9、都は地区医師会による、災害時の医療救護の活動、災害訓練の実施などの取り組みの重要性を、どのように考えていますか。また、地区医師会からは災害時の設備への財政支援の要望も出ています。区市町村と地区医師会の連携体制の構築にむけて、都として、どのように支援していくのですか。それぞれ答弁を求め、質問を終わります。

以上

わります。

以上

【答弁】

〇知事 白石たみお議員の一般質問にお答えいたします。  雇用対策についてでございますが、働きがいのある人間らしい仕事を指すディーセントワークの概念につきましては、私は厚生労働大臣当時から繰り返しその重要性に触れてまいりました。全ての人が能力を存分に発揮できる仕事につき、本当の豊かさを実感できる社会を実現することが重要であります。
 こうした考えのもと、不本意な働き方をしている非正規雇用への対策やワークライフバランスの推進などを長期ビジョンに位置づけ、都民に対して明らかにしたところでありまして、その取り組みを着実に進めてまいります。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。

〇産業労働局長 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、非正規雇用についてでございますが、都は、非正規雇用の労働条件等に関する実態調査を実施するとともに、国の調査などにより把握している状況や、一人一人の非正規雇用の置かれた現状を踏まえ、きめ細かな支援を行っております。

 次に、高校中退者など若者の就労支援についてでありますが、先日立ち上げました雇用対策協定に基づく東京労働局との運営協議会において、雇用分野、教育分野など庁内はもとより、国との連携も一層強化し、これまでの対策に加え、都立高校とハローワークによる中退者支援などに取り組んでいくこととしております。
 次に、若者の使い捨てが疑われる企業についてでございますが、都は、事業主に対する労働関係法令の普及啓発を実施する一方、国は、法に基づく指導監督等を行っております。
 さらに、国との運営協議会におきまして、相互の役割分担を踏まえつつ、若者の就業支援や働き方改革などについて一層連携して取り組んでいくこととしております。

 次に、労働関係法令に関する普及啓発等についてでございますが、働く方が安心して仕事を続けるためには、労働関係法令の普及啓発と労働相談が重要であり、都は、セミナーの開催や普及啓発資料の発行、多様な手法による相談の実施などに取り組んでおります。

 次に、若者への労働相談の周知についてでございますが、都は、相談窓口である労働相談情報センターにつきまして所在地や連絡先を普及啓発資料に掲載し、大学、高校等を通じて配布するほか、大学でのポスター掲示など、さまざまな手法により効果的に情報を発信しております。

 最後に、若者への普及啓発についてでございますが、若者に対する労働関係法令の普及啓発は、内容や目的に応じ効果的に行うことが重要であり、大学、高校やコンビニエンスストアでの資料配布、eラーニングの活用など、さまざまな手法を組み合わせて適切な規模で実施しております。

〇青少年・治安対策本部長 若者に対する就業支援についてでありますが、青少年の健やかな育成のためには、若者の職業的自立は重要であります。国の大綱である、子ども・若者ビジョンに盛り込まれておるところであります。これを勘案して策定いたします東京都の子供・若者計画においても盛り込んでまいります。

〇福祉保健局長 災害時の区市町村と地区医師会の連携についてでありますが、東京都地域防災計画におきまして、区市町村は、地区医師会と協定を締結し、協力して発災直後からの医療救護活動を行うとともに、連携して人的被害や医療機関の被災状況等を把握することとされております。
 都は、災害時において、地域の中で適切に医療が提供されるよう、区市町村や地区医師会などから成る地域災害医療連携会議を二次保健医療圏ごとに設置し、医療資源を把握するなど、必要な医療体制の構築を図っております。
 また、昨年度からは、区市町村や地区医師会の参加も得て、災害時の情報連絡体制を検証するための図上訓練を実施しております。
 今後とも、地域における災害時の医療連携体制の構築を支援してまいります。