二〇一五年 第一回定例会  最終討論(全文) 3月27日

徳留道信(板橋区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第1号議案平成27年度東京都一般会計予算ほか23議案に反対し、議員提出議案第1号「国民健康保険料、または国民健康保険税の補助に関する条例」に賛成する立場から、討論をおこないます。

 舛添知事が就任して2年目を迎え、来年度の予算案は、知事が編成する初めての本格予算となりました。知事が今回の予算編成の基本的考え方の1つとして、「都民福祉の充実による生活の質の向上」をかかげ、認可保育園や特養ホームの増設、非正規から正規雇用への転換をはじめ、福祉、雇用、中小企業対策などについて、施策の前進がある程度すすめられるものになったことは重要です。
 また、本定例会において、わが党の質問にこたえ、都は保育園や特養ホーム等の増設のために、具体的に3ヶ所の公社用地を明らかにし、また立体都市公園制度などを活用して整備すること、多摩地域の公立病院の要請にこたえた地域支援ドクターの確保に取り組むことなど、いくつかの分野で前進的な答弁がありました。知事が「働きがいのある人間らしい仕事」・ディーセントワークを強調し、都の職員について正規、非正規を問わず、能力が発揮できる処遇を重視すること、障害者スポーツについても様々な施策を推進することを表明するなど、都民要望に応える姿勢を示したことも重要です。

 しかし、いま安倍政権が、「社会保障のため」という口実で強行した消費税増税や、円安による物価高に加えて、社会保障を充実させるどころか、医療・介護・年金などを軒並みの切り下げたことによって、都民には重い負担増がのしかかっています。
 非正規雇用が広がり、勤労者の実質賃金は19カ月連続で下がり続けて、都民の家計は冷え込み、アベノミクス不況と呼ばれるように、くらしの厳しさがいっそう広がっているのです。ところが知事提案の来年度予算案は、都民のくらしの困難に手を差し伸べる立場がきわめて弱いものとなっています。
 こうした時だからこそ、「福祉の増進」を本旨とする自治体として、都が都民のくらし、福祉を守ることに全力をつくすべきです。
 都がおこなった世論調査でも、くらしが苦しくなった理由の第一に都民が挙げたのは、税金とともに保険料負担でした。実際に来年度には、年収200万円の3人家族の世帯で、国保料と年金保険料を合わせて約60万円、年収の3割近い負担になる事態も起きているのです。こうした時に、国にモノを言わないどころか、国を擁護する姿勢で、どうして都民のくらしを守ることができるでしょうか。安倍政権の暴走ストップをきっぱり求めるべきです。
 いまこそ、自治体本来の役割に立って、都としても、社会保障の負担軽減や、介護報酬削減の影響を受ける介護事業者への支援、保育や介護の人件費補助を始め、都として必要な手立てを尽くすことを強く求めるものです。

日本共産党都議団は、こうした立場から、都民のくらし、福祉、教育、営業を守る施策の拡充を中心に、大災害から都民の命と財産を守る防災対策等を盛り込んだ予算の組み替え提案を行いました。 
 知事が言うように、金は天から降ってはきませんが、巨大道路建設や大型開発優先をはじめとした不要不急の事業の見直しなどをおこなえば、都民のための財源は、生み出せることを示したものです。
 残念ながら組み替え提案は否決されましたが、この方向こそ道理ある道であると確信するものです。
 都としても、今後ぜひ、予算編成のあり方の見直しを検討していただきたいと思います。

 国民健康保険は、質疑でも明らかにしたように、所得の低い非正規労働者や高齢者が加入者の8割近くを占める事態となっており、毎年のように上がる保険料・保険税をいかに抑えるかが切実な課題となっています。わが党は、区市町村が低所得者のための軽減率を拡充できるよう、都として支援するために「国民健康保険料または国民健康保険税の補助に関する条例」案を提出しました。
 これが実施されれば、3割を越える被保険者が、1人あたり約3千円から4千円の負担軽減になります。必要経費は約70億円です。各会派の賛同を心から求めます。
 国保問題で、知事がわが党の質問に対して、「委員がおっしゃった問題意識も含めて、今後とも議論を深めて行きたい」と述べたことは重要です。国保加入者の負担軽減を図るために、国に責任を果たすよう強力に求めるとともに、都としても広域自治体としての役割をいかにはたすべきか、検討を深めていただきたいと思います。

 教育については、石原都政以降、都教委が「処分」をタテに教育現場を萎縮させ、さらに教育と相容れない目先の「成果主義」をあおる業績評価や、上意下達の人事制度などによる管理統制で、教育の自主性や教員相互の協力・共同を損なっている問題について、ただしました。
 しかし、都教育委員会はかたくなな態度を変えようとしませんでした。都教委の学校と教師に対する行き過ぎた管理統制と介入に多くの都民が胸を痛めています。
 学校教育は、子どもたちの人間丸ごとの成長をつちかう場です。教職員が自由な雰囲気の中で教育について議論し、お互いに高めあい、子どもたちに人間として接することのできる環境がなければ、子どもたちも、のびのび育つことはできません。
 都教委が、学校の自主性や創意工夫を応援する、教育委員会本来のあり方に立ち返るよう、重ねて求めておきます。                                                    

 都民の平和と安全を守る問題についても、都としての対応を抜本的に強化することが求められています。
 安倍内閣は、アメリカが起こすあらゆる戦争に自衛隊が参戦・支援する「戦争立法」を力ずくで押し通す構えです。これは、憲法9条のもとでは、絶対に許されないものです。
 首都にある米軍横田基地には、在日米軍の司令部、米軍の第五空軍司令部、そして航空自衛隊の総司令部があります。
 今月17日の国会の参議院予算委員会でのわが党の質問でも、アメリカの無法な侵略戦争といわれたアフガニスタン戦争やイラク戦争に在日米軍は繰り返し出撃し、2004年12月から2012年3月までの約7年間に派遣された人数は、延べ7万7千人を超えていることが、政府答弁で確認されています。
 「戦争立法」の具体化が強行されれば、米軍横田基地は、文字通り日米の軍事一体化の拠点となり、これまで以上に危険な運用・訓練が拡大して、首都と都民の平和と安全が脅かされる状況が広がることは明らかです。
 知事は、施政方針で「都知事として、首都、そして都民の安全・安心を最優先に政策を実行する」と強調しています。であるならば米軍横田基地に起因する危険から、都民を守るために全力をつくすべきです。  

日本共産党都議団は、今回提案された議員報酬の引き上げ条例に反対であり、議員の報酬および期末手当のあり方について、再検討を求めるものです。同時に、選挙管理委員をはじめとする行政委員の報酬のあり方についても、その職務の内容や実態にふさわしく、そして都民の理解が得られるよう、再検討が求められていることを、申し述べておきます。
 本定例会には、都議会維新の党、都議会生活者ネットワーク、かがやけ東京、東京みんなの改革、そして日本共産党都議団の5会派の共同により「都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当条例一部改正条例」案が上程されます。都議会議員が本会議や委員会などに出席した際の一日1万円から1万2千円という費用弁償を交通費の実費とし、都内や隣接県に出張した時の際の費用弁償を廃止するものです。
 費用弁償問題について、わが党は2005年に実費支給とする条例改正案を提出しましたが、「個別事項のみをとらえて、議論することはおこなうべきではない」などとして、否決され、この10年間にわたって、見直しが先送りされてきました。議員報酬の二重取りとの批判が巻き起こり、全国各地で見直しすすめられる中で、もはや、これ以上の先送りは都民の理解を得ることはできません。
 みなさんのご賛同を心から呼びかけて、討論を終わります。