第2回定例会 文書質問趣意書 2015年6月22日

大山とも子(新宿区選出)

歯科口腔保健について

 歯科口腔保健について質問します。

Q1 歯科口腔保健推進法が、議員立法によって制定され、2011年8月に公布・施行されました。
 同法は、高齢化が進む中で将来を見据え、乳幼児期からの生涯を通じた歯科疾患の予防、口腔機能の獲得・保持等により、すべての国民が心身ともに健やかで心豊かな生活ができる社会を実現することを目指すものとされています。
 そして、歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持の推進に関する基本理念を定め、国と地方自治体の責務を明確にするとともに、歯科口腔保健の推進に関する基本となる事項を定めることにより、歯科口腔保健施策を総合的に推進することを掲げています。
 都は、歯科口腔保健推進法が制定・施行された意義を、どう受け止めていますか。

Q2 歯科口腔保健推進法第1条、法の目的の規定には、「口腔の健康が国民が健康で質の高い生活を営む上で基礎的かつ重要な役割を果たしている」「国民の日常生活における歯科疾患の予防に向けた取組が口腔の健康の保持に極めて有効である」と、歯科口腔保健の重要な役割が明記されています。
 また第2条では、「国民が、生涯にわたって日常生活において歯科疾患の予防に向けた取組を行うとともに、歯科疾患を早期に発見し、早期に治療を受けることを促進すること」「乳幼児期から高齢期までのそれぞれの時期における口腔とその機能の状態及び歯科疾患の特性に応じて、適切かつ効果的に歯科口腔保健を推進すること」「保健、医療、社会福祉、労働衛生、教育その他の関連施策の有機的な連携を図りつつ、その関係者の協力を得て、総合的に歯科口腔保健を推進すること」の3項目を、歯科口腔保健の推進に関する施策の基本理念として掲げています。
 都は、歯科口腔保健推進法の第1条に明記された歯科口腔保健の役割の重要性、および第2条に掲げられた歯科口腔保健の推進に関する施策の基本理念を、どう受け止め、どう対応していくのですか。

Q3 歯科口腔保健に関する知識等の普及啓発等について定めた歯科口腔保健推進法第7条では、「国及び地方公共団体は、国民が、歯科口腔保健に関する正しい知識を持つとともに、生涯にわたって日常生活において歯科疾患の予防に向けた取組を行うことを促進するため、歯科口腔保健に関する知識及び歯科疾患の予防に向けた取組に関する普及啓発、歯科口腔保健に関する国民の意欲を高めるための運動の促進その他の必要な施策を講ずるものとする」とされています。
 法第7条にもとづく施策を、都は法施行後どのように充実させたのですか。また今後どのように推進し、充実を図るのですか。

Q4 定期的に歯科検診を受けること等の勧奨等について定めた歯科口腔保健推進法第8条では、「国及び地方公共団体は、国民が定期的に歯科に係る検診を受けること及び必要に応じて歯科保健指導を受けること(以下この条及び次条において「定期的に歯科検診を受けること等」という。)を促進するため、定期的に歯科検診を受けること等の勧奨その他の必要な施策を講ずるものとする」とされています。
 法第8条にもとづく施策を、都は法施行後どのように充実させたのですか。また今後どのように推進し、充実を図るのですか。

Q5 障害者等が定期的に歯科検診を受けること等のための施策等について定めた歯科口腔保健推進法第9条では、「国及び地方公共団体は、障害者、介護を必要とする高齢者その他の者であって定期的に歯科検診を受けること等又は歯科医療を受けることが困難なものが、定期的に歯科検診を受けること等又は歯科医療を受けることができるようにするため、必要な施策を講ずるものとする」とされています。
 法第9条にもとづく施策を、都は法施行後どのように充実させたのですか。また今後どのように推進し、充実を図るのですか。

Q6 歯科疾患の予防のための措置等について定めた歯科口腔保健推進法第10条では、「前三条に規定するもののほか、国及び地方公共団体は、個別的に又は公衆衛生の見地から行う歯科疾患の効果的な予防のための措置その他の歯科口腔保健のための措置に関する施策を講ずるものとする」とされています。
 法第10条にもとづく施策を、都は法施行後どのように充実させたのですか。また今後どのように推進し、充実を図るのですか。

Q7 口腔の健康に関する調査及び研究の推進等について定めた歯科口腔保健推進法推進第11条では、「国及び地方公共団体は、口腔の健康に関する実態の定期的な調査、口腔の状態が全身の健康に及ぼす影響に関する研究、歯科疾患に係るより効果的な予防及び医療に関する研究その他の口腔の健康に関する調査及び研究の推進並びにその成果の活用の促進のために必要な施策を講ずるものとする」とされています。
 法第11条にもとづく施策を、都は法施行後どのように充実させたのですか。また今後どのように推進し、充実を図るのですか。

Q8 歯科口腔保健推進法は、第7条から第11条の施策を総合的に進めるための方針、目標、計画その他の基本的事項を、厚生労働大臣が定める基本的事項を勘案し、かつ地域の状況に応じて定めるよう努めることを、都道府県に求めています。都はどう対応するのですか。
 埼玉県、神奈川県、愛知県、大阪府、北海道をはじめ多くの道府県が、歯科口腔保健推進計画を策定しています。
 たとえば埼玉県は「埼玉県歯科口腔保健推進計画」を、県の総合計画(「埼玉県5か年計画」)や埼玉県地域保健医療計画の下位計画にあたるものと位置づけています。
 都としても、東京都長期ビジョンや東京都保健医療計画に加え、歯科口腔保健施策を総合的に進めるための方針、目標、計画その他の基本的事項を定める「東京都歯科口腔保健推進計画(仮称)を策定することが必要ではありませんか。

Q9 歯科口腔保健推進法は第15条で、都道府県は口腔保健支援センターを設けることができるとし、同法第12条に基づいて厚生労働大臣が定めた基本的事項では、「地方公共団体に歯科医療又は保健指導に係る業務に従事する者等に対する情報の提供、研修の実施その他の支援を行う口腔保健支援センターを設置することが望ましい」と明記しています。
 都はどう対応するのですか。都として口腔保健支援センターを設置することが必要ではありませんか。

Q10 歯科口腔保健推進法にもとづいて厚生労働大臣が定めた「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」では、歯科専門職である歯科医師、歯科衛生士及び歯科技工士の確保等に努めることが望ましいとし、「都道府県において、市町村、医療保険者、地域の歯科医師会・医師会等の関係団体と連携し、最新の知見に基づく研修の充実を図ることが必要である」と明記しています。また「歯科口腔保健に取り組むボランティアを養成する体制を推進することも重要である」としています。これらの課題に、都としてどう対応するのですか。

Q11 厚生労働大臣が定めた「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」では、「歯科医師、歯科衛生士等が行う指導・助言・管理等により口腔の健康の保持・増進に関する健康格差の縮小を実現する」と明記されています。
 健康で長生きできる事は多くの都民の願いです。「食べること」は生きることの基本であるだけに、最期まで口から食べられることは重要です。
 最近は胃ろうを造設した方も、口腔ケア等を行うことで胃ろうから離脱する例が多数報告されています。
 また、筑波大学の寺本信嗣教授は、肺炎患者のうち約65%が70歳以上の高齢者であり、そのうち、約8割が誤嚥性肺炎だと報告しています。口腔ケア等による感染予防や嚥下機能改善等の取り組みが行われています。歯科衛生士が口腔ケアの指導をしている老人保健施設では、口腔ケアを実施して以降、年間10件程度あった誤嚥性肺炎が年々少なくなり昨年度は0件になったとのことです。その中心を担っているのは歯科衛生士です。
 入院病棟でも、歯科衛生士が周術期の口腔ケアを行い、痛みや違和感が改善し、回復に良い効果が現れていることや、患者さんのQOL向上や尊厳の維持等、その重要性が増しています。
 介護予防やリハビリテーションとの関係でも可能性が示唆されており、活躍の場は大きく広がっています。
 また、口腔内の健康は、子どものときの口腔内環境が大きく影響します。口腔ケアや予防歯科などを行う上で、歯科衛生士の役割はきわめて重要です。
 昨年度都が歯科医師会に委託調査した「東京都歯科衛生士実態調査」でも歯科診療所に勤務する歯科衛生士が就業者の80%以上に上ることから「歯科医師とともに歯科衛生士が歯科診療における重要な役割を担い、協働している現状が示された」とあります。
 都は、歯科衛生士の役割の重要性についてどう認識していますか。

Q12 予防・口腔ケアが重視される今日の歯科診療では、歯科衛生士はなくてはならない人材であるにもかかわらず、その確保がきわめて難しいとの声がよせられています。高齢化が進む中、地域包括ケアや在宅ケアを担う歯科衛生士の養成・確保も求められています。
 ところが厚労省調査によると歯科衛生士の平均年収は約335万円と看護師と比べても大幅に低く、離職の大きな原因となっています。
 一方で「東京都歯科衛生士実態調査」では、多くの方が長く働きたいという希望をもっていることがわかり、未就業者でも復職を希望する方が多数となりました。実態調査のまとめでも「歯科衛生の継続的な就業と未就業者の復職を支援することが望まれる」とあります。
 都は看護師について、養成対策、定着対策、再就業対策の3つの柱で看護師確保に努めるとしています。
 歯科衛生士についても、養成、定着、再就業の総合的な確保対策が必要だと思いますが、いかがですか。
 歯科衛生士の養成、定着、再就業のそれぞれについて、どのような課題があると認識し、どう対応するのですか。

Q13 すでに全国41道府県で、歯科口腔保健推進の条例が制定されています。新潟県にはじまり全国に広がった条例制定が、歯科口腔保健推進法制定の大きな力になりました。同時に、歯科口腔保健推進法制定後も、引き続き条例制定の動きが広がっています。各地の条例の多くは、基本条例的なもので、地域の状況に応じた個性的な規定がもりこまれています。
 歯科口腔保健推進の条例が全国41道府県まで広がり、多彩な展開を見せていることを、都はどう受け止めていますか。

Q14 都としても、東京都の地域の状況を反映させた「東京都歯科口腔保健推進条例(仮称)」を制定することが重要ではありませんか。

   以上の質問への答弁を求めるものです。

以上