文書質問趣意書 二〇一五年第二回定例会 六月二二日

米倉春奈(豊島区選出)

エネルギーと環境対策について

Q1.安倍政権は、昨年四月に「原発を重要なベースロード電源」とするエネルギー基本計画を閣議決定しました。この6月には、経済産業省が、2030年にめざす電源の種類別発電比率の報告書をまとめ、原子力を20〜22%、再生可能エネルギー22〜24%、石炭火力26%などの比率を明らかにしました。また、6月8日に、安倍首相は、ドイツ・エルマウのG7首脳会議で、「原発は優れた電源」と述べた上に、地球温暖化防止の温室効果ガス排出削減目標を、2030年までに2013年比で26%と表明しました。
 安倍政権のエネルギーと環境に関する一連の政策は、原子力と化石燃料への依存を継続していく姿勢をあらわにしたものです。
 電源構成比率案や、温室効果ガス排出目標に対し、環境団体等から、「原発の寿命延長を想定するような数字が掲げられていることは大変問題、再生エネルギーや省エネの比率を非常に低く見積もっていて、国民感情を無視している。」「世界第五位の排出国としての責任が感じられず、極めて不十分」と厳しい意見が表明されています。
 知事は、著作で「私はもともと脱原発派」とし、「原発の比重を徐々に小さくしていき、最終的に脱原発を実現する、というやり方が、より賢明で現実的であると考える」と述べてきました(『東京を変える 日本が変わる』)。また、選挙公約で「再生可能エネルギー20%計画の構築」をかかげ、「東京都長期ビジョン」には「再生可能エネルギーによる電力利用割合を2024年までに20%程度に拡大」が書き込まれましたが、安倍政権の政策は、原発の新増設や老朽原発の延命を前提とした「原発回帰」そのものではないでしょうか。
 知事は、この安倍政権のエネルギー・環境政策を、どの様に受け止めていますか。

Q2.福島第一原発の苛酷事故から、4年3カ月余が経ちました。今なお、12万人の福島県民が避難生活を余儀なくされているにもかかわらず、事故の収束はまったく見通しがついていません。悲惨な事故の教訓から、福井地方裁判所は、大飯原発、高浜原発の再稼動差し止めの判決を明確に下しました。しかし、安倍政権のエネルギー政策大転換のもとで、原子力規制委員会は、鹿児島県の川内原発や、愛媛県の伊方原発が「新基準」に適合しているとしました。
 都民の多数は、危険な原発の再稼動に反対し、安全な再生可能エネルギーの普及を強く望んでいます。国に対して、原発再稼動や老朽化原発延命の流れを断ち切り、安全な再生可能エネルギー普及への転換を求めていただくよう要望します。お考えはいかがですか。

Q3.新聞報道によれば、国立研究法人・国立環境研究所のチームは、この4月、「原発を稼動しなくても、省エネの徹底で、年間1.6%の経済成長を維持し、2030年には温室効果ガス30%以上の削減が可能」との試算を発表しています。ドイツなどのEU諸国やアメリカのカリフォルニア州では、再生可能エネルギーの比率を40%以上にする目標を持っています。省エネを着実に進め、再生可能エネルギーを普及拡大するのが、世界の流れです。
 省エネの促進は、温暖化防止と原発依存から抜け出す上で、欠かすことはできません。「省エネは枯渇しない油田を掘り当てたに等しい価値を持つ」と言われています。
 特に、増え続けている家庭部門への、省エネ支援は重要です。家庭部門の省エネの柱の一つに、住宅の省エネがあります。
 2005年の統計では、全国5320万戸のうち、約4割が無断熱の住 宅です。全国で、2050年に全戸が次世代基準の省エネ住宅に移行したとすると、2010年の暖房需要に比して36%まで減らせるとされています。
 その点で、今年度から東京都が、省エネ住宅リフォーム助成を実施するの は意義がありますが、都民から望まれているのは、省エネ仕様への住宅づくりに意欲が湧く、使い勝手が良い制度です。都のリフォーム助成が使える要件は、国(経済産業省)の「既存住宅高性能建材導入事業」の対象になった住宅です。都の助成は、太陽光パネル設置・太陽熱利用、断熱リフォームが対象になりますが、必須とされるHEMSには補助が出ません。国の補助率は3分の1であり、都の補助金とあわせても、都民負担は重いしくみです。
 私は今年の第一回定例会・環境建設委員会で質問し要望しましたが、@太陽光パネル・太陽熱利用、HEMSというセットでなければならない、A国の補助対象でないと都の制度は使えない、などのスキームを見直し、断熱ガラス1枚のリフォームでも、都の助成対象になるような使い勝手の良い制度を検討すべきと考えます。答弁を求めます。

Q4.省エネの促進とあわせ、クリーンで安全なエネルギーの開発、普及が重要です。これまでも要望してきましたが、都は、太陽光、太陽熱、地熱、小水力、バイオマスなど、多様な再生可能エネルギーの開発、普及に努めるべきです。
 都が昨年度から力を注いでいる、水素エネルギーは今の到達では、高コ ストであり、安全性の確保、供給能力、都民の理解と合意が不十分等、克服しなくてはならない課題が多くあります。とりわけ、製造段階でCO2を排出しますから、温暖化防止に寄与するクリーンなエネルギーとは言うには道半ばの段階です。
 CO2排出ゼロのクリーン・エネルギー開発は水素以外にも多面的に取り組まれています。その一つに振動力発電があり、実証実験、実用化の努力が進んでいます。
 JRでは東京駅で、改札口を通過する人の足の振動で発電し、IC改札口 の電源にする試みがされ、成功しています。人が歩く振動による電気が、LED照明にも生かされています。首都高速道路の扇橋鉄橋には走行する車の振動力で、照明用発電の試みがされています。また、東京メトロでは、電車がブレーキをかけた時に生じる電力を、駅構内などの電源に使用する取り組みが、東西線・妙典駅など8駅で始まっています。省エネの回生電力として、照明、空調、エスカレーターなどの電源にしています。
 このような新しいエネルギーの開発に対して、都の支援を強めるべきと考えますが、いかがですか。

Q5. また、回生電力の活用を都営交通でも進めることは重要ですが、取組状況と実績について伺います。

Q6.東京において普及の可能性が高い太陽光発電の取り組みを強めることが重要です。
 住宅の太陽光発電について、都は「屋根ぢから」、「ソーラー屋根台帳」を進めてきましたが、実績が上がっているとは言いがたい状況です。都民の意欲喚起に向けて、ソーラーパネル設置費用補助の復活を求めます。お答えください。

Q7.都有施設へのソーラーパネル設置を増やすための具体的な計画をお示しください。

Q8.まだ活用されていない都道の法面や、UR住宅、公社住宅、都立学校の屋上などに太陽光発電普及の可能性があります。都が各局連携の取り組みをすれば、ソーラーパネル設置の条件を広げることができます。地産地消、小規模自立分散型の電力供給へ、全庁的な検討組織で、今後も進めるべきと考えますが、いかがですか。

Q9.エネルギー対策に関連して、温室効果ガス排出削減について伺います。
 温室効果ガスの排出増加による地球温暖化は、世界規模で環境に重大な影響を及ぼしています。これまでに経験のない集中豪雨、記録的猛暑、干ばつなどが起き、多くの人命が犠牲になっています。温暖化防止は、喫緊の課題であり、温室効果ガス排出削減への特別の努力が求められています。
 ところが、安倍政権が示した2030年までに2013年比で26%削減の目標は、実質は、1990年比で18%減にとどまります。一方で、EUは1990年比で40%削減の目標ですから、日本は大きく見劣りします。世界の環境保護団体で組織する「気候行動ネットワーク」は、6月4日、「極端に低い目標」を掲げる日本を「化石大賞」としました。この不名誉を挽回するためにも、首都・東京の果たす役割が問われています。
 東京都はこれまで、「2020年に2000年比で25%削減」を目標にしてきました。今年度、7年ぶりに、東京都の環境基本計画が改定の予定です。
 改定される環境基本計画には、世界の流れに遅れることなく、都が積極的な温室効果ガス排出削減目標を定めるよう、強く求めます。具体的な目標値、年度などについてお示しください。