2015年第3回都議会定例会文書質問趣意書 2015年10月5日

小竹ひろ子(文京区選出)

教育費の負担軽減について

 憲法や子どもの権利条約は、すべての子どもたちは等しく教育を受ける権利を保障しています。日本の子どもの貧困率は16.3%、6人に1人が貧困状態にあるといわれる状況のもとで、貧困と格差が広がり、教育を受ける権利が脅かされています。教育費の異常な高さ、父母の負担の重さが影響しています。
 知事は、「貧困の連鎖を断ち切るためには、教育の分野でも機会の平等を保障することが必要だと考えております。親の経済状態にかかわらず、将来、子どもがみずからの生き方を選択し自立できるよう、機会の平等を保障するためのセーフティーネットを構築することは、まずは国家の責任でございます。」と述べています。国の責任はもちろんのこと、都民の子どもの教育の機会の平等を保障することは、都の責任でもあります。
 小中学校は義務教育で、憲法により無償とされているにもかかわらず、無償は授業料と教科書代に限られています。その他の必要な教材や行事等にかかる経費は基本的に父母の負担であり、高額なものになっています。都内にある女性団体は、小中学生113人の母親にアンケート調査を行いました。回答者の家計収入は、年額300万円未満が10%、300万円以上500万円未満が34%で、合わせて500万円未満の家庭が44%と半数近くにのぼっています。調査結果から、教育にかかる負担はこの層の父母にとって重いものになっていることが浮かび上がっています。
 たとえば、小学校への入学時にはランドセル、手提げバッグ、道具箱、筆箱、鉛筆、消しゴム、色鉛筆、クレヨン、はさみ、のり、給食のエプロンやナフキンなどすべて揃えなければなりません。上履きや体操着、水着、防災ずきん、絵の具セット、習字セット、鍵盤ハーモニカなども必要です。ノートやワークブック、ドリルなど、学校で一括購入し請求されるものも少なくありません。中学校になれば、制服やジャージ、通学バッグなどが必要です。入学時にかかった費用は、小学校で平均5万5千円、中学校では平均7万8千円にもなっています。
 入学後も、学校から月々の給食費や教材費の支払いの請求があります。給食費は、小学校で月平均4,210円、中学校では.月平均5,291円とのことでした。学校から請求される補助教材やドリルなどの費用は、小学校で月平均1,261円、中学校では月平均7,740円です。中学校ではこの他に、卒業アルバムや修学旅行の積み立て、部活動の経費などもあり、父母負担は大変です。
 親の経済状況を考え「修学旅行に行かない」という子どももいるなど、深刻です。就学援助を受けたとしても後払いですから、まずは費用を捻出しなければならないのです。父母負担の軽減は、切実な声になっています。

Q1 義務教育無償がうたわれながら、これだけ重い父母負担があることについて、どのように認識しているのか、伺います。

回答1 憲法第26条第2項によって、「義務教育は、これを無償とする」ことが定められています。同条項の無償とは、最高裁判決において、「授業料不徴収の意味と解するのが相当であり、その他教育に必要な一切の費用の無償を定めたものではない」とされています。なお、義務教育諸学校において保護者の負担する教育費に対する支援については、区市町村がその責任において、適切に判断するものと考えます。 Q2 義務教育における都内公立学校の保護者の教育費負担について、入学時に購入すべきもの、学校に納める教材費・給食費など、すべての教育費を合計すると、小中学校それぞれ何円になるのか伺います。保護者が負担しているすべての教育費について具体的に調査していますか。いなければ調査すべきですが、いかがですか。

回答2 保護者が負担する子供の学校教育及び学校外活動のために支出した経費を文部科学省が隔年で調査をし、その結果を公表しています。最新の平成24年度調査結果によると、保護者が負担する1年間の経費は、全国公立小学校で児童一人当たり305,807円、全国公立中学校で生徒一人当たり450,340円となっています。

杉並区では憲法の義務教育無償原則にのっとって、小学生全員に学校で一括購i入するドリル等の教材費約8,800円、中学生には全員に修学旅行費3万円を補助しています。
Q3 憲法に基づき、また経済的理由で修学旅行に行けない子をなくすためにも、都として小学校のドリル代や、中学校の修学旅行への補助をすべきと考えますが、見解を伺います。

回答3 学校教育法第19条において、経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、.区市町村が必要な援助を与える旨、定められており、区市町村がその責任において、適切に実施するものと考えます。

Q4 経済的理由で就学が困難な家庭を支援する就学援助制度の準要保護世帯の国庫補助の復活が、区市町村の制度拡充にとって欠かせません。国に対して、国庫補助の復活を求めるべきと考えますが、いかがですか。

回答4 就学援助は、学校教育法により、区市町村にその実施が義務付けられており、その権限と責任において適切に実施するものと考えます。平成17年度に「就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律」が改正され、準要保護者に対する就学援助については、地方の実情に応じた取組に委ねることが適切であるという国の判断から国庫補助が廃止され、国から区市町村へ税源移譲されました。このため、都教育委員会は、国に対して準要保護者への国庫補助金の復活を求めることや、区市町村に対して準要保護世帯の所得枠の拡大に伴う支援を行うことなどの対応は考えていません。

 当面、都として「教育の機会の平等を保障するためのセーフティーネット」として、区市町村が準要保護世帯の所得枠を拡大できるよう、支援を求めるものです。
Q5 「消費税増税で、給食費も上がり大変」等の声が上がるほど、毎月の給食費の負担も大変です。東京産の農産物などが学校給食に提供されています。東京の農業、漁業、畜産業振興の立場からも、都が補助・連携して学校給食の食材として供給し、給食費の父母負担を引下げることを求めます。いかがですか。

回答5 都は、平成23年度に「とうきょう元気農場」を開設し、そこで生産した農産物を農地の無い区などの学校給食へ供給しています。また、学校給食法では、学校給食は学校の設置者が実施し、食材費等の学校給食費は児童又は生徒の保護者が負担することとされています。区市町村立小・中学校における学校給食費は、学校設置者である区市町村が、地域の実情や特性を考慮して決定しており、学校給食費の改定や就学援助を含む保護者負担の軽減策等についても、区市町村の判断により行われています。

 高等学校では、授業料や教科書代なども含め、すべてが保護者の負担になります。授業料は保護者の一・方が働き、子どもが2人いるモデルの世帯では、おおむね年収910万円未満の場合には、国の就学支援金制度で年額11万8800円(全日制課程)の公立高校授業料相当額等が支給されますが、教科書等の教育費は基本的にすべて保護者の負担で、重いものになっています。
Q6 都立高校における教育費の保護者負担が重いことについての認識を伺います。

回答6 高等学校教育においては、授業料や教科書代は保護者の負担とされていますが、都教育委員会は、経済的負担の軽減を要する保護者に対し、必要な支援を行っています。具体的には、平成26年度から全国の公立高等学校の授業料に適用された就学支援金制度にっいて、都立高等学校においても適切に実施しています。また、就学支援金制度の対象とならない生徒で、経済的理由で授業料を納付できない生徒には、都独自に授業料を減免しています。さらに、国は、平成26年度から新たに、低所得世帯の経済的負担の軽減を目的として教科書及び学用品等に充てるための給付金を支給する奨学のための給付金制度を設けており、都教育委員会においてもこの制度を適切に実施しています。

Q7 都立高校で保護者が負担している教育費が、教科書、副教材、制服、校外活動など、それぞれどれだけかかっているか調査すべきと考えますが、いかがですか。

回答7 保護者が負担する子供の学校教育及び学校外活動のために支出した経費を文部科学省が隔年で調査をし、その結果を公表しています。最新の平成24年度調査結果によると、保護者が負担する1年間の経費は、全国の公立高等学校全日制課程で生徒一人当たり386,439円となっています。なお、平成24年度の公立高等学校授業料は全ての学年で無償化の措置が取られていたため、上記金額に授業料は含まれていません。

 教科書代や副教材費は、使用する教科書の種類などにより学校ごとに差があります。しかし、ある学校では前期だけでも2万円以上になり、負担軽減は切実です。
Q8 子どもたちの学ぶ権利を保障するために、高等学校の教科書代を、都として補助することを求めます。

回答8 高等学校教育においては、平成26年度から、就学支援金制度の改正に併せて低所得世帯の経済的負担を更に軽減する目的で、国が、奨学のための給付金制度を新たに設けました。この制度は、国公私立高等学校等に通学する生徒で、生活保護世帯又は住民税所得割額の非課税世帯を対象に教科書及び学用品等に充てるための給付金を支給するもので、都が所要経費の3分の2を負担しています。

Q9 合わせて高校就学支援金の所得制限の撤廃をはじめとする拡充を、国に求めるべきです。いかがですか。

回答9 平成26年度の高等学校等就学支援金の支給に関する法律の改正により、就学支援金制度に所得制限が導入されました。その趣旨は、所得制限を設けることで捻出された財源を低所得世帯への支援の充実や奨学のための給付金制度の創設などに充てることによって、低所得世帯の生徒等の高等学校教育に係る経済的負担をより軽減することです。このため、国に対して所得制限の撤廃を求めることは考えていません。

 経済的に困難をかかえる子どもの学ぶ権利を保障する上でも、給付制奨学金の拡充が求められています。
Q10 子どもたちが安心して学べるようにする上でも、都として高校でかかる教育費に相当する金額に拡充することや、所得制限の上限を拡大するなど、現行の奨学給付金の拡充を求めるものですが、いかがですか。
 親の経済力にかかわりなく、誰もが安心して教育が受けられるよう、高等学校卒業まで、教育費の負担を基本的になくす方向で、都として軽減していくことが求められています。 回答10 都立高校においては、奨学のための給付金により教科書や学用品等に係る費用が給付されることで、低所得世帯の生徒等の高等学校教育に係る経済的負担の軽減が既に図られています。したがって、奨学のための給付金制度の給付額及び所得制限の上限額を拡大することは考えていません。