2015年第三回都議会定例会文書質問趣意書 10月5日

白石たみお(品川区選出)

35人学級の拡大について

 35人学級について国は、2011年の法改正により小学校1年生で実現し、翌12年度には財政措置により小学校2年生まで拡大しました。しかし、2013年度から現在まで、3年生以上の学年への35人学級の拡充は見送られてきました。教育現場では、いじめや不登校への対応をはじめ、発達障害などさまざまな要因により手厚い対応を必要とする子どもたちが増えています。きめ細かな児童・生徒への対応のためには現行の40人学級よりクラスサイズを小さくすることが必要だということは校長・教職員・保護者など関係者が一致して求めています。小中学校すべての学年で少人数学級を実現することは喫緊の課題となっています。
 国が消極的な姿勢を取るもとでも、独自に少人数学級を拡大する自治体は、全国に広がっています。文科省の資料によれば、2014年度には11県が少人数学級を拡大しています。そのなかで新たに秋田県と山梨県が義務教育である小学校から中学校の9学年すべてを少人数学級にしました。さらに今年度は、例えば新潟県が小学6年生と中学2・3年生に35人学級を拡大し、福井県では唯一残されていた小学4年生、滋賀県では小学5、6年生が35人学級となり、義務教育すべての学年で少人数学級が実現しています。
 少人数学級を拡大している自治体では、「児童1人1人の発表の機会が増えたので、学習意欲が向上した」「生徒の変化に速やかに気付き迅速に対応することが出来るため、いじめや不登校などの問題行動の早期発見が可能となった」など、少人数学級の効果が報告されています。

Q1 都は少人数学級の重要性をどのように認識していますか。また、他県が着々と少人数学級を拡大していることについて、どのように認識していますか。それぞれ伺います。

回答1 義務教育における学級編制の在り方は、教育の機会均等や全国的な教育水準の維持の観点から、国の責任が大きいと考えます。なお、各道府県は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の規定にのっとり、それぞれの地域の実情を考慮して学級編制基準を定めているものと考えます。

 都内の小学校の子どもを持つお母さんは「2年生までは26人のクラスで教室もゆったりして子どもたちも落ちついていた。ところが3年生になったらいきなり40人になり、本当に大変だ。早く35人学級を実現してほしい。35人でも多いと思う」と語っています。また学校の先生は「授業は45分間なので、35人なら1人1分ずつ話しても、導入やまとめを入れて、時間内に収めることが出来る。40人だと全員は話せない。小さなことのようだが、この違いの積み重ねは大きい」「過敏に反応してしまう発達障害の子どものために、低刺激の環境をつくりたいが、人数が多ければその分教室は騒がしくなってしまう。教師は日頃から余計な刺激をっくりださないよう、教室の前の壁の掲示物を減らすなど配慮している。少人数学級は発達障害の子どもにとっても学びやすい環境につながる」と話します。校長会・副校長会からも35人学級の拡大をしてほしいという要望が上げられています。

Q2 都は、このような保護者や現場からの声をどのように認識しているか伺います。

回答2 都教育委員会は、小1問題及び中1ギャップの予防及び解決のため、小学校第1学年、第2学年及び中学校第1学年において、学級規模の縮小とティーム・ティーチング等の活用を各学校の実情に応じて選択できる柔軟な制度を平成22年度から順次導入してきました。なお、指導の充実のためには、少人数学級だけではなく、教科により学習集団を分ける少人数指導を適切に実施していくことが重要であると考えます。

Q3 この間、都教委は35人学級の拡大について「学級編成のあり方は、国の責任が大きい」として都独自で35人学級を拡大することを避けて来ました。都民の要望にこたえ、東京都も独自に35人学級を小学校3年生以上に拡大することを求めますが、いかがですか。

回答3 都教育委員会は、小1問題及び中1ギャップの解決のため、小学校第1学年、第2学年及び中学校第1学年において35人編制を可能としています。義務教育における今後の学級編制の在り方は、教育の機会均等や全国的な教育水準の維持の観点から、国の責任が大きいと考えており、国の動向を注視していきます。

 都教委は現在、国の加配教員を配置して習熟度別授業を実施しています。
 習熟度別授業を受け持つある小学校の先生は、「習熟度別授業はコンパスの使い方や九九の暗記など、技能を習得するための学習手法としては有効かもしれないが、技能習得だけが学びの目的ではない。子どもが自ら考え、頭を働かせる思考力を育てることも重要です」と話しています。「思考力を育てるには、子ども同士が議論し、学びを言語化することが大切です。理解の早い子どもとそうでない子どもが一緒の教室で学びあう環境は、教えあいや議論が生まれ、新たな気づきの発展につながり、より深まった理解を得られる」とのことです。さらに、子ども同士が学び合う環境はお互いの新しい一面を知る機会となり学級づくりに有効となることも強調していました。
 また習熟度別授業は、2学級を3つのグループに分け、また学校によっては3学級を4つのグループに分けて実施するため「下のクラスに落ちつかない子が集まり、授業が困難になる」「時間割の制約が大きく、教師同士の打合せの時間の確保に苦労する。」と効果を疑問視する声も少なくありません。

Q4 国の加配教員については、国は都道府県に対し少人数学級への活用を認めていますが、都教委は全員を少人数指導のための教員として各学校に配置しています。この国の加配教員を学校や区市町村の判断で、習熟度別授業などの少人数指導だけでなく、少人数学級に活用することを認めるよう求めますが、いかがですか。あえて、縛りをかける必要性はないと思いますが、いかがですか。

回答4 児童・生徒の確かな学力の定着と伸長を図るためには、一人ひとりの習熟度に応じた指導を行う少人数指導が有効であることから、都教育委員会は、少人数指導のための加配を、少人数学級に転用することは考えていません。

Q5 少人数指導は「習熟度ではなく、他の分け方が効果的な場合もある」「せめて1学級2グループに分けるのであれば、煩雑さが減り、人数も半分になるので効果が期待できる」との声に応え、すべての教科で1学級2展開やティーム・ティーチングなど、学校の実態に応じた弾力的な運用を認めるべきと考えますが、いかがですか。

回答5 都教育委員会は、習熟度別指導について、小学校の算数並びに中学校の英語及び数学は、学習集団の編成に当たって、2学級3展開を基本としています。なお、1学年1学級の学校などについて、学校の実態を踏まえた上で、1学級2展開とすることや、単元導入時などに、習熟度別指導とティーム・ティーチングを組み合わせることも認めています。