2015年第三回都議会定例会文書質問趣意書 2015年10月5日

吉田信夫(杉並区選出)

米軍横田基地をめぐる新たな事態について  第3回定例会の代表質問でわが党は、米軍横田基地が単に輸送基地にとどまらず、日米新ガイドライン、安保法制・戦争法のもとで米軍の海外派兵の拠点であるとともに日米共同の軍事作戦の拠点になりつつある危険性の認識をただしました。しかし都は、横田基地は輸送基地であり、オスプレイの配備も「輸送拠点としての機能の範囲内」と答弁しました。これは事実に反するものであり、見過ごせません。

Q1 代表質問で事例として示した米軍特殊作戦部隊と自衛隊の特殊作戦部隊とのアラスカでの共同降下訓練は、横田基地所属のC-130が横田基地から出動して行われたものです。この訓練について都はどのように事実経過を把握していますか。
 この訓練について米空軍の報道では、「大規模な航空基地制圧訓練」だったと紹介し、米空軍のメンバーが「日本国内でもこのような訓練ができればよい」と語ったと伝えています。これは、横田基地とその所属機が単に輸送にとどまらず、特殊作戦部隊の出撃基地としての役割をはたそうとしていることを示しているではありませんか。都はどう認識していますか。

回答1 都は、国に対して、周辺住民に影響を及ぼすような米軍の訓練についての情報提供を求めており、横田基地の部隊が国外で行う訓練等は、その対象ではなく、国から情報は得ていません。横田基地は、輸送部隊が駐留し、西太平洋地域の米軍の空輸ハブ基地としての役割を担っているものと認識しています。

Q2 さらに中谷防衛大臣は、CV22オスプレイの横田基地配備によって「米軍と自衛隊との特殊部隊の間でcv22オスプレイを利用した共同訓練などが可能になる」と国会で答弁しました。この答弁を都としてどううけとめますか。明らかに横田基地が日米共同作戦のための拠点になろうとしているではありませんか。

同答2 安全保障に関することは国の専管事項であり、米軍と自衛隊との共同訓 練など日米の相互運用については、国の責任で行われることと認識しています。

Q3 横田基地における人員降下・パラシュート降下訓練も見過ごせません。福生市が公表している横田基地における米軍の人員降下訓練の情報をみると、2013年は3回のべ10日間でしたが、2014年には11回のべ26日間と急増しています。都は人員降下訓練の実態をどう把握していますか。
 2013年、2014年及び2015年の各年ごとに降下訓練が実施された回数、実施日数、延べ降下人数を示してください。

回答3 国からの事前通告によると、人員降下訓練の回数とその期間の合計は、平成25年は3回で11日間、平成26年は11回で26日間、平成27年は9月末現在で4回、14日間です。なお、事前通告には、降下人員数の情報が含まれない場合があるため、延べ降下人員数は不明です。

Q4 都は、降下訓練の目的を「空輸能力保持」と答弁していますが、2012年1月の人員降下訓練では、防衛省は「テロ攻撃や航空機又は地上戦闘力等による基地への攻撃を想定し、実践的な即応態勢を執ることを目的とする訓練」と説明したと伝えられています。都はどのように報告をうけたのですか。
 さらに2014年の11回もの訓練の目的について、都は、防衛省からどのような報告をうけているのですか。また、人員降下訓練が増加している理由についてどのような報告をうけているのですか。

回答4 国からは、横田基地において、平成24年1月4日から同月6日まで、基地への攻撃を想定し、実践的な即応体制を執ることを目的とする「運用即応演習(ORE)」とともに空中投下訓練を行うとの通告を受けました。個別の人員降下訓練の実施に当たっては、訓練目的の通告はありません。また、年度ごとの回数の増減について、国から説明はありません。なお、横田基地からは、人員降下訓練について、人員や物資を空輸する能力を常に保持することが必要不可欠であり、人員降下及び物資投下訓練は、そのための通常の訓練として行われていると聞いています。

Q5 これまで人員降下訓練に参加した部隊は、沖縄駐留の米陸軍特殊作戦部隊・グリーンベレーなど、横田基地所属以外の部隊が参加しているとの報道がありますが、これまで降下訓練に参加したのはどの部隊だと報告をうけているのですか。報告がなかった場合、都として参加部隊について国や米軍にただしたことはありますか。

回答5 都は、国に対して、周辺住民に影響を及ぼすような米軍の訓練についての情報提供を求めており、横田基地所属以外の部隊が参加しているか否かについては、その対象ではありません。

Q6 CV22オスプレイの横田基地への配備は、横田基地の危険性を高め、かつ基地周辺はもちろん都民、国民の安全を脅かすものです。CV22オスプレイは特殊作戦用であり、外務省は、横田基地配備について特殊作戦飛行隊の新設と説明しています。また中谷防衛大臣は、CV22と特殊作戦部隊について「通常部隊ではアクセス困難な地域に迅速・隠密裏に進出し」「テロの脅威への対処、人質救出など行う」と答弁しています。
 都は配備を予定するCV22オスプレイの任務及び特殊作戦飛行隊の新設について、どのように政府から説明をうけ、認識していますか。また、特殊作戦部隊の任務についてどのように認識していますか。

回答6 国からは、CV-22オスプレイは、各種事態が発生した場合に、初動対応を行う米軍部隊を作戦地域まで輸送することを主な任務としており、横田基地に配備されるCV-22オスプレイは、アジア太平洋地域に所在する米軍の特殊作戦部隊などを輸送するとともに、大規模災害が発生した場合には、捜索救難などの人道支援・災害救援活動を迅速かつ広範囲にわたって行う、との説明を受けています。また、CV-22オスプレイの横田基地配備に伴い、関連要員等から構成される飛行部隊が横田基地に新編される予定と聞いています。米軍特殊作戦部隊は、民間人の救出を含め、対テロ作戦等を行うとともに、災害発生に即応し、被災地に急行することができる、との説明を受けています。

Q7 CV22オスプレイ配備計画発表以降、MV22オスプレイの横田基地への飛来が増加し、横田基地がオスプレイの拠点基地の様相を強めています。福生市発表の情報でみると、今年9月に離着陸があった日は7目で離着陸回数は24回です。2013年1月以降のMVオスプレイの離発着があった日数及び離着陸回数及び24時間前に事前通告があった回数を月ごとに示してください。

回答7 MV-22オスプレイの横田基地への離着陸があった日数、離着陸回数及び24時間以上前に事前通告があった離着陸回数は次のとおりです。

年月離着陸があった日数離着陸回数24時間以上前に事前通告があった離着陸回数
平成26年7月2回8回8回
8月2日8回6回
9月3日6回2回
10月4日11回0
11月1日1回0
平成27年5月3日6回0
6月3日14回0
8月2日7回0
9月7日21回0

Q8 オスプレイの運用について、都は、低空飛行でも原則150m以上となっており日米合意遵守を米国は明言しているとの答弁をしてきました。しかし沖縄県では、2012年10.月から11月に県として飛行実態の調査を実施し合意が遵守されてないことを発表しているではありませんか。しかも米空軍作成の「CV22作戦手順」では飛行高度は最も高い建物から60m、30mと記載されており、防衛省も国会答弁で否定しませんでした。
 都は、沖縄県に調査結果について問合せは行ったのですか。沖縄県の調査結果についてどのように認識していますか。また「作戦手順」について都は承知していますか。「作戦手順」によれば高度150m以上は守られないではありませんか。

回答8 沖縄県と関係市町村が実施したMV-22オスプレイの飛行実態や運用の調査は公表されており、その内容は承知しています。当該調査結果について国は、「これまでのところ日米合同委員会合意に違反しているものがあるとの確証は得られていない。」とした上で、「米軍も、累次の機会に日米合同委員会合意に基づき飛行運用を行っている旨説明しており、政府としても、米軍は当該合意に基づき飛行運用を行っているものと認識している。」との見解を示しています。また、都は「CV-22作戦手順」については承知していませんが、国からは、米側はCV-22の我が国における飛行運用に際しては、MV--22に関する日米合意を含めて、既存の全ての日米合意を遵守することを明言している、と聞いています。

Q9 都民の命と安全を守る立場にたつなら、横田基地を離発着するMV22オスプレイの実際の飛行高度など、沖縄県のように都として調査をすべきではありませんか。

回答9 MV-22オスプレイは、日米合同委員会の合意に基づき運用されることになっており、その遵守状況については、国が責任を持って確認すべきものと考えます。

Q10 横田基地の危険な役割の強化とともに、夜間や休日の飛行、低空飛行が増加し、周辺住民の安全がますます脅かされていることも重大です。都はわが党代表質問への答弁で、横田基地における米軍機の飛行運用について、安全性を確保するため人口密集地等に妥当な配慮を払うとともに日本の航空法の最低高度基準を用いるなど日米合同委員会で合意していると答弁しました。
 しかし福生市が発表している騒音調査結果(熊川1571番地先)では、飛行回数は、2014年度の夜間19時から22時は2342回。22時から7時は前年比1.3倍の202回です。都は夜間及び深夜から早朝にかけての飛行実態をどう把握していますか。具体的に示してください。

回答10 日米合同委員会においては、午後10時から翌午前6時までの時間における飛行等は、米軍の運用上の必要性に鑑み緊急と認められるものに制限され、夜間飛行訓練は任務の達成及び乗組員の練度維持のために必要とされる最小限に制限するとともに、できるだけ早く完了することが合意されています。都は横田基地周辺4か所で航空機騒音の通年測定を行っています。平成25年度に最も騒音発生回数が多かった瑞穂町農畜産物直売所での騒音発生回数は、午後7時から午後10時の間は2,219回、午後10時から翌午前7時の間は115回です。なお、都は環境省の「航空機騒音測定・評価マニュアル」に基づき、暗騒音より10dB以上大きい航空機騒音を発生回数として捉えているため、飛行回数とは一致しておりません。

Q11 「合意」では、「日曜日、日本の祝日並びにその他何かの特別な日」について「飛行訓練を最小限にとどめる」としています。しかし東京都環境局が実施した固定調査結果を見ると、調査箇所のいずれかで2013年度の日曜、休日で騒音があったと報告された日は66日中65日です。内、騒音回数が10回以上の日は20日に及びます。とりわけ休日は平日と同じように60回を超える日もあります。日曜でも10回以上の日は9日ありました。都は、2013年度の日曜、休日で騒音が確認された目が何日で、その内騒音回数が10回以上の日は何日だと認識していますか。

回答11 平成25年度の横田基地周辺地域における日曜・祝日67日中の騒音発生日数は66日で、その内の一日の騒音回数が10回以上の日は21日です。なお、日米合同委員会における、日曜目等の飛行規制の対象は「訓練飛行」のみであり、訓練以外の航空機の飛行は対象となっていません。

Q12 東京都環境局は2010年11月に8日間にわたって横田基地を離着陸ないし旋回した米軍機の航跡と高さを測定しています。この調査結果について伺います。
@飛行航跡の下にある小中学校数はどれだけありますか。
A人口密集地域を旋回していたことが確認されたのではないですか。
B調査結果では196回の飛行が確認されその航跡断面図によって飛行高度が確認できますが、日米合意の高度が遵守されていたのですか。

回答12 平成22年11月に環境局では、航空機騒音から通常の生活を保全する必要がある地域として知事が指定する航空機騒音地域類型指定地域の見直しを検討するための基礎調査を行っていますが、@については、騒音の分布状況をみるために簡易な装置で飛行航跡を描いたもので、正確な飛行経路を確認できる精度で測定していないため、「飛行航跡の下」の学校数は算出できません。なお、横田基地周辺の航空機騒音地域類型指定地域内の小中学校数は、小学校72校、中学校42校です。Aについては、いわゆる住宅街の上空も飛行しています。また、Bの航跡については、日米合意の高度が確認できる精度で測定は行っていません。なお、日米合同委員会合意の飛行高度規制は、離着陸や計器進入の場合は除かれ、また、場周経路も人口稠密地域の上空の飛行をできる限り避ける最善のパターンで設定することが定められています。

Q13 この調査からすでに5年が経過しています。低空飛行の増加や飛行範囲の拡大が指摘されているだけに、再度、米軍機の航跡及び高度の調査を行うべきです。

回答13 平成22年度に実施した調査は、航空機騒音環境基準の改正に伴い航空機騒音地域類型指定の見直しを検討するための調査です。平成23年度以降、都が実施している航空機騒音調査結果において、航空機騒音地域類型指定を見直すような状況は見られないため、平成22年度に実施した調査と同様の調査を実施する予定はありません。

Q14 こうした騒音調査、飛行航跡等の調査結果は、明らかに日米合意が守られていない実態を示すものではありませんか。どう認識していますか。

回答14 国からは、米軍の運用に当たっては、横田基地における航空機騒音の軽減措置や低空飛行訓練に関する日米合同委員会合意について遵守されているものと認識している、と聞いています。

Q15 沖縄防衛局は、沖縄県がオスプレイの運用にあたって、日米合意違反と指摘した事例のうち、22時以降の夜間飛行の3件の事実を確認しながら、「運用上必要でない夜間飛行ではなかった」としています。オスプレイに関する合意では、「運用上必要と考えられるものに制限」「乗員の技能保持に必要とする最小限に制限」などと様々な留保条件がつけられています。日米合意で設けられた制限の枠を超えた運用が確認されても、「運用上必要」などの留保条件を理由に問題ないとされるなら、制限は骨抜きにされてしまいます。都はどう認識していますか。

回答15 米軍の運用に当たっては、地域への影響に妥当な考慮を払って活動すべきことは当然ですが、任務達成や練度維持、安全性の確保などのために必要な飛行もあるため、日米合同委員会合意においては、運用上必要と考えられるものに制限し、周辺地域に与える影響を最小限にするよう努めているものと認識しています。