2015年第三回都議会定例会 文書質問趣意書 10月5日 和泉なおみ(葛飾区選出)

中小企業振興施策について

Q1 東京都が2012年に発行した「東京の中小企業の現状一製造業編」では、2000年から2010年にかけての都内製造業の事業所数、出荷額などが、全国の主要県と比較して、減少幅が大きいという特徴があることを発表しました。今年9月に発表した「東京の産業と雇用就業」でも、同様の指摘をしています。中小製造業の景気状況調査の最近数年間の動向を見ても、改善傾向は見られません。
 知事はこれまで「現場の状況に即した施策を講じ、中小企業の活性化を図る」と述べてきましたが、中小製造業のこうした状況について、どのように認識し、対応するのですか。

回答1 東京の産業活性化に中小企業が果たす役割は重要であることから、都はこれまでも、経営、技術、資金繰り等の様々な面から企業現場の実情に即した支援を行っています。

 小規模企業を中心とした中小企業の事業・技能の持続化支援についてです。
Q2 国は昨年、小規模事業者が激減する中、小規模企業振興基本法を制定し「成長発展」のみならず「事業の持続的発展」を基本原則とすることに大きく舵を切りました。都も、「商工会、商工会議所などと連携し、小規模企業の持続的発展を後押しする」としてきました。
 小規模企業振興基本法を作成してきた小規模企業基本政策小委員会では、小規模事業者の持続的な発展を実現させるためには、「国のみならず、地方公共団体、支援機関、地域住民等様々な主体が、我が国の将来における小規模事業者のあり方を共有し、それぞれの立場で小規模事業者の振興に寄与すること」が大事と言っています。
 中小企業団体からは、中小企業・小規模企業会議の開催、産業政策立案への参画の場を広げる要望があがっています。都は今後、こうした声を受けて、小規模事業者の持続的な発展をどう進めていくのですか。

回答2 都は、中小企業の支援団体と連携して都内6か所に支援拠点を設置し、事業承継等の課題解決を支援するなど、小規模企業者の持続的な発展を図っています。

Q3 今年、大田区がものづくり産業全数調査の報告を発表し、製造業の中でも、メッキなどものづくりの基盤となる分野を担う企業が少なくなっていることを明らかにしました。そして、基盤技術の分野を担う事業者の新たな開拓が困難なことから、「ものづくり集積の低下が危惧される」と警告しています。ものづくりの基盤を担う中小企業の廃業、休業を食い止め、事業承継、そして事業開拓を進めることは、ものづくり産業の集積を維持発展させる上で欠かせない課題となっていると思いますが、どのように認識し、対応するのですか。

回答3 高度で多様な基盤技術を有する東京のものづくり企業は、東京の産業活性化に重要な役割を果たしていることから、都は地域の産業集積の維持・発展を図る区市町村の取組を支援するとともに、相談や専門家の活用等により、中小企業を支援しています。

Q4 中小企業の事業承継を進める上で重要なのは、早い段階から各事業者の現状を把握し、事業継承に向けた相談・支援ができるようにすることです。そのためには、常日頃から業者のところに足を運び、経営状況を把握し、信頼関係もある信用金庫等の地域金融機関と都の連携を強め、情報共有するとともに、中小企業支援機関の専門家などの協力をえて相談・支援を行うことが重要だと思いますが、いかがですか。

回答4 都は既に、地域の金融機関等と連携したセミナーの実施など事業承継に関する普及啓発を行うとともに、円滑な承継に向けて経営の立て直しに取り組む中小企業に対し、各種の専門家を派遣するなどの支援を行っています。今後とも、円滑な事業承継の促進に向け、関係機関と連携し、必要な支援を行っていきます。

Q5 川崎市は、中小企業への出張型ワンストップサービス事業を、10年前から始めました。これは、専門的知見を有する企業OBや民間専門家等のコーディネーターと国、県、市などの各支援機関、地域金融機関等のスタッフがキャラバン隊をつくり直接企業を訪問して、中小企業の要望を聞き、具体的な支援を進めていくというものです。これによって、全国の中でも製造業の減り幅が小さくなったことで、「川崎モデル」と評価されています。
 都としても、国、区市町村、各支援機関、地域金融機関等とともに、キャラバン隊をっくり、中小企業への御用聞きを行うなど、出張型ワンストップサービスを提供できる体制を整備するよう求めますが、いかがですか。

回答5 都は、中小企業の課題解決を図るため、経営面や技術面のアドバイスを行う専門家を企業に派遣する取組を実施しています。

 ものづくりインストラクターについてです。
Q6 都が、生産工程の効率化などを支援する、ものづくりインストラクターの人材育成スクールを設置し、在庫・品質管理の人材育成などを行うことは重要です。都は、今後、どのように具体化するのですか。

回答6 都は、中小製造業の生産性の向上を図るため、生産現場の指導を担う人材を育成する講座を立ち上げることとしており、平成28年度の開講に向けて、カリキュラムを検討するなど、準備を進めています。

Q7 東京の中小製造業は、生産ラインをもった企業が少なく、しかも従業員9人以下の事業所が8割におよび、小規模企業が非常に多いという特徴があります。しかも、都の調査によると、自社製品、新製品を持たないこうした小規模企業でも生産ラインの改善、機械加工する際の仕上がりの精度をそろえる機具等の改善・工夫をおこなっている企業ほど利益率が高いということが明らかです。
 こうした特徴をふまえた配慮や東京独自の工夫が必要だと考えますが、認識と対応を伺います。

回答7 都は、中小企業がそれぞれの実情に応じて生産管理等の仕組みを導入し、生産性の向上を図れるよう、平成28年度に講座を立ち上げることとしています。

Q8 ものづくりインストラクターは、製造業のみならず農業、建設業、サービス業などでも経済効果がでていると報告されています。都は、こうした経験もふまえて、ものづくりインストラクター育成を進めることが重要だと考えますがいかがですか。

回答8 中小製造業の生産性の向上を図るため、都は、生産現場での指導を行う人材を育成する講座を平成28年度に開講し、必要な知識等を体系的に付与することとしています。

 ものづくりとIT技術との融合についてです。
Q9 多くの人、物がインターネットでつながる時代を迎えた中で、ものづくりの現場では、たとえばスマートホンで遠隔操作できる様々な製品の開発をはじめ、生産管理、販売後のメンテナンスなどにも最新のIT技術を活用する動きが急速に広がっています。中小企業にとっては、オリジナルの自社製品やサービスの開発など、大きなビジネスチャンスとなっており、多くの国が支援を強めています。都として、この新しい動きを、どうとらえていますか。

回答9 東京の産業の持続的発展を図る上で、中小企業が最新の技術を活用して新たなビジネスを切り開いていくことは必要と考えています。

Q10 先進事例の紹介、学習・体験できるセミナーの開催、中小企業のものづくりとIT技術を結びつける専門人材の育成、中小企業の人材育成への支援などに取り組むよう提案するものですが、いかがですか。

回答10 都は、最先端の技術動向についての研究発表会や各種技術セミナーを通じて、中小企業に対し情報提供や人材育成等の支援を行っています。

Q11 大学、研究機関との連携へのコーディネート、事業化・製品化への支援など、製品開発から販売に至るまでの一体型支援についてにとりくむよう提案するものですがどうですか。

回答11 都は、意欲ある中小企業が大学や研究機関等と連携して新たな事業に参入する取組への総合的な支援策を検討することとしています。

 中小企業の活性化、技術革新を図る産学公連携支援の抜本的強化についてです。
産学公連携は、中小企業にとって下請け企業からの脱却という展望が見え、あらたな分野への開拓にもつながるなどのことから経営意欲がわき、元気になっています。中小企業団体からは、大学との連携をすすめる上での相談先となる窓口の設立、連携の橋渡し役となるコーディネーターの充実などが要望されています。
 京都府では、すでに10年以上まえに産学公連携機構をつくり、現在、産業界15団体、大学関連25校・機関、5公的機関、6金融機関の計51団体・機関で構成されています。これが、産学公連携を支える基礎となり、コーディネーター交流、文系分野を含めた多面的な連携がすすめられています。
 産学公連携をすすめた場合の支援事業として、試作品開発など研究開発の段階への助成から、生産技術開発段階、設備投資段階など各発展段階に応じて複数年にわたる、一連の助成事業が用意されています。京都府単独の事業としても、地域産業育成産学連携の推進、産学公による研究開発が集まる場づくり、産学公連携による映画・コンテンツ産業推進体制の構築、大学との連i携による老舗の経営の発信、産学公連携機構へのスーパーコーディネーターの配置など、予算、内容も充実しています。
Q12 都内には大学が200程あります。公的研究機関も数多く集積し、その知的資産ははかりしれません。都として、学系機関との連携をすすめるための、相談窓口、マッチングをすすめるコーディネーターの育成・配置、成功事例の紹介など、すすめる機関等を立ち上げることは、中小企業の技術力と大学等との連携を抜本的に強化するにつながるのみならず、民間、行政との連携の上でも、大きなカになると思いますが、どうです か。

回答12 都は既に、中小企業と大学等が連携して行う技術開発の支援や、多摩地域の中小企業の高度な技術と大学の研究成果等を結び付ける事業などを行っています。

Q13 私の地元、葛飾区は東京理科大にある研究戦略・産学連携センターとの産学公連携を進めています。大学には、産学連携のコーディネーターの方がおり、連携を円滑に進める上で重要な役割を担っています。
 一般的には、大学のコーディネーターは、大学に雇用される方が、大学の研究内容について熟知していますが、中小企業については、把握できる立場にありません。しかし、連携をすすめる上では、地域の中小企業について熟知していることが重要です。都として、地域の中小企業について熟知しているコーディネーターを配置する重要性について、どのように認識していますか。

回答13 コーディネーターは、中小企業が他の企業等と連携する上で重要な役割を担っていることから、都は、中小企業の事情を十分に熟知しているコーディネーターを配置しています。

Q14 東京都は、今年3月にクリエイティブ産業の実態と課題に関する調査結果を発表しました。ゲーム、アニメ、映画、デザイン、ファッション、日本料理屋など価格ではなく創造性の付加価値によって市場から、モノ、サービスなどの価値、魅力などが評価される分野の産業とされています。全国の約4割が、都内に集積しています。都は、こうしたクリエイティブ産業について、今後どのように育成、支援していくのですか。

回答14 都では、海外からの評価が高く、大きく成長する可能性があるクールジャパン関連産業について、販路開拓や人材育成の支援を実施しています。

 区市町村では、販売促進に中小企業支援に取り組んでいます。
Q15 たとえば、私の地元、葛飾区では、区内で製造され文房具、生活雑貨、伝統工芸品など厳選した製品を、区が「葛飾ブランド」として認定し、国内外にPR、販売促進することを目的に、展示会を開催しています。最近では、8月末に丸の内で製品販売会を開催しました。葛飾ブランドは、この間、100近い製品が生まれていますが、区内での展示会ではなかなか売れなかったものが、今回の区外での販売促進イベントでは高い銀器や江戸切子が売れたと喜んでいました。広く、うって出れば売上げを伸ばすことができるのではないかと、区、中小業者等に期待が広がっています。
 都として、区市町村の地域ブランド認定製品などの販売促進の取り組みにたいして支援を拡充することは重要だと思いますが、どうですか。

回答15 都は、区市町村が認定した地域ブランドの製品を含め、東京ならではの特色ある製品について、販売やPRに取り組む都内中小企業の支援を開始しています。

コミュニティビジネスについてです。
Q16 将来の地域力向上につながる新しい事業分野として、子育て・高齢者福祉、環境改善、耕作放棄地の再生など地域の課題を地域の住民が主体的に事業をおこし解決しようという取り組み、いわゆるコミュニティビジネスが各地でたちあがっています。都としてそれらの事業を支援することは、地域での様々な課題を解決する担い手が誕生し、地域を元気にする上で重要だと思いますが、都の認識を伺います。  これらの事業の担い手となっている方々は、市民団体、NPO法人、個人の集まりなどさまざまですが、財政基盤が弱いというところがほとんどです。地域金融機関の中には、こうした活動が広がることの重要性から、活動拠点、財政支援を始めている所もあります。行政が支援することの必要性について、都の認識を伺います。

回答16 地域課題の解決を図るコミュニティビジネスの起業を後押しすることは 重要であることから、都は、施設や資金、経営など、様々な側面から支援しています。