2015年 第4回定例会文書質問趣意書 12月10日

松村友昭(練馬区選出)

一、首都直下地震について

 迫り来る首都直下地震による被害想定は、焼失で最大約61万棟,死者最大約23,000人という深刻なものです。
 同時に重要なことは、国の「首都直下地震緊急対策推進基本計画」で、「膨大な人的・物的被害の発生は、わが国の存亡に関るものであるが、例えば、一定の条件下において、建物の耐震化率を100%にした場合、全壊棟数と死者数が約9割減少し、感震ブレーカー等の設置による出火防止対策や初期消火成功率の向上等により消失棟数と死者数が9割以上減少する」とし、「被害を未然に防ぐための予防対策及び円滑かつ迅速な応急対策の備えを計画的・戦略的に進め、"地震に強いまち"の形成を図ることが必要不可欠であり、このために講ずべき緊急対策はあらゆる対策の大前提としての耐震化と火災対策」としている点です。
 わが党もこの立場から、この間、「木造住宅耐震改修促進助成条例」案を提出するなど、繰り返し、住宅の耐震化と感震ブレーカーによる出火対策など求めてきました。
Q1 東京都は、建築物の耐震化について、2012年3月に策定し、14年4月に変更した「東京都耐震改修促進計画」を進めてきました。計画では、住宅については、今年度までに耐震化率を90%以上、2020年度までに95%以上、緊急輸送道路沿道の建築物については、今年度までに耐震化率を100%とするなどを目標としてきました。
 計画に掲げた建築物のそれぞれの現状の耐震化率と目標に対する達成率を明らかにしてください。

回答 平成27年9月末時点における特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化率は80.6パーセントです。
 その他の建築物の耐震化率については、耐震改修促進計画の改定に向けて、現在、集計中です。

Q2 主税局が、国と共に取り組んできた、「耐震住宅促進減免」では、2009年から今年の12月31日までの制度で、今年6月時点までの実績は、建替え減免の件数が1万4,350件、耐震改修減免の件数が1,173件の合計1万5,523件となっています。
 「東京都耐震改修促進計画」では、2012年3月に策定したときは、2015年までに住宅の耐震化率を90%にひきあげるという目標を達成するためには、自然更新以外に、19万100戸の耐震化が必要だとしていました。しかし、耐震住宅促進減免の実績をみても、住宅の耐震化は、計画の方向どおりには進まなかったのではありませんか。

回答 住宅の耐震化率については、現在、集計中です。

Q3 震災のあらゆる対策の大前提が建築物の耐震化であると国あげて取り組んでいる最中に、税の減免による耐震化誘導策の制度を今年で終わらせてはなりません。継続するよう国に要求すると共に、都としても制度を拡充し、23区と同様の減免が出来るよう23区以外の自治体への財政支援を行うよう求めます。同時に、都の直接補助を特定建築物に限らず、都内全域に拡充すべきです。

回答 都はこれまで国に対して地方税法上の減額措置を要求しており、平成28年度税制改正の大綱において適用期限の延長が既に閣議決定されています。
 都の減免制度については、税負担の公平性や税収への影響等を踏まえ、検討する必要があります。
 市町村による税の減免措置については、基本的に課税権を持つそれぞれの自治体が判断すべきと考えます。
 耐震化助成については、国や区市町村と適切な役割分担の下、広域自治体として東京全体の安全性を高める観点から、引き続き、緊急輸送道路沿道や防災都市づくり推進計画に定める整備地域内に的を絞り、重点的に行っています。

 緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化率は、本年9月末で80,6%と本会議で答弁がありましたが、沿道耐震化事業が進まないことの最大の原因は、耐震化が遅れてきた建物の多くが、分譲マンションなど区分所有者の共同所有であり、しかも旧耐震基準時代の建築であることから、居住者の高齢化などにより合意形成がきわめて困難なこと。しかも延べ床面積が大きくなるほど補助額少なくなる制度設計となっているため、区分所有者の数が多い大型の建物ほど補助率が低く設定なるため、さらに改修や建て替えが困難なことがあげられます。
 また、都は沿道耐震化の意義や助成制度の普及啓発のため、マンション啓発隊による訪問活動を粘り強く取り組んできましたが、まだまだ制度が多くの関係者に知られておらず、協力を得にくい状況を脱していないこともあげられます。
Q4 沿道耐震化の促進のためには、全ての建物について、少なくとも9割助成の適用、制度の徹底した普及啓発と、居住者合意のために更なる支援を行うことが必要であり、また、自己負担分についても、長期無利子の融資制度など思い切った支援を検討することが必要と考えますが、いかがですか。

回答 建築物の耐震化は、建物所有者自らがその必要性を認識し、主体的に取り組むことが不可欠です。こうした中、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化は、東京の防災性を向上していく上で高い公共性を有していることから、普及啓発に加え、改修費等への助成を通じて所有者の負担を軽減する取組も既に実施しています。

 震災対策の大前提である、もうひとつの火災対策で、出火防止の感震ブレーカーについてその重要性の認識が高まっています。
 内閣府は、感震ブレーカーのモデル地域を世田谷区で設定して検証実験を始めています。足立区では独自の普及制度を作りました。
 また、区長会も国に対して、「地震による出火の原因となる電気火災等の発生を阻止するため、感震自動消火装置等を備えた火気器具の普及等を推進するとともに、感震ブレーカーの配備に関する補助制度を創設すること」を求めました。

Q5 都としても、こうした動きに応えて、感震ブレーカーの普及促進に取り組むべきです。都としてどのようなとりくみを進めるつもりですか。

回答 大規模地震等に伴う火災被害を防止するためには、出火や延焼を抑制していくことが重要です。
 都では、これまでも木造住宅密集地域の改善に向けた不燃化の取組など延焼防止対策に加え、初期消火力の強化や感震ブレーカー等の普及促進など出火防止対策に取り組んできました。
 今後とも、地震時における火災の被害軽減に向けて、ハード・ソフト両面から対策を推進していきます。

Q6 都も国に対して、感震ブレーカー設備補助制度を求めるべきです。いかがですか。

回答 国は、首都直下地震緊急対策推進基本計画において、国が講ずべき措置として、出火防止対策、発災時の速やかな初期消火、延焼被害の抑制対策等を掲げています。その中で、感震ブレーカー等の普及を加速させ、今後10年間で「延焼のおそれのある木造住宅密集市街地における普及率25パーセントを目指す」こととしています。
 都としては、国による目標達成に向けた普及促進策などその動向を注視しつつ、引き続き、出火防止対策や延焼防止対策を多重的に推進していきます。

Q7 感震ブレーカー普及にしぼったポスター、パンフレット、特設ホームページ作成など広報活動を抜本的に強化すべきだと思いますが、いかがですか。

回答 都では、不燃化に向けた取組に加え、初期消火力の強化や出火防止に向けた普及促進に取り組んでいます。
 具体的には、東京消防庁において、各家庭の防火防災診断に加え、「地震に対する10の備え」を活用し、ホームページ等において火気器具周辺の整理や感震ブレーカー等の設置など出火防止について普及啓発を行っています。
 また、防災関係機関や専門家等の知見なども踏まえ作成した「東京防災」では、出火防止に向けた取組として住宅用消火器や火災警報器、感震ブレーカー等の設置などの取組を「今やろう防災アクション」の一つとして示しており、都内全世帯に配布することで広く普及啓発を図っています。
 今後とも、都民の防災意識を高め、具体的な行動につながるよう、引き続きこうした普及啓発を展開していきます。

Q8 感震ブレーカー設置にとりくむ区市町村に対して都として支援するべきだと考えますがいかがですか。

回答 平成26年末に策定した「東京の防災プラン」では、漏電遮断器や感震機能付き分電盤等の設置などを都民自らが備えるべき取組として記載しています。
 設置促進に当たっては、基礎的自治体である区市町村が地域の実情を踏まえ主体的に取り組むことが重要です。
 都としては、広域的な立場から、広く都民に対して、感震ブレーカー等の設置など出火防止に向けた普及啓発を図ることで、都民の防災意識を高め具体的な行動につながるよう促していきます。

二、豪雨・土砂災害対策について  本年9月の台風18号による鬼怒川など河川の決壊や氾濫をもたらした、記録的豪雨は雨雲の道筋・線上降水帯が「東京の上空だったら都内の主要河川が決壊や氾濫をおこしてもおかしくない」と国交省荒川下流事務所の担当官は語っていました。荒川が決壊すれば、最悪3500人の死者が出るとの想定を内閣府が出していることからも、今後の対策が、絶対手遅れだったなどとならないよう万全の対策が求められます。
 わが党は、第3回定例会で、防災行動を定めるタイムラインの策定を求めたのに対し、知事は整備に向け、検討すると答弁がありました。都内1級河川の氾濫で浸水のおそれのがあるのは、都内28区市町村です。国は、2020年度までにタイムラインの策定を求めていますので、都の積極的なイニシアチブを発揮することを求めます。

Q9 ハード対策としては、荒川は現時点で、「非常に強い豪雨時にこの場所から洪水が起きる可能性がある」と荒川下流河川事務所が指摘している場所は、荒川にかかる都内4つの橋付近で、いずれも橋が障害になって堤防の改良工事ができず、周辺の堤防より1,8m〜3,7m低くなっているところです。
 このうち、京成本線荒川橋については、国交省が2018年度から工事始め、十分な堤防の高さを確保する予定としていますが、残る3つの橋については、未定としています。
 都として国に、早急な対策をとるよう強く求めるべきです。
 また、中央防災会議が2010年4月に公表した、荒川氾濫の場合の地下鉄や地下街対策が極めて重要です。対策はとられているのですか。都は指摘されている管理者などと早急に対応を図るべきです。それぞれ答弁を求めます。

回答 これまで都は、「国の予算編成に対する東京都の提案要求」などにより、国土交通省に対し、国が管理する大河川において既存施設の適切な維持管理や将来の気候変動による影響への対応も視野に入れ、堤防をはじめ治水施設などの整備を着実に実施することを要求しています。引き続き、大規模水害対策を確実に推進することを求めていきます。
 こうした堤防整備などの抜本的な対策に加えて、現在、東京メトロ及び都営地下鉄では、防水扉の設置などが進められています。
 また、都は、地下街において、雨水の浸入を防止する下水道管の増強などを進めるとともに、地下街、地下鉄及び隣接ビルの管理者などからなる協議会を設置し、管理者間で連携した避難誘導体制の整備などに取り組んでいます。

 土砂災害対策も待ったなしです。
 広島北部、伊豆大島の多くの人命を奪った土砂災害の教訓から、都は、「長期ビジョン」で、「大島で発生した土砂災害を教訓に、さらなる対応が求められている」「広島市で発生した土砂災害では、住民の避難行動が遅れたことにより甚大な被害が発生した。このことから、迅速な避難を促す取組が急務となっている」として、ハード対策の着実な推進と住民の警戒・避難体制を支援するソフト対策の推進をうたっています。
 そこで、まず第1に重要なことは、危険箇所を指定して、都民に公表して、周知徹底を図り認識してもらうことです。

Q10 これまで、都内の急傾斜地崩壊危険箇所は2,972箇所と確認され、さらに、都内に約1万5千箇所あるとされる土砂災害警戒区域について約9千箇所を指定し、また、今年9月末までに基礎調査を完了した区域について、いずれも、インターネットで確認できるようにしました。しかし、インターネットに慣れ親しんでいない方には、情報に容易にアクセスできません。都民への周知徹底をさらに進める努力が必要だと思いますが、都としてどのように考えていますか。

回答 急傾斜地崩壊危険箇所等の土砂災害危険箇所及び土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等については、ホームページで公表しているほか、都庁や所管の建設事務所、地元区市町村等で閲覧できるようになっています。あわせて、関係住民に対しては、区域指定後に区市町村が各戸に配布する土砂災害ハザードマップにより土砂災害警戒区域等が周知されます。
 なお、土砂災害警戒区域等については、基礎調査結果の公表時と区域指定時にプレス発表しています。

Q11 また、警戒区域に指定されたところが、区域ごとのハザードマップを作成することになっていますが、作成に向け、区市町村への技術的支援を行い、安全な避難体制を都民に周知徹底を図るべきです。

回答 土砂災害ハザードマップは、国が定めた指針に従い区市町村が作成することとなっています。都は、指定された土砂災害警戒区域等の地図データ等の技術的情報を提供しているほか、適宜区市町村からの相談に応じています。

 第2は、安全に逃げる場所の確保です。
Q12 都は、警戒区域内に避難所、災害時要援護者がいる施設の周辺で、土砂災害対策を進めていますが、進捗状況を明らかにしてください。一番大事なことは、いつ起こってもいいように、安全に逃げる場所の確保、どこに逃げたら安全化を再検証し、都民に示すべきです。

回答 西多摩地域等において、土砂災害警戒区域等に存在する46か所の避難所のうち、40か所については代替となる新しい避難所が確保され、残る移転が困難な避難所6か所においては、砂防事業や急傾斜地崩壊対策事業を実施しており、これまでに3か所で完了しています。
 また、要配慮者利用施設が存在する土砂災害警戒区域等2か所において、砂防事業を実施しています。
 避難所及び避難経路の指定など、警戒避難体制の整備は区市町村の役割であり、都はハザードマップ作成への技術的支援などを行っています。

 第3は、その上でハードの予防対策です。
Q13 急傾斜地崩壊危険個所のうち特に危険度の高い、49か所の工事完了にとどまっています。残りの危険個所も具体的にどういう対策が必要かを区市町村とも連携して明らかにし、現在の都急傾斜地対策事業のテンポをあげて一気に推進する必要があります。同時に、新たに指定される崩壊危険区域についてのハード対策も、区市町村レベルへの対策への助成を都として設置し進めなければ全都的には進みません。
 崖、擁壁の安全対策について、新宿区をはじめ、6区で助成制度を実施していますが、都としての支援、まず多摩地域への助成制度を設置するよう求めます。

回答 急傾斜地の安全対策については、原則として所有者、管理者等が行うものであることから、都は、急傾斜地法に基づき、土砂災害のおそれのある自然斜面において、所有者等による対策が困難な場合に、区市町村の要望を受け、急傾斜地崩壊対策事業を実施しています。
 土砂災害警戒区域等に指定された急傾斜地のハード対策についても、上記の条件を満たす場合に急傾斜地法に基づき、実施しています。

回答 昭和55年に修正した東京都地域防災計画では、崖、擁壁などの崩壊防止対策は、原則として所有者や管理者などが行うべきものとしており、都は、建築基準法に基づく建築確認や、宅地造成等規制法に基づく規制区域内における許可などの機会を捉えて、安全確保のための規制指導に努めることとしています。
 この内容は、現行の地域防災計画に継承されており、都は、所有者や管理者に対し、宅地の保全や災害の防止のために必要な措置を執るよう指導を行っています。

Q14 地すべり対策事業は、危険個所のうち31カ所の対策が取られていません。どのような安全化を図るのですか。
 土石流対策でも、砂防指定地の、現在までの砂防ダム完成進捗率は39%です。近年事業費は伸びてきているとはいえ、砂防事業費は道路整備と比べればほんのわずかな額です。予算を大幅に増額し、ペースアップ捨て進めるべきです。それぞれ答弁を求めます。

回答 地すべり対策事業は、地すべり等防止法に基づき、地形的に地すべりのおそれのある箇所を地すべり防止区域として指定し、地すべりを誘発するおそれのある行為等を規制するとともに、対策工事を実施するものです。現在都内には地すべりのおそれのある箇所が43か所あり、このうち現地調査の結果、変状が確認された13か所を地すべり防止区域に指定し、そのうち12か所で対策事業が概成し、1か所で事業を実施しています。残る30か所については定期的に現地確認を行い、変状が認められた場合は、必要に応じて対策を実施していきます。
 また、土石流対策も含めた砂防事業については、土石流の危険性の高い箇所や過去に災害が発生した箇所において、これまで砂防えん堤227基、流路工77.7kmを整備しており、着実に取り組んでいます。