2016年都議会第1回定例会 一般質問(全文) 2月24日

米倉 春奈(豊島区選出)

高齢者福祉について
若い女性への支援について
18歳選挙権について
答弁

 はじめに、高齢者福祉について質問します。

 民間団体の日本創成会議が、豊島区を、人口減少の進行で、将来消滅する可能性がある都市としたことは、区民に大きな不安を広げています。同会議が、東京圏では今後、医療介護施設の不足が深刻化するとし、高齢者の地方への移住促進を提言したことについて、舛添知事は、消滅可能性都市という非常にセンセーショナルな話がでてきたけれども、地方に移住しろというのはいかがなものか、もう少し、一人一人の人生というものをよくわかった上で提案してほしい、と述べています。このご意見に私も賛成です。
 高齢になり介護が必要になっても、住みなれた街に住み続けたいというのが、多くの都民の願いです。この願いにこたえるために全力を尽くすのが、都知事の責務だと思います。知事は施政方針で、「年をとっても安心して暮らしていける環境の整備に全力をあげていく」と述べました。そのためには、地価の高い23区であっても、身近な地域に、特別養護老人ホームや認知症グループホーム、小規模多機能などの地域密着型施設をはじめとした介護基盤整備をすすめること、そして、医療・介護・看護などが連携した地域包括ケアの整備を進めることが重要ですが、知事、いかがですか。

 とりわけ老老介護の実態は深刻です。豊島区の調査によると、介護する人の4割以上が75歳以上です。私も、80代の女性から、90代の夫を介護していて、「このままでは2人で倒れてしまいそう」と訴えられました。都内で今後、さらに増えていくと見られる老老介護の実態について、都はどう認識していますか。そして今後、どう対応するのですか。

 とくに要望の強いのが特別養護老人ホームの増設です。豊島区では、昨年9月末時点で472人の待機者がいます。区内の60代の女性は、父親の病気の看病をしながら、母親の介護をしていましたが、やむなく母親には都外の有料老人ホームに入ってもらいました。仕事もあるなか、片道1時間半かけて母親の所へ行くのは、1ヶ月に1度がやっとだそうです。区内の特養ホームに入れれば、買い物のついでに訪ねることもできるのにと、切なそうに話していました。23区内でも住み慣れた地域に特養ホームの整備が進むよう、さらなる対策の強化が必要だと思いますが、認識と対応を伺います。

 区市町村が購入した土地に特養ホームを建てることは、有力な方法の1つです。東京都は、区市町村が自らの土地を活用し、かつ建築費への補助を行って特養ホームを整備した場合、建築費の2分の1を補助しています。これは区市町村の取り組みを支援する重要な事業です。さらなる拡充を求めますが、いかがですか。

 福祉施設整備に向けた土地確保が困難ななか、空き家や空き地の活用を進めることが重要です。知事は施政方針で、「空き家も、都市のストックとして有効に活用できれば、地域の活性化に役立てることができる」と言いました。また、都が設置している地域包括ケアシステムのあり方検討会議でも、空き家を医療・福祉拠点等の整備に積極的に活用することが議論されています。福祉施設整備に向けた、空き家の活用も重要だと思いますが、知事はどう認識していますか。また、今後どう推進するのですか。

 空き家活用にも役立つ取りくみとして、土地や建物のオーナーと福祉の事業者を結びつけるマッチングが重要になっています。世田谷区は2013年12月から保育園整備のためのマッチング事業を行い、これまでに33件がまとまりました。この事業は地域密着型サービスなどの整備促進でも効果が期待でき、豊島区では、日本認知症グループホーム協会と協力してマッチングを行なう新たな取り組みを実施しようとしています。都としても、区市町村と協力して、こうしたマッチング事業をすすめる必要があると思いますが、いかがですか。

 住み慣れた地域で生を全うできるようにする地域包括ケアのカギとなるのが、14年度から新たにスタートした機能強化型訪問看護ステーションです。訪問看護ステーションは小規模事業所がほとんどで、24時間対応や重症患者への対応が困難です。地域全体の訪問看護の強化のため、人材育成や、住民への情報提供、相談などにも応えられる機能強化型の訪問看護ステーションが必要となっています。しかし、私の地元、豊島区にはありません。
 栃木県では、機能強化型を新たに取得する訪問看護ステーションに対し、補助をおこなっています。東京都はこの機能強化型訪問看護ステーションが果たす役割をどのように認識していますか。また、どのように整備をすすめていくのですか。

 次に、若い女性への支援についてです。

 日本には、18歳以上の若者に対する福祉政策や社会保障がほとんどありません。子ども・若者育成支援推進法が制定され、ようやく若者への公的支援の仕組みづくりが始まりつつある段階です。同時に、男女平等ランキングで日本は145カ国中101位という遅れた状況で、女性が経済的にも社会的にも自立して生きていける環境は、まだまだ整っていません。非正規雇用の割合は男性より高く、年収も男性より低くなっています。今月、都が発表した「東京都女性活躍推進白書」でも、大卒女性で非正規雇用になった人数は、男性の2倍。正規で雇用されても、総合職に採用される女性はたったの2割で、8割が一般職で採用されると指摘しています。事実上の男女差別にさらされています。
  国連の女性差別撤廃委員会でも、こうした問題についての日本政府の取り組みの遅れが厳しく指摘されています。若い女性は、2重の困難を抱えているのです。知事は、こうした性別による格差を要因とした女性が抱える問題を、どうとらえていますか。

 さらに、若い女性は様々な暴力にさらされやすく、追い詰められる状況がうまれています。都の補助事業で行われた調査でも、10代、20代の女性の3人に2人は、なんらかの性暴力被害にあい、被害者の半数が自殺念慮を抱いていることが明らかになりました。虐待も増加しています。
 そうしたなかで、都の女性相談センターの保護原因も「居所なし」、つまり家がない、あっても家に帰ることができない女性が、この8年間で2倍に増えているのです。しかし、こうした助けが必要な若年女性たちの多くが、保護や支援につながっていません。広域自治体として、都が実態を把握し、支援団体や婦人相談員をはじめとした専門人材、専門機関、区市町村と連携した、効果的な支援策を検討していくことが求められています。

 荒川区は、若者支援団体に委託した「若年世代の自殺予防相談事業報告書」をまとめています。こうした報告を、今後の支援に生かしていくことが重要です。報告書には、若者、特に若い女性の相談では、家族の問題や虐待、性被害、DV被害、自殺願望、生活苦など、さまざまな深刻な問題が背景にありながら、それを自覚して言葉で伝えることがなかなかできないこと、そのため長期的な対応が必要な傾向があり、解決のためには多くの専門機関との連携が必要になることが、指摘されています。こうした報告書の分析を、都はどう受け止めていますか。

 青少年問題協議会の議論などでも指摘されているように、「困っている子の一番の困りごとは助けてといえないこと」で、「児童相談所でも警察でも、助けてくださいと大人に理解されるように整然と話せない」のです。窓口の設置だけでなく、アウトリーチ相談活動も活用し、こうした若者たちに寄り添い、同じ目線で話を聞き、どういう支援が必要かを判断し、行動することが必要だと思いますが、いかがですか。

 また、ネットカフェなどに寝泊りしながら不安定な就労を行っている若い女性も数多く存在します。このような住む場所や仕事がないといった困難を抱えている若者たちに対して、アウトリーチ活動により適切な支援策につなげることが必要だと考えますが、都の取り組みを伺います。

 若年女性をうけとめる居場所にも課題があります。私が聞いた17歳の女性は、もうすぐ18歳になるからと年齢を理由に、児童相談所の支援につながりませんでした。また、親から虐待を受けてきた方にとっては親世代の大人がいる婦人保護施設は怖くて入れなかったり、自己肯定感が低く、人からの影響を受けやすい若年女性にとって、年齢や経験の違う女性たちと一緒になる施設はしんどいという声が、支援団体から上がっています。若い女性がここにいていいんだと思える居場所が必要です。女性保護の施設についても、保護を求めて直接、駆け込んでくる女性がいても、行政の窓口を通さなければ入れないために、緊急一時的な受け入れができません。
 東京都社会福祉協議会の婦人保護部会でも、こうした、「現状の制度・施策からこぼれおちている若年女性に対し、施設種別の枠組みを超えて、支援に取り組む必要がある」「居場所づくりが緊急の課題となっている」と提言しています。この提言を、都としてどう受け止めるのですか。また、都としての対応が求められますが、見解を伺います。

 最後に、18歳選挙権についてです。

 知事は施政方針で、「若い世代から大いに声を上げ、東京と日本の将来のために、積極的に社会に関わってほしいと期待している」と述べました。18歳選挙権を機に、高校生をはじめ若者の政治への関心と政治参加を大いに促進し、自分で考え、他の人たちと意見をかわし、行動する、主権者としての成長をはかることが、民主主義を成熟させていくための重要な課題だと思いますが、知事の認識を伺います。

 今、多くの若者、高校生が、戦争法反対など政治について真剣に考え、行動しています。文部科学省は、高校生のデモや集会参加を届け出制にすることも可能としましたが、教育委員会や学校がこうした権利侵害や、活動を制限、萎縮させるような規制は行うべきではありません。このことを主張して質問を終わります。

以上

【答弁】

〇知事 米倉春奈議員の一般質問にお答えいたします。  まず最初に、介護基盤の整備と地域包括ケアシステムの構築についてでありますけれども、現在、都は、地域包括ケアシステムの構築に向けまして、介護サービス基盤の整備、在宅療養や認知症対策の推進など、さまざまな取り組みを実施しております。来年度予算案でも、多様なみとりの場の確保など、都独自の先駆的な施策や介護施設の新たな整備促進策を盛り込んでおりまして、今後とも、大都市東京にふさわしい高齢者施策を展開してまいります。

 続きまして、空き家の活用についてお話ありましたが、おっしゃったように空き家も都市のストックとして有効に活用できれば地域の活性化に役立てることができます。現在、福祉施設では、認知症高齢者グループホーム等の整備に空き家を活用する場合に、改修費の補助を行っております。また、来年度予算案には、児童養護施設退所者等の住まいの確保策とか、介護職員の宿舎借り上げ支援策を盛り込んでおりまして、こういう政策も空き家活用の一つでございます。

 それから性別の違いによる格差についてご質問ございましたけれども、東京の発展のためには、女性の活躍が重要でございます。一方で、女性が置かれている状況はさまざまでありまして、ご指摘ありましたように就職や就業あるいは家庭において問題を抱えている女性がいることは十分承知をしております。これまた引用してくださいました女性の活躍推進に向けて先般策定しました東京都の女性活躍推進白書で示しました、この取り組みの方向性に基づいて着実に施策を展開してまいりたいと思っております。

 最後に、選挙権年齢の引き下げと若者政治参加についてご質問ございましたけれども、将来を担う若い世代が選挙を通じて社会に適切に参加していくことは大いに意義のあることだと思っております。政治や社会のあり方などに関心を持って、みずから学ぶことなどが期待されております。
 一方、有権者として正しく権利を行使するためには、公職選挙法上のルールなどを理解することが重要であります。教育現場での主権者教育等も充実させていく必要があると考えております。
 今後とも、都選挙管理委員会や都教育委員会など関係機関と連携しながら、的確切な対応を行っていきたいと考えております。
 そのほかの質問につきましては、関係局長が答弁をいたします。

〇福祉保健局長 八点のご質問にお答えをいたします。
 まず、要介護高齢者への対応についてでありますが、平成二十二年時点で、都内には、世帯主が六十五歳以上の夫婦のみの世帯が約五十万世帯あり、今後、高齢化の進展によりさらに増加していくと推計されております。また、高齢化に伴い介護需要の増大も見込まれております。
 こうしたことを踏まえまして、昨年三月に策定した東京都高齢者保健福祉計画では、介護サービス基盤の整備、在宅療養や介護予防の推進などを重点分野に位置づけ、現在さまざまな施策を進めております。
 今後とも、大都市東京にふさわしい地域包括ケアシステムの構築に向け、施設サービスと在宅サービスの整備をバランスよく進め、家族介護者支援や地域住民等と連携した見守りに取り組む区市町村を支援してまいります。

 次に、特別養護老人ホームの整備促進についてでありますが、都はこれまで、高齢者人口に比べ整備状況が十分でない地域において、特別養護老人ホームの整備が進むよう、補助単価を最高一・五倍にまで加算するなど、都独自の支援策により整備を進めてまいりました。来年度はさらに補助単価の加算要件を見直し、加算対象となる地域を大幅に拡大するなど整備を促進してまいります。

 次に、区市町村の所有地を活用した特別養護老人ホームの整備についてでありますが、都は、特別養護老人ホームの整備を進めるため、都有地の減額貸付や、土地賃借料の負担軽減、整備率が低い地域の整備費補助単価に対する加算、建築価格高騰に対する加算など、さまざまな独自の支援策を講じております。
 区市町村への支援は、区市町村がみずから所有する土地を、住民だけでなく広く都民が利用できる施設のために整備することから、区市町村独自の整備費の二分の一を最大一億六千万円まで包括補助事業で支援しているものでございます。

 次に、地域密着型サービスの整備についてでありますが、地域密着型サービスは、区市町村が指定権限を持ち、みずから策定する計画に基づき整備を進めるものであり、地域の実情に応じた取り組みが行われております。
 都は、区市町村が進める地域密着型サービスの整備を支援するため、国制度による補助に加え、都独自の補助を実施しております。

 次に、機能強化型訪問看護ステーションについてでありますが、訪問看護は、高齢者の在宅療養生活を支える重要なサービスであり、医療と介護の連携のかなめとなっております。訪問看護ステーションは、その拠点であり、二十四時間対応、ターミナルケア、重症度の高い患者の受け入れなどを行う機能強化型訪問看護ステーションは、診療報酬制度の中で評価をされております。
 都は、機能強化型も含め、訪問看護ステーションの運営を支援するため、訪問看護師の人材育成を行う教育ステーション事業や、管理者、指導者向け研修、事務クラーク配置の支援などを行っております。

 次に、若者の自殺予防に向けた支援についてでありますが、自殺の背景には、経済、社会問題、健康問題など、さまざまな要因が複合的に絡み合っており、若者の自殺の要因は、親子関係の不和、男女関係、病気の悩みなどが多い要因でございます。そのため、相談に当たりましては、一人一人が抱えている問題にきめ細かく対応する必要があると認識しております。
 都は、関係機関や民間団体の協力を得て、こころといのちの相談・支援東京ネットワークを構築し、若者がどの窓口を訪ねても、悩みに応じた相談支援に円滑につなげる体制を整備しており、今後とも、関係団体と連携して若者の自殺予防対策を進めてまいります。

 次に、困難を抱える若者への支援についてでありますが、都は、ネットカフェなどに寝泊まりしながら不安定な就労している方を対象に、支援拠点であるTOKYOチャレンジネットにおいて、生活、居住、就労に関する相談援助や資金貸付などの総合的な支援を行っており、女性の利用者には女性の相談員を配置するなど、相談しやすい環境づくりにも努めております。また、支援を必要とする若者等にこの事業を周知し、必要な支援につなげるため、リーフレットやポケットティッシュなどをネットカフェ等で配布するとともに、渋谷、新宿等の繁華街やその周辺において巡回相談を実施しております。

 最後に、若年女性の保護についてでありますが、保護が必要な女性がその状況に応じた適切な支援が受けられるようにするためには、関係機関が連携して対応することが重要でございます。
 都におきましては、区市町村等と連携し、原則といたしまして、十八歳未満は児童相談所、十八歳以上は女性相談センターで一時保護を行っており、二十未満の場合には、子どもシェルターも活用をしております。
 また、その後の自立に向けては、必要に応じて自立援助ホームや婦人保護施設などの利用につなげております。
 今後とも、保護が必要な女性の状況に応じ、関係機関と連携し、適切に支援してまいります。

〇青少年・治安対策本部長 若者への支援についてですが、都では、社会的自立に困難を有する若者等の相談窓口として、東京都若者総合相談、若ナビを運営し、電話やメールでの相談のほか、気軽にカフェで相談できる面接相談を実施しております。
 また、若ナビを多くの若者に利用してもらえるよう、大学の食堂におけるトレイマット等を活用した広報に加え、今年度からは、卒業を控えた高校生等へリーフレットを配布するなどの普及啓発を行ってまいります。