2016年 第1回定例会 最終討論  3月25日

かち佳代子(日本共産党・大田区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第1号議案、平成28年度東京都一般会計予算外29議案に反対し、議員提出議案第3号、東京都公衆浴場振興条例ほか1議案に賛成する立場から、討論を行います。

  安倍内閣の大企業がもうければ国民のふところも潤うという間違った経済政策と社会保障切り下げ、そして消費税増税によって、格差と貧困が広がる中で、都民の暮らしと中小企業はさらなる厳しい環境におかれています。
 今、都政がやるべきことは、国の悪政に対し都民の立場から厳しくもの申すとともに、住民福祉の増進を本旨とする地方自治体の役割を果すため、都民のくらしを応援し、福祉を充実するために全力を尽くすことです。
 しかし、舛添知事が編成した予算案は、編成方針の基本事項から「都民福祉の充実による生活の質の向上」という立場がはずされ、くらし・福祉を守る施策は部分的に前進はあるものの、全体としては極めて不十分であり、「世界一の福祉先進都市の実現」という知事の公約には程遠いものです。

  とりわけ、格差と貧困に苦しんでいる都民に対する経済的支援を充実する立場はきわめて乏しく、多くの都民の切実な願いである少人数学級の推進に背を向け、都営住宅の新設は17年間ゼロ、さらに防災を名目にした道路建設を強硬に推進する一方、住宅の耐震化は軽視され、その助成予算は6割も減額されています。
 わが党は、都民の切実な声にこたえるために、経済的支援の充実を国にもとめるとともに、都としても率先しておこなうよう、強く求めましたが、知事はこの声に応えませんでした。
 たとえば、わが党がとりあげた、子どもの貧困対策についても知事は、国に先駆けて展開すると言いながら、「国がやること」と言って、都としてひとり親家庭などが必要としている経済的支援の拡充や、大学生への給付制奨学金制度創設などに、踏み出そうとしませんでした。子どもの貧困対策推進法でも、国とともに地方公共団体も経済的支援を講ずるとされています。ぜひ実施していただきたいと思います。

  一方、深刻な社会問題にもなっている待機児童解消のための保育園整備では、わが党が独自調査に基いて、整備目標の引き上げと増設テンポの引き上げを求めたことに対し、知事が待機児童の実態調査を踏まえ、検討すると答弁されたことは重要です。多くの認可保育園を短期間に増やしていくためには、公立保育園を増設することが現実的です。同時に、深刻な保育士不足を解消するためには、知事が答弁したように重要な専門職である保育士の待遇を、それにふさわしく引き上げるよう全力を尽くことです。
 また、中小企業対策で、知事から「小規模企業の事業の継続と発展を図ることが、東京の産業振興にとって極めて重要である」との答弁がありました。それにふさわしく、都の小規模企業対策をさらに拡充していくことを求めておくものです。
 都立高校改革推進計画については、立川・小山台・雪谷・江北高校の4校の夜間定時制を廃止する理由は、いずれも納得できる答弁がありませんでした。夜間定時制高校は、さまざまな事情を持った生徒が、通える場所にあることが重要です。だからこそ、2ヶ月で2万人以上の方々から存続を求める陳情署名が寄せられたのです。この声を重く受け止め、一人一人の学ぶ権利をきめ細かく保障するためにも、4校の存続を重ねて求めるものです。

 わが党は、都財政のあり方の問題として、2020年東京五輪の財政負担、都市計画道路の第4次優先整備路線など道路整備の問題を質しました。
 2020年東京五輪の問題で、知事が、都と組織委員会、国で新たな役割分担を決め、従来の責任を超えて、財政投入の意思を示したことは重大です。知事は、新たな事態を理由に「負担が増えないとは約束できない」と答弁しましたが、事業費の全容を都民に明らかにしないまま、新たな負担をひきうけることは許されません。IOCが「アジェンダ2020」で開催都市に対し、大会の運営経費削減を提起していることを、重く受けとめ、削減努力にこそ最大限とりくむべきです。
 道路整備事業については、1200キロメートルもの都市計画道路を事業化すれば、10数兆円もの事業費が必要であり、来年度予算でも2000億円にも及ぶ、際限のない都市計画道路整備の見直しを求めました。ところが、補助92号線のように、荒川区の地元15町会が反対をし、区議会が全会一致で見直しを求める陳情に趣旨採択をし、地元区も強行すべきでないと主張しているにもかかわらず、しゃにむに整備を推し進める立場をあらわにしたことは、断じて許されません。
 日本共産党都議団が提案した予算組み替え提案は、都財政の重い負担となっている幹線道路整備など不要不急の支出を削減して、都民の暮らし・福祉の拡充を図るものです。都民施策の拡充についても、財政の中長期的な安定的運営に十分配慮したものです。残念ながら否決されましたが、この方向こそ、地方自治体としてとるべき方向だと確信するものです。都の予算編成のあり方の見直しを求めておきます。

 わが党が提出した東京都公衆浴場振興条例案は、浴場経営者、関係者、東京都などの努力にもかかわらず、公衆浴場が減り続けている現状に対し、今、条例を制定し、振興計画を策定することなどによって、これまで以上に公衆浴場の振興を計画的、総合的に進めるものです。
 公衆浴場は都民の公衆衛生や健康増進、住民相互の交流など福祉の向上に重要な役割を果すとともに、日本の庶民文化を継承・発信する存在として、その文化的価値を楽しむ人や、スポーツ愛好家、観光客などからも新たな注目が高まっており、それらをふまえた振興策、後継者対策などを行なうものです。

 また、本定例会では、都議会生活者ネットワークと東京みんなの改革、日本共産党の共同で、本年6月に支給される東京都議会議員の期末手当を、平成27年12月の改正前の支給割合に据え置く条例提案をしました。昨今の経済環境の低迷や都民の暮らしの困難を、考慮し、提案したものです。
 両議案に対する各会派のみなさまのご賛同を求めるものです。

 横田基地が出撃基地へとよりいっそうの変貌をすすめる中で、オスプレイ配備の危険性についての認識を質したのに対し、知事は「オスプレイは相当よく改善されている」と答弁しました。しかし、わが党が指摘したように、ここ1年半で3回も重大事故が発生し、事故率もはねあがっているのが実態です。都は、米国が公表していないとして、事実を直視しようとしませんが、構造的な欠陥をもつオスプレイは、安全性を確保するのが極めて困難なのです。都民の命と財産を守る自治体の長として、国とアメリカ政府に対し、横田基地へのオスプレイ配備と基地機能強化をやめること、整理・縮小・返還を強く求めるべきです。

 先ほど公明党から、国会での質問趣意書などに対する政府答弁を使った発言がありました。
 この政府答弁書は、マスコミからも、時代錯誤の答弁などの声があがっています。わが党は機関紙で答弁書への見解を明らかにし、政府答弁書に対し厳重に抗議し、撤回を要求しているものです。
 「国民が主人公」を一貫した信条として活動してきた日本共産党の綱領には、将来にわたって、社会の多数の人びとの納得と支持を基礎として改革の道を進めることを明記しています。議会の多数を得て社会改革を進めるのが、日本共産党の一貫した方針であり、暴力革命など縁もゆかりもないことを、表明しておくものです。
 実際、公安調査庁は、60年以上にもわたり不当な調査を行っていますが、何ひとつ事実を示すことができていないのです。憲法が保障する結社の自由に対する重大な侵害行為であるとともに、税金の無駄づかいにほかなりません。
 このような発言は、「戦争法」という本質をもつ法律を推進した公明党に対する国民、都民のきびしい批判の前に追い詰められていることのあらわれですが、議会の場を利用して公党を誹謗・中傷することは断じて許されません。
 日本共産党は、安保法制すなわち「戦争法」廃止と立憲主義の回復をめざす野党と市民のみなさんと力をあわせて全力をつくすことを表明し、討論を終わります。