#ESAT-J実施状況調査2025 まとめ(英語スピーキングテスト)
★英語スピーキングテスト議員連盟と4つの市民団体は12月4日、#ESATJ実施状況調査2025の結果を記者会見で発表しました。
- #ESAT-J実施状況調査2025」まとめ(PDF)
- ESAT-Jの都立高入試活用の問題点(PDF)
- 都教委はトラブル詳細の公表と原因調査を(PDF)
- 一向に改善もされないESAT-J(PDF)
「#ESAT-J実施状況調査2025」まとめ
―― 問題点を改善できないことが明らかに――
2025年12月3日
入試改革を考える会
都立高校入試 英語スピーキングテストに反対する保護者の会
都立高校入試へのスピーキングテスト導入の中止を求める会
英語スピーキングテストの都立高校入試への活用の再考を求める元都立高校教員有志の会
中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)の都立高等学校の__
入学者選抜への活用を中止するための東京都議会議員連盟
11月23日(日)に実施された、東京都教育委員会の「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J YEAR3)」について、中学3年生をはじめとする試験の当事者を対象に行ったアンケート調査の結果を報告します。この調査はESAT-J開始以来毎年行い、今年で4回目の実施になります。
昨年の同テストは、機器の不具合や現場対応の誤りにより255人が再試験対象になり、また、試験監督が確保できずに試験当日まで募集する事態も発生し、今年の実施状況が注目されていました。
都教委は23日夜、「会場準備の確認等に時間を要したため、試験終了時刻の遅延が一部の会場で発生した」とのみ発表しました。一方、アンケート結果からは、会場準備が遅れたことにより中学生が昼食もとれないまま夕方まで拘束されたことをはじめ、いくつもの会場で引き続きずさんな試験運営がされ、中学生が多大な被害を受けていることが明らかになりました。
第1回目から続く解答音声が周囲の受験生に聞こえカンニング可能となってしまうことも含め、問題点を改善できず同じ失敗を繰り返すESAT-Jには構造的欠陥があることは明らかであり、公平公正さが求められる都立高校入試への活用は、到底不可能です。
都教委はこれまで、中学生や関係者が不適切な状況をどれだけ証言しようとも「適切に行われた」と強弁し、まともな調査や検証を行ってきませんでした。今回こそ、事態を重く受け止め、客観的事実とその原因を詳細に公表・謝罪し、試験結果の入試活用は中止することを強く求めるものです。
【調査の概要】
- アンケート期間:11月23日(日) 16時 ~ 11月30日(日) 24時
- アンケート対象:中学校3年生や保護者、中学校教員、試験監督などESAT-J YEAR3に実際に関係した方
- 調査方法:googleフォームによるアンケートをXやチラシにより拡散し回答を募集
【回答の状況】
- 回答総数は129件で、うち7割が中学3年生(90人、69.8%)、2割が保護者(28人、21.7%)でした。他に試験運営関係者(試験監督など)4件、都内中学校教員3件、都立高校教員、塾講師、中学3年生の家族、その他各1件の回答を頂きました。
- 都立高校名など会場名の記載のあったのは105件、53会場でした(会場総数229会場)。
【回答の概要】
1、運営側の責任による試験の遅延や再試験が大量に発生し、昨年から改善されていない
「試験監督の指示で困ったことがあった」という回答は41件でした。その回答からは、会場準備が開場時刻に間に合わなかったり、試験の指示が適切にできないことなどによる遅延や再試験が発生し、昨年から改善されていないことが明らかになりました。
(1)会場準備が間に合わず試験終了が5時過ぎに。昼食抜きという虐待に等しい状況も
【会場A】
受験生は本来、正午から会場に入室し昼食(持参した軽食)をとることができます。ところが会場Aでは正午になっても入室できず、説明もないまま1時間以上も外で待たされ、軽食も食べられず、試験終了は5時を過ぎたとの証言がありました。遅れた原因は、単に会場準備が間に合わなかったためと推測されます。
寒い中1時間以上も待たされ昼食も抜いた状態では、生徒は実力を発揮できなかった可能性があります。前半組はただ待機させられ後半組は長時間自習できたので不公平だとの声や、体調を崩したとの声も寄せられています。
ESAT-Jを同じ会場で受験した中3生は様々な都立高校を受験するため、会場ごとに条件が異なっては入試の公平性が確保できません。さらに寒い中外で待機させ食事も摂らせないとは虐待に等しい状況です。
準備が遅れたことに対し都教委は、都議会文教委員会で「引き続き万全の準備でとりくむ」「手順に基づき適切に実施」と繰り返しました。試験の公平性も生徒の人権も損なわれているという自覚すらない、無責任極まりない態度です。
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(2)試験監督が運営や指示を適切にできず、会場全体の遅延や再試験が発生
【会場B】
試験監督の指示があいまいで機材トラブルを起こす生徒が多くいて、再試験となった生徒が出ました。その上、再試験とならなかった生徒も含め、帰宅が17時ごろになったことがわかります。
解散が遅れる旨の保護者への連絡が適切にされなかった点も、昨年から改善されていません。
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【会場C】
指示が出る前に複数の受験生の動画が再生され、試験監督が右往左往し本部の指示待ちとなり、終了時刻の遅延が生じました。試験監督の発言に「不安と責任感のなさを覚えた」との回答や、飲食可能な時間(正午から12:30まで)以降、水分補給もできなかったとの証言もありました。
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【会場D】
タブレットのボタンを押すべきところ、試験監督が「押さないで」と指示したことにより、帰宅時間が遅れただけでなく、多数の再試験者が発生したとの証言がありました。再試験が12月14日と、結果を志望校決定の参考にするVもぎ(模試)と同じであることに、「すべてが崩された気持ちです。運営側の手違いで負担をかけないでほしい」と怒りの声が寄せられています。
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(3)手順を理解していない運営等により、生徒が困惑し公平・公正さが損なわれる。タブレットの不具合も発生
(1)(2)以外の会場からも「説明動画を見ている時に試験監督が話し始めた」「試験監督が試験の流れを理解していない」「指示がわかりづらい」などの証言が多数ありました。試験監督による運営や指示が適切でなく、生徒が困惑し公平・公正さが損なわれる状況も改善されていません。
タブレットの不具合が発生したという証言も引き続き寄せられ、品質管理が改善されていません。
(説明動画を見ている時に試験監督が話し始める)
(試験の流れを理解していない)
(指示がわかりづらい)
(タブレットの不具合が発生)
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(4)試験運営関係者も「運営が不十分でもその原因は主催者側にある」と指摘
ESAT-Jは、1日限りのアルバイトの試験監督(会場責任者、副責任者、本部要員、補助員、会場係員含む)により運営されていますが、人数が大量に必要なため未経験者も多数採用されています。
(1)から(3)のような運営のミスが生じることについて、試験運営関係者から「年に一度の開催なので現場スタッフの練度が高くなく、ヒューマンエラーが発生しやすい」「マニュアルの複雑さに対して、設定されている研修のための契約時間が短すぎる」「運営が不十分でもその原因は主催者側にある」との指摘がありました。
ネットの求人広告によれば、ESAT-Jの研修は自宅での動画視聴で、時給約1300円、3時間となっています。別ルートからの情報によれば、自宅に送付されるマニュアルは180ページにも及び、動画視聴と合わせて3時間でこなせる量ではない、理解度の確認テストは正解も送付されてくるため理解していなくても正答できるとのことです。
今年も試験の遅延や再試験等が数多く発生し、改善できていないことは、1日限りの大量のアルバイトによる試験運営では、試験監督の質の確保に限界があり、公平公正で生徒の人権や安全に配慮した運営は不可能であることを示しています。都教委はそのことを認めるべきです。
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2、セクハラされたという証言も。中学生を守る立場で調査・対応を求める
試験監督の質に関連し、女子生徒にのみ「靴脱いで」「女の子にだけだよ」などと話しかけるセクハラまがいの言動があったとの回答がありました(下記参照)。話しかけられ、断ったが「本当に怖かった」と述べています。
都教委はこの証言について、都議会文教委員会で「インターネット上で行われたことについて、答えられない」と答弁したことは、中学生を守る立場に立っていないと指摘せざるを得ません。責任をもって調査・対応すべきです。不適切な人物が試験監督に採用されている事例は過去にもあり、ネットで1日限りのアルバイトを募集し試験監督にあてるやり方を続ける限り、改善は困難だと言わざるを得ません。
また「体調が悪くなり電話を頼んだが、実際には電話されていなかった」との証言もありました。
生徒の安全確保や配慮ができていないことは試験以前の問題で、試験を実施・運営する資格がありません。
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3、約半数の生徒が「まわりの生徒の解答する声が聞こえて何を言っているかもわかった」と回答するなど、意図せずカンニングできてしまう状況は改善していない
1つの教室で「まわりの生徒の解答する声が聞こえましたか」との質問に、「声は聞こえ何を言っているかもわかった(部分的にでも)」と回答の回答が51件(44.7%)もありました。意図せずカンニングできてしまう状況は改善されていません。
「自分の声の録音確認の際にまわりの生徒の声が録音されていた」との回答は61件(56%)でした。まわりの生徒の声が録音されているのに「どう結果を判断するかが不明確」との声もありました。
前半組、後半組の情報漏れについては、「前半組の生徒が解答する声が聞こえて何を言っているのかもわかった(部分的にでも)」との回答は5件、「前半組の試験が終了してから後半組の試験が始まるまでに、前半組と後半組の生徒の接触があった」との回答は3件でした。同じ問題のテストを前半組、後半組に分けて行うことは、常に情報漏洩の可能性が付きまとうため、やめるべきです。
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4、拘束時間について9割が「長い」と回答。「時間の無駄」「苦痛」「不公平」との声が寄せられる
ESAT-Jは同じ問題の試験を前半組、後半組に分けて行うため、カンニング防止のため受験生を拘束しつづけます。過去3回のアンケートでは、テストそのものは15分なのに拘束時間が3時間以上に及ぶ(12:30集合15:40解散)ことに疑問の声が多数寄せられていました。
今回、試験当日の時間設定について設問したところ、「長い」との回答が9割近く(86.9%、106件)に及びました。さらに前半組後半組に分けることが、「テスト前に自習できる後半組の方が有利」だと不公平感にもつながっています。
9割が「長い」と回答し、「無駄な時間」「苦痛」と訴えるなど中学生の大きな負担となっていることを直視し、長時間拘束が不適切であることを認めるべきです。
スマホを12:30に提出した後13:00まで何もせずに着席させられることに対しても「時間の無駄」だという声も目立ちました。試験が休日に実施され代休もないことについて、「平日に行ってほしい」との回答が65件(53.7%)でした。
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5、過去3回の問題が解決せずに繰り返されるESAT-Jには構造的な欠陥があり、ESAT-Jの都立高校入試活用は中止しかない
アンケートにより、試験終了時刻の遅延や再受験者が複数会場で大量に生じる状況が、昨年に続き今年も繰り返され、改善されていないことが明らかになりました。
都教委は「使用機器の品質管理や当日のオペレーションなど、事業者と緊密に連携して検証を行い、不断の改善に努める」と発表し(5月22日)、とりくんでいたはずです。それでもなお同様のトラブルが発生したことは、ESAT-Jには構造的な欠陥があり改善は不可能だということを示しています。
1日限りの試験監督をネットで大量に募集し自宅での短時間の動画視聴の研修のみで運営をまかせる、教室に30人近い生徒を詰め込み同じ問題で受験させる、機器の必要台数を半分にするために生徒を前半組と後半組に分ける方法は、試験の公平性・公正性を担保できないばかりか、生徒に負担をかけるばかりです。
「改善に努める」と言いながら同じトラブルを繰り返すのは、試験監督や機器にはコストがかかるため、民間事業者(ブリティッシュ・カウンシル)が抜本的な改善策を取ることができないからです。昼食を食べさせず、セクハラといえる事態まで発生していることも含め、まさに構造的欠陥によるものであり、都立高校入試への活用は中止するしかありません。
再試験の日程がVもぎ(模試)と同日されていることも問題です。2度も試験を受けなければならないことに加え、志望校決定の重要な資料となる模試が受けられず受験料も無駄になることに、昨年も今年も怒りの声が上がっています。別の日を設定できないのであれば、これも構造的欠陥です。
都教委は都議会で私たちのアンケートに対し、インターネット上で行われたものだと批判しましたが、私たちは当事者の切実な声であると判断しています。証言のあった事柄について自ら調査・公表もせずアンケートをけなすのは、中学生をはじめとする都民に誠実な態度とは言えません。
6年間で210億円という巨額の税金を使いながら、15分のテストに生徒を3時間以上拘束する方法しかとれず、入試に必要なレベルでの公平性・公正性も担保できず、生徒の安全確保もできないのではコストパフォーマンスもタイムパフォーマンスも最悪と言わざるを得ません。
ESAT-Jの入試活用は中止することを、改めて強く求めます。
以 上
(資料)
#ESAT-J実施状況調査2025 質問項目
(1のみ必須)
1、 あなたの属性・お立場(どんな方ですか?)
○中学3年生 ○中学3年生の保護者 ○中学3年生の家族(祖父母や兄弟など) ○試験運営関係者(試験監督、電話対応担当者など) ○都内中学校教員 ○都立高校教員 ○都教委職員○塾講師 ○その他( )
2、 受験した(関係した)試験会場はどこですか(できるだけご回答をお願いします)(記述式)
3、スピーキングテストの状況について教えてください
①試験監督の指示で困ったことはありましたか
〇はい 〇いいえ
■ はいの方は具体的にお書きください(記述式)
②まわりの生徒の解答する声が聞こえましたか
○声は聞こえて何を言っているかもわかった(部分的にでも) ○声は聞こえたが何を言っているかはわからなかった ○まわりの生徒の声は聞こえなかった
③前半組の生徒が解答する声が聞こえましたか
○声は聞こえて何を言っているかもわかった(部分的にでも) ○声は聞こえたが何を言っているかはわからなかった ○前半組の生徒の声は聞こえなかった ○前半組だった(気が付いたことがあれば3―⑥に)
④ヘッドセット、タブレットなど機器について困ったことはありましたか
○困ったことがあった ○困ったことはなかった
⑤自分の声の録音確認の際に、まわりの生徒の声が録音されていましたか
○録音されていた ○録音されていない
⑥前半組の試験が終了してから後半組の試験が始まるまでに、前半組と後半組の生徒の接触がありましたか
○接触があった ○接触はなかった ○わからない
⑦ ①から⑥の具体的な様子や気づいたこと、変だな、いやだなと思ったことなどをお書きください(記述式)
4、試験の日程についておしえてください
①試験当日の時間設定(集合12:30、解散15:40)は適切だと思いますか。
○長い ○適切 ○短い ○その他
■①の理由を具体的にお書きください(記述式)
②試験が休日に行われることについてどう思いますか
○適切 ○平日に行ってほしい ○その他
■②の理由を具体的にお書きください(記述式)
5、試験当日のことで情報提供したいことがあれば、番号を選択の上、具体的にお書きください(複数選択可)
①試験の内容について ②受験会場の様子や会場までの交通について ③試験監督について ④食事場所や健康に関することについて ⑤テスト中の他のトラブルについて
■5について具体的にお書きください(記述式)
6、Web登録(7~9月)について困ったことがありましたか(登録がされていなかった、間違って登録されていた等)
○困ったことがあった ○困ったことはなかった
■6について具体的にお書きください(記述式)
7、試験当日以外のことで次の各項目について情報提供したいことがあれば、番号を選択の上、具体的にお書きください(複数選択可)
①事前の学校や東京都教育委員会からの情報提供の時期や内容について ②申し込み方法について③電話窓口の対応について ④その他
■7について具体的にお書きください(記述式)
8、その他ご意見などをお書きください(記述式)
9、もしよろしければ連絡先をお願いします(あとから内容の確認のためにご連絡をさせていただくことがあります)(記述式)
以 上


