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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

1999年第3回定例本会議 討論

浅川 修一(立川市選出)  1999年9月30日

大型開発にメス入れ、不要不急の投資的事業を抑制すれば、都民に痛みをおしつけず都財政をたて直すことはできる

◯三十二番(浅川修一君) 私は、日本共産党都議団を代表して、第百七十四号議案、平成十一年度東京港臨海道路中防側沈埋トンネル建設工事請負契約外十一議案に反対する立場から討論を行います。
 第百七十四号議案を初めとする六議案は、臨海副都心開発関連の議案であります。バブルに踊って始めた臨海副都心開発は、地価下落で収入見込みに五兆五千億円の大穴があき、今日、その失敗は、だれの目にも明らかになっています。ところが、都は、都財政の投入によって破綻を穴埋めし、あくまでも開発を推進する方針にしがみついてきました。その結果、これまでに臨海開発につぎ込まれた都財政は、基盤整備や国際展示場など施設建設のための都の負担、用地の無償提供など、合わせて三兆円余りにも上っています。今後も、幹線道路建設や、有明の丘の都有地買い戻しを口実にした二千二百億円もの財政支援など、二兆円もつぎ込もうとしているのであります。臨海副都心開発は、都民に一円も迷惑をかけないどころか、まさに都の財政難の最大の原因の一つとなっているのであります。
 知事は、我が党の代表質問に対し、一般財源の投入は三千九百億円まで縮減したと述べましたが、これは、幹線道路など基盤整備費に対する一般会計からの税金投入に限定したものであり、施設建設費や他会計からの負担などは一切含まれていません。これをもって、都財政負担が軽減されているなどとする知事の答弁は、全くの認識不足であり、都民を欺くものであります。しかも、これだけ都財政をつぎ込んでも、開発が計画どおり進む見込みは全くないというのが臨海副都心開発の実態であります。地価はこの二年間でさらに下落し、企業の進出意欲は冷え込んだままです。このまま開発を続ければ、都は果てしない財政投入の泥沼にはまり込むことは明らかです。
 ところが、知事は、臨海地域を首都東京をよみがえらせる起爆剤にするなどと述べ、新たな開発整備ビジョンをつくり、開発地域を臨海部全体に拡大する方向を明らかにしました。我が党は、代表質問で、この方向が、破綻の果てしない拡大と都民負担の一層の増大に道を開く危険きわまりないものであることを厳しく指摘しました。マスコミも、新たな開発ビジョンについて、破綻した臨海開発救済の意図が背景にあり、臨海会計の赤字救済のための埋立会計、羽田沖会計との三会計統合も検討、と報じています。こうした方向が実際に進められるとすれば、文字どおり都民の財産を挙げて臨海開発につぎ込むことになるのは明白です。知事は、首都機能移転問題で国会で反対を表明し、マスコミに答えて、行政は引き返す勇気を持つべきだと発言されましたが、破綻した臨海開発から引き返す勇気こそ、知事に求められているのであります。
 知事、今重要なことは、臨海副都心開発を都民参加で抜本的に見直し、果てしない浪費の蛇口を締めることであります。こうした立場から、我が党は、臨海開発と一体の臨海道路や幹線道路建設の議案には反対であります。
 また、今定例会には、総額二百二十六億円に及ぶ新海面処分場建設事業の契約議案が提案されています。そもそも新海面処分場は、減量・リサイクルに背を向け、膨大なごみを燃やして埋めることを前提に計画されたもので、全体で七千四百億円の巨費を投じるものであります。しかし、埋め立てられるごみは、この間の都民のリサイクルの取り組みや粗大ごみの中間処理などによって大幅に減り、昨年の見直しで、当初十五年で満杯になるといわれた処分場が大幅に延命されることになったのであります。実際に中央防波堤外側処分場もまだ相当量の埋め立てが可能であり、新海面処分場についても既に工事が完了しているA、Bブロックなどを活用することで、当面対応することは可能であります。都は福祉や教育など都民に財政難のしわ寄せを押しつけるのではなく、過大な予測をもとに計画された新海面処分場について、建設を一たん凍結し、不要不急な部分の縮小など全体計画を見直すことこそ急がれているのであり、本議案に反対するものであります。
 知事は、財政再建団体に転落しそうだから、国からいわれる前に自分で福祉を切るといいますが、今求められているのは、浪費にメスを入れ、都民に痛みを押しつけずに都財政を立て直すという立場であります。我が党が具体的に提案したように、大型開発に抜本的にメスを入れ、不要不急の投資的事業を本気で抑制し、過大な減債基金のため込み計画を見直すなら、都民に痛みを押しつけることなく都財政を立て直すことは十分に可能であります。
 ところが知事は、我が党のこの道理ある提案に背を向け、財政再建推進プランと「福祉施策の新たな展開」で示した福祉の全面的切り下げ計画を、あくまで推進することを表明したのであります。とりわけ重大な問題は、障害者や高齢者、乳幼児、母子・父子家庭を対象とする各種の医療費助成や福祉手当、シルバーパスなど、いわゆる経済給付的事業に矛先を向け、根こそぎ切り捨てようとしていることであります。代表質問でも指摘したように、知事の姿勢は、財政がどんなに厳しくとも、都民の福祉や暮らしを守るために全力を挙げるという自治体としての責務を投げ出すものといわねばなりません。
 重い障害があっても、人間として当たり前の生活をしたいとの一心で施設から自立し、多くの人に支えられて地域での生活を続けてきたある重度障害の方は、重度障害者手当などの切り下げは、私の生き死ににかかわる問題です、と強く訴えています。こうした都民の声に耳を傾け、暮らしの現実、生活の痛みに思いを寄せるべきであります。このことを、改めて知事に強く求めるものです。
 また、知事の公約について、一言申し上げます。
 都知事選挙での、医療費助成制度やシルバーパスに関する医療関係団体からのアンケートに対する知事の回答についての我が党の質問に、知事は次のように答弁しました。アンケートは、極めて限られた選択肢の中で回答を求められたものであり、福祉に対する自分の考えを十分に反映できたとは考えていない。しかし、このアンケートの老人医療費助成や障害者医療費助成などについての選択肢は、「現行どおり存続は必要」「縮小の方向で見直す」「その他」の三つであり、その中から知事は、「現行どおり存続は必要」を選んだのであります。シルバーパスについても、「今のまま存続は必要」「縮小の方向で見直す」の二つの中から、「今のまま存続は必要」を選んでいます。したがって、知事が今後、縮小の方向で見直すなら、明確な公約違反であります。しかも、いずれも自由意見の記入欄があったのですから、極めて限られた選択肢の中で回答を求められたものであり、自分の考えを十分に反映できなかったなどといういいわけは通用しません。事実を偽り、公約を踏みにじる知事の姿勢に、都民の厳しい批判は避けられません。
 最後に、都は都立高校の統廃合を進めようとしていますが、都立高校改革推進計画の第一次実施計画と第二次計画案に対して、反対や見直しを求める署名は二十六万人に上り、十四万人の生徒が通う全日制都立高校のPTA連合会は計画決定延期の要望書を出しています。議会でも各会派から、拙速を避け、都民の声を聞くべきだとの批判が相次ぎました。統廃合先にありきという姿勢を改め、これらの世論に耳を傾けるべきであります。我が党は、不況に苦しむ切実な都民の願いにこたえる都政を実現するために全力を尽くすことを述べて、討論を終わります。